参加賞のキーホルダー

3776 FUJI MOUNTAIN RACE

第62回 富士登山競走 参戦記

山頂コース21km(但し五合目打切15km) 2009年7月24日

経緯

大会パンフレット

誰が言い始めたのか知らないが「フルマラソン3時間以内の完走、100kmウルトラマラソン10時間以内の完走、富士登山競走頂上の部4時間半以内の完走をすべて達成すること」が市民マラソンのグランドスラムとされるらしい。昨年にフルマラソンのサブスリーとウルトラマラソンのサブテンを達成している私としては、年を跨いでしまうが残る富士登山競走に興味が向くのは自然な話だ。それに昨秋から今春にかけて河口湖マラソン、チャレンジ富士五湖ウルトラ、Mt.富士ヒルクライムと出場しているので、富士をテーマにした一年間の締めくくりでもある。
「一度も登らぬ馬鹿、二度登る馬鹿」と江戸時代から云われ続ける富士山。近年は登山者が増加し過ぎて、いつトイレが溢れるか危険な状態らしい。レースのついでに、一生に一度の登頂をしてみるのもいいだろう。

さてその富士登山競走は距離こそ21kmと短いが、標高差3000mをひたすら登り続けるだけの「日本一くだらないレース」。しかも次第に急勾配になることは、あの山の形状から世界中の人がイメージできるだろう。足場は悪くなっていくし、酸素分圧や気温も下がる一方。熟練ランナーのみが参加可能とされるが、4時間半という制限時間内での完走率は50%を切るという。その栄光のあかつきには、五合目まで自力で下山しなければならない。日本を代表する山岳マラソンは過酷である。

一身上の都合で仕事を辞め、今月は有給消化に入っている。美ヶ原や乗鞍岳で若干登山競走の練習をしたものの、生活の堕落で体重が2kg増えてしまった。完走の目処が立たないまま、レース本番を迎える。

日記

7月23日(木)大会前日 「富士Q正伝」

怖い。しかしハイリスクローリターンな生き方を選んでいる以上、もっと生きるか死ぬかの局面が今後いくつも訪れる筈だ。これしきのホビーレースで負けられない。

月江寺駅

JR松本〜大月間の乗車券が微妙に2300円より高いので、青春18きっぷを購入して充てることにした。大月からの富士急行線は、富士吉田でどう行動をとるか未定なので二日間フリー切符を買っておく。普通列車に揺られ、月江寺駅で下車。
やって来ました山梨県富士吉田市。狭い市役所内は登山競走の受付で賑わっている。受け取ったプログラム等に目を通してからしばらく山の方へ歩き、北口本宮冨士浅間神社にお参り。ひぐらしのなく境内、明日の必勝を祈願しよう。

さらに西へ西へと歩き、吉田うどんを食べたかったが良い店が見付からず、すき家で夕食。もう少し歩いて富士急ハイランド併設のふじやま温泉に入る。フリー切符特典の割引で千円になる。普段は千五百円、土日等は二千円もする高級浴場だが、風呂としてはそんな豪遊した気分にはなれなかった。でも腰痛や足首痛には良かったかな。

夜の富士急ハイランド

富士急ハイランド駅でどっち行きでも良いから電車に乗ろうと思ったが、温泉から駅までどう歩けば良いのか分からず、さ迷ったあげく歩いて富士吉田に戻ることに。コンビニパンを買い食い。そろそろ市役所にはテント村が出来ている頃だろうか。

しかしもう疲れたよ…。今日9.5kmも歩いている。ザックの重さに嫌気がさし、適当な公園を見付けて東屋の下にテントを設営。雨が降ってきたし、ちょうど良い。無事朝を迎えられますように。

7月24日(金)大会当日 「/^o^\富士山 富士山 五合で打ち切り 富士山\^o^/」
雨の金鳥居

4時半の目覚ましを止める。ザーーー。まだ降ってるのか。このままだと中止とか打ち切りとかやばいんじゃないのか。カロメ2箱、グレープフルーツジュース、スーパーヴァームを採ってテントを畳み、心配しながらスタート会場の市役所まで3km歩く。里は雨でも、富士山は「頭を雲の上に出し〜♪」…かも。
6時半までに山頂コースの可否を決めるとのアナウンスが流れる。開催を信じて十分な装備をウエストバッグに詰め、早々と残りの荷物を五合目行きに預ける。

6時15分「荒天のため山頂コースは五合目での打ち切りとなります!」。

スタート行列

周囲の人々は「ま、わかっちゃいたけどねぇ」みたいな反応だ。一方自分は、大会初参加だし富士山自体未経験、それに色々な念を込めていただけに「嘘だろ?」と顔面蒼白、立ち尽くすばかり。富士山麓を駆けずり回った一年間のラストステージが締まりない。
開会式の途中でスタートロードに出ると、もう並び始めている。少しウォーミングアップをしてから後尾に付く。五合目まで全力を尽くすべきなのか、来年への慣らしにするのか。補給食や下山時防寒用の合羽など、荷物が殆ど無駄になってしまった。気持ちの整理が付かないままスタートの時刻が近づく。雨はほぼ止みつつあって、配布されたビニール着を脱ぐ。周りの人も次々脱いでいく。

市街地から緩い登り

7時ちょうどに号砲が鳴る。精々頑張るしかないでしょ。ぞろぞろ歩きからバラけてランになり、さっさと前年完走者特典で前方スタートしている白ゼッケンに追いつけ、追い越せ。しかし半分で良くなったからと皆突っ込んでるのか、そうは思い通りにスクロールしない。それでもじわじわと順位を上げながら金鳥居や浅間神社横を通過していく。給水所の人だかりが道を塞いで邪魔! 早くから喉が乾くので本当は飲みたかったが、今は集団内でのポジションを上げるのが優先。いったい、前のあと何百人を抜かなきゃいけないのか。呼吸はやや苦しくも安定している。

