小淵沢

14th YATSUGATAKE NOBEYAMA HIGHLAND 100km ULTRAMARATHON

第14回 星の郷八ヶ岳野辺山高原100kmウルトラマラソン 参戦記

2008年5月17〜18日

経緯

大会パンフレット

前月の長野マラソンで、42.195kmを三時間以内で完走する“サブスリー”は達成したものの、本来の「持久力への挑戦」からどんどん離れてスピードを追求していくことに、違和感を覚えていた。その一つの解として、絶対やらない筈だったウルトラマラソンにエントリーしてしまう。「ただでさえマラソンランナーなんてキモイのに、ウルトラランナーはそれに輪をかけてキモイ。」…客観的にはそんなとこだろう。ほとんどの人が一生自転車でも走らないような距離だし、エントリーした大会『星の郷八ヶ岳野辺山高原100km』は標高差もありそうなコースだ。でもこのイベントを通じて「持久力とは何か」を知ることが出来る。そこにワクワクするのっておかしいかな?

エントリーフィーは14,000円と、やはり普通のマラソンに比べて高い。さらに満を持して前泊するため宿賃も支出した。調子はと言えば、サブスリーが至上目標だった長野マラソンに比べれば燃え尽きていて、ろくな練習をせずもリラックスした状態。そういえばゴールデンウィークに美ヶ原林道で紛失した財布や携帯電話を探すため、標高差のある林道全線を山狩りジョギングしたのは良いトレーニングとなっていたか。本番はまずは完走だよね。一応10時間切りのサブテンも目指すが、どんな苦しい思いをするか、まったく想像がつかないや。

日記

2008.5.17(sat)前日

昼までに旅仕度を整え、松本からJR中央本線の特別急行あずさ16号で山梨県の小淵沢までワープ。さあ今回の旅で最大のイベント、小海線の最新鋭ハイブリッドトレイン『キハE200 こうみ』に乗るのだ。信濃毎日新聞のアニメ版テレビCMにも登場し、全長野県民のみならず世界中の新海誠ファンにも膾炙している、は言い過ぎか。
ただし小淵沢〜小海間では一日一往復しかないレアな体験となるためか、2両編成がめちゃ混み。乗り心地やモーターサウンドをあまり堪能出来ぬまま、深い森の中をガンガンズンズングイグイ上昇して、長野県南佐久郡南牧村(みなみまきむら)の野辺山に到着した。言わずと知れたJR最高地点の駅だがレタス以外の特産物はなく、土産物屋はちょっと寂しい。

今日の宿『リゾートイン黒岩荘』は徒歩4分と至近。まだチェックイン時刻ではないので荷物だけ置かせてもらって、駅前から2分の社会体育館へ受付に行く。腹が減ったし、後でカーボローディングパーティーがあるのに菓子パンを買い食いしてしまった。
また宿に戻りチェックイン、そしてすぐに選手説明会を聞きに受付会場へ。真面目には聞かず、メールばっか打ってたけど。だって結論が「走ってみなけりゃ分からない」だからな。ただ小耳に挟んだのは、登りと下りで使う筋肉が違うから、ずっと平坦なコースよりは楽だということ。本当かいな。
また宿に戻り、ゼッケン貼りなど少し準備。相部屋の人とも少し話す。初ウルトラの私に対して皆は百戦錬磨のベテラン達だから、仲良くしておくに越したことは。

歓迎パーティー

また体育館に出向き、歓迎カーボローディングパーティー。一人で来るもんじゃないが、酒が苦手なのでビールを注がれないのはメリットか。食って喰って食いまくれと、カレー2皿、焼きそば2皿、パスタ1皿、サラダ、ヨーグルト、フルーツ…。ステージ上では山梨学院大学のチア等が楽しませてくれる。
苦しい腹で宿に戻る。一体今日は何往復したのか。既に部屋に布団が敷かれていたのは良いが、枕が部屋の出入口側に配置されている。ま、いいか。21時就寝。

