千頭駅のトーマス

自転車キャンプツーリング記

秋葉神社〜川根茶〜富士南麓

2015年5月2〜4日

日記

5/2() AKH1600

松本から始発ベースの列車輪行は、南へ飯田線をゆく。車窓には新緑に雪形の中央アルプスが映える。飯田で特急(ワイドビュー)伊那路に乗り継ぐと、GWでも車内ガラガラ。さらに見逃せない秘境駅の数々に、眠たがってる場合じゃないまま静岡県浜松市の水窪に到着した。旅の計画は去年のボツ案にいろいろ追加したもの。全部は無理っぽいが、なるべく頑張りたい。

県道389号と天竜スーパー林道が交差する山住峠

灼けるような陽射しのもと自転車を組み立て、昼の買い食いをしたらサイクリングスタート。塩分補給の必携アイテム梅チューブも買っておいたぞ。県道389号を東に標高差850mアップ、山桜の吹雪を浴びつつ山住峠に登れば、背後に恵那山が霞む。峠手前に水場あって助かった。家康ゆかりの山住神社で一休み。

「天竜スーパー林道なんて体力がある人が走るところで、自分には関係ない」。そう思って20年、ようやく登って来られた。ただし林道の北エリアが通行止なので、ここから南への行程となる。舗装はキレイだが落石が多く、時々ゴツゴツと崩れる音もするから、降ってくる落石にも注意だ。フフフ、怖いか?

天竜スーパー林道のグライダー発射場

新緑いっぱい、左右にたまに展望があるアップダウンが続く。グライダー発射台からは、南に向かって標高を下げる山々と、それを縫う河川の地形がよくわかる。もう少し進むと、赤石山脈南端の秋葉山に座す、秋葉山本宮秋葉神社の上社がここにある。火防(ひぶせ)の神様で、日本人なら一度は訪れたい神社の一つだ。東京にある秋葉原の地名由来にもなっている。長野県茅野から高遠、遠山郷を経て浜松に至る国道152号を秋葉街道と呼んで何度かサイクリングしたが、神社はずっとスルーだったんだよね。ちなみに今まで「あきばかいどう」と濁って読んでいたが、正しくは「あきはかいどう」らしい。

秋葉神社上社から遠州灘

ジュビロ磐田推しな境内から、南の展望が素晴らしい。天竜川河口や浜松の謎タワーなどを見おろす。そうこうしてるうちに16時を過ぎ、売店が閉まってしまった。しまった、もみじマークのかっこいい御守りが買えないじゃないか。急ぎ山を降り、東雲名の小さな店で食料を買い出し。開いててよかった。天竜川に架かる雲名橋の大燈籠や吊橋の秋葉橋を見て、気田川(けたがわ)沿いに遡る細道でサルを蹴散らし、ダメ元で下社に駆け込む。売店は閉まっているが残業(?)してる人が居て、頼んだら納めさせてくれた。

春野地区は高校もある小さな町だが、食料品店を見掛けない。近くの明野(あすの)キャンプ場でテントを設営する。他はみなオートキャンパーだけど、わりと静か。自炊用具は持参せず、パンやおにぎりの買い食いで繋ぐ旅である。初日走行69km、1690mUP。

5/3(日・憲法記念日) 川根茶ハドソン
天空の茶産地 川根

「日本一きれいな川」を謳う気田川に架かる、自転車がやっと一台通れるような吊橋「一草橋」を渡って、362号線を東へ進む旅が始まる。支流の杉川沿い、一昨年の大崩落現場を過ぎ、国道は酷道の様相に。久保尾辻という峠を越えると「天空の茶産地」が視界に広がる。初摘みの季節で風情たっぷり。今日は繋ぎの日であるつもりが、いきなり絶景を得た。きっと美味しいお茶なんだろうなぁ。

北上もとい大井っち川に沿って北上し、道の駅中川根は影絵コーナーが素敵。ここで土産のお茶を買って行こう。以前サイクリング合宿のゴールだった大井川鐵道の千頭駅は、トーマスに人だかりが出来ている。自分も入場券を利用するなどゆっくり観光し、川根茶ソフトクリームを食べてリスタート。

杉尾はなのき展望休憩所 恋人峠

ここからの坂がキツい。概ね二車線化されてるものの、12%坂が延々と続く。最高所を過ぎた展望所に恋人峠と書かれた鐘がある。鳴らしておくか…。下りはさらに狭く急な坂で、手が疲れるばっかりだ。茶畑の景色は相変わらず素晴らしい。静岡県って案外山深いんだな。