中ノ茶屋付近

中ノ茶屋で給水。まだまだ走るよ。坂はだんだん急になり、なるほど歩き出す人もいる。コンクリート舗装はボコボコだ。
馬返しで1時間4分43秒。ちょっと予想より遅い。ここから道は階段状になり、登山道らしくなってくる。道の真ん中には四角い土砂溜りがいっぱいあって、人は両脇を通過するから渋滞。走れる機会は減ってくる。せめて遅い人同士で並走しないで欲しいな。一度無理に抜こうとして転びかけ、人に迷惑を掛けてしまった。すまん。渋滞で減速、追い抜きで加速の繰り返しは着実に体力を奪っていく。体の発熱は猛烈で、日焼け対策のつもりだった長袖レーシャツは失敗だったと後悔。

四合目付近

二合五勺で給水し、塩もつまむ。ここからいよいよ自分も苦しく、呼吸パターンを作りづらい。急登を延々と早歩きするトレーニングが必要だったか。スキを見て抜かす気力が失われ、周りのペースに飲まれるのが精一杯。靴は履きつぶしのアディゼロテンポだが、小雨続きで中が濡れ、靴擦れを起こして痛い。山頂までだとキツいだろうな。目安に考えていた1:45を過ぎてもまだまだ登る。みんな練習してやがんのなぁ。ゴールはまだかぁ!

フィニッシュ五合目佐藤小屋

一旦舗装路に出たり入ったり、あとは大渋滞の中、ほとんど歩きながらの五合目フィニッシュとなった。タイムは1時間56分53秒。予想よりだいぶ遅れたのは第一に最近の肥満のせいだが、あと「馬返しまでに順位が決まってしまう」という定説を甘く見ていた。もっと前の方からスタートし、序盤に突っ込めるだけの体力が必要だ。腰痛もキツかったし、課題点反省点がいろいろある。これが今の実力。自転車では登り坂ばかりが大好きな坂馬鹿を自称しているが、まだまだこの分野では入門者だ。
とにかく一戦終わった。エイドでムサシパウダーを貰って飲み、さらにバナナ、パン、オレンジ、角砂糖、塩をつまんでいく。

スバルライン五合目へ歩く

雨は止んでいる。まもなく2時間20分の制限時間で渋滞解消を急かす声もあり、その場を離れる。スバルライン五合目へ歩き移動。昼食にとおにぎり弁当を貰っても、まだ9時半だぜ。荷物を受け取り、下山バスを待つ行列へ。これが長くてすっかり体がヒエヒエだ。こんな所はわざわざマラソンせんでもチャリで来りゃあいいだよ。
ようやくバスに乗り、車窓をふりさけ見れば晴れた山頂が見えるではないか。…富士山め、これで勝ったと思うなよ。

吉田うどんサービス

市役所に戻る。五合目打ち切りでは全員分用意できないのか、完走賞Tシャツは無し。順位も他のマラソンやヒルクライムの実績に比べて今一つなリザルトを確認し、うどんサービスを受ける。やっとあったまるー。見覚えのある体格に声を掛けると、やはりチャレンジ富士五湖で同室だったNさん。相変わらず良くしゃべる人だ。歳はもう60近いがしっかり時間内完走を果たし、美味しそうにうどんを食べまくっている。
もう一人、参加者名簿にかつての同級生C君の名前があって気になっているのだが、どうしても見付からない。おにぎり弁当も食べ、うどんもおかわり。だいぶ時間が経ったが閉会式はいつ始まるか判らず、日差しがむしろ暑くなってきたので撤収しよう。さよなら、来年も出場できるだろうか。

フジサン特急

中途半端に疲れた脚で、てくてくと吉田駅前から富士急ハイランド駅前に歩き、今日もふじやま温泉に入る。レースの汗を流してスッキリし、ハイランド駅に戻る。この二日間、重いザックを背負ってずいぶん歩いたな。
フリー切符で電車に乗り、いったん河口湖駅へ行き少しお茶をする。また雨が降り出すなか、フジサン特急で帰途に就いた。

結果

富士登山競走マップ
山頂コース21km(但し五合目打切15km) 公式リザルト
記録 1時間56分53秒 (最速者1:15:15, 時間内最終完走者2:19:59)
男子順位 643位 (/時間内完走2050名/出走2491名/申込2933名中)
総合順位(女子含) 655位 (/時間内完走2157名/出走2650名/申込3130名中)
データは後日郵送された大会記録集による。時間内完走率は男子82.3%,女子67.3%
他に五合目コース時間内完走656名/出走680名/申込830名
富士山山頂午前6時天気:気温4.5℃,湿度100%,日照なし,南の風強く 雨と霧

購入したばかりのデジカメPanasonic DMC-FT1でレース中も含めて写真や動画を撮っておいたので、コース半分とあっては締まりないが編集して動画サイトにアップした。来年もし出場できたら、しっかり山頂まで紹介できたらいいなぁと思う。

ニコニコ動画:▲第62回富士登山競走(五合目打切)
zoome:▲第62回富士登山競走(五合目打切)※高負荷版
記録証・完走証

リンク

オールスポーツによる写真
富士登山競走公式サイト
大会概要やコース紹介、アルバムなど。
RUNNET
参加申込はここから。
日本山岳耐久レースオフィシャルサイト
日本を代表するもうひとつの山岳レース「ハセツネ(長谷川恒男)カップ」。
オールスポーツコミュニティ
スポーツ写真サイト。(右のサンプル写真)

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