善光寺

 第9回 長野オリンピック記念 長野マラソン

 2007 NAGANO OLYMPIC COMMEMORATIVE
 NAGANO MARATHON 参戦記


2007年 4月15日(日)8時35分スタート


 

今年もやってきました長野マラソン。二年連続で「全国ランニング大会100撰」の1位を獲得するほどの人気大会となり、私も第一次募集は定員締め切りに間に合わなかった。レイトフィーを払ってでも第二次募集に何とか登録。これも数十分で締め切られたらしい。
参加が決まってからはトレーニングのモチベーションも一気に上昇し、3月には合計250km以上をジョギング。これは昨秋のデータと大して変わらないが、積み重ねによる体力の向上があったのだろう、4月に入るとまるで別人のようなスピード持久力を感じられるまでになった。

前日受付atビッグハット前

大会前日。かつてない心身の充実に興奮して、暗いうちに目が覚めてしまった。一日早いよ。ともかく高速バスに乗って松本から長野へ向かい、若里市民ホールで選手受付を済ます。小ホールの舞台上で「2263」のゼッケンその他諸々を受け取り、ふと客席を眺める。“舞台から見る客席”にちょっとした懐かしさを覚える。またいつの日にか。
外はミズノを主体としたブース出店が並び、ひとつ250円のパワージェルを二つ買っておく。それからはマラソンコースを逆に辿るように歩いて長野市中心街へ。明日はいったいどんなスピードでここを駆け抜けるのだろう。
ふらふらと観光しているうちにTOiGO、ぱてぃお大門、さらに善光寺まで来てしまった。ちょっと疲れた。他のマラソンランナーも大勢観光に来ている。みんな疲れちまえ。旅先の寺社ではたいてい旅の安全を願う私だが、今日だけは必勝祈願をしていこう。


迎えた当日の朝。前日歩き過ぎたせいで体調は一割引だが、それでも充分以上にやる気がみなぎっている。卵ご飯を食べてから6時20分松本始発のJR普通列車に乗り込む。これが少しでも遅れたらスタート整列に間に合わなくなるというシビアな賭けに出た。長野市内で宿泊する手間とお金が惜しかったから…。
長野行の列車は終点に到着すると、そのまま行先表示を妙高高原に替えてしばらく停車。その隙におにぎり1個、アミノバイタルビスケット、オレンジジュース、パワーバー、アミノバイタルゼリーを口にする。これで直前のエネルギー補充はバッチリだ。やがて動き出した列車はスタート会場に一番近い北長野駅に到着。他にも数人この列車から長野マラソンに間に合わせようという無謀なランナーがいて、一斉に駆け出す。私もウォーミングアップを兼ねてランニングで会場へ急ごう。

スタートゲート

北長野運動公園ではもうスタート整列が始まっていた。予め上着を脱ぐだけの態勢にしておいた私は素早く荷物をまとめ、8時10分までの荷物預かりにギリギリセーフ。トイレもサブトラック近くのは全く混雑なく、申請タイム毎のスタートブロック整列にも間に合わせる。ここまでよどみがない事実だけでも、さすが日本一の運営力を誇る大会だと感心できる。良かった良かった。
…と安心していたら「もしもしあなた、ここでいいんですか?」と隣りのおじさんに声を掛けられた。いけね、勘違いして一つ後ろのブロックに来てしまっていたよ。「ありがとうございます!」あわてて前のブロックに移動する。10秒は得したぜ。

去年同様見事なピーカン、風もわずかに追い風気味という最高のコースコンディション。ダル気もなく、時と共にテンションは高まっていくばかり。それにしても長期間にわたる練習の成果をたった3時間半前後に凝縮しなきゃいけないのだから、42.195kmって憎たらしいほど短くないか?(かと言ってウルトラマラソンをやる予定はないけど。)

教育テレビより

「どうぞ」「…パァン!」8時35分いよいよ号砲が鳴った。この瞬間に手元の時計を合わせるが、やはり自分らのブロックがスタートラインを跨ぐまでは少し時間がある。1分半少々か。ゲートをくぐる時にクレーン式のテレビカメラが目の前に来たので、十本の指を広げてぴょんぴょんアピールする。それはサブテン、じゃなくて3時間10分切りおよび上位10%を目指す意気込みを表現したものだ。今後サブスリー(3時間切り)挑戦への切符を手にするには、まず3時間10分以内の持ちタイムが必要となるだろう。無謀だけどロマンを求めてやってみるよ!