ようやく地形がひらけてきて、安倍川を渡る橋から富士山が見える。静岡市内の銭湯に…あれ、調べておいた場所のは潰れたようだ。確かもう一軒あったはず、とスマホで調べる。私にとって旅とは原始回帰の機会でもあるから、最新テクノロジーのスマホに頼るなんて負けた気分。ともかく体を洗ってスッキリし、「静岡の街には〜新幹線が止まらない〜♪」と不謹慎な替え歌(元はURAWAがとまらない)を歌いながら東海道を東へ急ぐ。時間が押してるけど、どこでゆっくりし過ぎたかな? 県道67号で清水、そこから国道1号に乗る。意外に海が見えずもどかしい。

由比の桜えび定食

今回の旅で初めて自転車キャンパーを見掛けたが、すれ違うのみ。展望の名所、薩埵峠(さったとうげ)は残念ながらスルー。せっかく海に来たんだから、海のものを食おうぜ。由比の玉鉾という店で桜えび定食を注文し、生と釜あげとかき揚げを味くらべする贅沢。それにエビの成分が膝の回復に効きそう。暗くなって、富士川河口近くの公園に到着。がたんごとん、しんかんせーんが鉄橋を渡る音を聞きながらテントに眠る。予定では明日が一番キツいのだが、ちょっと体力を消耗し過ぎたかも。二日目走行136km、1370mUP。

5/4(日・みどりの日) カッコカワイイ浅間
秋葉神社〜川根茶〜富士南麓マップ 富士山本宮浅間大社の湧玉池

未明にテントを叩く雨音で目が覚めるが、出撃する頃には一応止む。およそ標高0mからの坂道を、身延線に沿って富士宮市へ。もうここから電車で帰宅しようか、というテンション。しかし日本人なら一度は訪れたい、浅間(せんげん)大社の総本宮にしてワールドヘリテージな世界遺産、富士山本宮浅間大社がここにある。何やら流鏑馬行事の準備で境内は慌ただしい。朱塗りの社殿がカッコ良く、早朝のまだ静かな湧玉池が空の青を反射してキレイ。またゆっくり観光してしまった。

御殿場口新五合目

富士山スカイラインには東の御殿場市へ結ぶ周遊区間と、その最高点付近(1460m)から五合目(2380m)までピストンする登山区間がある。一気に制覇するつもりで漕ぎ始めたが、疲れと栄養失調か・・・どうにも頭がボーーっとして、たまらず西臼塚駐車場で休憩する。みるみる身体は冷え切って、とどめに雨が降ってくる。完全に心が折れた。登山区間はいずれヒルクライムレースで走ることにしよう。防寒防雨装備にして、東側へ下りて行く。

すると晴れて暑くなってくるし。山の天気はよく判らん。そこで太郎坊の分岐からほんの160mアップピストンとなる、御殿場口新五合目に寄り道する。これでも景色は五合目らしさに溢れているし、だから五合目まで登ったことにしちゃおう。スカイラインに戻りさらに下りると左に陸上自衛隊、右にアメリカ海兵隊。

このあと話題(マグマ?)沸騰中の箱根にでも行こうか。でも山梨県側に越えて、電車賃を浮かせたい。針路を北にとり国道138号に乗ると、車道は大渋滞。家族サービスお疲れ様です。ふじあざみラインのスタート地点を見て道の駅すばしりに寄ると、カワイイ自衛隊グッズなんかも売っているが、はちみつソフトクリームが凄く旨い。軽井沢のモカソフト以来の感動だわ。

北口本宮冨士浅間神社

ゆるゆると籠坂峠を越え首都圏に入ると、山中湖付近もマイカー大渋滞。富士山本宮浅間大社だけでは片参り、と富士吉田市の北口本宮冨士浅間神社にも寄っていこう。こちらは何度も訪れているが、富士宮市のとはかなり違った趣があることが解った。例えるなら向こうが伊勢でこっちが出雲、みたいな。締めに吉田うどんを食べてサイクリング終了。三日目走行86km、2070mUP。富士急行の富士山駅からJRの松本駅までSuica決済で移動できるとは、面白い時代になった。

三日間でおよそ距離300km、獲得標高差5000m。観光色を強く出しつつも、今の自分なりには十分に身体をいじめ抜くことが出来たキャンプツーリングだったと思う。それが一番したかったことなのだから。


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