スタート会場の波田公民館

上高地線沿線とアルプスの里

松本ロゲイニング2014 Spring Stage (波田5hソロ) 参戦記

2014.3.29[]

経緯

大学のサイクリング部で年に一度、オリエンテーリング略してOL(=Orientierungslauf)というイベントが行われていた。会場としてどこのエリアが使われるかは当日朝まで秘匿され、スタッフにより予め多数のポスト(赤白の三角柱)が設置されてあり、その位置を印した五万図(五万分の一地形図)を頼りにいかにたくさん回れるかを競うものだった。正式なOLルールとは違いポストの回り方は自由で、スタートから遠くにあるものほど高得点だったりした。また制限時間までに帰ってこれないと大きく減点された。

走力こそ競技に取り組む連中には敵わないものの、地図読みが大好きな私にとっては最も得意になれるイベントだった。一年目は最多得点ながら遅刻で「0点賞」を受賞、二年目は盤石の優勝、三年目は守りに入り4位無冠、四年目は優勝に返り咲き、大学を中退して一年の間を置きOBとして参加した五回目も優勝。合わせて五戦三勝の実績を残した。

あれから十余年ーーー。

とあるブログ記事で、ロゲイニングという聞き慣れないランニング競技があることを知った。ルールはサイクリング部のOLに似通っていて、面白そう!…だがロゲイニング精神はチームワークを尊重しており、原則として2人以上のチームを組み同一行程をとる必要がある。この時点で走力の合う友人とか居ないし諦めた。

プログラムや松電一日乗車券など

ところがこのたび波田地区で行われることになった松本ロゲイニング2014 Spring Stageは、ソロの部も開設される。オマケカテゴリとは言えこれはチャンス、初参加するぞ。出るからには全力を尽くす…尽くせるかなぁ。出るからには優勝を目指す…入賞も出来ないんじゃないかなぁ。

フィールドは「波田地区から松本中心市街地まで」と公表されてるし、事前に現地入りしちゃいけないルールもない。元々サイクリングやジョギングで十分な土地カンがある地域だが、可能な限り上位を引き寄せたい。追加で何度かフィールド内のジョギングをし、チェックポイントの予想もしておく。もう迷いようがない。時期的にもサブスリーを狙う長野マラソンの3週間前という絶好機。地図読みの強みと土地カン、それにノリノリの走力。これで勝てなきゃオレは駄目だろう?

制限時間は5時間なので、ストップ&ゴーを繰り返しながらだと50km走るのがせいぜいと思われる。そこで前日夜にジョギングシミュレーターの地図上でどれだけの円が描けるか、数パターン予習しておく。あとは競技中の利用が許可されている鉄道について、時刻表を頭に入れておけば完璧だが、そこまで出来ずに眠ってしまった。まぁ多分使わないだろう。

日記

3月29日() 五時間戦えますか(ロゲイン)
松本駅のなぎさTRAIN

遠方からの参加者に配慮してか、競技開始は昼の12時。ゆっくりと松本駅のアルピコ交通上高地線ホームに行くと、幸運にも「なぎさTRAIN」という痛電が居る。これに乗るのは始めてだが、車内アナウンスまでキャラ声という訳ではなかった。ロゲイニング参加者には渕東なぎさの絵をあしらった特製の一日乗車券が予め送付されてあり、競技中に積極活用することが推奨されている。これの色違いな子供参加者用は激レアだろうな。さらにダイヤ改正直後のミニ時刻表まで同封されていたのは気が利いている。車内はロゲ参加者が多く、道路地図などを見て作戦を立てているようだ。オレはお前ら全員に勝つ!…つもり。だが思い出す、大学3年目のサイクリング部OLで、皆に優勝候補と言われながら三位にも入れなかった悔しさを。慢心ダメ、ゼッタイ。