実は左足裏が妙に痛いのだが、明日までにきっと治る。

2008.5.18(sun)当日

同室の連中が、どうにも夜中に落ち着かない。電話やトイレのため人の顔の横を歩いて入退室を繰り返してたり、2時半起床の示し合わせを裏切って1時半からビニールをガサゴソと支度を始めていたり。寝付ける訳もなく、不愉快と不安で満たされた朝だった。こんなことなら駅前の公園でテント泊をしてた方が十倍マシだった。何がウルトラのベテランだ。仙人の嗜みなんかじゃない。修羅と呼ぶには勿体ないガキどもの気違い沙汰!
一切口を聞かぬまま朝食ご飯3杯平らげる。昨夜あれだけ食ったのに大丈夫か。睡眠不足がレース後半に体をどう蝕むのか。ともかく文句は吐かず、闘志だけを燃やせ。おまえらに負ける俺じゃない。

南牧村社会体育館

宿に荷物を置いては行けないとのことで、早々にチェックアウトを済ませ、未明の会場体育館に預ける。靴を脱いで上がらなきゃいけないんだけど、出入口がやたら狭くて混乱する。どうにかしてくれ。
わずかに明るくなりゆく空。昨夜雨が降っていたのでぬかるんでないか心配だが、アナウンスによればドライとのこと。気温は心配したほど低くはなく、予定通りの服装、すなわち上はレーシャツ2枚+アームウォーマ,軍手,キャップ、下はランニングパンツ+長ジャージ,五本指靴下で。シューズは高速トレーニング用のアディゼロLT3を選択。野辺山の前半はトレイルランシューズが推奨されるほどの林道コースで、LTはオーバースペックというか場違いなのだが、そこまでの予算は無いし、一番自分に合った靴で走ればいいじゃん? 背中のポケットにはアミノバイタル粉末3袋と、エイド給食表。おしるこやうどんが楽しみだなー。
装備は以上。機嫌を直しながら若干の給水とウォーミングアップを済ませ、スタート行列の前の方を確保する。ちょっとYGUチアの応援パフォーマンスからは遠くなっちゃった。

100kmの部には千人の気違いが参加。他に71kmの部や42kmの部も朝5時に同時スタートとなる。サブテンペースで行ければ午後3時にはここに帰って来れる筈だが、気が遠くなるような遥か未来のお話。なめてるんじゃないか? いったいどうなることやら…。

 パーン!

標高1,355mを今スタート。ラインを跨ぐまでわずか6秒。自重すべきでもつい先頭集団を追ってしまう。踏切を渡り1km地点がネット4'21"。やはり急ぎ過ぎ、少し抑えろ。

コース序盤は、足慣らし的に野辺山高原をぐるりと回るコースとなる。左手にはまんまる赤い朝日が、右手にはパラボラアンテナが映える。多少の朝もやも良い感じで、スタートを切れた嬉しさのハイテンションが続く。ペースは落ち着きかけたが、長野マラソンで中盤まで争った特徴のある後ろ姿を見付け、食らいつこうとする。が、やっぱ無理。また落ち着いてじりじり順位を下げる。
アンテナをぐるっと回って踏切まで戻って来た。始発列車はまだの時刻。線路沿いを走ってJR最高地点に至る。

