陣馬形山の電波塔

自転車キャンプツーリング記

冬キャン△陣馬形山と飯田プラネタリウム

2018年2月24日〜25日

日記

2/24() 陣馬痛ったい
陣馬形山へのマップ

アニメ「ゆるキャン△」が面白くて、聖地巡礼として冬場に高ボッチや霧ヶ峰に登るなど、自分の痛い行動に大きな影響を与えている。次なる行先は陣馬形山。自分にとって“手段”でしかなかったキャンプが“目的”になる。

半年振りの自転車フルキャンプ装備で出撃。松本市役所には小平奈緒選手の平昌オリンピック金メダル銀メダルを称える垂れ幕が掛かっている。強い向い風に逆らうように南へ、五千石街道から旧三州街道へ繋ぐいつものルートで善知鳥峠を越える。標高889mで日陰には残雪、もう不穏だ。下り坂もしっかり漕がないと進まない強風が続き、箕輪町の西沢スーパーで早々に昼食休憩。東の岡で山林火災が発生し、煙がもくもく上がっているのが見える。空気の乾燥も相当なようだ。

北から仰ぎ見る陣馬形山

天竜川左岸を南下して行き、伊那市の三峰川を渡る。見晴らしの良い所だが、左右のアルプスは雲に隠れがち。伊那文化会館プラネタリウムは改装休業中なので寄らず、さらに南下。川沿いのルートもあるが、調子が良いので県道18号の火山峠を越えてみる。噴火している訳ではない、地味な峠だった。「ひやまとうげ」と読むらしい。駒ヶ根市に入り、目前に雪化粧をした陣馬形山が迫る。今からあれに登るのか…。

左折し県道49号を東へ登ると「ぱぱりん」という食事処があって気になる(ゆるキャンにママりんは出てくるけど)。今度来る時はここで昼食にしよう、と思いつつ南へ右折し県道210号、折草峠への狭い道に入る。この先通行止の標識は、地名がよく分からんから見なかったことにする。最後の集落を過ぎるといよいよ除雪されてない雪道が始まる。峠から先でこうなるのは覚悟していたけど、ここからかぁ…時間大丈夫かな。押し歩きで登って行くが、頼りの轍もアイスバーンで進まない。

林道から陣馬形山へあと少し

膝や腰を気にしつつ中川村との境、折草峠に到着。石碑のある趣。ここから林道黒牛折草峠線(舗装済)で西へさらに登る。南斜面で一部日なたは解けているものの、ほぼ歩きという状況は変わらない。二度と遭難の過ちは犯してはならないから、常に「退路はあるか」と自分に問いかけながら進む。路面をバリバリ砕きながら進む、ぼくは砕氷船ペンギン饅頭号だ。所々道を横切るでかい足跡は何だろう。警戒の口笛を吹く。雪の進軍氷を踏んで♪…だんだん力が無くなってくる。

左手に南アルプスの山々。そして正面に建物が見えて「あと少し」という所で、あてにしていた轍が引き返してしまった。ここからは重いラッセル。ほんの少し進んでは肩で息をして呼吸を整え、また少し進んでは、を繰り返す。体力生命力の限界へのチャレンジ!…この数百メートルだけは無謀な賭けとなった。予想以上な難儀の末、山頂への分岐に到達。轍があるー。

陣馬形山キャンプスペース

たどり着いた陣馬形山キャンプスペース。クルマはいないが、徒歩で登ってきたらしい人のテントが一張りある。お前らも同業者(アニメファン)か? 何にせよ人の気配は有難い。施設の水道は止まっているがトイレは開いている。とりあえず地面が露出している場所を見つけテントを設営、の前に木道階段を登り標高1445mの山頂へ。中央アルプスの稜線は雲が掛かっているが、田切地形の伊那谷を見下ろす景観に息を飲む。反対側の南アルプスはまずまず、まぁさっきから見えてたしな。塩見岳が判りやすい。