そうと決まれば目標3時間25分の申請で振り分けられたこのHブロックは自分の居場所じゃない。始めこそ前へ出るのに難儀するが、ここは道が広くとってある長野マラソン。1km地点以降はガンガンプッシュできる。呼吸が荒くなりすぎないよう注意して4km地点を20分ジャスト。スタートの遅れを取り戻した形だ。
ところで自分はやや多尿気味な体質ゆえ「マラソン中にもよおすのではないか」という不安が常にある。それゆえ最近は日常生活でトイレに行く回数を減らしてみたり、今朝もあまり水分は採らなかった。定石を外しているとは思うが、他に方法が思い付かなかった。その代わり5.1km地点の最初の給水所からさっそくスポーツドリンクを補給する。こまめに給水出来れば脱水症状には至らないだろう。暖かいのでトイレも多分大丈夫だ。

緩やかな坂を上り切って左折すると、長野マラソンのメーンストリート「中央通り」へ。振り返れば善光寺の門。ここの沿道の応援が一番壮観だろう。まだ序盤なので下り坂といえどスピードを抑えたいところだが、ついノッてしまう。
下り切った辺りで、見覚えのあるユニフォームに追い付いた。背中に「信州小諸」とプリントされている、前回の出場マラソン「三郷アップルハーフ」でほぼ同時にゴールしたおっさんだ。集中力を乱しちゃいけないと思って声は掛けなかったが、向こうも私に気付いたのだろう。ここからこの人とのデットヒートが始まる。今度こそ負けないよ! それにしてもオーバーペースじゃないかと不安になっていた所に、同等の走力を持つベテランが並走してくれているなんて、凄く心強い。ただし向こうも同じことを考えていたら、・・・・・・共倒れだ。何か呼吸荒くありません?

長野マラソンコース図

昨日時間をかけて歩いた区間はあっという間に駆け抜け、いったん犀川の土手に出る。ここは少し向い風になるが、1kmあたり4分30秒を意識して、実際はそれより少し速いくらいのペースで前半を刻んで行く。たまに出る4'15/kmなんてサブスリーペースだよ。もはやシューズadizeroLT2の性能を超えているのか、というより洗った時の石鹸カスが残っているのか靴ズレがひどいけど。これは我慢し切るしかない。
晴天無帽派なので、時々スポンジで頭を冷やしておくことも忘れずに。

エムウェーブの若干のアップダウンや五輪大橋の上りも難なく越えて中間地点へ。ここまで無事走って来られればフルを完走出来る目安になるので一安心。タイムは何と1時間33分! これがハーフマラソンのリザルトだとしても充分に速い、何ちう通過タイムだ。
ところが小諸のおっさんが脱落。え? 直後の25km地点で私も脚に硬さを覚え、ペースを緩めてみる。代わりに、沿道の応援に気を良くしてこのまま死ねるんじゃないかってくらいにニコやかだった顔は引きつってくる。一つ目のパワージェルを服用して粘ってみるが、やはり回復しない。おいおい、こんな所で壁を感じてどうする。でも去年もここで大きくペースダウンしたっけ…。

コースは千曲川の土手道になり、北信五岳、松本から眺めるのとは別表情の北アルプス、風林火山ブームで賑わう川中島の桜並木、と景色はなかなか良い。河川敷いっぱいに咲く菜の花の香りも印象的だ。
と気を紛らわしてはみるものの30km地点がまさに壁となり、脚が上がらなくなった。やはりオーバーペースだったか…! やっちまったものは仕方ない、完走のための最善を尽くそう。フルマラソンを距離で序盤・中盤・終盤に三等分するならばもう終盤、ゴールのオリンピックスタジアムも見えているではないか。

へばっても1kmあたり5分のペースが絶対国防圏。しかしちょっとしたアップダウンでも脚が吊りそうになり陥落する。つらい。不安だ。走るのやめようか。誰か、助けてよ…!
オレ、精神的に弱くなってないか? しかしこんな時でも沿道の応援はNHKや信毎の旗をパタパタ振って口々に「がんばれー!」と声を掛けてくれる。そうだオレは今、サイコーの応援の大会の中の、限られた時間を走っているんだ。人々が直接背中を押してくれる訳じゃないけど、自分の足で、声援の中を通り抜けて行け!

