北長野駅の跨線橋より

The 15th NAGANO OLYMPIC COMMEMORATIVE 2013 NAGANO MARATHON

第15回 長野オリンピック記念 長野マラソン 参戦記

2013年4月21日

経緯

「むらよしの身体はもう駄目、マラソンなんてとんでもない。」
…痛みの中でそう諦めてしまおうと、何度か思った。しかし昨年9月の交通事故で怪我を負ったのは、あくまで肩。年が明け、二度目の手術を終えてから徐々にトレーニングを再開し、3月には10kmマラソンで大会復帰を果たした。痛みは違和感として残るがランニングには支障がない程度にまで回復し、脚は坐骨神経痛や左膝痛に悩みつつも2月に300km、3月に226kmの練習量を確保。
一年間の大会参戦スケジュールの中で、ツールド美ヶ原と共に最重要と位置づけている長野マラソン。今回サブスリー挑戦は無理なものの、走り方次第で3:10'切りなら視野に入る調子だ。よし、目の前にぶら下げる人参として、それを達成できたら次期iPadの購入を確定させよう。

日記

4月21日()大会当日 「ロング・スノー・ディスタンス」
東横インより

長野駅近くの東横インで迎える朝。部屋の床に落ちたケータイのバイブが鳴っている。…あれ、やっちまったか? 5時に起きる予定が、もう6時20分という大寝坊!「スタートに間に合わずDNSでした」ってブログに書くのか?…いや落ち着け、乗る予定の電車を一本遅らせれば大丈夫だろう。どうせこんな天気じゃ、早く会場入りしたって何もできまい。そう、窓の外はびっくりするほどの雪景色なのだ。統計を取り始めた1961年以降で最も遅いという、季節外れの積雪。「雨だったら嫌だな」くらいに考えていたが、こうなるともう開き直るしかない。
ホテルの朝食は、去年食べ過ぎた反省からおにぎり5個までにしておいた。
千円余計に払うチャリティーエントリーの特典で「Unite Japan, Unite the World」というタトゥーシールがあるので、これ見よがしにスネに貼っておく。北長野駅までの臨時列車は参加者無料。そこから会場までの1.5kmほどを小走りし、ウォーミングアップとする。4cmの積雪で、もうアディゼロジャパン2は水浸しだ。

スタート地点

やってきましたアクアウイング前、長野運動公園。グランドは真っ白で、ほとんど走っている人がいない。そういえば昨日受付会場で買ったパワージェルセットのオマケで、三七人参花粉末のサンプルが付いていた。体を温める効果があるらしいので、そうだと思い込んで飲んでおく。あとはアミノバイタル粉末も飲んで、荷物をゴール行きのトラックに預ける。濡れないように大きなビニール袋を配布しているあたり、さすがの運営だ。
自分のスタート位置はCブロック。予想タイム3:05'の申請でギリギリ、陸連登録のない一般参加としては一番前を確保できた。もちろんなるべく後をつかえさせないよう、序盤から飛ばす義務がある。やがて人が増え、ストレッチをする余裕がなくなってくる。スタート5分前、ビニール袋で作った簡易ポンチョを脱ぎ、半袖サイクリングシャツの背中ポケットに収める。気温0.4℃でこんな暴挙に出るのは、周囲では私一人だった。しかしこちとら冬の間、氷点下の松本盆地でトレーニングしとるんじゃい。まぁかなり葛藤したけれど。
ちなみに同日開催の車いす大会は、路面の積雪のため中止になったらしい。

8時30分に号砲が鳴り、もそもそと動き出す。スタートラインの通過まで1'33"。最初の信号を過ぎてすぐに、謎の大会関係車両2台が左車線を塞いでいる。スタート渋滞を悪化させるなんて長野マラソンらしからぬ運営失態だが、先日あったボストンマラソンのテロ事件を受けた事情か何かだろうか。
まだまだ雪は止まない。でも最悪のコンディションだなんて思ってないよ。すぐに氷水漬けの足裏が感覚を失うが、じきに慣れるだろう。軍手をしているけれど、手がかじかむ方が心配だ。

毎年思うが、前に立ち塞がるBブロック。BはブロックのBか妨害のBか(もちろん速い人はとても速いのだけど)。加えて今年は、水たまりの度に皆それを避けようとするので「水たまり渋滞」が発生する。こんなもん突っ切って行くしかねーだろ。で、1km地点のラップが6'08"。予想3:05'の申請で得たポジションに偽りがあってはいけないから、内心それを目指したかった。でももう諦めるべき状況となり、やはり3:10'目標に切り替える。過去の栄光「サブスリー」を目指すことさえ出来ない自分に不甲斐なさを感じつつ。
渋滞は緩和し、自分のペースを作りに行く。パンツはランパンに近いバギーパンツをはいているが、これはせめて膝丈タイツにしておくべきだった。寒風晒しのモモが硬いままで、なかなか温まりそうにない。それでも徐々にここまでのロスを取り戻していく。計算上は平均4'30"/kmペースとなるので、それを上回るラップが必要だ。2km地点4'42"、3km地点4'23"、4km地点4'24"、5km地点4'25"…。

