近年ぼちぼち参加しているロゲイニング。走力、地図の読図力、そしてチーム戦ならチームワークも含めた総合力を競うマイナースポーツである。今夏、その第一回日本選手権が松本で行われる。勝てば初代日本チャンピオン…。24時間に及ぶ体力精神力の限界への挑戦、そして猛暑も予想される。
その前哨戦として、春の松本エリアロゲイニングにソロの部で参戦することにした。今年の舞台は、松本平と善光寺平の狭間にある里山地帯の生坂村。コンビニなどあろうはずもない。競技時間は3時間と短いが坂だらけで、ロードマラソン志向の私には厳しい地形かも。
エントリーリストを見ると、男子ソロの部には去年の塩尻ステージで私より上の2位だった松井選手、霧ヶ峰ロゲでソロ最高点の遠山選手、同3位だが優勝経験も多い別府選手の名前が目に付く。さらに日本選手権でチームメイトとなる滝沢選手(以下ガクさん)は選手権の参加資格を得るために今回初ロゲとなるが、抜群の長距離走力が脅威となる最大のライバルだ。
他に伏兵がいるかも知れないし、この強力すぎる面子の中で上位に割って入ることは可能なのか。でもチャンピオンの夢に向かって、まずローカルな所で勝っておきたい。そのため、地図読みの練習だけはしっかりやっておく。
競技はフォトロゲイニング形式。テレイン(競技エリア)内に数十箇所あるコントロール地点を通過することが得点となり、その回り方は自由だが制限時間内に帰着すること。配布される位置説明と同じ構図の写真をデジカメに収めることで通過証明となる。どんなに走力がある人でも全ては回り切れないように配置されているので、取捨選択の決断力も重要だ。
前夜はお風呂に入って暖かくして寝る!・・・はずが、何もできず床寝していた事が判明した朝。しかも現地入りに使うチャリがパンクしていて、慌てて修理する羽目になる。シャワーを浴びて支度完了、国道19号を北へかっ飛ばす。1時間余で生坂村B&G海洋センターに到着するも、サプリメントやエネルギーゼリーを持ってくるの忘れていた。つまり、なんもかんもいい加減な土曜の午前である。
それでも花粉症以外は心身ともに絶好調で、勝ちを狙う気まんまん。ガクさんやスタッフさんと話しているうちに11時30分。村長さんや特産ぶどうをアピールするゆるキャラのカラットリンちゃんも交えて開会式が始まる。参加者は160余名。競技説明によれば、犀川を渡渉しちゃいけないって(笑)。
11時45分には二万五千分の一地図とコントロール位置説明が配布され、すぐに扱いやすいように自己流の畳み方をする。再度拡げ、作戦タイム。テレインには犀川が「c」の字に流れ、その外輪をなす「C」の字の尾根が西側に連なる。その稜線が得点稼ぎの軸になるし、南側から時計回りに走るというのが予め想定していた勝ちルートだ。でも南エリア、ちょっとスカスカかなぁ。全員が建物の外に出て、5分前に記念撮影。
正午に「いくさか村おやきロゲイニング」3時間の競技が始まり、天気は絶好、参加者は三々五々に散っていく(チームの場合、メンバーは同一行程となり30m以上離れてはならない)。スタート直前に私は急遽、作戦を逆回りに変更していた。まず「東の丘」を攻めて、北からの反時計回りとする。他の強豪と同じ行動を取っては、走力に劣る自分が勝てる訳がない、そう思っての奇策だ。まずスタートダッシュをかますが、のっけからショートカット路を探すのに失敗して足が止まる。抜かれまくってるが大丈夫か?
最初にオリエンテーリング用の特設フラッグ[35点]、次に小学校グラウンドの竪穴式住居[45点]、登るにつれて人はまばらになりつつ道祖神[42点]。鹿よけ柵の開閉は手慣れたもので林道に入り、京ヶ倉登山口[103点]。東側に絶壁をなす京ヶ倉・大城は走るには危険なためテレインに含まれておらず、ここが最東端コントロールとなる。少し北へトレイルを登り展望台[62点]からの眺望は無い。
下山ルートが急で飛ばせないのが痛い。国道まで下り、北の昭津橋を左岸に渡ると第2ステージ「稜線北部」という感じ。ここの鬼畜なアップダウンをどう繋ぐか。まず昭和電工発電所送水管[34点]から、急なトレイルを登り森林公園看板[64点]。徒歩の参加者達を抜きつつ登って登って、最北端コントロール、高津屋山の頂にある天空の土俵[104点]はスルーも考えたが、単純にどんな所か見ておきたかった。ロゲイニングは、旅だ。
南へトレイルを下って、森林公園320m看板[32点]。さらに下ってグリーンパークブリッジ[87点]、これは深い谷のダウンアップを回避できるのでおいしい。位置説明もヒントになることがある。ここで70分経過し、おにぎりと小PETポカリ半分を補給。少し下に寄り道すれば36点があるけどスルーして、西の稜線登りに入る。道はコンクリート舗装。予習に使った五万分の一地形図によれば、草尾山という集落があるはず。確かに家は2軒あるが、片方は窓割れてね? この山域はマニア垂涎な廃村の宝庫として、一部で有名なのだ。
後悔したくなるほど登り登り、ひっそりと佇む二十三夜塔[101点]を通過。神社の境内にある善光寺地震の鎮め石[74点]も写真に収める。境内に入る際は一応本殿に手を合わせておく。ああ、ここまで良く登った。南への下りはやや急な舗装路だが、おろしたてのトレランシューズ「サロモン センスプロ2」は抜群の安定感があり、心置きなくぶっ飛ばせる。行き交う参加者は多く、なるべく「こんにちはー」と声を掛けつつ地蔵堂[60点]を通過。