平坦らしい平坦路はここまで。右折して国道を渡ると、いよいよ八ヶ岳中腹への林道登りが緩やかに始まる。
つーか横一面の八ヶ岳連峰がすげぇぇ。もやが晴れつつもまだ少し朝焼けた赤岳をはじめとする主峰群、新緑の高原地帯。いつも松本から眺める北アルプスとは格別な、未開感のあるパノラマに「すげぇ」「すげぇ」を連発。だがそれも束の間、路面は砂利道になる。げっ、意外にガレてやがる。LTでは不安定の極みで、気を付けないと次の一歩が危険。景色を楽しむ余裕は激減した。
10km地点のタイムは48'05"で総合18位。ただしこれはチップの計測ポイントで、実際の10km標識はあと100m、つまり40秒ほど後にあった。ともかくまだちょっとハイペースである。しかし斜度を増してきている登り坂では負けたくないし、下り坂でもあまり抜かれたくない。と我がままで自制が効かないのは経験不足ゆえか。
それにしても中腹を巻くように走っているならもうちょっとフラットでも良さそうなものだが、実際は登りと下りしかない。パンフの略図よりずっと標高差が積算されるぞ。コース最高標高1,908m付近の道端では若干の残雪が見られるが、そんなに寒くはない。それより靴底の空気穴に石が挟まるのが悩ましい。
左足裏の痛みはあまり気にならないが、それでも少々かばっているのか、この不整地で右の足首がやられたっぽい。どこまで持つか。長い下り坂になるとまるで違うストライドの人が抜いて行く。下りが苦手は私はピッチ重視で、何とか衝撃を食い止めるしかない。もう膝の上がチリチリ焼けるように疲れてきた。前後に人が見えなくなると、本当にこの道がコースなのかと不安になったりもする。

下りの途中でいったん舗装路になる。んで登り返しているうちにまたダート。30km地点のエイドから少しずつ給食を採り始める。昨夜と今朝の食い過ぎでお腹たっぷんたっぷんだったのが、ようやく収まってきたし。一番楽しみだったのは35km地点『稲子湯』エイドのおしるこ。白玉が一つ入ってただけだが。タイムに拘らない人はここで温泉に入ることも出来るようだが、自分は給食だけにして林道最後の登り坂へ進む。
ポケットのエイド給食表には予定通過タイムも記入してある。大雑把に50km地点まではサブナインペースで、そこから後半はサブテンペース、計9時間30分の作戦。5km毎にやれ何分の貯金がどうのこうのと計算しながら走り続ける。

42km地点;八峰の湯

走りにくかった林道が終わり、ようやくLTの本領発揮、…とは行かない下り勾配。リエックスという軟派な施設群を下りて行き、40km地点3:26'14"で15番手と、かなりの上位。その約10分後に42km地点『八峰の湯』エイドに到着する。ここに着替え荷物を預けてあるのでピットイン。あれ? みんな次々通過して行くぞ。もう一人の着替え利用者もさっさとリスタートを切ったし。
まぁいいや。上はレーシャツ1枚にしてアームウォーマや軍手を外し、キャップを交換。下も長ジャージを外してランパン1枚に。わざわざ日焼け止めまで塗って、ストレッチしてみる。うーん、予想外のアップダウンの激しさに疲れているなぁ。まだ走んなきゃいけないの? 荷物に入れておいたデジカメで42kmの部のゴールシーンを撮ったりしているうちに、リスタートまで9分も掛けてしまった。これでサブテンがギリギリ駄目になったりすると、後悔するんじゃないか。まぁエイドでWGHプロ粉末を頂けたし、頑張ろう。

 ここからがウルトラへの旅立ちだ。

松原湖への下り坂では慎重に、千曲川沿いの僅かな平坦路ではやや頑張って、小海町の50km地点は4:21'38"。距離的には折返しだが、標高が880mと一番低い。ここのエイドで蕎麦など多めに給食してから、30番手とだいぶ落ちた順位の巻き返しにかかる。新海誠の出身地であることを思い出すと、脳内にOne more time...が流れる。
やや登り坂。向かい風なので風避けさんが欲しいが、ばらけすぎてて無理。それでも55kmまでは快調に、サブナインいけるんじゃないかというペースだったが、これ以上の距離はトレーニングでも走ったことがない未体験ゾーン。それに合わせるようにペースがガクンと落ちてくる。・・・こりゃあ、サブテンに下方修正だな。つまり、非常に苦しい。「もしかして前半飛ばし過ぎちゃった?」感がつのる。

