出逢い岬から戸田湾

自転車ツーリング記

木曽・園原と西伊豆・富士西麓

2020年8月10〜13日

日記

8/10(月・祝) 木曽の谷には牧伸二
奈良井宿

お盆休みは今年も九州!…などと意気込めない今年の疫病騒ぎで、計画は大幅縮小。3日目になってようやく、松本をチャリで出撃する。すっかり荒んだ人心。私は旅人です、みたいな格好で走っていたら何が飛んでくるか分からず、ましてゲリラキャンプは危険すぎる。いかにも近所をポタリングしています的に、軽装ホテル泊でのツーリングとする。GoToトラベルで税金から35%補助されるのは正直ありがたい。

「木曽の谷には真木茂り♪」向かい風を気にしつつ南へ木曽路に入り、まばらに観光客がいる「国は偉人のある奈良井♪」を抜ける。鳥居峠は国道19号のトンネルを利用。死亡率1%くらいありそうな、狭くて交通量の多い第一関門を無事通過した。「流れ淀まずゆく水は…南に木曽川♪」の流域に入り、「旭将軍義仲も♪」ゆかりの中山道旧道をなるべく選びながら走る。謎のアンバランスな歩道橋が面白い。

寝覚の床

昼食は木曽福島のちっちゃいジャスコで菓子パンたっぷり。宿場町ごとに水場が豊富なので、水分補給には困らない。塩分は毎度定番の梅肉チューブで摂る。「木曽の棧かけし世も♪」心して先を急ぐが、「旅のやどりの寝覚の床♪」は有料入場してじっくり岩場を探検する。弁財天の持つ楽器がウクレレに見える? 牧伸二を連想する。

信州の山の中とはいえ、道路の気温計は34℃を指す。灼熱で知られる多治見に近づくほど暑くなるのは当たり前か。外国人観光客がちらほら居る妻籠宿を抜け、いよいよ中央アルプス越えの清内路峠。もちろん国道256号のトンネル利用だから楽勝かと思いきや、延々と続く登り坂ですっかりへろへろペース。ドリンク自販機を発見する度に休んでしまうわ。トンネル内まで登り坂だし。

富士見台高原ロープーウェイ

旧清内路村に入るのは初めて。国道を外れもう一頑張り、横川峠を越えると園原インター。長野県歌『信濃の国』で「尋ねまほしき園原や♪」とも歌われる、古代よりの和歌の里である。畜光式の星座歩道をとぼとぼ歩いていると、名古屋圏や関東圏のクルマが次々とやってきて、ヘブンスそのはら行きのロープウェイで天に召されて行く。いいなあ、日本一の星空ツアー。

走行ルートは元々ゴールデンウィークに計画していたものだが、緊急事態宣言を受け延期した。ようやくの実行だが、今は酷暑が過ぎる。昼神温泉は残念ながらスルーしアップダウンのある道を北東へ、19時過ぎにようやく飯田市の殿岡温泉湯〜眠に到着。食堂で夕食を摂り温泉に入り、和室の部屋で大の字になってぐったり。初日から走行距離150km、標高差1,640mと力を使い過ぎた。明日は計画通りに走れそうにない。

旧中山道の謎鉄橋 妻籠宿 殿岡温泉湯〜眠(和室)
8/11(火) 東栄りんこうまつり
阿南町付近

飯田インター近くのホテルで迎えた朝。やはり疲れは全然取れていないが、とりあえずバイキング朝食はしっかり摂る。今日は単なる移動日で全部鉄道でも良いのだが、飯田線に豪雨災害による運休区間がある。仕方がない、走ろう。今日も良すぎる天気で、ドリンク自販機が生命線になる。

南へ続く国道151号「祭り街道」が下條村、阿南町(あなんちょう)と、これでもかってくらいにアップダウンを繰り返す。昔よりは改良されて走り易くなっているのだろうけど。清流な和知野川を渡ると「はかりまきループ橋」地帯で一気に標高を上げていく。身も心もからからになる頃、突如開ける桃源郷が新野千石平(にいの せんごくだいら)である。かつてここの道の駅でゲリラキャンプしたものだが、今回は昼食を頂いて行こう。

飯田線東栄駅

さらに南へもうひと頑張りすると標高1,060mの新野峠。「県境を跨ぐ移動は慎重に」と圧力が掛かる時世…禁断の愛知県入りである。ここからはがんがん下り坂で表定速度は上がるが、心は既に折れている。午前中に一雨降ったのか路面から水蒸気が上がっていて、却って蒸し暑い。

