葛飾区、実家近くのJR常磐緩行線金町駅から輪行スタート、東へ向かう。ランドナー用輪行袋とフロントバッグを新調したんだけど、同じ型番でも昔のより余裕を持って作られている感じがする。特に輪行袋のチャックが閉まらない問題は解決した。
千葉県に入り松戸駅で快速線に乗り換え、我孫子駅からの成田線はたぶん初乗車となる。車窓に興味津々、スマホなんて弄ってる場合じゃない非日常空間が始まる。10両編成は単線を突っ走り、だんだん水郷めいた車窓に変わっていく。成田駅で6両編成に乗り継ぐと、ますます鄙びていく。総武本線に合流してもう一駅、終点は銚子。いよいよ銚子電気鉄道の2両編成に乗り継ぐと、車内はレトロだし駅名に愛称を付けたアナウンスは面白いし(かみのけくろはえ駅ってなんだよ)、やれるだけの努力は感じる。ぬれ煎餅を購入していこう。
海鹿島(あしかじま)や犬吠を経てだいぶガラガラに。終点の外川駅で下車し、自転車を組み立てゴールデンウィークのサイクリングスタート。少し目的方面とは逆走し、犬岩で屏風ヶ浦を遠望しておく。洋上に風力発電所を眺めつつ、長崎鼻を経て最東端の犬吠埼へ。青空に映える白い灯台だが、中は混んでそうなので見学は又の機会とする。一人旅は淡白なのだ。北の漁港エリアに進むと「ゆうなぎ」という食堂を発見。ここで近海まぐろ丼を頂く。たっぷり満足、空いてて良かった。観光エリアの店はどこも大行列だし。
銚子駅前を見てから利根川河口を背に、西へ走る。途中から大利根自転車道があって、広々とした景色が気持ち良い。自分のサイクリングの原点って江戸川だったから、それに近い感覚が蘇る。右手には鹿島工業地帯、正面には筑波山がうっすら近づいてくる。利根川河口堰管理所の展示も見ていく。ダムカードは・・・いいや。
鹿島線の鉄橋を過ぎたら土手を降りて、下総国一ノ宮、香取神宮へ。幼少時に来てるはずだが記憶に無い。クルマは駐車場待ちの大行列。境内もまるで初詣?ってくらい賑わっている。昨日から令和時代が始まったから、その初詣ってノリなのかな。改めて見ると黒漆塗りの大きな拝殿は、今まで見た神社の中で一番カッコいいかも。そう言えば昔巨人に「ピッチャー鹿取」っていたよな、関係ないか。
佐原市街地に入ると古い町並みと、舟運を模したミニ客船が人気を集めている。そういえばここ観光地だった。伊能忠敬記念館はもう閉まる時間かあ、下調べしておけば急いで来たかもな。柳湯という昭和レトロ過ぎる銭湯に入り、これまたレトロな志田ストアーで夕食と朝食を調達する。駅前地図に近くの公園を見つけ、いつものようにゲリラキャンプ。自炊用具のない軽装備サイクリングで、今回の旅は千葉県(下総・上総・安房)の一ノ宮巡礼を名目とする。ごうごう飛び交う飛行機の音はそのうちなくなる。
テントを叩く雨音に目が覚める。晴れる筈では? ほどなく止むが、濃霧スタートの一日となった。南へ南へ、せっかく下総台地の田園風景が美しいのに、眼鏡がすぐ曇るから困る。内陸の芝山町に入り、成田空港A滑走路を望む「ひこうきの丘」で一休み。霧の影響か7時を過ぎてようやく離着陸の音が聞こえるようになったが、風向きが悪くこっちからはさほど見えない。三里塚さくらの丘も見ていく。幼少時に闘争のニュースが結構あったから、このへんまだ怖いイメージなんだよね。
芝山はにわ道を飛ばし猿尾トンネルを抜けると、九十九里平野に出る。道の駅蓮沼でも一休みして、砂浜へ。あぁ〜九十九里浜〜♪ 長らく長野県に住んでいると、こんな景色が有り難いのだ。県道30号は海が見えないし南へ急行するばかり。前を走るロードバイクを追っているうちに白子温泉街、宗教都市の趣がある長生村を抜け一宮町に入る。コンビニで昼食。