北相木村内はピストンコースとなり、先行のランナーとすれ違う。女子1位の人とか序盤に争った人とかもいて、ちょっと悔しいかも。みんな速いなぁ。しかもしばしば後続に抜かれるようになった。同じくらいの人数を撃墜しているので順位変動は少ないが。みんな55kmが壁なのかな。
村役場が大エイド。ここに荷物を預ける人もいるようだ。コースは折り返してやや下り坂。たまーに居る住民の応援になるべく手を振って応えつつも、序盤はあっという間だった次のエイドまでの距離が、長く長く感じられるようになってきた。あまりペースが下がるとやばいかも。アンパンマンの着ぐるみとすれ違ったぞ、あれには負けられねぇ。

野辺山ウルトラマラソンマップ

エイドの度に腹がたっぷんたっぷんになるくらい飲み食いしてるのも問題だが、この楽しみがないと精神的に持たないからいいのだ。いいのか?
ピストン区間を終え南相木村に入ると、あとは馬越峠まで登りのみとなる。ずーーっと先に峠の切り通しらしき地形が見える。まさか……アレ!!? いや、少しずつ山を巻いて道を登って行けば不可能ではない、、が、既に未知の距離を超えている脚にあの壁のような山容は…、「ウソだろ?」としか思えない。
すっかりペースも落ち、私以上に前半無理をした人を抜くことはできるが、きちんとペースを組み立てて追い付いてきた人には、僅かのあいだ食らいつくことさえできない。もはやレースではなくなった気がする。女子2位の人にも抜かれる。痩せ体型が多いマラソン参加者の中にあっては、いわゆる健康的に見える人だ。私なんかよりずっと賢いトレーニングを積んできたのだろう。
ペースが下がれば下がるほど栄光のゴールが遠のく。キロ7分位掛かるようになり、サブテンへの貯金がみるみる失われる。数時間後の自分はどうなっているのか。あぁ、野辺山ウルトラを甘く考えていたなぁ。

71kmの部ではゴールとなる『滝見の湯』エイド。ここでもお腹たっぷんたっぷんに食って気を紛らせる。ここからが野辺山の本番なのに、ゴールしちゃうのは勿体ないよね? ザバスのエイドがあり、「これをかけると血行が良くなるから」と何かのスプレーを脚にかけてくれた。助かる。あとピットインリキッドというエネルギーゼリーもくれた。次のエイド前で飲もう。
しかし順位が気になるし、サブテンも怪しくなってきたから、もうあまりエイドでゆっくりはできまい。さぁ地獄の馬越峠へアタック開始だ、走ろう…。登り坂なら、まだ得意意識が残っている。ぞろぞろと続いていた後続のランナーは少しずつ離れて行く。みんな苦しいんだ。
もしかして、道はどんどん左に逸れているし、やっぱりあの峠じゃないのかな、という甘い考えも束の間、係員に右折を指示される。ついに本格的な峠道。もう、こんなヘタレなゆっくり走でも、「走っている」状態を維持してさえいれば。後続は見えなくなるし、一人、二人と抜くことはできる。ペース的にはサブテンよりだいぶ遅いが、俺が9時間台最後の走者になってやる!
そんなことを考えて頑張ろうとすると、心臓がキューッと悲鳴を上げる。でもここは走って越えてみせる。マラソンに歩きを入れてなるものか。それが目標だったっけ。坂の途中のエイドに着くなり、思わず「ほんっとにキツいねここは!」と本音が漏れる。歩いた方が楽? 速い? という心の誘惑を全て却下しつつ走る。

