長野マラソンタウン

The 10th NAGANO OLYMPIC COMMEMORATIVE 2008 NAGANO MARATHON

第10回 長野オリンピック記念 長野マラソン 参戦記

2008年4月20日

日記

2008.4.20(sun.) 8:35a.m.スタート 初のサブスリー挑戦へ
adizeroRC3は約160g

42.195kmのフルマラソンを3時間未満で走り切る。それをサブスリーと言う。2時間台は世界のトップランナーと同じゾーンにも思えて、数字的なインパクトがある。世の中でマラソンを完走出来る人は一握りであるが、サブスリー達成者はさらにほんの一握り。飽きずにバカバカ走っていられる馬鹿だけが挑戦しうる、まさに市民ランナーの憧れ───。

昨秋のいびがわマラソンでは3時間1分余でゴールし、「惜しい」と言えるまさかの好記録となった。もはや次の大会での達成が義務づけられたも同然。長野県の厳冬期は路面状況が悪かったり膝を冷やし易かったりして思うようにトレーニングが出来ないものの、往復23kmの自転車通勤の他にジョギングが1月150km→2月250km→3月350kmと、サブスリー挑戦に最低限必要と云われる月300kmをようやく突破出来るようになった。しかしそれでもなかなか本番では結果を出せないなんて人もいるものだ。

4月に入ってからは練習量を減らしつつ、決戦用シューズのアディゼロRC3を用意。名前の通りレース用に特化された戦闘機である。試しに搭乗してみたところ、クッションの反発による推進力は期待できず、ただ脚の力をダイレクトに、ロスを最小限にして地面に伝えている感覚だ。これで1kmあたり2秒でもタイムが縮まればしめたものだが、吉と出るのか凶と出るのかは分からない。
やれるだけのことはやったのか。ちょっと物足りない気がする。サブスリーに何の価値があるのかもさっぱり解らない。しかし三年前はほんの2kmを走るのが辛かったのに・・・ここまで来た。そんな変革の歴史には価値があると思うのだ。あとは本番での結果が、喉から手が出る程欲しい。それも参加大会の軸足であるナガノで。出せるかな? 出せなかったら練習量の意味が無い。

桜井千恵コンサート

前日は松本市から高速バスで長野市入りし、ビッグハットというオリンピック施設で受付を済ます。空回りするほどの異常なハイテンションだった去年と比べると、今年はややしょんぼり気分。それでもブース出店でピンバッチやサプリ類、シューズなどを買い漁ることには抜け目ない。やがて会場で桜井千恵ミニコンサートが始まる。長野マラソンのテーマソング「遠くへ」の人で、県内でNHKを観る人なら誰でも耳に馴染んでいる。その伸びやかな声に癒されつつもテンションアップ。
長野駅前に移動し、ランチとしてデパート最上階のスパゲッティ・ハウスで「ツナと大根おろしのパスタ」大盛りを食べ、宿をとってないし高速バスの復路で松本に帰る。最近カーボローディングと称してなし崩し的に大食い癖が復活しており、寝る前の体重計測が166cmの小柄な身長ながら61.1kg、体脂肪率は18.7%と、サブスリー狙いとしてはあるまじきだらしない体型となった。登録チーム名が「チーム重戦車」だし、まあいっかぁ?

とにかく、がんばります。zzz...


味噌汁だけ飲んでからチャリでJR松本駅に向かい、長野行き始発の普通列車に乗り込む。動き始めてからコンビニおにぎり2ヶとオレンジジュース、パワーバー粘土を摂取。うとうとしつつ、姨捨駅からは善光寺平、すなわち今日の戦場を望む。長野駅に到着した列車はそのまま妙高高原行きになるがしばらく停車。その間にアミノバイタルビスケットとアミノバイタルゼリーを服用。水分は控えめだ。ようやく動き出して一駅、北長野で下車。会場へ小走りで急がないと荷物預けに間に合わない。同列車から同じ行動を取っている無謀な人を、もう一人だけ見掛けた。