コントロール位置説明

ひゃくにんぱん(後にいわき市に移転)のパンを齧っているうちに波田駅に到着。会場の波田公民館は渕東なぎさの等身大ポップが出迎える。ロゲ初参加で勝手が分からないながら建物に入り、おそるおそる受付を済ませて、身支度をする。11時半に競技説明。この大会はフォトロゲイニング形式で、コントロール(チェックポイント)に特別な目印が設置されている訳ではない。配布される位置説明(写真一覧)と同じ風景に、メンバーを入れてデジカメ撮影することで通過証明となる。ソロの部の場合、仕方ないからメンバーを入れる必要は無いそうな。11時45分に緊張の、地図&コントロール位置説明配布。スタート集合のため建物の外に出ることを促されつつ、粗く「地形図折り」してから蛍光ペンで円状にルートを引いていく。昨日考えた予想円通りで、この数分で前半の走路は確定した。後半はまだざっくりだ。周囲を見ると配布ジッパー袋に地図を入れていたり、指にOL専用の方位磁針を付けていたり。天候やフィールドによっては必要なんだろな。GPSの使用も許可されているが、これも要らんわ。

波田公民館前をスタート

みんなで記念撮影をしたあと、正午にスタート。四方に参加者が散らばるが、やはり一番人気は一番近くの波田水車[31]。この列に付いて行くと、小径が工事で通行止になっているがみな突き破って行く。歩行者なら仕方ないよね…。

ここからちょい南、そして西へ、同じ作戦の人がいないのか意外にもソロ走になる。旧波田町のキャッチフレーズは「河岸段丘に味なまち」。無駄に登り降りして序盤に脚力を消耗しないよう、なるべく川と平行に移動したい。さっきの水車は知らなかったが、阿弥陀堂仁王門[39]、渕東なぎさの絵をあしらった駅名標が真新しい渕東駅[80]、梓川を渡る沈下式の八景山橋[44]、とほぼ完全に予想通りのルートで、地図にない抜け道も知ってるくらい。しかし安曇野に入り真光寺[82]に向かって河岸段丘を上がる道は初めてで、ドラクエIIのロンダルキア台地へ登る時のような興奮を覚える。次の金松寺[36]へは裏からの近道を試みる。このへんは読図力の醍醐味だ。しかしここから次へも近道すべく点線の道を進むと、獣害防止柵が4ヶ所もあった。この扉の開閉はとても面倒で時間を食ってしまう。巻いたはずのライバルに追いつかれてしまった。

大宮熱田神社

大宮熱田神社[87]まで1時間ちょっと。おっと、マメに給水しなくちゃね。ランニングパックに積んだスポーツドリンクを飲む。ここから北へ、梓川ふるさと公園や室山にもコントロールがあるけど、等高線が読めない私じゃない。得点は稼げそうだけど、遠かったり高かったりする場所は行くものか。全部回れる訳じゃないから、スルースキルが重要なのだ。扇状地を東へ下り、立田の製麺所[35]、恭倹寺[102]、弘徳院[42]と着実にコントロール数を稼いでいく。マップは2万5千分の1地形図を改造した3万図。だいぶこの特殊なスケールにも慣れてきたけど、ちょっと暑いし風があるし花粉症もダルいし…。それに経験の薄さも弱気に拍車をかけ、「3位以内に入れれば」とも。

迷うにしても抜け道を探索する為の20m程度で、菓子まるやま[63]通過。中央橋で梓川を渡るとしばらくは、以前ピザ配達バイトであらゆる路地まで知り尽くしたエリアだ。しかし山べりと違って度々信号があるから、ダッシュで青に間に合わせようとすることも増える。地図読みのため立ち止まることもあり、こうもストップ&ゴーが多いとやはりマラソンペースという訳にはいかない。小宮団地[101]を過ぎ、ビデオカメラを回す大会スタッフとすれ違いざまにポーズを取る余裕を見せつつ、JR大糸線の島高松駅[85]へ。そういえば鉄道利用OKなルール…時刻表を見ると5分後の14:10に上り列車がある。時短効果は微妙だが、体力温存にはなるだろう。パワーバー粘土を食いつつ、やや遅れて来たE127系電車に乗り込む。他にもロゲ参加者がチラホラ。混んでてトイレに行けないまま、次の島内駅で下車。運賃140円也。