長野マラソン13マップ

この寒雪にも関わらず、沿道から大勢の人々が声援をくれる。長野って、すごい。つーかテロどころじゃないね。ゲストランナーの浅井えり子を目撃しつつ少しの坂を登ると、大門交差点の左折。善光寺に向かって拝んでいくランナーも多いが、自分はそのまま中央通りの下りへなだれ込む。セントラルスクゥエア前の男声合唱は、今年は県歌「信濃の国」ではない曲を歌っていた。そういうレパートリーかな。

先月の信州スカイパークに続けて、今回もキャップにウェアラブルカメラContourROAM2を付けて動画を撮っている。本来自転車用に買ったものだが、撮影可能時間3:30というフルマラソンに耐えうるバッテリー性能が、このカメラを選んだ決め手だった。しかしビデオを撮っている以上、途中でトイレに行く事は絶対あってはならない。水分補給は必要最小限を心がけ、ビッグハットを過ぎた12.5km地点でようやく1回目の給水を受ける。スポーツドリンクを。

風は北東よりで、コース全体としては追い風区間が多くなるので有り難い。たまにある向い風区間は、ペースの合う風除けさんを探してかえってペースが上がったりもする。ただし肺をまた壊すのが怖いから、「呼吸が楽な範囲で」を常に意識しながら慎重にコントロールする。15km手前からの対面走行区間はトップランナーを目撃する唯一のチャンスとなるが、男子トップの川内優輝や女子トップのプチコワはとうに通り過ぎていて、女子2位のジェプケンボイとすれ違うのがやっとだった。
ここで赤いパッケージのゼリードリンク「アミノバイタルパーフェクトエネルギー」を水分補給も兼ねて摂取。やはりかじかんだ手ではキャップを開けられず、何度もかじってようやくひねることができた。スタート前に予め開けておくべきだった。エムウェーブを過ぎて、去年失速が始まったポイントなだけに弱気になりかけるが、まだまだ行けそうだ。ペースは4'20"/km前後で推移し、ようやくスタートロスを吸収。五輪大橋を渡り終えると中間地点となり、1:34'37"。単純に倍すればまさに目標タイムだが、不安いっぱい。

「空が明るくなってきたね。」
沿道から聞こえた声で、ハッと空を見る。そういえば雪がほぼ止んだし、楽になるかな? パワージェルを補給し、それを流し込むため2回目の給水を受ける。25km地点のホワイトリング。ここから徐々にペースダウンしていく。千曲川を渡って右岸の土手道を経由し松代町へ。とうとう4'30"/kmオーバーを記録しつつ30km地点を通過した。後の向い風区間も考慮に入れて、ここはアドバンテージを失いたくないところ。周囲はサブスリー崩れの失速ランナーだらけだが、少しガンバリを入れて「ふたこぶラクダ」と云われるアップダウンをクリアしていく。
再び千曲川の土手道に上がるところで、消防ラッパの応援がある。カッコイイ。思わず諏訪御柱祭のノリで両腕を振り上げ応えていたら、体が一気に酸素不足に陥って苦しくなった。まぁ、これくらいの楽しみはいいんじゃないだろうか。

the Canadian Club

背中のポケットにはパワージェルがあと1個ある。使わずにとっておこうかと思ったけど、このコンディションじゃ体を冷やしたら一巻の終わりだ。猛烈な発熱を前提として半袖シャツで走っているのだから、ちゃんと補給して、また給水も受ける。スタートライン前で公式テーマソング『バックグラウンドミュージック』を演奏していたthe Canadian Clubがワープして、ここでも演奏している。
岩野橋を渡って35km地点からの千曲川左岸が最後の向い風区間。ペースの合う人を見つけられず、一人旅で頑張るしかない。沿道から「ナイスラン!」と声を掛けられると、本当に自分が良い走りをしている気がしてくる。よし、このまま最後までナイスランするんだ。だいぶ応援に心を貰った。無ければ折れていたかも知れない。こうして4'30"/kmほどのペースを維持することが出来た。

