トレイルラン&登山日記

大菩薩峠越え強走

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2006年 8月1日(火)

「もう、イヤ!」ってほど歩いたり走ったりしたいな。それに、悪化する一方の夜型生活を何とかしたい。というわけで大菩薩峠越えを計画した。中学・高校の行事でさんざん登らされた所だが、自由行動なら別の魅力があるはずだ。
夕方まで眠ってから、青春18きっぷを使って東京方面へ向かう。“1回分あたり一日乗り放題”のこの切符を夜から使うのは損な気もするが、別の回でたっぷり使えばいいだろう。

奥多摩−大菩薩−塩山

2006年 8月2日(水)


奥多摩駅ホーム…この隙間!

日付が変わり、JR青梅線の最終列車が標高343m、奥多摩駅1番線に到着したのは0時42分。列車とホームの間が大きく開いているのがこの駅の特徴で、特に2番線はインパクトがある。鉄道好きとしては外せないチェックポイントだ。

駅前は古めかしい観光地の風情。数人の降車客がさばけると、ますます寂しい。駅だけライトアップされていて、真夜中過ぎに浮かび上がる。
ここでおにぎりを食べたりしながら時間調整をする。あまり早く出ると、暗いうちに登山道に入るかも知れない。退屈なので駅周辺をうろつく。お巡りが見ている。

午前2時、小走りで行軍開始。歩きゃ楽だろうに、ジョギング記録として距離を加算したいからなるべく走るのだ。履いているのはトレッキングシューズだから向かないけど。車通りの少ない国道411号線“青梅街道”の谷筋を西へと登っていく。人家が途切れ、ますます真っ暗。
路上でカブトムシの雄を拾った。触れるのは何十年ぶりか。轢かれないように木の枝に放つ。それにしても予想以上に車通りが稀である。500m級のトンネルがいくつも連続するのだが、自分の靴音がこだまするばかり。たまーに通るヤン車は、私を見て「出た〜!!」とびっくりしているんじゃないか。

ついにはトンネル内の電灯が消されていて、何を踏んでいるかも分からない。それを抜けたところで、小河内ダムの奥多摩湖畔に至る。ここからしばらく勾配は楽になる。しかし街灯が少なくなったので、ヘッドランプを装備しよう。
漆黒の奥多摩湖。ここに87名の殉職者や旧小河内村民、無数の自殺者の魂が眠っているのだろう。ランプを湖面に向けても、霧っぽくて届かない。


暁の小菅村

小菅村への分岐、深山橋まで来ればもうトンネルは無い。ほんの僅かに空が黒から藍色味を帯びてくる。もう少しで怖くなくなる…。でも山からは「ヒューィ、ヒューィ」という謎の鳴き声が聞こえる。猿がギャーギャー言っているのは分かり易いが。
山梨県に入ると道路規格が下がるあたり。いよいよ山の端が青地に浮かび上がり始める。フラクタルについて少し考える? 道は細くなりながら、また勾配を伴ってくる。

もうランプは要らなくなり、午前5時ごろ小菅村役場に到着。あー疲れた。3時間も走ってりゃ、そりゃ疲れるか。でもカロリーメイトを食って間もなく再出発。もくろみよりだいぶ遅れているし。奥多摩駅前での時間調整は意味なかったかなぁ。一部の家が活動を始めている。
橋立の集落を過ぎると人家はなくなり、道は未舗装になる。今度は熊が怖いので、時折口笛を吹いて警戒する。


遊歩道途中の展望所から

道が東京都水道局管理部分になると急にアスファルト舗装になるあたり。小菅村は山梨県でありながら都水道局に支えられているから、合併の必要はないみたい。立派な駐車場を過ぎると“白糸の滝”入口がある。寄り道は自由山行ならでは、是非見物してみよう。滝は細いがなかなかの落差で、真下まで歩いて行けるのが良い。

かつての記憶を辿りつつ、登山道入口まで来た。あー疲れた。4時間も走ってりゃ、そりゃ疲れるか。ここからが本番なのに、もう足が棒になりかけている。休憩は最低限にしてすぐ出発。後方から強い日差しが昇ってきたので、真っ白タオルを首に巻く。
熊鈴を忘れたのが痛手。ケータイでMP3をかける方法もあるが、メモリカードを初期化したばかりで一曲も入ってない。仕方なく、雰囲気ぶち壊しだが、着メロを鳴らしながら登る。

もう走り続けることが出来なくなった。歩いて体力をチャージして、いざ走る。それも繰り返すうちに、ほとんど走れなくなる。山を甘く見ていました、すみません。


コンパやろーぜ

ず〜っと樹林帯の中、体力の限界への挑戦に敗れそうになる頃、急に展望がひらけた。フルコンパである。フルコンバ、古木場とも表記されるがともかく天国のような場所、ここでくたばりたい。
「←1分で水場」の標識あり。やぶこぎになるが行ってみる。確かにちょろちょろ水が出ているので汲んでおく。命水。