レース前

アクアウイング擁する長野運動公園がスタート地点。そこへの到着を以てウォーミングアップランは終了。こんなんでいいのかと物足りなさを感じつつ、急ぎ上着をカバンに放り込み、制限5分前に荷物をトラックに預ける。もえる男の赤いサイクリング用レーシングシャツ姿。3つある背中ポケットには、それぞれパワーバージェルを一個ずつ忍ばせておいた。陸上競技場裏トイレへのダッシュ往復で仕上げたことにし、スタート行列へ。全国ランニング大会100撰1位こそ異常なキャパを誇る東京マラソンに譲ったが、運営力で劣るとは思えない長野マラソン。そういえば国際陸連とやらが2008年のマラソン格付けを行い、日本からは10大会が選出。東京などと共に長野も含まれた。参加定員も昨年の6500人から今年は8000人へと増やされ、益々賑やかな大会である。
参加申込が昨秋いびがわ前だったため「自己ベスト3:05、予想タイム2:55」と申請しておいたのだが、それにより与えられたゼッケンナンバーは2307。一般参加を示す緑色だ。スタートブロックはAからXまであるうちのDブロックと前の方だが、前方には1000番台までが付ける白ゼッケンの陸連登録者どもが立ち塞がる。その殆ど9割以上を抜かさなければならない展開が予想されるだろう。3時間切りはもちろん、上位3%には入らねば。客観的かつシビアに考えた予想タイムとして2時間52分台を設定。あくまで目標ではないから、調子をみながらベストを尽くそう。まぁスタート前の緊張に慣れてきているのか、気分はとても落ち着いている。と言うかテンション低い。それでも小刻みに動いたり、やや張りのある左膝裏をマッサージしたりして時を待つ。

暑くも寒くもない曇り空、風向きはコース全体としては有利な東風吹かば。今年もスターターは宮下創平。いよいよ8時35分、去年のようなポカはなく号砲が鳴った。その46秒後、テレビカメラに手を振りながらスタートゲートを抜ける。テンションが低くても、やはり無事スタートが切れた事には神に感謝するような笑顔が出るものだ。この瞬間のためにいっぱい練習してきたんだもの。とにかく始まっちゃった。頑張れるかな。
始めはやはり人が多くて走りづらく、遅い陸連登録選手を左右に縫うようにかわして行く。しかし道が広くとってあるので1km以降はばらけて自由に。すると今度はペースが乱高下するようになってしまった。3〜4kmが3'43"って何だよ、距離表示が間違ってんじゃないの? とにかく白ゼッケンには興味が無いから、緑ゼッケンの2000〜2300番台がライバル。2206の人が速いので必死で追うが、呼吸は苦しいし早くも脚がこわばってきた。ダメダコリャ。突拍子も無いような大幅記録更新は諦めて、見送って少し落ち着こう。それでも自分のペースを遵守するよりは、他人を風避けに使うことを優先しつつ。だから少々乱れるけど、ガザツなトレーニングばかりしているからOKだ。
ちなみに、第1回大会から10回連続の出場者にはゴールドゼッケンが与えられている。コースを知り尽くしたベテランなので、堅実に走っている印象。

5.1km地点給水(NHKより)

朝は水分を控えたため、レースではしっかり、最初の給水所からアミノバリューを頂く。以降2〜3ヶ所毎の給水で良いだろう。善光寺からの坂を下る中央通りでは男声合唱で長野県歌「信濃の国」が響く。嬉しくなるが、落ち着け。
概ね4'00"〜4'15"/kmのペースを刻みつつ、エムウェーブへは向い風となりちょっとキツくなったが持ち直し、18km過ぎでパワージェル1個目を服用し早目のエネルギー補充。慣れないシューズだと足裏が少しズレて痛い。薄手の五本指じゃなくて厚めの普通な靴下を履いておくべきだったか。ゴールまで持つかなぁ。五輪大橋を過ぎた下り坂は道質も悪くて足が痛いし。
中間地点のタイムが1:26'57"。まぁこんなものか。序盤に目標にしつつも見送った2206番が大幅にペースダウンしていて、あっさり抜き返せた。これがマラソンというもの。下り坂からの勢いと追い風に乗りつつ、後の折返し以降に使えそうな風避けさんを探すため、にわかにペースアップ。20〜25km区間が平均3'58"/km! そろそろ距離的に脚に来はじめる頃だぞ、アレが。いわゆる壁が。それでもホワイトリング手前で少年たち大勢とハイタッチ。物理的にはロスかもだけど、すげー楽しくて元気が出る。

