鬼無里の東京

自転車キャンプツーリング記

その先の長野へ。秋山郷と奥裾花

2011年8月13〜15日
8/13() その先の長野へ。

自転車のハンドルステムという部品が外せない状態が続き、輪行が不可能なので遠くへは行けない。それなら長野県内にもまだまだ未訪の土地があるじゃない。という訳で今年のお盆休みは北信地方を回ることにした。二泊三日でテントは積むが自炊はしない、簡易キャンプツーリングだがその分たっぷり走ろう。

と意気込んでいたのに寝坊して、松本出撃が9時になってしまった。それだけの睡眠が必要だったんだと無理矢理納得しつつ、炎天の国道19号を急行し回復運転を図る。正午には長野市街に入り、長野マラソンのスタート地点に到着。ここからマラソンコースとは逆に進むと何があるんだろう。果たしてスーパーがあった。昼飯を買い食いし、夏の必需品である梅チューブも確保しておく。これさえあればコーラを呷っても大丈夫。

栄村の被災跨道橋

追い風だったのが向い風に変わりつつも、国道18号や117号を繋いで飯山市までにだいぶ遅れは回復した。千曲川左岸の県道ルートは一部栄村大震災の影響で使えず、右岸の国道へ。やがて路面の歪みが目立つようになってきた。特に森宮野原駅手前の跨線橋は「よくこの状態で通行止にしないな」と思うほど、特に歩道が波打っている。ともかく一休み。

一旦新潟県に入り津南町で夕方の買い出し。ここから中津川を遡るように国道405号を南下する。これが意外に距離あるし登り下りが大きい。ここまで飛ばし過ぎて心臓に負担が掛かったのでペースを落とさざるを得ず、どんどん日が暮れていく。先の雲が暗い。天気予報では長野県内でも北に行くほど夕立の確率は低そうだったが、やはり山の方はダメか。

秋山郷より苗場山方面

ずいぶん谷あいとなり、坂巻の秋山郷に入る所でついに一雨きた。合羽を装備するも雨はすぐ小康となりほぼ止む。良かった。山肌を翔ける雲が秘境の趣。これどこかで見たことある。同じく平家の落人伝説が残る、九州の五家荘だ…。はるかに見上げる山は苗場山だろうか。
それにしても遠いなぁ、どんどん遅れる。18時半に大赤沢集落に入り蛇淵の滝がある。一応遊歩道を降りて観に行くが、しょぼい。秋山郷三大ガッカリに認定しよう。あと二つあるかは知らないが。

再び長野県栄村内に入り、ここからは信州秋山郷。小赤沢を過ぎすっかり暗くなってダイナモを焚きつつ、上ノ原。最後にユース坂を思い出させるようなキツい勾配を踏み込み、19時15分ごろ目的のキャンプ場「のよさの里」に到着。とにもかくにも救われた!
と思ったらテントサイトは予約で埋まっていると言われた。この先にある他のキャンプ場に行ってみてはどうか、という話になって絶望しかけるが、「もう走れないです…」とごねてみたら上司に連絡を取ってくれて、広場の隅にテントを張る許可を頂けた。ありがとうございます!

設営してパンや惣菜など夕食を済ませ、温泉に入る。ぬるいけど気持ちいいし外は涼しい。ソフトバンクケータイは圏外で、ツイッターやブログの読み書きどころか今日のニュースすら知ることができない。それが旅の非日常性を高めてくれる。
明日も頑張ろう。

8/14() ザコにHP大幅に奪われ
のよさの里より鳥甲山

寝袋なしはきつかったか。寒さで目を覚ます度に着込みつつ、やがて朝を迎えた。正面に鳥甲山(とりかぶとやま)が明るく輝いている。今日は苗場山に登るという副案もあったが、連泊に耐えうる食料を調達していない。パンを食って早々に撤収し、サイクリングの旅はさらに南の最深部へ向かう。秋山郷は栄村にあっても大震災の影響は軽微だが、栃川以南の路面には若干の歪みが見られた。

切明温泉

群馬県の野反湖に続く計画だった国道405号はおそらく永遠に未開通。終点から谷を降りて秋山郷のハイライト、川原に湯が湧く切明温泉に到着する。利用者は勝手にスコップを借りて湯舟を作り、川の水と混ぜながら入る仕組みだ。面倒なので昨日掘られた所にそのまま入ったけれど。北海道のカムイワッカや秋田の川原毛ほど豪快じゃないが、ここも日本指折りの野趣満点さがある。まだ早朝で他の客はいない。ただし出る時ハチに追いかけられた。

いよいよ今回のツーリングの大ボス、雑魚川林道に入る。明るく開けた1.5車線の舗装路を登ってゆく。月並みな表現だけど、大自然の中に小さな僕がいるって感じだ。最高の天気で最高の事をしている。何の不満足があろうか。

志賀高原

途中にある大滝を観るため、チャリを置いて遊歩道を降りる。ここは落差も幅もなかなか立派だった。奥志賀林道に合流すれば交通量が増えるので、もう熊鈴を鳴らす必要なないだろう。リゾート地帯でケータイの電波を掴み、やっと昨日分のブログを送信できる。プリンスホテルが並ぶ焼額山スキー場を経由し、高天ヶ原が志賀高原の鞍部。標高は1670mほどか。渋峠からの国道292号と合流すると、交通量はさらに激増する。これを自転車で登るのは大変でしょ…。モンハンに湧く渋湯田中はスルーして高速道路みたいなバイパスを中野市街まで一気に下る。やっぱ真夏の低地は暑いわ。しかも後輪にスローパンクの呪いがかかる。