豊根村を経て、東栄町の南外れにある飯田線東栄駅でチャリを降りる。TOEIだけにランドナーが似合う駅? これは丸石だけど。豊橋まで走れれば運賃を節約できるが、猛暑と交通量を考えると苦行でしかない。輪行して、ちょっと車内でゆっくりうとうとしたい。駅前の売店は疫病騒ぎで休業中。持っててよかったカロリーメイト。

東海道新幹線静岡駅

豊橋で新幹線特急券をポンして、静岡県の静岡駅で下車。からやまで夕食を摂りつつ清水まで走り、本日走行は計92km、標高差1,100m。ホテルマイステイズにチェックインすると、自転車で来る客は初めてなのか、駅の有料駐輪場に駐めてくれと言われる。じゃらんの謎ポイント適用でタダ同然の宿泊だから文句は言うまい。それより部屋の風呂とトイレが分かれた造りで、座って身体を洗えるのが有り難かった。

8/12(水) 旅ゆけば駿河の湾に梅昆布茶の香り
木曽〜伊豆マップ 駿河湾フェリー、清水出航

昨日しずてつストアで買ったおにぎりを朝食とし、ホテルをチェックアウト、すぐに清水港に着く。存続が危ぶまれている駿河湾フェリーだけに数日前ウヤが発生した時はヒヤッとしたが、写真映えを狙い過ぎて転落し海へ還った人がいただけとのこと。今日は元気に運航決定。静岡県民のほか甲信越からの客も半額になる「お願いですから、乗ってください。」キャンペーン開催中で、ラッキーだけど何だか申し訳ない。

出航時の汽笛を聴くと涙が出るのはなぜだろう。客室内は冷房が強烈すぎて寒いので、ホットコーヒーを頂く時以外はほぼデッキで過ごす。やっぱり人類は調子に乗りすぎてるのよ。東へ進むフェリーの左手にうっすらと富士山を眺めながら、やや雲のかかる伊豆半島の土肥(とい)港に到着する。少し南に回って西天城高原道路から攻める予定もあったが、季節柄と時節柄、無理はしたくない。直接東の土肥峠に向かう。

西伊豆スカイライン

さっそく全身から汗が吹き出し、手持ちのドリンクでは足りなくなるかなと思った所に自販機があって助かった。標高が上がれば涼しくなると信じて国道136号、途中からは旧道を登っていく。通り抜けできませんみたいな標識もあったが、一部倒木を処理した跡があったくらい。緩い斜度で日陰も多く、快適に土肥峠に到着した。

ここから北へ「一生に一度は走りたい」とずっと憧れ続けた西伊豆スカイラインを行く。まだしばらく登り坂が続くが、標高900mあたりがハイライト。なるほどこの標高にして長野県のビーナスラインにも劣らぬ絶景ワインディング! 富士山がもっとはっきり見える季節だとなお良いだろう。自転車乗りもそこそこ往来している。

戸田湾を見下ろす

写真を撮ろうと謎駐車帯に寄る段差でズシャアアアアアア!! 派手に転倒した。左肘に自分史上最大級の擦過傷を負ってしまう。その面積に対応できるパッチは持ってない。貴重なボトル水と疫病用アルコールで流し、放っとくしかないわ。「いたいのいたいのとんでけ〜」とルビィちゃんのゲームボイスを何度も脳内再生すれば、ほら、痛くない!・・・こんな爽やかなサイクリングをしてます的なツイートを打っているが、現実はめっちゃ痛みをこらえているのである。

文字通り手負いとなって意気消沈し、飲料水も足りなくなったので達磨山登山はスルー。いつかまたリベンジに来たい。戸田(へだ)峠からの急坂を西へ下り、道の駅くるら戸田で鞠莉ちゃん缶バッジと寿太郎みかん飲むヨーグルトを購入。町のスーパーで昼食を買い食いし北へ進む。戸田湾の絶景を背に、西伊豆らしい豪快なアップダウンが始まるが距離は短い。ラブライブサンシャイン痛ジャージ勢とすれ違いつつ、間もなく大瀬崎(おせざき)に到着。

伊豆大瀬埼灯台

これほど賑やかな場所を見るのも久々という海水浴場を横目に、入園料を払って奥の遊歩道へ。不思議な淡水池である神池沿いの内周と、富士山を望む海沿いの外周を歩く。神々しいビャクシンの森でも暑さでへろへろ、戻って海水浴場の自販機が有り難い。あとは東へ海沿いにゆるゆるサイクリング。内浦はもう何度来ただろう、帰ってきたーって感じがする。辻宗商店でぬまっちゃ緑茶とのっぽラスクを調達し、もう少し北へ走る。本日距離80km、標高差1,370m。

