むらよしクライム日記

乗鞍岳

第21回 全日本マウンテンサイクリングin乗鞍 参戦記

2006年 8月26日 〜 27日

夏の終りに、3000m級の標高を目指して色とりどりの自転車が駆け上がる、通称「乗鞍ヒルクライム」。総エントリー者数は4000名を越え、自転車ホビーレースとしては日本一の人気を誇る大会だ。まずエントリーから激戦級で、今年は参加申込みの受付開始が一ヶ月早まったものの、数日で締め切られてしまったようだ。
去年までは「ツールド美ヶ原の方が面白いやい」と斜に構えていた私であるが、どうしても乗鞍の魅力を否定できずにエントリー。お祭りのような大会の雰囲気に合わせて着ぐるみなどのネタ出場も考えたが、やはり出るからには悔いの無い走りがしたいと、トレーニングを積んでみた。ツールド美ヶ原前にやっていたような特訓レベルには至らず、少し不安であるが…。


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8月26日(土)


SKF歓迎吹奏楽パレード

早目に乗鞍高原に着いておこうかな、と思って10時に出発。たかが市内から市内への移動なので、クルマは使わずチャリで行く。
妙に市街が渋滞している。事故でもあったのかなと思ったら、サイトウキネンフェスティバルの歓迎吹奏楽パレードがおっぱじまっていた。花吹雪代わりのシャボン玉を浴びながら、小中学生の演奏が次々とゲートを出発していく。夢でも見ているかのように、実に華やかだ。こんなことが出来る松本市ってレベルたけー! 日本最大の音楽イベントの真っ只中である。

最終組のスタートを見届けた後、ようやく西へ向かう。松本ICを過ぎた所で、スプロケを譲ってくれる手筈になっているG蕃さん@山梨の車にドンピシャでかちあった。ラッキー! その場で交換作業をして、歯飛びのないチャリが出来上がった。踏み込めるって幸せ、これで戦えるよ。
あとは時間の余裕がたっぷりあるし、ゆるやかにゴーゴー。本番は明日なのだから、あまり“足”を使ってはいけない。野麦街道は自転車を積んだクルマのパレード状態。日本最大の自転車イベントがまさに始まろうとしている。

松本−乗鞍高原

番所大滝

パンを買い食いしたり、島々宿の秘密の井戸で給水したり、心苦しいトンネル地帯を通過したり、番所大滝を見物したりしながら標高差900mアップして、15時に乗鞍高原到着。まず大会受付を済ませる。出店ブースはレースクィーンの撮影会状態。決してブースではない。あ、Appleのレーシャツが参考展示してある。コレホシー。
宿は会場すぐ近くの「あずみ館」。松本市内に宿を取るなんて妙な気がするが、まぁのんびりと温泉に浸かろう。白骨温泉と源泉が同じ、白濁した湯である。
やがて筑波大サイクリング部先輩の2人も到着。私は宿の予約をしてなかったが、この2人に便乗させてもらった形になる。

あぁ、宿の飯がうまい。自炊とは皿の数が違うのだよ、皿の数が。ゼッケン貼りなどの準備も着々、寝る前にケータイで今日の分のブログを送信しておく。


8月27日(日)


同じ松本市内でも、乗鞍高原の朝は予想以上に冷える。毛布一枚じゃ足りなかったが、風邪は引かずに済んだ。宿が会場のすぐ近くにあるというメリットを活かし、先に会場にチャリを置いてスターティンググリッド好位置を確保。ランドナー(旅行用自転車)がこんなに前を陣取っていいのかしら?
朝食もうまい。ご飯2杯をバリバリ食う。ウォーミングアップとして付近をジョギングしたかったが、そこまでの余裕はなかった。天候は穏やかな晴れ。山頂までくっきり見えていたが、やがて雲に隠れた。

スタート直前

7時半にチャンピオンクラスや女子クラスからスタートして行く。自分がエントリーしている一般男子Cクラス(ロードレーサー31〜35歳)はしばらく待たされる。この時間って、なぜか心身が重苦しくなってくるから困るんだ。時間が近づくにつれ、男子Cもぞろぞろとライン前へ移動。スタート10分前にはVAAMゼリーを腹に詰め込み、折れそうな心と闘う。
右後方から「むらよしさん!」との声。あ、G蕃さんだ。意気込みを語り合ったりして、おかげで退屈しなくて済む。ただし一応、同時スタートのライバルである。そして8時2分、号砲。標高1460mからの延々登り坂だ──。

目標タイムを1時間20分としているが、早速大勢に抜かれまくる。美ヶ原ではがっつく私にしては、超スロースタートを切ったのだ。この乗鞍は10年前に一度だけ参加しているが、その時はすぐにリタイアしたので実質初参加になる。しかも先月、今月と満足な練習をしていないので、かなり慎重である。さすがに遅過ぎると思って徐々にペースを上げるが、既にG蕃さんは遥か彼方に飛んでった。ふと時計を見ると10分が経過。まだまだ先は長い。