はやくっ、せめて斜度が緩くならないか。あとあのヘアピンを過ぎたら…あのカーブを曲がったら…まだか。遥か眼下には走ってきた道と、これから登るランナー達が見え隠れする。ここらで71kmの部の存在意義が身にしみて解った。馬越峠はまさしく悪夢でしかない。こんなコースを設計した人は、大会の歴史の中できっと何千人ものランナーに怨まれてきただろう。
そして最後の左カーブ。やった、峠だぁ!! 標高1620m。少しホッとはするが、時間がない。ここからはむしろ苦手な下り坂で、いったいどれだけ抜き返されるのか。脚を壊さず下山できるのか。もはや効き目を実感できなくなってきたWGHプロ粉末を2袋もらい、景色なんざ見る余裕もなく早目のリスタート、直後の80km地点が7:44'15"で、21位まで盛り返している。

心臓と呼吸は楽になるが、脚が痛い。もう膝上の筋肉が衝撃に耐え切れず、下りなのに時間が掛かる。後ろからストライドを伸ばせるランナーが2〜3人抜いて行く。いいなぁ、私にもあんな脚があればサブテンなんて余裕なのに。
どうにか川上村の村落まで下りたが、スピードアップできるわけじゃない。焦るが、とにかく次のエイドを目指すしかない。千曲川沿いのサイクリングロードを少々走り、左折すると最後の大エイド。ここでもあんまり長居は出来ぬと思ったが、先に到着しているランナーが「ここのうどんうめーよ! もう10時間切れるでしょ確実に!」と勧めてくる。…負けた。うどんを食べられるのはここだけだし、頂いていこう。ああ、うめぇ! これでエネルギー切れの心配はなくなるだろう。しかしどこで脚が止まるのか。全然確実なんかじゃない。不安でしょうがない。初ウルトラなのだから仕方ない。でもラストを笑顔で飾れるように、顔を洗っておく。

そう、栄光へのフィナーレは残り1時間半で13km。登りもあるが、いつもの近所ジョギング程度のボリュームだと思えば、何とかなる、何とかなる。
90km地点を8:47'26"。道は野辺山高原へ向かう。線路沿いなのにキッツイ登り。あのハイブリッドトレインとすれ違ったのはラッキーとでも考えよう。少し平坦になると抜かれ、登りになると抜き返す終盤戦。序盤の林道で痛めた右足首が炎上中。しかもLTのソールの薄さが災いして、スピードへの貢献はあったかも知れないけど、足裏が両方とも一歩毎に痛くてしょうがない。90kmも走ってりゃ、そりゃあ痛くなるわな。推進力も終わってる。心臓もつかえるように一杯一杯。今いくらくらいのペースで走っているのか。キロ7分をオーバーすると危険だ。
あと5kmの赤い標識! ここからは標識が1km毎になる。どうやらキロ6分半くらいのペースを出せている。しかし最後まで分からない。意地悪過ぎる道のダウンアップが行く手を阻む。南牧村の野辺山高原に帰ってきて、「女子2位の選手がゴールしました!」というアナウンスが聞こえてくる。
だがコースは大きく左折し、一旦ゴールが遠くなる。ともかくあとは平坦だけなはず。ラストエイドでツリそうな脚に水をぶっかけ、もうあとは走るだけ。

また順位がずりずり下がるが、気にすることはできない。ラストだからしっかり走ろうなんてできない。とにかく安全に、ギリギリでもサブテンを達成できるように、脚を壊さないように、走っている状態を維持する。それが今の私にできる精一杯。それでいい、確実にしていこう。でないと今日の作戦失敗の全てが後悔になってしまうから。
もうラスト1km。スパート…できるわけねぇ。また一人に抜かれ、もう一人も背後に迫る。踏切を渡り、最後の頑張りどころ。仕掛けるか? いや、ここで勝負して脚を壊してしまってはいけない。
三人が左折して最後の直線。しめた、登り坂だ。もう壊れても良いからとペースアップ。しかし前走者もスパート。やはり無理に争ってゴールの味を悪くしない方が良いだろう。「三人のうち誰の名前を最初に読み上げられるのか!?」とアナウンスが掛かるが。ゴール200mくらい前のチップ計測器で読み上げられる仕組み。私の名前も2番目に呼ばれ、思わず手を振る。「自分の坂馬鹿っぷりがここでも通用するか? ウルトラ初の挑戦です」と、申込時の意気込みコメントまで読み上げられる。

そして終わりだけは予定通り、しかしかつてない達成感、万感の、十本の指を上方に突き広げて、バンザイゴールでテープを切った!!

