七人の小太り爺さん



困ったことが起きた。テーブルを囲む七つの顔。そのいずれもがそう思った。でもそれは毎年のことだった。
テーブルの上にポツンと乗っているのはじいさんの頭。テーブルの下にはタネも仕掛けもない。じいさんは無精ヒゲを生やしており、残り少ない髪はクシャクシャ、顔の表面は脂ぎってテカテカ光っている。まぶたは両眼とも閉じているが口は不思議とよく動いた。

「わしゃー来年だ。今年はどうか知らんが来年はわしだぞ。わしを馬鹿にすると来年はひどい年になるからな。わかったか。わしは寿司が好きだ」

あぁ。
去年もそうだった。七人みんなで威張り散らす生首を囲んでなんとかなだめすかしてやっとこさ今年が始まったのだ。いいかげんにしてほしい。みんなそう思っていた。なんで毎年毎年おれたちが来年のご機嫌を取らなければならないのだ。しかも今回の生首はいつにも増して訳のわからないことをしゃべりまくる。

「しょうかしょうか遺跡のショウか、遺跡のショウ。堆積した今年の嫌なことなんかわしが全部遺跡にしてやるんだよ。そしてショーが始まるんだよ。遺跡ショー、落ちは未定ってか。かっかっかっ・・・」

・・・。
やっと寝た。七人はやっとホッと息をついた。来年の生首じいさんは笑いながら眠りに落ちていった。仮眠だ。そして除夜の鐘でこのじいさんが目覚めると来年が始まるのだ。
七人はしばらく無言で来年の頭を見つめた。

「けど俺たちってもういい年だよな」
「そうそう」
「もうこんな七福神なんてやめてもいいんじゃねぇか」
「でも代わりがいないからしょうがないだろ」
「もうちょっと時給上げてほしいよな」
「うん」
「ところでこの来年のじいさんって何歳なんだ」
「さあ」
「もしかして俺たちよりも若いんじゃねぇか」
「そういえば肌がピチピチしてるように見えるな」
「俺の鯛よりもピチピチしてるぜ、こいつ」
「ちっ、やりきれねぇな」
「あ〜ぁ」
(来年もいい年でありますように。)