土手を下りると一面の桃畑。今年は山や青空は見えないけど、雪景色にピンクの花が咲き乱れているシュールさも良い(ただし農業被害があったようだ)。コース上では3時間ペースランナーが辛そうに歩いている。この天候で、よくここまで責務を果たした。お疲れ様。
ラスト前に力を溜める癖で4'37"/kmまで落ちつつ、40km地点を通過。あとは追い風なので余裕はあるけど、力を出し尽くそう。残り1kmで呼吸制限を解除。脚はほぼ使い切っているのであまりスピードを上げられないが、順位は着々上がる。

左折して一番苦しい南長野運動公園の園路、今年は笑顔だ。長野オリンピックスタジアムに入り、恒例の人工芝スパート。だが気分的に応援パフォーマーたちとのハイタッチを優先する。二本あるように見えるゴールラインのうち後の方でタイム計測をしている気がするので、そこを油断しないようにしつつ駆け抜ける。自己ベストより15分落ちだが、今回の目標に対しては悠々の、3時間8分52秒でフィニッシュ!「やった!」軽くガッツポーズ。次期iPad購入決定。それにフルマラソンで失速なく、ペース配分が上手くいったのは何年ぶりだろう。練習量なりに力を出し切れた充実感を込めて、コースを振り返りおじぎする。そしてもう一度ガッツポーズ。

すぐに体が冷えてくるから、バスタオルを掛けてもらえるのはありがたい。顔を拭くためのおしぼりも渡されて便利だ。スポーツドリンクとアミノバイタル粉末2本、おにぎりも受け取り、胸ゼッケンの計測チップを外してもらってスタジアムの外に出る。
座っておにぎりを食べていたら、長野県産コシヒカリの宣伝クルーが撮影に来た。そりゃもう美味しそうに頬張る。オマケにもう一個おにぎりをくれて、それを頬張るシーンもパシャパシャ撮られる。美味しいけど、そんなに一気に食えないよ。ちょっと強引に詰め込む。何にせよラッキーだった。(→JA長野県4/25付広告

長野オリンピックスタジアム

元気を取り戻し、急ぎ荷物を受け取って着替えを済ませ、スタジアムに走る。友人のHAがそろそろゴールする頃だが、ちょっと間に合わなかった。風が冷たいけれど、陽が差してきて雪と人工芝が一気に眩しくなる。自分のタイム速報をツイートしたら、返信がいくつも付いて嬉しい。外の出店でドネルケバブを食べ、そろそろ離脱しよう。シャトルバスがなかなか動かないのは、長野マラソンの数少ない欠点と言えようか。
HAが長野に来たついでに松本に泊まっていくので、彼のクルマに同乗させてもらう。国道19号にある入浴施設さざなみは、犀川の流れを眺めながら温まれるのが特長。水シャワーでアイシングもしておく。
無事帰宅し、ビールで乾杯。お疲れ様でした。

翌日は有給休暇。その後数日も体調はなかなか安定しなかったものの、思い出すとニヤニヤするような状態。記録よりも記憶に残る、伝説の雪レースだった。サブスリー復帰にはあまりに遠いが、長期療養明けのフルマラソンとして、充分なステップを踏めたと思う。そして何より楽しかった。
ステップと言っても、これで一旦ランニングは打ち切り。持久力趣味「二毛作」のもうひとつ、自転車ヒルクライムシーズンが始まる。

結果

後日郵送された記録証
公式リザルト
記録 3時間08分52秒 (最速者2:14:27, 最終完走者5:11:26)
ネットタイム 3時間07分19秒 ※スタートラインからの計測参考記録
男子順位 410位 (/完走6682名/出走7659名/受付8327名/申込9123名中)
総合順位 431位 (/完走7772名/出走9055名/受付9883名/申込10793名中)
※人数は大会公式ページのリザルトから、順位に関係しないゲスト及びペースランナー(完走12名/出走13名)を減算。
総合には女子及び視覚障害者を含む。
8:30気象: 天候雪,気温0.4℃,湿度95%,風向東,風速2.0m/s

キャップマウント動画は前後編に分かれたユーチューブ版と、ダイジェスト化したニコニコ動画版をアップロード。ランナー視線でフルマラソンを丸々撮った動画って他にあまり見掛けないし、自分でレースを振り返るにも良い資料となりそうだが、レンズに水滴や雪が付いちゃってるしブレも酷くて品質が悪く、需要は無いかも知れない。

YouTube:【帽子載】長野マラソン2013前半編
YouTube:【帽子載】長野マラソン2013後半編
ニコニコ動画:【帽子載】長野マラソン2013ダイジェスト編※音声解説付き

ところで次期iPadはいつ発売されるのだろう。


リンク

オールスポーツによる写真
長野マラソン公式ページ
大会概要やコース紹介、公式記録など。
RUNNET
各マラソン大会のエントリーや速報など。
オールスポーツコミュニティ
スポーツ写真サイト。(右のサンプル写真)

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