 無事帰ってきたぞー!!!

欲しかった完走メダルを掛けてもらう。ずっしりと嬉しい。するとそこに、42kmの部で完走していたタダノブさんが私を見つけてくれてハイタッチ! 喜びの瞬間を伝えられる人がいて、今回はラッキーである。
タイムは9時間52分52秒で総合27位。わずかに平均ペースが遅ければ、あっという間に10時間をオーバーしたであろう、ギリギリのサブテン達成の瞬間でもあった。「野辺山100kmを制するものはウルトラを制す」とも云われるほどの難コースで、フルのサブスリーにも匹敵するウルトラランナーの夢を勢いで達成! あまりに反省点が多いけど。本当に予想外のキツいコースだった。
続けて数人がゴールした後、穏やかに午後3時の時を迎える。私はここでもやっぱりエイド食。そば、オレンジ、豚汁もうめぇー。

ゴールシーン

体育館で預け荷物を受け取って、その重さにふらふらになって「もうダメだ」とつぶやき、大の字になって倒れる。高い天井の鉄骨や明かりが降り注ぐ。ウルトラマラソンが捕虜の行軍と違う点はこれだと思った。
やがてどうにか立ち上がり、フィニッシュゲートの写真を撮ったり。アンパンマン速いよ。あまり混む前にと、近くのいこいの家で風呂に入る。これで列車に乗れる。帰りの小海線は運良く席を確保し、さよなら野辺山高原。小淵沢からは中央本線の各駅停車で松本へ帰り、今日分のブログをまとめる。全く未体験だった苦しみの産物、筋肉痛はもうバリバリ始まっていて、いつ治る事やら。


結果

記録証

またウルトラマラソンに出ようなどとは、とても考えられない。この一ヶ月間でサブスリー&サブテンの実績を手にし、マラソン趣味の延長線上には何も見えなくなった。高地での長時間走がたたって心臓がおかしくなってしまったし、もうしばらくトレーニングは休養しよう。
しかしやはり思うのだ。ウルトラランナーだから人格者という事は決して無い。うっかりすると、デカいザックほど偉いと思って夜行列車でビールをあおっているガザツな登山者。ああ見られてしまうだろう。ただ今後の人生において絶対に越えられない壁に直面したとき、私は泣きながら悪夢の馬越峠を思い出すのだ。そのような戦場が見つからないこと自体が壁なわけだが(泣)。

にしても次にすべきは何なのだ。答えが空から降ってくるわけじゃないが、今は考えられない。

公式リザルト
グロスタイム(公式記録) 9時間52分52秒 (最速者8:05:23, 最終完走者13:59:55)
100kmの部男子順位 25位 (/完走646名/出走948名/申込1015名中)
総合順位(女性含む) 27位 (/完走704名/出走1052名/申込1119名中)
※データは後日郵送された記録集による。完走率は男子68.14%,女子55.77%。サブテンは男子30名,女子2名。
野辺山付近天気概況:降水量0.5mm,日照時間5.6h,気温6.4〜16.4℃(平均11.0℃),最大風速5.0m南南西(平均1.9m)

リンク

by AllSports
RUNNER'S Wellness
各ウルトラマラソン大会のガイドなど。
南牧村観光協会
八ヶ岳・野辺山高原のイベントガイド。
AllSports.jp
スポーツ写真サイト。(右のサンプル写真)

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