さぁあと少しだ。小走りスタート。もちろんすぐ歩く。ニワタシバ(荷渡し場)を過ぎると間もなく、右手を見上げるともう鞍部が、そして前方には小屋が見えてくる。



長い登りを制し

大菩薩峠だーっ!! 標高1897m、やっと来た。午前8時26分到着。ここでジョギング記録計測は一旦切る。一家族+2〜3人いるが、まだ静かな風情だ。
西側の景色が一気にひらける。大菩薩湖と名付けられた上日川ダム湖の向こうに富士山は・・・、ガス気味で何となく見えているような見えていないような。もうちょっと早い時刻に来るべきだったか。

ともかくカップラーメン! 介山荘で300円でお湯まで入れてくれる。ここで食うラーメンは日本一まずくて日本一うまい。そんな思い出が蘇る味だ。実際、塩分補給として重要。

存分に休みたいところだが、曇りつつあるので早めに稜線歩きへ。これも、行事じゃ出来ぬ寄り道だ。さすがに走る気にはならず、ゆっくり歩きになる。賽の河原から雷岩に至るまで、素晴らしい山の雰囲気を楽しむことが出来る。塩山市街もおぼろけに見下ろせる。
しかし日本百名山に数えられる大菩薩嶺2056.9mの山頂は樹林に囲まれ、展望は無い。標識には控えめに「山梨百名山」と書かれてある。特にすることもなく引き返す。唐松尾根を下りればショートカット下山できるのだが、峠道を踏破したいので介山荘まで戻る。誰にも会わなかった小菅−峠間に比べて、だいぶ賑やかになってきた。熊の心配が無くて良い。


大菩薩嶺へ続く尾根道

雲に浮かぶ送電線は男のロマン

峠の介山荘


これ、下りてくの?

ジュースを買い飲みして休んだ後、11時に下山開始。小走り…うん大丈夫、まだ走れるからジョギング記録にできる。登山道といえど、荷揚げ車が通れるような幅と勾配である。中学生集団も登ってくる。勝緑荘からは舗装車道まであるし。左翼の聖地(んなわけない)福ちゃん荘からは一応車道と登山道を分けてあるが。

峠から40分で上日川峠・ロッジ長兵衛に至る。ここは一大駐車場で、つまり今日ここまで見た人間はみんなここからのお手軽ハイキング、というよりピクニックなのだ。自分はここから車道を離れて山道を下る。熊出没注意と書いてあるが、峠よりこっち側は大丈夫だろー、と思ってたら見事に誰もいない。勾配は急になり、本格的登山道の趣き。著しくスピードが落ち、ほとんど歩きになってしまう。

ようやく急勾配が終り、千石茶屋跡に出る。ここからも少しだけ山道があり、そして舗装路へ。まだ斜度はキツいけど。裂石の集落に入ると水場発見、助かる〜。もうここらへんで落伍したいよ。


振りさけ見れば大菩薩嶺

広いアスファルトの国道に出ると、もう暑いったらありゃしない。すぐに温泉施設“大菩薩の湯”がある。こんな寄り道こそ自由だ。ジョギングのタイム計測は一時停止して、入っていこう。山から下りてきた時の温泉が世界一気持ちいい。体重を計ったら58kgを割った。奇跡。休憩室でお茶をいれながらうだうだする。

でもまた時計を動かして走り出すんだね。暑いし、足は終ってるんだけど。道の両脇には桃の直売所が立ち並び、甘い香りでぼくを誘惑する。だめだお金ないんだから。前を見ろ。行事のスタート/ゴール地点だった塩山北中学校の小さな校舎も脇見して、まだ下り坂は続く。


観光拠点にしては寂しい

15時23分ようやっと標高380m、JR塩山駅に舞い降りた。歩いたりもしたけれど、一応完走! 人生じゃ落後してもダイボじゃ落伍しねーぞ。そういえば甲府まで歩くって算段もあったような。いいや、ここまでだ。北口から南口に回っても何も無い駅だが、ともかく列車に乗ろう。
塩山→松本で18きっぷを使うのは明らかに損だけどまぁいいや。足が痛いので、ボックスを占領できるくらい空いてくると靴を脱いで足を伸ばす。絶対やっちゃいけない禁じ手、いや禁じ足だが、今日ばかりは見逃してくれよ。

かつての学校の行事はあれはあれで好きだったが、残りの距離ばかり気にして前へ前へ歩かされるより、自分で地図を把握して好き勝手することの何て楽しいことか。「もうイヤ!」ってほど歩き走ったし、充分満足。


記録
奥多摩駅→大菩薩峠ジョグ(歩き混じり)33.7km標高差1,550mアップ
大菩薩峠⇔大菩薩嶺ウォーキング3.7km標高差160m
大菩薩峠→塩山駅ジョグ(歩き混じり)14.6km標高差1,500mダウン
総距離 52.0km 2時0分出発〜15時23分到着


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