きっと貴方は知らないよね。
僕がどんなに幸せなのか。
穏やかに眠る、貴方の傍。
僕はただ泣きたくなる。
『STAY MY LOVE』
つぅぅ、と指が頬を辿り、顎を滑る。
朝剃った髭が少し伸びていてその感触はざらりとしていた。くすり、と笑う。あぁやっぱりこの人も同じ男なんだよね。その感触が何故か愛しくて、掌で撫でた。
閉じられた瞼がぴくりと震える。
まずいまずい。今ここで起こすわけにはいかない。
青島はその手を頤から喉に滑らせる。
ゆっくりと上下する喉仏はこの人が生きている証。円を描くように手を這わせると少しごつごつした感触が掌の中心から伝わった。青島は目を細めると更に下降させる。くっきりと浮き出た鎖骨。そして脱いでからはじめて判った、バランス良く付いた筋肉。
青島はその胸にすりっと頬を摺り寄せた。
どくん、どくん。
呼吸する度に上下する胸に合わせて響く一定のリズムが耳を心地よく刺激する。こういう感覚は妙に懐かしい。そうか、きっと自分がずっとずっと幼い頃。母親に抱かれていたあの感覚にきっと似てるんだ。
力強い躍動のリズム。
それを一番近くに感じられているのが自分だって事実。少しくすぐったいし未だ残る罪悪感もあるが、それらを凌駕するほどの優越感と幸福感に包まれて、青島は何故か泣きたくなった。
(きっと貴方は知らない)
胸の隆起を撫でながら、小さく「馬鹿」と呟いた。
(俺がどんなに今幸せかなんて、きっと知らない)
伏せていた目を少しだけ開いて、顔を心持ち、上げる。
そしてその優しいリズムを刻む場所を、そっと舐め上げた。
「悪戯小僧め」
途端、まだ寝ているとばかり思っていた室井がぎゅっと青島の肩を抱きしめた。
「うわっ、ちょっと起きちゃったんですか」
「当たり前だろう。こんなことされて眠ってられるか」
「何だ。んじゃもっとやっちゃえばよかったな」
「・・・・・・何する気だったんだ」
「寝てるときしか貴方、襲えないじゃない」
腹筋を使って上半身を持ち上げた青島に、室井がなんだそれは?と額に手を当てた。眉間に皺を寄せて困っている表情を更に見たくて「まぁ、それはまた次回に」と言ってやると、案の定、彼は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。あまりにも思った通りの反応をする彼に青島はくすくすと笑いながら、自分の身体をずりっと上に移動させる。
その時、擦れ合ったお互いに気付いて、困ったように微笑みあった。
「元気ですよね、俺たち」
「誰がそうさせたんだ」
「え、室井さんじゃない?」
「他人の所為にするな」
「ホントの事なのに」
突き出した舌先でつつきあって、それを更に絡め取る。交わした唇と伝わる唾液から生まれた熱が、毒が。全身に回って心臓を鷲掴みにするまで、そう時間はかからない。
「キスだけでイッちゃいそう」
青島は室井の造形を辿るようにその大きな手を這わせる。普段清涼な瞳をしてるそれが今は熱く滾っていて、室井は押さえきれない衝動のままに体勢をひっくり返した。
「乱暴」
「襲ってきたお前に言われたくないな」
「えぇ?俺のほうが紳士的じゃなかった?」
「紳士は寝込みを襲わん」
そんなの誰が決めたんだ?
反論しようとする青島から言葉を奪い去る。腕が首筋に回されて、お互いの足が絡む。ぎしり、と鳴ったスプリングと、乱れたシーツと、鼻にかかった甘い吐息が何もかもを呑み込んでいった。
そう、室井の顔に浮かんだ哀しそうな幸せな表情まで。
きっと君は知らない。
私がどんなに幸せなのか。
君の心地よい重みを感じたとき。
私はただただ泣きたくなった。
だから君に少しずつ教えていってあげる。
私がどんなに君を愛しているのかを。
室井は青島の目尻に浮かんだ涙を、そっと舐め取った。
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<かすみさんのコメント♪>
『いずみん、お誕生日おめでとうございます。この歳がいずみんにとって
素敵な歳になればという願いも込めて、ぶん殴りたくなるくらい甘い2人を
書いてみました。私自身、いずみんと知り合ってからまだ短いですけど、
少しずつもっと仲良くなって欲しいなぁなんて思います。そしてそれを思う
人はもっといるんじゃないかな。だから、これからも素敵なお話書いたり、
素敵ないずみんになっていくのをイチファンとして見守っていきたいと思
います。とにかく、おめでとう!』
なんと! かすみちゃんからお誕生日プレゼントに小説を戴いて
しまいました〜〜〜!!(興奮)しかも室青っすよお客さん!!(誰)
でも何が良いかと聞かれ、「室青でラブラブ!攻くさい青島くん!」と
訴えた数時間後にメールが来るとは思いませんでした。
スゴイっす、かすみちゃんてば。その溢れる才能を分けて下さい(爆)
なんてことはともかく、室青、室青〜! やっぱ人様からもらって
一番嬉しいというのは本命な証拠だろうなぁ……。
今回のこのお話は、私は妙にヘンなとこのツボに入っちゃって、最初に
読んだ時に倒れてしまいました。しかも泣くし(苦笑)
なんだか書いてあることはえっちくさいのに(えっち言うな)読後感は
切なくて切なくて。最後の室井さんの笑顔が浮かんでうるうるです。
(最近室井さんに弱いオレ) もうねー!何が一番ツボかってねーー!!
今気づいたんだけど、私基本的に「両想いな片想い」に異常に弱いんすよ
昔から。両想いなんだけど、擦れ違ってて、でもほんとは互いに同じこと
考えてるような。これってこの話そのものじゃないすか。うおお泣ける…(泣)
そんな私のツボにジャストミートなお話、本当にありがとうございました>かすみちゃん
身に余るお言葉も、ほんとにありがとう。ほんの少しでも貴女の期待を
裏切らずにいられるよう頑張ります。……だから見捨てないでね(苦笑)
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