8月22日から、自分がもう一つ所属しているギター・マンドリン部の、夏合宿が信州の野沢温泉で行われる。ということで私は、サイクリングでそれに合流することに決めた。なにしろ信州といえば、北海道と並び賞するに値するサイクリストの聖地といえる。
もともとユースホステルというものにあこがれていたので、それを2ヵ所予約してみた。ギターなど合宿に必要な荷物は、自動車で来る友人に預けておいた。
さあ、初めての“個人ラン”。ひとりで泊りがけの旅行をするのもこれが生まれて初めてだと思う。
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8月20日(日)
茨城の大学から東京に帰省中だった私は、自転車を分解・袋詰めつまり輪行して電車に乗り込んだ。到着したのは群馬県の端、横川駅。ひとりなので、合宿時と違って気がねなくゆっくり自転車を組み立てられる。ここの名物は何と言っても“峠の釜めし”。暑くて食欲が全くないが、なんとか腹に詰め込み、正午になってラン開始。
さっそく中山道・碓氷峠への登りが始まるが、勾配はさほどきつくもない。それより自動車やバイクの交通量が多いのがイヤかな。途中、特急あさま号を押して登る電気機関車や、昔の鉄道の跡である眼鏡橋など面白いものを見かけた。鉄道ファンだったらたまらないだろうな。ここで他のサイクリストとすれ違って軽く挨拶。よーし元気が出てきたぞ。
184のカーブを数えて(いや数えてないが)長野県との県境、碓氷峠に着いた。茶屋ぐらいあるかと思ったら何もない。それもそのはず、すぐ下ったらもう軽井沢の街なのだ。せっかく登ったのにちょっと拍子抜けしてしまう。
あまり遅くなると夕立ちの心配があるので、観光を楽しむ余裕はなし。軽井沢と小諸は、残念だが通過でやりすごす。浅間山が雲に隠れて見えないのも残念。
交通量の少ない北国街道旧道があるのでそちらを走ってみる。『海野宿(うんのじゅく)』では古い宿場の街並が、観光地化して残されている。そこで売っているソフトクリームがおいしそうだったが、何とか我慢だ。
やがて上田市街まで走り来た。時間的に余裕は出てきたが、やっぱり空模様が不安なので別所温泉へ直行する。こうして無事に“上田まほろばユースホステル”に到着。個人でYHを利用するのは初めてなので、ワクワクする。
しばらく休んでいたら、レーサー(自転車の一種)の旅人もやってきた。おおっ。そしてちと眠いが温泉が先、近くの共同温泉につかる。疲れた両足が「まだつかっていたいよう!」と言うが、上半身がのぼせそうなのでほどほどにした。ユースホステルに戻り、先程のレーサーの人と話す。28歳の既婚の人で、今日は須坂市の方から菅平高原を越えて来たそうだ。若くて時間のあるうちに小笠原へ旅しに行くといいとか、夏のツーリングは北海道が一番だとか、いろいろ教えてくれた。
やがて食事の時間。そっか、ユースホステルでは支度を手伝うんだよね。それにしてもここは、とても家庭的な宿である。家庭と違うのは、よそう箸と食べる箸が別であることくらい。出てきたのは豪勢なメシではあるが、例によって食欲がなく、またむりやり腹に詰め込む。
食後、自己紹介なんてのもある。今日の仲間はYHペアレンツとヘルパーの女の子、さっきのレーサー、一家族、ユースキチ○イおばさん、そして遅れてきたおっさんといったところだ。そのユースキ○ガイおばさんいわく「天気が崩れてきそうね、なんとなく。」えっ、そりゃあ困るぜ。
とにかく今日はここの家庭的な雰囲気に感動した。旅って楽しいな、なんて。さて明日はどうしよう、楽して千曲川沿いに行くか、菅平高原越えに挑むか…。
8月21日(月)
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8月22日(火)
朝から雨。やがて止んだので野尻湖一周を目指す。ここ野尻湖はナウマン象の化石が出たとかで有名らしい。それにしても、たかが湖一周なのにアップダウンきつい。半周ぐらいしてまた本降りになってきてしまったので、喫茶店に避難。ずーっと待ってやっと止んで、一周終わる頃にはもう午後になってしまった。
カロリーメイトを喰って、万坂峠さらに斑尾高原へ登る。やたらきついぞ。空は晴れて暑くなってくるし。
ゴーカイな坂を下りると飯山市街。千曲川を望む飯山城跡公園で休みながら、またカロリーメイトを喰う。ラストは野沢温泉へ。ここも登り坂、厄介である。
そしてついに野沢温泉に到着。いよいよ尊敬するあの人に、楽しいあいつに、かわいいあの娘に会える…? そんな期待に胸をふくらませて、ギター・マンドリン部の合宿が行われる宿に着いてみたら、まだ誰も来ていなくて寂しかった。ちえっ、みんなが集まってる所に現れてみたかったのにな、なんて。やがてぼちぼち自動車でみんながやってきた。まあ、いいか。
こんな感じで無事ギター・マンドリン部の合宿に合流。自由時間にはちょっとしたサイクリングに出かけるなど、存分に5日間の合宿を楽しんだ。もちろんギター練習の成果も得た(ハズ)。
帰りも自転車で、越後湯沢まで走った。そこから新幹線輪行、という贅沢をして帰京。初めての個人ラン、なかなかナイスな旅だった。