IBIGAWA MARATHON 「日本のボストンマラソン」 月間ランナーズ2006全国ランニング100撰5位
養老鉄道

20th ANNIVERSARY

2007いびがわマラソン 参戦記

2007年11月11日(日) 10:30AM START!

日記

11月20日()大会前日
奈良井駅

微熱と軽い頭痛が続く体調だが、私には登らねばならない山がある。JR鈍行切符を買って、二両編成の中央西線は松本から木曽谷へ。車窓いっぱい、霧に見え隠れする黄葉が見事で鳥肌が立つ。乗客みんなで写真を撮ってるよ。
名古屋市営地下鉄に乗り換え、いりなか駅で下車。坂道を歩いて登って行く。もう登山は始まっているのだ。ああ、もう胃が緊張でシュクシュクしている。やがて今回の旅のメインイベントたる“喫茶マウンテン”が目前に聳える! 重食喫茶の異名も持つが、つくばのクラレットとどっちが重いのか? いざ聖域へ足を踏み入れ、ソフトコーヒーと代表メニュー「甘口抹茶小倉スパ」をオーダー。本当はバナナスパを食べたい気分だが、明日のエイドでバナナが食べられなくなっちゃうと困る。さて意外に早く出てきたが、恐れていたほどの超山盛りではない。ネットの評判から軽々しく頼んで残す人が多かったのか、量を若干減らしているのかも知れない。しかしあまりの甘さに三口で遭難する人もいるというから油断は禁物だ。急ぎ写真を撮って、熱々の麺に乗せられた大量の生クリームが溶けないうちにアタック開始。確かに激甘で味わう余裕は無いし、油断もなにも油っこい。喰えども喰えども減る気がしない青虫、もといスパゲティー。

甘口抹茶小倉スパ

それでもガツガツと掻っ込み、あっさり単独登頂に成功! 口の中はあっさりじゃないけど。濃厚なソフトコーヒーとお茶受けで悠々と口直しをする。即効性な糖分を大量摂取したことで体中がカーッと熱くなっている。これなら体調不良などぶっ飛びそうだ。明日に備えたカーボローディングとしても丁度良かったかな。下山は多少ふらふらしつつ、一駅余計に八事駅まで歩いておく。
金山駅でJRに乗り換え。駅前モール「明日なる!」のロゴがアニメっぽい気がする。新快速に乗って尾張一宮に移動し、ビジネスホテル“東横イン”にチェックイン。実は愛知県内に宿泊するのは生まれて初めてで、“経県値”のサイトで日本地図を赤く染め尽くす野望は、残すところ徳島県と佐賀県のみとなる。なかなか用はないけれど…。
夜8時ともなるとアーケード街はみんな閉まっちゃってる。あした葉という讃岐うどん屋がまだ開いているのを見つけ、ここで味噌カツ丼定食をオーダー。今日はこれでもかってくらいのカーボローディングになった。我ながら良く喰うなあ、胃が心配なので薬を飲んでおこう。それにしても遠方のマラソン大会出場って、往復の交通費とホテル代と食費と、参加料まで入れるとかなりお金がかかるのな。

11月11日()大会当日
レース前

緊張と慣れぬベッドのせいで目覚めが早いが、まぁ丁度良い。頭痛を感じない起床は何日ぶりだろう。どうやらピーキングは間に合った。ホテルの朝食サービスで有り難く小さなおにぎりを4つ食っておく。ただしレース当日朝のコーヒーは止めておこう。雨が降っているのを気にしつつ、東海道本線で岐阜県に入り大垣で乗り換え。お楽しみの養老鉄道は近鉄カラーの車両が入線し、ランナーが大勢乗り込んだ。首尾よく席をゲットするが混んでいて景色は見えず、コンビニおにぎり2個とオレンジジュースを採っているうちに揖斐駅に到着する。これだけ喰っておけばカーボチャージは完璧だろう。シャトルバスで会場に移動すると、そこはもう人でごった返している。フル四千人余、ハーフ三千四百人余という大規模な「いびがわマラソン」にやって来たのだ。揖斐川町を挙げての一大イベントで、ゲストサポーターも豪華。西田ひかるの美人さたるや長澤まさみに見えたほどだ。
雨はほぼ止み、長野県とは違って暖かいので早々とレースの格好で充分。ビニール袋で作っておいた簡易合羽も不要になった。一回目のトイレと荷物預けを済ませてウォーミングアップを行う。あまり速く走ると脚が硬くなるが、4'30"/km程度のレースペースなら大丈夫かな。二度目のトイレを済ませ、スタート地点はまだガラガラだけど、サブスリー挑戦の本番である来春の“長野”をシミュレートする意味で30分前には並んでおく。目標タイム順に並ぶ仕組みで、少々サバを読んで『2:30〜3:00』の真ん中位に陣取る。あわ良くば3時間を切る、なんて事は月250kmぽっちの練習状況からしてあり得ないのだが、どうせみんなサバ読むのが常識だ。良識ではないが…。