東横イン沼津駅北口2にチェックイン。GoToトラベル還付金は後で国に申請する方式でちょっと面倒だけど、まぁ使い慣れたホテルだし梅昆布茶に癒やされる。街へ出て沼津駅縦断フェア3店(ヌーマーズ・雄大フェスタ・プレミアムショップ)で買い物や食事をし、ちょっと切ない千歌ちゃんブロマイドをゲット。ラブライバーはどうしてこう、多々買いが終わらないのだ。

ペルセウス座流星群の夜だけど、街中のホテル泊では観察できないわ。

静岡県道223号(駿河湾フェリー船上) 三の浦総合案内所にて 沼津ラブライブグッズ
8/13(木) 田子の浦ゆ うち出でてみれば 真夏にそ 富士の高値な ソフトクリーム
千本浜と富士山

初日の疲れがたたり2、3日目は若干予定を縮小してのサイクリングだった。最終日は沼津から甲府まで距離100km、標高差1,230mをしっかり走れ。数字の上では「ゆるポタ」だが、連日の熱中症アラートが行く手を阻むし、午後3時までに到着したい事情がある。ホテル朝食後、やや急ぎの出発となる。

寄り道は避けたいが、せめて千本浜から海沿いに出る。田子の浦へ続く砂浜の左手に駿河湾、右手に富士山の素晴らしい眺め。これは毎日でも走りたい道だ。後ろ髪引かれる思いで内陸に入り、坂を登って行くと富士宮の市街地。脚がダメそうならここから輪行しようと考えていたが、追い風にも助けられ調子は上々。予定通り走れそうだ。

朝霧高原から富士山

今日も標高が上がるにつれ涼しくなると信じて、北へ登坂がんばる。いつしか朝霧高原に入り、富士ミルクランドでソフトクリーム休憩。飲み放題の水場が有り難い。西側からの富士山もさすがの雄大さだが、国道139号に合流すると交通量がぐっと増え、写真を撮るのも一苦労。剣ヶ峰が見えると、富士登山競走の日を思い出す。

標高978mの鞍部で静岡県から山梨県に入れば、道は下り基調となり辺りは樹海めいてくる。本栖湖を見ると富士五湖ウルトラマラソンの日を思い出す。昨日買ったラスクをおやつに一休みし、精進湖から北へ精進トンネルを抜ける。上九からの登り返しわずかに右左口(うばぐち)トンネルも抜ける。さすが甲府盆地に入ると、吹き荒れる熱風が半端ない。ハッピードリンクショップが点在するのは良いんだけど、日陰が無いんだわ。じっとしてたら死ぬ。

山梨県立科学館プラネタリウム

それでもかつやで遅い昼食を摂る余裕はありつつ、最後に愛宕山ヒルクライムを制して山梨県立科学館に到着。連絡先記入や検温などの手続を済ませて入館するが、もう展示を回る元気はなくて1時間ほどぐったりする。午後4時にプラネタリウム入場、客はそんなに多くない。長野県の佐久・松本・伊那(予定)にあるオルフェウスさんを上回る描写力を誇るカイセイさんによる光学投影が楽しみだったのだが、たまたま故障のためデジタル投影機に代行させていたのは残念。

星空解説のあと、ドーム映像「planetarian特別版」の再生。これを上映する施設は全部全バージョン回っているからもう10回目なんだけど、宇宙のことや人類のことを考え直す大切な機会になっている。バージョンは夏のショート。故障した投影機を修理しつつ解説員と屑屋が打ち解けてゆく描写があって良い。

山梨県立科学館から甲府盆地

甲府駅から輪行で松本に帰る。例年の夏に比べて軽装備かつ短い日程だったが、しっかり燃え尽きた。一方でスマホを封止しなかったので日常の延長になってしまい、非日常的な旅情は半減。まぁこの疫病騒ぎじゃ情報収集を怠れないし…。

「とにかく自粛、何が何でも自粛」と言う人から見れば、ほいほい県境を跨ぐ私の行いは非難の対象かも知れない。確かにそれも感染拡大を防ぐ一つのアプローチだ。もう一つ、しっかり日光を浴びて運動し滝のような汗をかく。こうして己の抵抗力・免疫力を育むのも重要なアプローチ。ウイルスの温床と言えるクーラーの効いた場所に長居をしないなどリスク管理をしつつ、自分なりに開放的な夏を過ごしたい。

富士ミルクランド 右左口トンネル 山梨県立科学館planetarianポスター

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