駒ヶ根市夜景

風がまだ強くて、うっかりテントを飛ばしてしまい大慌て。アニメシーンの再現を図ったわけじゃない。ペグがなかなか凍土に刺さらないなんてのは初めて。キャンプだしお湯を沸かすくらいはしたかったが、直したはずのストーブはまた壊れて着火せず。せっかくカレーメンを持って来たのに、菓子パンだけの夕食になる。やがて暗くなり、再度山頂に登ると駒ヶ根市の十字を切るような夜景が美しい。本当に来て良かった。あとは明日、生きて朝を迎えられますように。

2/25() 下山脱出と下山ダッシュ
陣馬形山から中央アルプス

夜中、足の冷たさに何度も目を覚ました。凍った地面の冷気が、銀マットを貫通して背中に伝わってくる。冬期キャンプは初めてで、懐炉の用意さえ無かった。「朝の光が待てなくて、眠れない夜もあった♪」なんて歌が思い出される。状況はずいぶん違うが。

5時過ぎにはもういいやと体を起こし、日曜の朝食。テント内のボトル水は凍ったが、おにぎりとオレンジジュースは大丈夫だった。きんきんに冷えてやがる。明るくなり山頂の様子を見に行ってみると、まだ曇り空だが中央アルプス稜線の雲は取れて越百山、空木岳、南駒ヶ岳、右に宝剣岳、中岳、木曽駒ヶ岳が連なる絶景。眼下は目覚めの街並み。南アルプスも仙丈ヶ岳、北岳から赤石岳方面まで、名前はよく分からんけど。

南アルプス方面

パッキングが済むと荷物がだいぶ減った感じ。防寒着を全部着込んだからだ。気温推定マイナス9度。いつの間にテントがもう一張増えてら。さよなら、また来るよ。南への下山脱出もしばらくは轍に自転車を、横の残雪に足をという方法で押し歩きが続く。暑い・・・。何度も登山道と交差し、林道陣馬形山線に出るとクルマが一台駐めてある。山頂の一張はここから歩いて登ったのだろう。風三郎神社から美里集落に入りようやく完全除雪となるが、凍ったブレーキの効きが悪くて急坂は慎重に下る。登山者用駐車場にもクルマ、もう一張のだろう。中川村役場まで降りれば生還達成。知らなかったよ、缶コーヒーがこんなに旨いものだったなんて。

引き続き天竜川左岸を南下する。豊丘村のスーパーで買い食いし、喬木村の弁天橋を西へ渡れば県道18号の終点、新飯田橋。水の手通りを少し登れば飯田市の中心街で、映画館もある。追手町小学校のレトロな校舎を過ぎ、旅の目的地である飯田市美術博物館に到着。折しも今日はプラネタリウムまつりで、任意の特別番組回を無料で観られる。普通の星空解説が見たかった気もするけど、まあいいや。午後の回の整理券を2枚貰っておく。

下山ダッシュ開始

時間があるので、チャリは置いといておもむろにジョギングを開始する。飯田線の下山村駅から伊那上郷駅へ走るルートは「下山ダッシュ」として有名で、いつか挑戦するために今日は予習だ。おぼろげながらよく道順を覚えていて、区間14分ほど。中心街に戻り、飯田と言えば焼肉だと思ってランチを探すが、大好物の山賊あげに引かれて丘の上のふくろうという店で昼食にする。トレーニング後のタンパク補給にこれが一番?

飯田市美術博物館プラネタリウム

飯田城温泉天空の城でアルカリ性の温泉に浸かり、着替えも済ませてさっぱりする。プラネタリウムに戻って番組「江戸時代の星図〜中国星座の世界〜」「宇宙への旅」のダブルヘッダー。投影機はスーパーメディアグローブIIという古いデジタル式で、松本市のスーパーメディアグローブIより若干ましだが解像感は今ひとつ。それでもまた良い勉強になった。客入りが良くて賑やかなのも悪くない.。博物館も少し観て伊那谷の形成を学ぶ。いちおう私の血のふるさとだし。

リンゴ並木と交差して、JR飯田駅でサイクリング終了。輪行して、寝不足に襲われながらブログの下書きを進める。松本へ向かう車窓には陣馬形山。これがひとつの旅だ。


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