10時30分、今年の集大成と来年への重要なステップアップたるいびがわマラソンの号砲が鳴る! クレーン上の有森裕子と西田ひかるに両手を振って笑顔のスタートだ。ネットタイムの計測は無いが、スタート地点を跨ぐまで十数秒だったのでグロスとの差は気にする程ではないだろう。それよりなかなか周りのペースが上がんねぇぞ! やっぱみんなサバ読み過ぎ。過ぎたるは及ばざるが如し、もう少し自重して欲しい。何とかかわしつつプッシュプッシュ。やがて阪神タイガースのはっぴを着た人(“乗鞍”にいる方とは別人)が豪快に抜いて行くが、自分は呼吸の調子をみながら4'30"/kmよりやや速いくらいのペースを作る。
さて揖斐川の峡谷を往復する標高差127mのこのコースは、アップダウンの数が多くて積算すると300mを越えるのだとか。ターゲットタイムを3時間5分〜10分に設定してはいるけどいったいどうなるのか、タフな闘いになりそうである。だが、本日の天気予報によれば「北西の風、昼から強風になる」という。そのため往路の登りは向い風となるものの、やや急いで折り返し地点に向かう作戦を取った方が良いだろう。風が強くなる前にだ。時折ぱらぱらと雨が残る中、気持ちペースを上げる。5km地点で22分ジャスト、良い感じだ。
やがて揖斐峡のアップ区間に入る。呼吸を楽にする位のスピードで、風避けに使う人を取り替えながら前へ前へと順位を上げて行く。なかなか集団の中で居場所が見つからない。みんな序盤だけ飛ばし過ぎちゃってたのか。
メッセージ看板がたくさんあって面白い。曰く『揖斐峡の 景色にみとれ 関門閉鎖!?』…は身も蓋もないが、たいていは励ましてくれる。3ヶ所目のエイドで初めて給水を受ける。アミノバリュー。10km地点で43分36秒。予定より速くなってきたが、これでイケそうだから怖い。そんな中、やっと良い風避けさんを見付ける。ゼッケン2255のオッサン。登りは力強く、下りは控えめなペースなのが有り難い。かなりの実力者のようで付いて行くのはちょっとキツいのだけど、ソロで走るよりは楽な筈だ。折り返しまでは何とか頑張ってみよう。
時折は景色も楽しむ。紅葉にはまだ早い時期だが、なかなか風光明媚だ。青空も垣間見えてきた。あまり後ろに付いてばかりじゃ申し訳ないので、旧道のトンネル内だけ前に出てみる。でもやっぱダメ、トンネルを抜けたら下がる。15km地点で1時間4分53秒。こんな奥地でも見物人がいて嬉しい。国道の椿井野トンネルでもまた前に出てみるが、向い風が相当にキツくて再び撃沈。
橋を渡り、折り返してきたトップ集団とすれ違うと往路はあと一踏ん張り。自分らは一人追い付いてきて三人集団となり、実績不足の自分はいつ置いて行かれるのかと不安でいっぱい。20km地点を1時間26分8秒で通過後、とうとう折り返して直後に中間地点がある。何とタイムは1:30'55"。もしかして下り次第ではサブスリー!? ハハハ、まさかな。でも夢を見事に繋いでいる。実力に見合わぬハイペースだが、作戦だったし…。