お盆の善光寺

昼食にいなり寿司を買い食いして2リットルアクエリアスを呷り、国道403号を南下。小布施もスルーして須坂から村山橋を渡り長野市へ。昨日寄りそびれた善光寺をお参りし、暑さにやられかけてるし蕎麦クレープを食って一休み。さあ、北信濃でもう一つ訪ねたかった奥裾花に向けて国道406号を西へ登ろう。

ここでゲリラ豪雨に遭うが、裾花ダム付近の洞門地帯を走行中なのでわりと安泰。しばしの雨宿りも余儀なくする。今日は明るいうちにゴールできるのかな…。気温は下がったが、もうずっと登り坂でへばりつつ旧鬼無里村の中心街に着く。小さなスーパー、開いてて良かった。店番の小学生が正確にレジを打つ、そんな所だ。この辺を最後にまたケータイは圏外となる。

奥裾花渓谷

国道から北に別れラスト14km。やはりだんだんキツくなるなぁ。斜めの岩と垂直の岩が川に落ち込む、ちょっと日本離れした峡谷を抜けてゆく。18時半、何とか暗くなる直前に奥裾花キャンプ場に到着。ブヨの多さにてこずりながらチューブを交換し、テントの中に逃げ込む。夕食はおにぎりと惣菜トンカツ。走行距離は昨日の170kmより少ない130km程だがもうクタクタだ。もう一日頑張れるのか?

8/15(月) 奥裾花を走行した話 略してスソバナ

テントにフライシートを被せたおかげか、単に疲れているのか、また夜中に冷え込んだけど前日より寝付きは良かった。

奥裾花自然園

ここからさらに奥地へは自転車も入れないので、ジョギングで体を温めながら進む。場所的に戸隠連山の裏側にあたり、乙妻山、高妻山が朝日に映える。奥裾花自然園に入り、園路は外周を走行。手前側は池が多く観光客用に熊避けのフライパンが設置されているが、訪れる人の少なそうな奥の方にはない。熊鈴を持参しといて良かった。ブナの大木などを眺め、誰にも会わぬままキャンプ場前の水場に戻る。ジョグ距離は8kmほどかな。また水芭蕉の季節にゆっくり歩きたい。

朝食後さっさとずらかって、国道406号に戻る。遷都伝説による西京(にしきょう)、東京(ひがしきょう)という地名があるが、東京のど真ん中でもケータイは圏外だ。ここから西へ、国道とは思えない狭い田舎道をゆるゆると登って行く。残念ながら鬼無里の湯は営業時間前。

白沢峠より白馬連峰

「トンネルを抜けると、そこは白馬連峰であった」と云われる景色を初めて目の当たりにする白沢峠。稜線こそ雲に隠れど、やはり北アルプスのインパクトはさすがだと思う。ここから県道33号に繋いで越える青具峠は、旧道でも大して登らない。かつて誰でも観られた白糸の滝は、今は私有地の門に閉ざされている。ぽかぽかランド美麻で温泉に入りヒゲを剃って、早めに昼食も済ませてしまおう。奮発してぽかぽか御膳ご飯大盛り1600円。ずっとおにぎりやパンだったから、やっとまともな物が食える。蕎麦、天ぷら、刺身、桃寒天などなど。これだけ食っときゃ家まで持つだろう。

中山高原のおひさまロケ地

相変わらずスローパンクが続くので、明るい所でタイヤを良く調べたら小さな針金が刺さっていた。もっと早く気づいていれば、というよりこの古タイヤをもっと早く交換していれば、と思いつつ最後の修理。ここから暑さに苦しみつつ、県道31号で大町市の中山高原に登る。スキー場は閉鎖されてしまったが、朝ドラ「おひさま」のロケ地として一躍脚光を浴びている。鹿の食害によって菜の花は全滅したらしいが、いまは蕎麦の緑がしっかり根付き、期待以上に見応えがあった。

堀金のおひさまロケ地

とうとう松本盆地に入り、まっすぐ飛ばせばあと一時間余りで…、と思うが蛇足として安曇野の西縁にある「山麓線」を走る。おひさまのロケ地をあと二つ観ておきたい。ひとつは中房川堤防、だがこれはよく分からなかった。今日も少し雨に降られつつ、もうひとつは須砂渡入口近くのロケセット。ここは中山高原同様に巡礼客が多く、案内人もいたりして分かりやすかった。道祖神と小さな水車小屋があり「ここはあのシーンで使われてたね」などと会話が聞こえてくる。

帰路・フィナーレはあづみ野自転車道で松本まで。本日100kmほどの走行で、16時半に自宅到着。長野県北部の一部を走るだけでも壮大だった二泊三日のサイクリングは無事完了した。旅の価値って掛けたお金やお土産の有無じゃなくて、日数と濃さの積だと思うんだ。帰るなり酷い筋肉痛に襲われるが、もうあとはいろいろ乾かすのみ。これだけ楽しめたんだから、輪行不可しばりがあって良かったかな。でもいずれ直さなくては。

松本〜秋山郷〜奥裾花〜松本マップ

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