最後のエネルギー補給をしようと、背中ポケットにある二つ目のパワージェルをまさぐる。あれ? 無い!! 一つ目の時に落としちゃったみたい。オレの250円がぁ〜〜、じゃなくてマラソンはエネルギー切れが一番怖い。給水所のバナナを3切れも鷲掴みにしてむしゃむしゃする。「おおっ、その意気だっ!」と声が掛かる。これでゴールまで持ってくれ〜〜。あれ、一気食いし過ぎてお腹イタいかも。

完走するぞと勇ましく、山本勘助のコスプレの人にハイタッチしてもらう。もはや3時間10分は無理だが、本来目標にすべきだった3時間15分なら何とかなると時計を睨みながら土手道を終える。
最後の難関「松代大橋」の上りがこれほど恐怖とは。それでも普段の坂道練習をイメージして乗り越えればへっちゃらだい。5分/kmより遅くなりがちだったペースを持ち直しにかかる。両腕が痺れてくるが、ここまで追い込むのは当たり前だ。沿道の人々が「あと少しだ〜!」「あと1キロだ〜!(そりゃ嘘だろ)」とか頑張って声を張り上げてるのに、自分が頑張らなくてどうする。少しずつ、少しずつスタジアムが近づいてくる。

ゴール写真by信毎

本当のあと1kmになればさらに限界への旅になる。ペースは取り戻した。しかしゴールまで持つのか? もう、そこの角までで勘弁してくれよ。
その角を左折してスタジアムに入るのに一瞬暗くなる。倒れそうな感覚の一瞬後に、パァッと緑色が全身を包む。ハレのスタジアム入りだ。人工芝が柔らかく感じて、若干使う筋肉が変わるのか思いっきりラストスパートが出来る。数人まとめて差し返してゴール!!!

腕時計を止め、右手だけガッツポーズ。ヤッタ! 完走だっ。
直後に気が遠くなる。だからラストスパートなんてやっちゃいけないって。正気に戻り、タイムを見ると3時間14分28秒。

ガールスカウトさんにFINISHERタオルを掛けてもらう。コレコレ、これが欲しかったの。良質なバスタオルとして使えるから。吊って倒れそうな足を何とか動かして、ヨロヨロと歩く。チップ外し場でついに崩れ果て、仰向けになる。

空が、青い。

そりゃあ実力に見合わぬ目標を設定してペース配分をミスったけど、よく粘り切って、練習量を裏切らない結果を出せたんじゃないかと思う。もちろん大町マラソンで出ていた自己ベストを大幅更新。大町は坂がスゴいから記録の価値としては甲乙付け難いが、サブスリーの挑戦権は得られなかったとはいえ、それに向けたステップアップにはなったんじゃないか?

長野オリンピックスタジアム

しばらくしてようやく立ち上がる。ここまで靴ズレにも良く耐えたものだ。実は心配だったシンスプリントや膝痛は、さほど問題ではなかった。計測チップを返却してアミノバイタル(ペットボトル&粉末)とおにぎり1個を受け取る。食欲がなくても食べておけば楽になるものだ。ありがたく頂こう。
日差しは強けれど風が寒い。マラソン中も体が冷え気味で苦しかったっけ。トラック輸送してもらっていた荷物をすぐに受け取り、体育館で着替えを済ます。また外に出てヨロヨロとブースをうろつき、タンパク補給としてフランクフルトも食べておく。ダンス等のイベントで大変な賑わいだ。

私はしばらくスタジアムのスタンドで後続のゴールシーンを眺めた後、NHK教育で15時30分から放送される長野マラソン録画中継に間に合わせるため、後ろ髪引かれる思いでシャトルバスに乗り込む。篠ノ井駅からはJR普通列車で松本へ。この体調を思うとマイカーで来なくて良かった。明日は会社休み取ってあるので、ゆっくり休もう。
そうそう。ニート状態で参加した前回マラソンまでとは違って、今回はいちおう勤め人として練習を重ね、ベストの記録が出せた。これは自信になると思う。もちろん過去の下積みがあってのことだが。

と・に・か・く、今日はすげー楽しかった!
しばらく残るのは筋肉痛と、ヘアバンドによる日焼けの痕。もちろん“課題”も残ったが、今後はツールド美ヶ原を目標に絞った自転車トレーニングに移行して、その後は、その後は…。



公式リザルト
グロスタイム(公式記録)3時間14分28秒 (最速者2:13:31, 最終完走者5:09:34)
ネットタイム(参考実質記録)3時間12分56秒 ※スタート地点からゴール地点までのタイム
フルマラソンの部 男子順位534位 (/完走4506名/出走5166名/登録5988名中)
      (男女総合順位)570位 (/完走5261名/出走6104名/登録7094名中)

 リンク

長野マラソン公式ページ
大会概要やコース紹介、公式記録など。
RUNNET
各マラソン大会のエントリーや速報など。

return むらよしギムナシオンに戻る