いびがわマラソンマップ

1つ目のパワージェルを口にし、給水。いよいよ風が強いフォローとなって背中を押す。風避けさんは用済みとなったので、温存しておいた力を解放して千切ってしまう。ひどいや俺。25km地点を1時間46分57秒。あれ、少し脚が硬くなってきたかな。それでも快調にライバルを千切り順位も上げて行く。阪神ハッピも抜き返す。しかし苦手な急下り区間になると、脚の負担に耐えられず順位を下げる場面も。登り坂なら力が余ってスイスイ抜けるんだけど。
俺あくまでファンランナーだし、エイドでシュークリームだって掴んじゃう。しかし間違ってアンパンを掴んでいた。まぁいいか、貴重なタンパク補給だ。30km地点を2時間7分42秒。実にこの5km区間を4'09"/kmというハイスピードで通過した。まだ脚は生きている…!? 本当にこのまま行けるんじゃないんだろうか。自分はサブスリーを狙いうるシリアスランナーなのだという自覚が、全身の実感を持って芽生える!
「シリアスランナー? ただ走ることにそんなにマジんなっちゃってどーすんの。シリアスだけにお尻ペーンペーン!」と言いたいぐらい内心バカにしてこれまで生きてきたが、ついに自分が両足を突っ込むことになるのか。世の中でほんの一握りのフルマラソンランナーのうち、さらにほんの一握りのサブスリーランナーになれるものなら、もっと強気な人生を歩んでも、いや突っ走ってもいいだろう。「俺、サブスリー達成したら今の仕事辞めるんだ…」。ただ予定しているのは来春長野での達成で、今日じゃ意外過ぎる。職場ではようやく昇格が決まったばかりだしまだ辞めるつもりはないんだけど…。

沿道に順位を数えている女の子がいて「107位、108位、109位!」…おれ109位か。この時点で深くは考えないけど。ふと揖斐峡の景色を見ると「またここを走りたいな〜」という気分になる。まさに山紫水明、素晴らしいコースだった。下り坂の衝撃に脚が悲鳴を上げ始め、ペースが弱気になっていく。ある程度クッション性のあるアディゼロLT2はベストな選択だったと思うが。復路は日陰が多くちょっと寒いが、腹は冷えずに持ちこたえているし、2つ目のパワージェルを補給。梅味うめぇ! 35km地点を2時間29分20秒。まだ可能性は残している。ギリギリだ。いけるか? 目前で残念な思いをするのか? 全ては今の、今からの走りにかかる。じわじわとペースは落ちてきて、面白いように4'15"/kmを切るなんてことはなくなり、辛うじて4'30"/kmを切るくらい。もう、早く下り坂なんか終わってくれよ。下りの衝撃に耐える訓練が足りなかったか…って普通やらねーよ、トレイルでもなきゃあ。
37km地点、あと5km余りでようやく平野部に出る。堤防道路。ここでハーフマラソンの部の遅い連中に引っかかる。今年から制限時間を緩くした結果がこれだよ。「誰にでも完走の喜びを」という趣旨は結構だが、友達同士で馴れ合いながら並んで走るのは勘弁してくれ。まぁでも追い風も凄まじい。38km地点ともなるとだいぶゴールタイムの計算が出来るようになってきた。これはかなり急ぎ直さないといけないが、奇跡のペースアップはあるのか。最後の力を振り絞ろうとすると、両腕が痺れて身の危険を知らせてくる。それでも走るんだ。39km地点、くぅぅやばいかも。

ゴール地点

40km地点を2時間51分26秒。残り4'00"/kmペースが要る。最後まで諦めたくない! しかしとうとうラストワンマイルで力が尽きた。41km地点で2:55'55"、どうやら無理と確認…「これでも充分速いじゃないか」。無理にペースを維持してきたけど精神的にも支え切れなくなり、ガクンとペースダウン。沿道の応援が凄いんだけど朦朧としてもう耳に入らず、前島橋の前後で数人に抜かれる。ああこのままじゃ情けない。ラストスパートの火を灯して抜き返し、左折してゴールゲートへなだれ込む。3:01'も過ぎちゃったか。ゴール時のグリコポーズはお預けだが、ベストを10分以上更新するというあまりに予想外な記録と、サブスリーを目指して闘えた充実感で、静かに何度もガッツポーズ。ほんと肉薄と言えるタイム。あと1分余は実力だからしょうがない。月250kmがやっとのランナーとしては出来杉。狡猾な作戦勝ち、もっと悪く言えば追い風参考だが。