ボルダリング屋[61]、笹井酒造[47]。もし城山公園にコントロールがあったら仕方なく登るつもりでいたが、無くて良かった。折り返し点と言える最東端の松本城[100]まで2時間35分、半分をやや過ぎてしまった。ここでトイレ。

松本城

渚駅名標

ブエナビスタ[38]からいったん国道19号を渡る。しまった、アルピコ交通の電車が追い抜いていく。西松本駅から一駅区間でもあれに乗った方が数分早かったし、脚休めにもなったろう。時刻表を頭に叩き込んでおかなかったツケが、後でアダにならなければ良いけど。いや、かえって走行のリズムを保てて良かったか。なぎさちゃんの駅名標がある渚駅[77]を撮り、ファミリー参加者たちはここでワッフルを食べていきそうだけど、自分は自販機でドリンクだけ買い足して19号を南へ。交通量が多いが、信号パターンまで知り尽くした普段の通勤路だ、問題ない。

双葉のプリン屋[81]、19号を西へ離れて笹賀の肉屋[60]、大久保原公園[45]、窪田空穂館[88]。後半戦も遠くのコントロールより、繋ぎやすさを重視し通過数を稼ぐ作戦。どうしても疲れが出て意識が薄くなるから、地図読みミスはもちろん交通事故にもより一層の注意が必要だ。…と分かっていたのに、デジカメの撮影モードダイヤルがいつの間にか回転しているというミスを発見。肉屋の時からメモモードになっている。写真は撮れているのだけど、別フォルダになるため連続して閲覧できず、後で集計員に「以前に撮った写真ではないか」などと不正を疑われないか心配。またちょっとメンタルが弱る。

気を取り直してカモシカスポーツ[41]、臨空工業団地の情報創造館[75]。かつてこの辺りにも通勤していたので土地カンは十分だが、肺や脚に加え、心臓もキツくなってきた。今の私にウルトラマラソンは無理なんじゃないか? 波田へ戻る道は僅かに登り勾配だし、すっかりペースが鈍る。暑くて喉カラカラ、ドリンクがみるみる減っていく。時々アミノ酸系のサプリも摂っている。

道路工事による通行止に難儀しつつ、すいか共撰所[83]を通過。思うようにペースが戻らないし、もう欲張って遠回りとか出来そうにない。このままだと中途半端に時間が余るが仕方ない。落ち着いて国道158号を渡り、確実に裏側から消防団[40]を発見。同様に仕上げに掛かってる参加者で賑やかになってきた。自然農法センター[32]が最後のコントロール。もうみんな歩いているけれど、長野マラソンへのトレーニングを意識して、ゆっくりでも走っておく。

フィニッシュ証明

フィニッシュ証明写真はなぎさPOPと並んでオフィシャル時計を手に持ち、スタッフに撮ってもらう。4:45:01、まぁこれくらいなら…。疲れたー、精一杯やったよ。結果論で言えば、もう一箇所どこか回れたかも知れないけど。振る舞いのおにぎりや水ギョーザを食べていると、ギリギリで帰ってくる、いかにも強そうなソロ選手たち。ちくちょー、オレ負けちゃうのかな。やつらみんな遅刻すればいいのに、なんてね。やがて制限の5時間を迎える。ああ、ツイッターで相互フォローの人が遅れてやってきて、場を笑いの渦にしている。

そろそろ集計。周りの会話を聞いていると、コントロール名に付いていた番号、あれがそのまま点数になるって。げ、知らないで走っていた。サイクリング部OLのルールが先入観になっていて、競技説明に明記されていたのに頭に入っていなかった。慌ててもう一度マップとにらめっこしてみる。…大丈夫、仮に知ってたとしても別ルートを走ることはなかったと思う。やはり高得点コントロールは効率の悪い場所が多く、通過数を重視した作戦は不利には働いていなかったようだ。得点申告用紙に自分で書いていくと、結果43コントロール中27ヶ所獲得、1695点。うーん、こんなんで勝てるのかな、駄目かな。遅刻で減点を食らうよりマシとは言え、15分も余したのが気掛かり。

