富士見岳より畳平

NORIKURA SKYLINE CYCLE HILLCLIMB 2011

第8回 乗鞍スカイラインサイクルヒルクライム 参戦記

2011.7.10[]

経緯

乗鞍ヒルクライムと言えば、8月末に四千人が集まって長野県の乗鞍エコーラインを登る全日本マウンテンサイクリングin乗鞍が有名だが、反対側の岐阜県にも「もう一つの乗鞍」がある。乗鞍スカイラインサイクルヒルクライム。その名の通り乗鞍スカイラインを登り終点の畳平を目指すレースで、今年で第8回となり着々と知名度を増してきているようだ。何せ私が出ようと思うほどに。

殿下平の前日受付

7月早々に梅雨が明け、このカラッとした暑さが大好きだ。レース前日。散髪、スネ毛刈り、そして昼飯を済ませてから、カーオーディオをゴキゲンに松本からの国道158号を安房トンネルに向かう。窓全開、クーラーなぞ要らん。しかしこのクルマは走る棺桶と言うより走る火葬場で、夏場は水温計を睨みながらのドライブとなるが。
すんなり岐阜県に入り平湯トンネルも抜けて、高山市は殿下平総合交流ターミナルの会場に到着。基本的に当日受付は無く、今日中に済ませなければならない。実業団クラスも存在する大会に参加するのは初めてで、何だか厳しそう。自分のおんぼろランドナーなんて場違い過ぎる。しかも検車を受けなくてはならず、絶対整備不良を指摘される…!と構えていたら何も言われなかった。ラッキー。
参加賞にサイクリングボトルとスーパーヴァームゼリーと、セラミックウェットルーブという自転車用潤滑剤が付くのも嬉しい。

平湯キャンプ場に泊まればいいかなと考えていたが、温泉にも入らずとっとと松本へ引き返す。少し前まで大小の地震が相次いでいたうえ、最近は毎晩のように電気を点けたまま畳の上でくたばってしまい、今夜こそは布団でぐっすり寝たい、と思ったから。安房峠道路の無料期間が先月で終わったので片道600円の通行料がかかるし(結局あの政策の恩恵を受けることは一度もなかった)、ガソリンも無駄に消費してしまうのが自分らしくない気がするが。
市街の渋滞にハマるうちに冷却水はグツグツ煮沸状態となり、メルトダウン寸前で帰宅した。ドライブ疲れをほぐすため軽く5kmジョギングに出かけると、突然のひどい雨。夏なんだな。

先月のツールド美ヶ原以来あまりトレーニングしてないし、予習は2年前に試走したとき撮った動画の10倍速編を見たくらい。来月の全日本マウンテンサイクリングin乗鞍で1時間20分を切るために、ここでは1:25'切りを目標にしたいが…。

日記

7月10日()大会当日
殿下平レース当日の朝

いつもより3時間早起きすることがこんなに辛いなんて。急ぎ納豆卵ご飯を食いコーヒーも済ませ、出発。ルームミラーと二つのドアミラーに昇ったばかりの太陽風を受けて、国道158号を西へ向かう。しっかし、よくこんな梓川源流の秘境にクルマの通れる道を作ったものだ。
5時45分に会場に到着し舗装駐車場を確保。間もなく満車となり、以降やってきたクルマは少し離れた土砂の駐車場に回されている。自分は初参加で勝手が分からないから手際悪いけど、時間はあるのでゆっくり支度しよう。チャリを組み立てたり、頂上行きのバスに荷物を預けたり、新聞を読んだり、カロリーメイトを食べたり。こうしている間にも他の選手はローラーを回し続けている。怖いよう、負けちゃうよう。せめて軽くジョギングして心拍を上げておく。

開会式をやっている場所に近づくと、注意事項が聞こえてくる。何と困ったことに、工事による片側交互通行が3箇所あるとのこと。もし止められたらその分タイムを減算してくれるらしいが、できれば止まりたくないなぁ。
スーパーヴァームゼリーを飲んで準備完了、スタート行列の中団に並ぶ。多少の荒天は覚悟していたのに、暑いくらいの日差しが眩しい。8時に実業団クラスからスタートを切り始め、一般30〜35歳のロードレーサー男子マスターズAはマスターズBと合わせて約百名、9分後に号砲を受ける。自分だけロードレーサーじゃないし、何もマスターしてないけどな。

スタートして国道に出ても一車線しか使えず、しばらくは先導車付きのパレード走行となる。自分ら中団〜後方組にはあまり関係なく、どこからレースが始まったんだかよく分からない。旧道にあたる県道5号に分岐してからが本格的な登りとなる。ゴールまで標高差1342mって何気にインパクトのある数字だし、序盤は10%坂もある急坂区間だから落ち着いて行こう・・・というつもりでも呼吸は苦しい。やがて先発クラスの後尾に追いついたり、後発クラスの先頭に抜かれたり。同時スタートクラスはライバルが固定されつつある。

20分で平湯峠を通過し、いよいよ乗鞍スカイラインに入る。マイカー規制はされているがバスなどの許可車は時々行き来する。元軍用道路だけあって容易に全線二車線化されているし、500人レベルの大会だからそれで不都合は無いが、注意は必要だ。審判車や頻繁に配置されている立哨員から度々「センターラインを越えると失格だぞ!」などと檄が飛ぶのが怖い。来年以降の開催のためにもしっかり守ろう。一つ目の片側交互通行をクリアし、夫婦松(跡)を通過。ここまでギアをほぼセンター(38)×ロー(28)に入れっぱなしのキツい坂だった。ようやく坂が緩くなる標高2,000m付近である。