千曲川土手に出て、一気にひらける春爛漫な光景に思わず両手を広げる。まだ余裕あるかな? 27kmあたりで2つ目のパワージェル。30kmを過ぎて、まだ脚が使えるか前回マラソンなどと感覚を比較してみる。よし、まだ行ける。サブスリーはようやく現実味を帯びてきたが、1秒でも良いタイムのために頑張れるだけ頑張らなきゃ。2:14過ぎ、トップ選手のフィニッシュを伝える空砲が鳴る。コースコンディションは良いと思うが、去年より若干遅いようだ。
微妙にペースは落ちてきたが、まだまだ次々と順位を上げられる。ここまで競いつつも私以上に自由なペースコントロールを楽しんでいるような2221番には置いて行かれたが。コース最南端の岩野橋で、3つ目のパワージェルは満を持して梅味。給水所前に服用して、アミノバリューで胃に流し込むのがポイントだ。

長野マラソン08マップ

また大勢の少年達とハイタッチ。ほんと長野の応援はスゲーよ。
さて、ここから向い風セクション。一人旅になるのだけは避けたい。しかし…ちょっ、みんなペース落とし過ぎ。仕方なく一人で頑張ることに。ちゃっかり後ろに付く選手を意地悪なペース操作で振り払いつつ。もう残りの距離もそんなにないし、頑張ってもいい頃。わりとまだ余裕あるんじゃないか? ただし昨日今日と胃腸を酷使しているので、腹を冷やさぬよう前ゼッケンを下の方に付けておいたけど腹痛がヤバくなってきた。
ひとり追い上げてきて私をかわした。おいでなすった、貴重な風避けさん。ペースが落ちてきていたところ、「この人に千切られたら今日は負け!」と決め込んで必死に追いすがる。かなりギリギリだが、何とか土手を降りる所まで付いて行けた。もう一人追い付いてきて、さあ3人で難関“松代大橋”の登り坂ダービー。これがあるからナガノは面白い(※翌年からコース変更で無くなりました)。実力的には私が一番下だろうか。それでももう少しで登り切るあたりで気持ちラストスパートを決行。もはや心理戦の様相だが、後から追い付いてきた方がしっかり食らいついてきた。でももう私だって引くに引けない。とにかく引っ張る、ラストの直線路。サブスリーは安全圏に収め、終盤でもまだ脚が動いているのだから今年は巧く走れている。だが順位争いは最後まで熾烈なのである。

しかし精神力が前回までのマラソンより弱っているのか、自分を苦しみの極地へ追い込めていない気がする。腕がキンキンに冷えて来ないのはパワージェルを3本も採ったおかげだと思うが、もっとベストを尽くせよ! ラスト1kmでもう一段ギアチェンジ。もう、いつ意識がぶっ飛ぶか判らない恐怖との闘い。これだよこれ。世の中にはもっと苦しい思いをしている人々がいるんだ。それに今、自分より周りの人々の方がもっと苦しいに決まっている。だから耐えろ、負けちゃ駄目なんだ。
一人一人じわじわと撃墜しながら、でも相変わらずさっきの選手に食らいつかせたままで、何とかプッツンせずに長野オリンピックスタジアム前を左折。ここからスタジアムまでの短い園路が一番辛いのだけど、鈴なりの声援に励まされ、人工芝に入ればこっちのもの。柔らかい地面を味方に付けてラストダッシュ。最後にもう2人抜きに掛かるが、相手も相当の実力者ということか、その後方でのゴールインになった。でも長野マラソン3回目にして初めて両手でガッツポーズ。さらにスリーピースを決めてフィニッシュ。