表彰式

アンケートを渡してシュテルンの焼菓子を一つ貰い、写真確認受付へ。一部の写真が別フォルダになった件については説明して認めてもらえた。結果に対し「凄いですね」とも言われる。これは上位に入ったかも知れない。まもなく集計が済んだカテゴリ順に3位まで結果発表が始まる。女子ソロからで、優勝者がインタビューを受けている。もしかして私も1位だったら何か言わなきゃいけないのかな、緊張してきたぞ。チームの部は4カテゴリ。男子に1904点というチームがあり、どよめきが起こる。私が「そこは土地カンが無いから」と避けた波田南西部の山岳エリアで高得点を稼ぎ、鉄道も大いに活用したと言うが、それにしても凄すぎる。後で知ったが、月500km練習はあたりまえ、世界のOL戦線に日本代表選手を輩出するチーム阿闍梨の面々だった。いつかそんなふうになれるかしら。

最後に「人数最多39名の最激戦区」として男子ソロの発表。「1位、中村良大さん」・・・まぁ予定調和だよ、と思いつつやはり嬉しくて、小さく両手でガッツポーズ。しかし時間が押してて、このカテゴリだけインタビューは無かった。はいはいオマケカテゴリ、オマケカテゴリ。仮にマイクを向けられても、気の利いたセリフが言えないどころか嫌味を言ってしまったかも知れないし…。仮賞状を受け取り写真撮影、そして入賞商品を上位選手から選べる。フューエルツールポーチというミニ水筒を選んだ。あとシュテルンの焼菓子セットが貰えるのも嬉しい。ちなみに男子ソロ2位との差は67点。薄氷の勝利だった。

このあと交流会もあるようだが、ぼっち参加には難易度が高そうで、申し込んでいなかった。とぼとぼ帰途につくと、ツイッターで何人かレスをくれたのが暖かい。5時間弱も駆けずり回っていただけあって脚には相当な疲労があり、松本駅の階段が辛い。自分へのささやかなご褒美に、高橋のカツカレーを食って帰宅。競技中の走行距離を測ってみたら48.6kmだった。

5年前の大町ハーフマラソンで8位入賞したことはあるが、基本的にマラソンだの自転車ヒルクライムだの、体力一辺倒の競技では鳴かず飛ばずの自分。しかし得意の地図読みが加われば、勝ち負けになることが分かった。優勝したからってなんだろう。粉々に砕け散った自信を、少しずつ取り戻しているのかな。
後日、本賞状と渕東なぎさちゃんストラップが届いた。ほんと、いろいろ気が利いているな。参加者ブログ記事へのリンク集もあるし。あと敗因となった波田南西部の山岳エリアについて調べてみると、若澤寺(にゃくたくじ)という今はなき大寺院の歴史が興味深い。実際走ってもみたがキツい山道で、もしルートに入れていたら脚が潰れてたんじゃないかな。まだまだ作戦能力も走力も負けている。それに今回は大人げなく地の利を活かしまくっていた。いつか気が向いたら、走力が近い友人に声を掛けてチームを組み、どこか知らない土地で実力を試したい。

結果

フォト蔵:走行マップ
公式リザルト
総合点 1695 (最多点1904, 最少点-1746)
コントロール数 27/43 (最多28, 最少3)
男子ソロの部 順位 1位 (/出場37名/申込39名中)
総合順位
(各種チーム,女子含)
2位 (/出場98組/申込102組中)
(人数は出場185名/申込193名)

リンク

表彰状
松本ロゲイニング2014 Spring Stage公式サイト
競技結果や各紙レポート、各氏ブログリンクなどが残る。
Navigation Games 2014
日本オリエンテーリング協会が選んだロゲイニングのシリーズ戦。
フォトロゲイニング公式サイト
ルール説明や大会紹介など。

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