ブース出店の牛串

アミノバリューPETとふかふか完走タオルをもらい、計測チップを外す。クールダウンなんて屈伸少々がやっとで、しっかり出来ないや。でも変なマメとか出来てないし、膝も大丈夫そう。マラソン趣味を三年もやってりゃ脚が大分出来てきているのか。
簡易記録証を貰うと、タイムは3時間1分15秒。順位は男子85位と、これだけ大規模な大会で二桁というのも予想外だ。順位のパーセンテージで言えば、長野に当てはめると余裕でサブスリーじゃないか。とにかくその挑戦権は充分に得たと言えるだろう。
荷物を受け取って着替えを済ませ、参加賞も貰う。Tシャツを選択したが、あまり着る機会は無いかな。ナンバー抽選は外れていた。近頃はくじ運がないなー。ブース出店をうろつくと牛串があまりに旨そうなので、アメリカ産牛肉だったらヤバいという懐疑が吹っ飛び並んで購入、タンパクを補充する。
写真を撮り回った後、会場に別れを告げシャトルバスに乗り込む。参加賞に入っていたエゴマせんべいをバリバリ喰いつつ車窓に目をやると、コースのラスト前島橋にまだたくさんのランナーが走っているのが見える。さようなら揖斐川。いろいろ暖かみがあって、なるほど人気大会だと納得したよ。

前島橋

揖斐駅に入線した赤黒い列車に乗り大垣駅へ。そこから歩いて数分の銭湯“湯の花温泉”で汗を流す。ランナーはまだ誰も来ておらず、空いてる穴場だった。ようやく歩くのが少し楽になりつつ、JRで名古屋に移動。ホームの駅きしめんを喰って、早目に予約しておいた特急しなの23号の窓側席でゆったりと長野方面へ。
外は暗くなって、車窓に点々と流れる灯りを見ていると、まるで銀河を旅しているかのような気分になる。実際、多くのSF作家が夜汽車から見る景色に触発されたに違いない。願わくば室内照明を落とせる個室寝台から楽しみたいものである。20時過ぎに松本到着。歩いて帰宅する。

完走認定証

社会科で習う“木曽三川”のうち、木曽川と長良川はともかく揖斐川って今ひとつピンと来ないところなのだが、果たしてこんなところだった。土地勘の無い場所でのフルマラソン挑戦は初めてだったが、大きな充実感とちょっぴり悔しさを残して無事成功した。事前の不安をよそに、体調からコースコンディションから作戦から、何もかもがハマり過ぎてくれたおかげだ。私はやっと、闘って敗れたのだ。でもこんな記録は通過点に過ぎぬ!ってほど次の長野では好記録を出せるように、冬の間もモチベーションを持続させて練習したい。虚しい事なんかじゃない。自転車ヒルクライムもマラソンも当たり前のように「自己記録大幅更新」なんて文字がブログに躍った一年。この歳にして成長しているという充実感は本物なのだから。
まぁとりあえず明日は有給を貰ってあるし、ゆっくり休もう。喫茶マウンテンにもいずれまた行きたいな。

結果

公式リザルト
グロスタイム(公式記録) 3時間1分15秒 (最速者2:30:57, 最終完走者4:59:56)
ネットタイム(参考実質記録) 計測なし ※ただしグロスとの差は十数秒程度
フルマラソン男子順位 85位 (/完走2830名/申込3675名中)
年代別順位(男子30歳代) 31位 (/完走654名中)
総合順位(女性含む) 86位 (/完走3113名/申込4079名中)

リンク

オールスポーツによる写真
いびがわマラソン公式ページ
大会要項や各種データ、写真など。
RUNNET
各マラソン大会のエントリーや速報など。
AllSports.jp
スポーツ写真サイト。(右のサンプル写真)

return むらよしギムナシオンに戻る