乗鞍スカイラインヒルクライムマップ;全長18.8km標高差1,342m

振り返れば笠ヶ岳や槍穂連峰が青い空に突き刺さる。そんな景色を眺める余裕はないが、抜きつ抜かれつ、あるいは追い付けそうで近づかない、そんなレースを楽しんでいる。ザバスピットインリキッドを補給し、ボトルのCCDドリンクもちょくちょく飲んでいる。そういえばこのレース、給水所が一切無い。競技者間の融通は認められているが、基本的にマイボトルのみが命水だ。

50分を過ぎるとスタミナがへばってくる。一旦持ち直すも、樹林帯の九十九折り地帯終盤はまた坂がキツくて、ずるずるペースが下がっているような。二つ目の片側交互通行をクリアし、森林限界を越えて猫岳カーブを抜けると、前方の視界が一気に開ける。道行く自転車の列も景色も壮観だ。標高2,500m、空気が薄いせいか一向に呼吸は楽にならないし、頭も少し痛くなってくる。三つ目の片側交互通行もクリアし、どうやら足を付かずに走りきれそうだ。
度々気になるのが、ゴツいヘルメットを被った実業団の選手を抜くと猛スピードで抜き返してくること。そしてまた後方に沈んでゆく。

乗鞍スカイライン桔梗ヶ原

終盤は日が陰って涼しくなった。里美ヶ原、土俵ヶ原の連続ヘアピンを抜け、コースは一部長野県に入る。乗鞍スカイラインのハイライト、広大なハイマツ帯の桔梗ヶ原だ。ここは平坦に近く、結構なスピードが出る。しまった、トレインに乗り遅れた! 慌てて前を追うも、平坦路の終わりに追いついた所で力尽きてしまった。腰痛も限界で、「これ以上無理するな」と脳内リミッターが入る。あと少しなのに!
エコーラインへの分岐を左に見て、ラストもほぼ平坦路。前方の2人を抜き返せるかも知れないが、ゴールが狭いと危険だ。そう躊躇しているうちに弾丸のように後ろから飛んできた選手に差されてしまう。しまった!

こうして畳平にフィニッシュ。目標の1:25'は大きく過ぎてしまったようだ。ちょっと悔しいけれど、初参加のレースで完走できた喜びで軽くガッツポーズする。さすが標高2,700mの高山帯、呼吸がなかなか落ち着かない。
それでもゴールのご褒美に配られるスポーツドリンクと預けておいた荷物を受け取り、少し休んだら富士見岳の登山に向かう。あまり集団から外れた行動をとると失格とならないかビクビクするが、時間はあるだろう。ランニングシューズで来ているメリットも活かせる。息を切らせながら山頂2817mに到着すると、穂高岳や乗鞍最高峰の剣ヶ峰は雲に見え隠れ。畳平の俯瞰はいつ見ても絶景だ。他に選手が登ってくる気配はなく、風が寒いし自分も待機場所に戻る。ああ脇腹が痛い。

下山開始

壁に貼り出された速報を確認すると、自分のタイムは1時間26分46秒887。千分の一秒単位まで計測されているとは、さすが実業団ありのレースだ。全員のゴールと棄権者収容を終えたらしく、11:10くらいから下山スタートとなる。自分は第5グループ。一列縦隊が義務付けられ追い抜き禁止の筈だが、どうしても珍走したがる選手が何人かいるものだ。チームジャージを背負ってるにも関わらず…。それはともかく今日のレースを振り返ると、すごく楽しかったんだなぁと名残惜しくなる。終盤のへなちょこっぷりが悔しいので、いつか雪辱を果たしたい。

途中の夫婦松駐車場で休憩が入りつつ、殿下平まで下山完了。ご褒美にコルディアFeとパワーアミノ2500粉末が貰える。至れり尽くせりだな。
カロメ昼食を済ませて閉会式は途中でずらかり、クルマを出す。せめて温泉くらいは入っていきたいので「ひらゆの森」に寄っていこう。広い駐車場は満杯に近いが、施設にも十分なキャパがあるので困るほど混んではいなかった。いい湯だな。館内の喫茶店でソフトクリームを食って、あとは帰るだけ。クルマと自分のために途中で一旦休憩を入れつつ、無事帰宅した。玄関に入ればこっちのもの、大の字にくたばるぞー。
あ、ブログくらいは更新してから寝よう。

富士見岳より剣ヶ峰 富士見岳より奥穂高岳 表彰式

結果

公式リザルト
時間
(全長18.8km 標高差1,342m)
1時間26分46秒887 (最速者0:59:35, 最終完走者2:44:55)
ロードレーサーの部 男子マスターズA 順位
(30〜35歳)
16位 (/完走37名/出走37名/申込40名中)
総合順位
(実業団,女子,MTB,ゲスト含)
250位 (/完走530名/出走539名/申込566名中)

このレースも例によってチャリ載動画を撮影していた。マウントがうまくいっておらず相変わらずブレているが、良好な天候のもと、最後まで撮り切れていたのは嬉しい。BGMや解説字幕を付けた5倍速版をニコニコ動画に、単に映像とボイスレコーダー音声を合わせた等倍速版はYouTubeにアップした。この記録が来年以降に繋がるかな。

ニコニコ動画:【自転車載】第8回乗鞍スカイラインサイクルヒルクライム(5倍速)
YouTube:第8回乗鞍スカイラインサイクルヒルクライム自転車載映像(等倍速)

リンク

ALL SPORTS写真のサンプル
乗鞍スカイラインサイクルヒルクライム公式サイト
大会案内やリザルト、リポートも充実。
オールスポーツコミュニティ
スポーツ写真サイト。(右のサンプル写真)

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