【トレッキングのスタート】
Ball Shelter というのは、マウントクックエリア・タズマン氷河沿いの小さい山小屋で、そこへ行くまでのトレッキングコースを Ball Shelter Route と言っている。マウントクック村から未舗装の Tasman Valley Road を10km行くと駐車場があり、そこからトレッキングは始まる。片道3〜4時間程度の高低差300mの単純な道のりだ。
【トラック】
左にマウントクック山脈、右にタズマン氷河の石・瓦礫のトラックを延々歩く。山脈といっても歩くのが足元なので高い山は見えない。氷河は、モレーンといって氷河によって堆積された堤防のようなのもので氷河自体は見えない。高い木はなく空気は乾燥している。今までの森林浴トレッキングとは一味もふた味も違う。
【モレーンに上がる】
途中モレーンに登ってみた。20〜30m位の高さだ。実際は石が積みあがっているだけの山なので、足元はとても不安定。上からは眼下にタズマン氷河。来た方向を振り返ると氷河の末端部分に出来たモレーン湖である、Lake Tasman が見える。色はテカポ湖やプカキ湖と同じ不思議なグリーン色。眼下の氷河は氷とは思えない灰色をしている。でもよく見ると割れ目から青い氷がのぞいているのだ。色彩的には決して美しい景色ではないが、何万年もかけて自然が作り出す神秘的な地形に感動せずにはいられない。
【氷河上流】
目をタズマン氷河の上流に向けてみた。「河」はずっと先まで伸びていて、右におれて見えなくなっている。ずっと先のその部分は氷・雪を思わせる白である。いくつかの小さい氷河が両側から合流しているようだ。そこに横たわっている氷が動いているとは到底考えられないほど静かだ。今まで見た氷河は山の崖にぶら下がっていて、崩れ落ちる氷の塊を下から眺めるといった感じだった。最もこの氷河も夏になればタズマン湖に氷のかけらが浮かぶほど動きは活発になるらしいが。
【ちょっと探検】
トレッキングコースは途中崖崩れでふさがれていた部分はあるが、迷うことは無い。ただ浮石だらけなので足元には十分注意がいる。
Ball Shelter Hut には一人だけ先客がいた。彼は氷河を横切って向こう岸に行くんだと言って出発した。2km近くある幅の氷河をクレバス(割れ目)に気をつけて渡るのは単独行動でなくても大変危険だと思うのだが・・・我々一行は山の方に登ってみることにした。タズマン氷河に合流しているボール氷河と、後ろにそびえたっているマウントクックを見るために。もちろんこれはトラックなしの出たとこ勝負だ。
【タズマン氷河】
しかしその計画はすぐ断念。山が急斜面過ぎて危険だったからだ。適当な岩に腰をおろして、じっくり氷河を観察することにした。文句なしの好天気で、青空に白い雪山と氷河が映える。
このトレッキングは歩くことそのものではなく、氷河を観察するという目的のために歩くと考えた方がいいだろう。日本では見られないこの広大でダイナミックな景色は、いくら眺めていても飽きないのだ。

★トレッキング レコード★

日付
1999年10月15日

パーティ
4人