玉前神社(たまさきじんじゃ)も香取神宮より一回り小さいが黒い拝殿でカッコいい。奥に「はだしの道」という砂利敷きがあり、靴と靴下を脱いで三周すると御利益があるとのことでチャレンジ。これがとんでもなく痛くて、本当に三周するのがやっと。上総国一ノ宮と言えばこれ、強烈な印象を残した。
佐原から100kmあるが追い風に恵まれ、坂らしい坂もないため昼過ぎには目的地の大多喜町に到着してしまった。ここを舞台にした「アクションヒロイン チアフルーツ」というアニメがあり、濁点のないタイトルのためか存在感は今ひとつだが、豊作と言われる2017年でもトップクラスに面白い作品だったと思う。私は佐賀なんかより先に、ここに来る必要があったのだ。
今すぐいすみ鉄道に乗りたいが、それは明日のお楽しみ。鉄道社員の一人がアニメに理解があり、聖地巡礼マップを制作・配布してくれている。これを頼りにまずは三口橋(さんぐちばし)で城と列車の写真を撮り、続けて大多喜高校・大多喜城に攻め込む。初代城主が本多忠勝とのことで、そこに藤岡弘、が居そうな雰囲気。天守閣は鉄筋コンクリート製だけど。
房総中央鉄道館も見ていく。採算は取れないだろうが、趣味でこういう展示ができたら最高だろうな、と思わせる模型群が楽しい。町を一回りしても、まだまだ夕方前。駅前の食事処「番所」の行列が捌けているし、早めの夕食にしちゃおう。猪十六丼(ししじゅうろくどん)が旨い。最終的にビビンパのような食べ方をする仕組み。
しかしこの店、近々バイパス沿いに移転するという。諸事情あるのは理解できるが、駅前から活気が無くなるのは悲しいな。今は何でもかんでもおクルマ様、おクルマ様…そっちを向いて商売するしかないのか。
そのバイパス沿いにあるショッピングセンターで時間を潰し、暗くなってから公園でゲリラキャンプ。
大多喜駅の駐輪場にチャリを置き、いすみ鉄道の始発に乗る。単行気動車に客一人の旅情。車内の冊子を見ると、大多喜高校によるマンドリン・ギター列車なんて企画があるみたいで、これ絶対いつか乗ってみたい。終点の手前でやっともう一人乗客が増える。
大原駅で乗り換え。JR外房線は生まれて初めてだろうか。車両は房総色の209系つまり京浜東北線のお下がりだが、先頭車両はセミクロスシートに改造されていて、きらきら眩しい海を眺めながら南へ進む。あっ行川アイランド駅だっ。安房鴨川駅からは内房線となり、館山駅から北へ向かう。こちらの海もなかなかだ。工業地帯が見えてきて、君津駅でスカ色のE217系に乗り継ぎ。この列車でうっかり寝過ごすと、遥か神奈川県の逗子まで行っちゃうんだ。
五井駅で下車し、房総ちらし弁当と房総横断乗車券を買ったら、さぁ小湊鐵道。昔の京成電鉄のようなカラーリングのキハ200形が3両編成で運行される。都会の近くながらドローカルっぷりが味わえるし、さすがGWという盛況で鉄子(鉄道好き女子)や立ち客も多い。トロッコ列車の始発駅である上総牛久で若干降りるが、養老渓谷を経て終点の上総中野駅まであまり状況は変わらず、自由に写真を撮り回ることは出来なかった。
銚子で買ったぬれ煎餅をふにふに食べ、もはや懐かしい感じすらする菜の花カラーのいすみ350型に乗り継ぐ。こうして房総の南半分を鉄道でぐるり一周、昼過ぎに大多喜に帰って来た。昨日寄ったショッピングセンターではBOSO娘という【ろこどる】がライブをやるらしいが、一応これはサイクリング旅、うしろ髪ひかれ隊思いで先を急ごう。日焼け止めを塗って走行開始。
昨日成田空港あたりで見掛けた風景ポスターが気になっていた。調べると大多喜町にあるようなので、その養老渓谷にちょっと寄り道する。やってきました共栄・向山トンネル。「2階建てトンネル」とも言われ、出口が上下二段になっているという奇景である。さらに近くの遊歩道を進むと弘文洞跡という、これまた奇景が拝める。いわゆる映えるのはこの二つだが、夕木川沿いに国道に戻る道が狭いの、地層剥き出しな素掘りトンネルが3つありの、猿の群れが出現しいのと秘境感バツグン。思わぬ旅のハイライトとなった。
