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断片小説
止まった時計
その時計は九時二十五分を指したまま静止していた。一秒たりとも動きはしなかった。
その人は、ふと、時計を見やった。九時二十五分。「九時二十五分か」とその人はつぶやいた。
これと同じことがこれまでに幾度もくり返されていた。しかしその時計が止まっていても何の問題もなかった。 なぜなら、その人が時計を見るのは毎日決まって九時二十五分だったからである。