やった!!
初のサブスリー達成。記録は2時間53分51秒と、52分台というシビア予想より遅くなったが誤差の範囲。絞れていない体で充分な数字じゃないか。そんな細かい事より、ここナガノの難しいレース展開を、力を尽くしてコントロールできて闘い切った、結果を出せた。それが嬉しい。完走タオルを受け取ると、松代大橋から争ったさっきの選手が声を掛けてきた。互いの健闘を讃え合う。向こうからすれば「あなたが余裕で走っているように見えた」そうだ。こっちはサブスリーの未体験ゾーンで不安いっぱい、苦しんでたよ! でも粘るあなたに負けないという目標が生まれたお陰で、最後まで頑張れた。
動かぬ体をなんちゃってストレッチしている間に、3時間その時が来る。ゴールを済ませた周りのみんな余裕で、切れるか切れないかの人を観戦。一斉に「ああっ!」が笑える。計測チップを外し、スタジアムグラウンドに軽く一礼をしてから外に出る。アミノバイタルドリンクとおにぎり、そしてアミノバイタルプロ顆粒も貰えたので、さっそくその場の芝地にへばって有り難く頂く。これなら回復は早いんじゃないか。

ゴールシーン

ヨロヨロと預けておいた荷物を受け取りに行き、体育館で更衣。顔も洗って外に出る。信濃毎日新聞の号外が配られていて「キニャンジュV3 瀬戸が1秒差2位」と書いてあった。イベントやブース出店をやっている長野マラソンタウンに行くと、NHKキャラクターはいるし、エロダンスやってるし、このお祭りムード大好き。モスバーガーによる作り置きテリヤキチキンバーガーの不味いこと! だがそれが良い。アイスも買い食いしながらスタジアムのスタンドへ入り観戦する。鮮やかな人工芝に、続々とゴールする人々。
もっとゆっくりしていたいけど、選手のボリュームゾーンがシャトルバスを混雑させる前に会場を離れよう。さようなら、そしてありがとう長野マラソン。

今後の目標は? 市民ランナーの夢と云われるサブスリーはある程度余裕を持って達成出来た。しかしやれペースがどうのスピードがどうのと、持久力を活かす趣味としては別の方向に行ってしまったように思える。あっという間に終わっちゃうし。もう、記録にがっつくのはこの辺でお開きでいいんじゃないだろうか。今日までのトレーニングと実戦で培った経験リソースを、他の何かに活用する道を考えてみては…。
でも、私のマラソン趣味はもうちょっとだけ続くんじゃ。そう、一つの解として来月の野辺山ウルトラマラソンにエントリーしてある。100kmも走れば存分に打ちのめされるだろう。

姨捨駅より

立ちっぱなしのままシャトルバスは篠ノ井駅前に到着。あとはJRの鈍行で善光寺平を後にし、松本に帰る。部屋のテレビを点けると長野マラソンの録画中継をやっており、丁度自分が5km過ぎの給水ポイントで映っていた。ちょっとラッキー。夕食は近所の万両ラーメンで肉味噌ラーメンを食い、コンビニでシュークリームも買ってくる。ブログ更新と入浴で締め。
ラスト1kmの頑張り、あれが出来たのが沸々と喜びに換わっているなぁ。その余韻だけでしばらくは幸せだ!?

翌朝、新聞には8ページに渡って全完走者の記録が掲載されていた。その最初のページに自分の名前があるのも嬉しい。有給休暇を取ってあるので、クルマとチャリで高遠城址公園の桜を観に行く。最近はマラソン練習に集中し過ぎていたので、久々に季節感を取り戻した気分。

結果

公式リザルト
グロスタイム(公式記録) 2時間53分51秒 (最速者2:14:17, 最終完走者5:08:51)
ネットタイム(参考実質記録) 2時間53分5秒 ※スタート地点からゴール地点までのタイム
フルマラソン男子順位 162位 (/完走5327名/出走6204名/申込7039名中)
総合順位(女性含む) 176位 (/完走6335名/出走7444名/申込8471名中)
※人数は大会データページによる。ペースセッター含む

リンク

記録証
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