乗鞍高原−乗鞍岳

決して心肺を追い込んだりはせず、いわゆるマイペースで登って行く。そうしていると抜きつ抜かれつのライバルの面子も決まってくる。むしろこっちがマークされているかもしれない。「ゆっくり走ろう乗鞍を」というステッカーを挑発の為に貼ってあるし。記憶にあるのは、やや先行の1258番、続く1080番、1074番、1073番あたり。自分は1067番。
やがて石畳と謂われる急な坂に差し掛かる。ここで初めてフロントギアをセンターからインナーに落とす。やべぇ、足がへたっちゃった。しかし周りもみなガクンとペースが落ちるところで、やはりライバルの顔ぶれは変わらない。ただし隊列走行をしている訳ではなく、私はランドナーの軽いギア比を活かしてインベタごぼう抜きをしては直線で抜かれる、の繰り返し。先にスタートしたクラスもかなり大勢走っていて、うまくオーバーテイク処理できない時はブレーキも必要になる。

レース終盤戦

中間地点のタイムは31分30秒だった。脳内で倍にしてみると…、いやそんなタイムでゴールできるはずないが。第1チェックポイント、第2チェックポイントとも、給水は受けず。ボトルに入れておいたVAAMウォーターすら消費しきれるか微妙だ。
標高が上がるにつれ、コース脇は脱落者の姿も多くなってくる。目の前で吐いちゃう人もいた。ボトルの中身が真水だったら投げてやるところだが。

いよいよコースは森林限界を突破。いったいナンてところで我々はレースしているんだ! もう楽しくてしょうがない。苦しさ7割、楽しさ3割だけど。若干のタイムロスにはなるが、ケータイで写真を撮る。上方を見ても下方を見ても、ウネウネと大勢がレミングスのごとく登っている。一体みんな、何を考えているんだろう。
大雪渓からはラストスパート…、だめだ、すぐ体中の酸素が欠乏する。なにしろ空気が薄い。やはりマイペースは崩せないのだ。1080番、1074番には置いて行かれ、1258番は脱落したが、1073番とのデットヒートが続く。ちょっと離されかけて「もうダメか」と思うとまた逆転。向こうも苦しいのだ。しかしゴール近くになると道が狭くなり、右車線は下山用なのでコースが渋滞気味に。ここで横並び意識を持っては勿体ない。スキを見て少しでもスパート。

ゴール地点

朦朧としつつ標高2720m、畳平にゴール。無意識に右手を突き上げガッツポーズをしたのは、満足のいく走りが出来た証だ。そしてタイムはまさかの1時間18分39秒。ランドナーでチャンピオンクラス出場資格を得てしまった。今の体力・体調にあっては最善のペース配分だったのだろう。相対順位でも美ヶ原より好結果だった(クラス69位/554人中、美ヶ原では51位/197人中)。
ゴール後、自転車を停める適当な場所までぞろぞろ歩きになる。そこでG蕃さんを発見。彼は1時間10分を切っていた。そりゃあ敵わんわ。けど予想外の好結果はお互いだよね。さらにS浦先輩を発見、T井先輩もやがて到着。みなそれぞれ、良い走りができたようだ。

すぐに体が冷えてくるので長袖と合羽を着る。さすがに乗鞍岳山頂まで登山する気力は残ってないので、T井さんと私の“デジカメ組”はすぐ近くの大黒岳という丘だけ散策。去年ほどの見晴らしではないものの、雲上の別天地を満喫できた。続々とゴールする選手の中には、阪神タイガース男、猿男、女子高生男、背広男、ママチャリ男もいる。ここは乗鞍。
自転車での下山もハイマツ帯から大森林まで存分に楽しめた。宿に戻って温泉に浸かる。

午後は閉会式に出席。S浦さんがMTB女子で5位入賞。トップレベルを維持しているのが凄いが、来年はもっとタイムを上げたいと言っていた。表彰式の後は抽選会。「お金の使い方間違っとる!」と突っ込みを入れたいくらい、入賞商品に比べて豪華なのだ。ビジョンとじゃんけんで対戦する形で当選者が絞られていく。ふと横を見ると、T井さんが出目をメモしている。さすが学者肌、出目を読み切って見事にクロスバイクを当てた。いいなぁ。
そしてお別れ。私はチャリに乗って帰る。わざわざそのための体力なんざ残していないし、のんびりと乗鞍高原を離脱、若干の雨に降られながらも無事に帰宅した。

夕食を食べ終わってみれば、何もかもが楽しい記憶として蘇る。

applerace queenあづみ館
大雪渓鶴ヶ池位ヶ原


Web発表による公式リザルト
時間1時間18分39秒 (最速者0:57:40, 最終完走者3:58:47)
(全長20.5km 標高差1,260m)
 
一般男子Cクラス 順位69位 (/完走 468名/登録554名中)
(ロードレーサー31〜35歳)
 
総合順位505位 (/完走3,504名/登録4,107名中)
(61歳以上,女子,MTB含)
 

自分なりには会心の走りができたけど、反省点もある。実戦的な練習をすべきだったとか、「あそこでこうしていればあと20秒縮められた」とか。でも来年以降も出場するとしたら、今年のタイムがちょっとキツい目標になりそうだ。

ゆっくり走ろう乗鞍を

 リンク

JCA(日本サイクリング協会)
ツール・ド・美ヶ原やマウンテンサイクリングin乗鞍などの主催団体。
MSPO(エムスポ)
主にトライアスロン情報のページだが、自転車ヒルクライムのリザルトも充実。

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