稜線を南北に分断する袖沢川を渡ると第3ステージ「稜線南部」。大杉[43点]からまーた登りに入り、地図を読みつつ終盤のまとめ方を思案しているうち、ちょっと分岐を通り過ぎてしまった。抜いたはずの赤シャツ三人組チームに袖山配水池[83点]まで先行されて恥ずかしいが、こういう細かい所はチームが有利だよなー。トレイルで抜き返しぐんぐん高度を上げ、道祖神[75点]から舗装路。
この先あまり登らないので、思い切って最西端の登波離橋[77点]に寄る。「とはりばし」という名前だけは知っていたが、こんな所だったんだ。なおこの辺は池田町になる。少し南の102点はダウンアップがあるのでスルーして、東へトレイルを駆け下り生坂村に戻る。スカイスポーツパーク[151点]は最高得点。パラグライダー場で景色も最高! どこかの風景に似ていると思ったら、小諸の懐古園から見下ろす千曲川だ。
ポカリを飲み干し、残り30分。地図を読む限り、南回りしても余裕で帰着可能なはず。余る時間でフィニッシュ近辺のコントロールをいくつ回収出来るかな? 花粉症で鼻水がとめどないが、走りには影響ないだろう。北に戸隠連峰、南に松本平も望むこのあたりは駆け抜けるのが勿体無い。今度ゆっくり訪れよう。白日念仏殿[76点]を取り、舗装路をぶっ飛ばして犀川まで下りる。しかしあまり経験のないアップダウンが、いよいよ脚に来てしまった。平地のペースが怪しい。
最南端の日置神社[82点]から北へ、またちょっとした稜線のトレイルに入る。赤シャツチームに出くわす、ってことはフィニッシュに間に合うはずで一安心。しかし日岐城跡[100点]の空堀地形が地図では読み取れないエグさで最後のスタミナを奪う。もう腕が痺れてきて、ハンガーノックを予感させる。水鳥公園[41点]へ下り、生坂ダム堤頂歩道で犀川右岸に戻る。
せめてそう遠回りでもない44点は取りたかったが、リスクが大きい。自由の効かなくなった脚でもがくように急ぎ、フィニッシュ一目散がやっとだった。タイム2:58'45"、ぎりぎり遅刻しなかっただけ御の字だろう。これだけ際どいのは初めてだ。走行28.4km、積算標高差1,170mというデータは、去年3位だった塩尻ロゲの時よりかなりパワーアップしている。
少し前にガクさんも無事フィニッシュしていて「1500点は行ったんですけどね」と言う。「(マジ…!?)」慌てて自分も集計に入る。どうにか僅差で上回ったが、未知数だったナビゲーション能力も不足ないようで頼もしい。もう一回戦ったらこっちが負けるだろう。
それにしても、自分が回ったコントロール数は全30のうち22。想定していた優勝ラインに届いていない。今持てる知力走力を出し切った満足感と結果への不安が入り混じるなか、サービスの豆菓子、ジュース、灰焼きおやき、漬物、おにぎり、暖かい豚汁を頂く。灰焼きおやきが旨すぎる。
やがて表彰式。混合チームの部では、ツイッターフォロー先様のしのび〜ずが20チーム中五位と健闘した模様。男子チームは先程の赤シャツが遅刻ペナルティを受けながらも三位とのこと。ピラータ常連の渡辺さんチームも楽しめた様子。
最後の発表になる男子ソロは、やはり他カテゴリーとは比べ物にならない高得点揃いで、まず三位に呼ばれたのが中村良大、俺。思わず「負けたー」と軽く頭を抱えるが、すぐに笑顔で表彰に向かう。副賞がデカイ! つけもの、巨峰ジュース、菓子類が入った箱。参加料の半分は元取れるよな。これを持ち帰る為に大きめのリュックを背負って来たんだ。
二位は遠山選手、一位は別府選手で点差も開けられてしまった。共に百戦錬磨のウルトラトレイルランナーで、私だったら有り得ない南エリアの強引な攻めから入っていたようだ。四位ガクさん、五位松井選手と予想通りのトップファイブの中で、何とか3位以内入賞を確保するのがやっとだった。敗因は走力不足と体脂肪率17%のぷよぷよボディってところ。殆ど無駄のないルート取りの美しさでは劣っていないと自負したいところだが…ちょっと汚くなっても高得点を狙うルートの追求をすべきだったかも。これでロゲは3戦連続三位。これからも万年三位なのか。それとも日本選手権では三位&四位が力を合わせてトップを伺う、なんてコンビニ業界のファミマが目論むように上手く行くかしら。
解散。灰焼きおやきの味が忘れられず、向かいのかあさん家に寄るが売り切れで、おからドーナツだけ買い食い。川を渡って勝家おやき店を伺うも、もう閉まっている。仕方ない、また来よう。やまなみ荘ラジウム岩盤浴場が参加者無料で、ピークも過ぎた頃だしせっかくだからアイシングと入浴をしていく。もう夕暮れ、チャリのライトを点けて国道の裏道、そして大口沢経由で松本へ帰る。河昌の山賊焼き定食を頂き、さらにスーパーでアイスやパンを買って暴食。まるで反省していない…。
とりあえず次戦は来月の長野マラソン。頭を使わなくて良いから楽、ってことはない。しっかり脚を作ってサブスリー奪還、さらにその上を目指したい。
総合点 | 1571/2000 | (最多点1689, 最少点-2390) |
コントロール数 | 22/30 | (最多24, 最少4) |
男子ソロの部 順位 | 3位 | (/出場28名/申込30名中) |
総合順位 (各種チーム,女子含) |
3位 | (/出場95組/申込97組中) (人数は出場161名/申込163名) |