せっかくだから亀山湖にも寄る。久留里線終点の上総亀山は、なんでこんな所に駅があるのかしらという風情。小さな商店でパンを買うと「祝 新元号 令和」のシールが貼ってある。ここから南へ、無料開放されたばかりの鴨川有料道路でいつの間にか峠を越える。鴨川市も何かアニメの聖地だった気がするが激しくスルー。明日の旅程がタイトなのでなるべく先へ進みたい。南房総市に入り、道の駅和田浦WA・O!で夕食とする。ここは是非クジラ料理を食べよう。定番の竜田揚げ定食で、肉と魚の中間のような味? 商業捕鯨再開がニュースになっているけど、この街にも恩恵はあるのかな。
降水確率0%とは何だったのか、雨が降ってきた。スマホで雨雲レーダーを確認すると、当面は激しい雷雨が断続的に襲ってくるようだ。売店でマックスコーヒー味のピーナッツ揚げを買い食いしつつ粘るが、休憩室も閉店時間。千倉まで行きたかったけどもう、このへんでいいや・・・。裏に雨をしのげる場所を見つけてテントを張り、次の朝を待つ。
明るくなる前に目が覚め、動き出す。人間本来の生活サイクルを取り戻せるのがキャンプ生活の魅力と言えよう。パッキングを終えて浜に出ると、太陽が水平線から顔を出したところ。さあ今日は走るぞ。行け、行く先は館山だ。
千倉駅前で一休み、ホットのマックスコーヒー缶を飲む。もう少し進めば白浜、最南端の野島崎へ。厳島神社に謎シンボル。あっヤドカリだ。岩場の探険が大好きで、つい時間を掛けすぎてしまう。渺々右に伊豆大島。
館山市に入った所にあるのが安房国一ノ宮の安房神社。白い鳥居に砂利の参道が映える。社殿は鉄筋コンクリートだけど、早朝の雰囲気や良し。房総フラワーラインを突っ走りもう一つ、洲崎神社(すのさきじんじや)も参拝。こちらの方が一ノ宮であるという主張が激しい気がする。長い石段と、富士山遥拝所が特徴。今日は見えないけど。これで旅の名目である房総一ノ宮巡りは完了した。洲崎灯台から内房の海沿いを北上する。
館山の砂浜は昔水泳合宿で来ていたので懐かしい。お陰で、カナヅチだけど「一重のし」だけは出来るようになったんだ。あの強制合唱曲もよく覚えている。ジャスコで早めの昼食とし、落花生焼酎「ぼっち」もここで買っておく。「ひとりぼっちの○○生活」とは関係ないけど、ぼっち美味しそう。
さあ急がなきゃ。がんがん漕いで、道の駅保田小学校に侵入。観光客で恐ろしくごった返しているが、入浴利用は私一人でラッキー。こうしてぎりぎり、金谷港12:25発の東京湾フェリーに間に合わせた。自転車の客も多いが、キャンパーは自分だけ。出航して鋸山が遠ざかって行く。さよなら千葉県、予想以上に濃い魅力があって周り足りない。また来るよ。
久里浜港で神奈川県に降り立つ。ここから西へJRに乗ってしまえば帰りが楽なんだけど、途中の鎌倉から殺人的満員電車となることが予想される。だから、あとちょっとだけ走るんじゃ。あ〜ブルーライトヨコスカ〜♪ 横須賀で記念艦三笠を外からだけ見て、シェンムー聖地のどぶ板通りを押し歩き、逗子で相模湾側へ。浜はすっごい人手、ここはヘウンデか。
由比ヶ浜からは猛烈な渋滞。もうね・・・ばっかじゃないの! 自転車はロード乗りの流れに乗りますが…。前方にはうっすら富士山と伊豆半島。南鎌倉高校女子自転車部のテーマを脳内に流しながら、江ノ島前を過ぎるとようやく走り易くなる。しかしもう体力的にへろへろだ。
JR茅ヶ崎駅でサイクリング終了、今日の走行は130kmくらい。輪行して相模線〜中央本線〜篠ノ井線で松本に帰る。GWはあと一日あるけど、テント干しや休養に充てるわ。それでも元々2泊の予定だったのを一つ増やして、がっつり旅を楽しめた。坂には乏しかったが、翌週に控えるグランフォンドKOMOROに向けたトレーニングとしてもなかなか良かった。