2006 Let's go jogging along the roof of NIPPON
爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳

 日本の屋根を走ろう! 第23回 合併記念大会

 大町アルプスマラソン 参戦記

2006年10月15日(日) 

 

パンフレット

マラソン大会の前の晩はたいてい「あれがない、これがない」状態だから、3時間半しか眠れなかった。毎度のことで…。鉄道好きのプライドとしてはクルマは使わず、松本駅まで歩いて6時28分発の大糸線115系3両編成に乗る。マラソン出場者で混むのではないかと思ったが、数は少ない。むしろ次々と弓道部員ばかり乗り込んでくる。何でそんなに流行ってるの。原田知世「時をかける少女」が脳内リピートする。
車窓には北アルプスの山並みが朝もやの向こうに見え隠れする。「霧」と「もや」の違いを力説する話し声が聞こえる。朝食はカレーライスを食べてきたが、さらにコンビニおにぎりを腹に詰める。1つにするか2つにするか…いいや2つ食べちゃえ。時々足をマッサージしながら、一時間ほどで信濃大町駅に入線した。
無料シャトルバスとやらはマイクロバスだった。それでも十分。わざわざバスに乗るほどでもない距離で、会場の大町市運動公園に到着。

やってきました大町アルプスマラソン。松本平では唯一のフルマラソン大会だ。まずは受付を済ませよう。貰った袋の中には参加賞はおろか無駄な広告が一切無くて清々しい。せめてプログラムの隅にRUNNETとAllSportsの案内くらいは必要だと思うが。時間的余裕があるので出店ブースを覗いてみたら、シューズが意外に安い。今後はこういう機会に買い替えるのがいいかも。
絶好の秋晴れで、気温は13度。太陽が当たっていれば十分に暖かい。競技場の芝スタンドで開会式を見ながら、1157番のゼッケンやチップを付けたりストレッチしたり日焼け止めを塗る。木々は秋色を帯び、その向こうに爺ヶ岳や雪化粧を始めた鹿島槍ヶ岳がくっきり望める。おっと、サングラスを装着。

荷物を体育館に預けてから、サッカー場でウォーミングアップ。実は最近、足首の近くに慢性的な鈍い痛みが宿る“シンスプリント”が発症・悪化しており、フルマラソンを走るのは無謀かもと思う。いったいどこらへんで途中棄権しようか…。

スタート直前

中学生以下3kmの部がスタートし、拍手しながら見届ける。速い人は10分足らずで帰ってくる。遅い人は…走れよ。
じりじりとスタートラインに近い場所に移動しつつ、VAAMゼリーを服用。車いすマラソンのスタートが済むと、いよいよ自分らが並ぶ番だ。何と、ラインから5mもないポジションをゲット! ネットタイム(号砲からスタートラインを跨ぐまでの時間を減算したタイム)の計測は無いみたいだが、ここなら差は1〜2秒程度ということで、考慮する必要は無いだろう。特に争いも無くこんなに前を確保できるという意味では、グロス(公式)タイムを出しやすい大会かも。
フルマラソンのエントリーは593名とのこと。年々減ってるのかな。ハーフマラソンの人もゼッケン色は違うが同時スタートとなる。

途中棄権の可能性が高いけど、もし完走できた暁には昨年つくばのネットとグロスの間というオチになるんじゃないかな、と予想。コースの標高差が積算320mあるので、ここで自己新記録を出すのは難しそうだ。


パァン! 手元ピッ!

伊藤牧場前を折り返し

一斉に、トラックを勢いよくスタートする。あらゆる困難や不安を乗り越えて、いま拍手声援をいっぱい浴びる。満腔の喜びが身を包む。この瞬間のためにエントリーフィーは払っているようなものだ。

始めこそ周りの勢いもありスピードが出たが、すぐに落ち着かせる。どんどん抜かれるが気にするな。1km地点で4分30秒、まぁこんなものだろう。コースはしばらく下り坂で、追い越された人の後ろに付けては離され、を繰り返す。いまはとにかく抑えて後で逆襲すればいいのだ。
後方からただならぬ気配が迫る。振りさけ見ると、5分/kmのペースランナーと愉快な仲間たちだ。あれに飲まれたらさすがに後が無いので少しだけペースアップ。スピードに比例してシンスプリントの痛みも増すが。最初の5kmラップタイムは23分ジャスト。予定より速いが、下り坂の集団走行ならこんなものだろう。

陸連登録ゼッケンの1005番をペースメーカー&風避けとして利用することにした。ちょっと速いけど、誰かしらこういう人を見つけた方が楽だ。コスモス、りんご畑、そして最初の折り返し地点伊藤牧場8.13kmをクリア。さあ得意の登り坂開始、一気に抜き返せ! でも背中ポケットに忍ばせたケータイでのんきに写真を撮ってるあたり。しばらくは1005番と抜きつ抜かれつで、少しずつ順位を上げてゆく。5〜10kmラップタイム23分、10km〜15kmラップタイム24分。
ハーフマラソンの第二折り返し地点を過ぎると、ぐっとランナーが減る。

大町アルプスマラソンコース図

しかし13kmにもわたる登り坂はゆるくても長い。微妙に斜度が上がってきているのか、呼吸が荒くなってくる。まだそんなに力を出していい段階じゃないので抑えるが、ライバルたちに少しずつ離されていく。
このあたり、道は1.5車線の生活道。たまにクルマも入ってくるし、路面が悪い所もある。しかし目前の鹿島槍ヶ岳は立派で、さすが「アルプスマラソン」を名乗るだけはある。15〜20kmラップタイムは24分20秒。ウォッチにラップ記憶機能がないのでどこまで覚えられるか…。暑いので給水所で頭から水をかぶる。ちなみに給水所はだいたい5km毎にある。大会規模からすれば十分だろう。

もはや5分/kmのペースを維持できなくなったなーって頃、最高標高地点の源汲橋(げんゆばし)に至る。ちょうど中間地点で、経過時間は1時間40分。お!?
下り坂は「後でこれを登り直さなくちゃいけないの?」と思うほど、わりと急。ここからの区間をタイムの縮め場とするか、足休め場とするかで結果は変わってきそうだ。どうしよう。
とりあえず風避けが欲しいので、ちょっと離されてしまった前の集団に追いつくべく加速する。勢い、一気に追い抜いてしまった。まあいいや、行っちゃえ。トップの選手がもう折り返してきてすれ違ったが、力強いフォームで坂を登っていた。ぜひ見習いたいものだ。20〜25kmラップタイムは23分10秒。

木崎湖

唯一の平坦区間に入る。ゆ〜ぷる、17桟橋、われらが(?)木崎湖! このマラソンのコース変化を語る上で大きなファクターだ。ひとまず腹が減ったのでポケットのPowerBarGELを服用する。
写真を撮っている間に陸連登録ゼッケン1027番に抜かれつつ、木崎湖畔の折り返し地点27.83kmをクリア。まだおなかが空いているのでB&G財団前の給水所でバナナ半カットをゲット。しかし走りながら上手に食べられず、半分落としてしまった。ごめん。25〜30kmラップタイム24分。

最難関の登り坂が始まる。30km地点ってフルマラソンにおいて普通に壁なのに、…これだ。本当にタフさが求められる。間を置いてしっかり付いてくる1005番も気になるが、ちょっと離された1027番を追いながら、「力強さ」を意識したフォームで、精神的にプッツンしないよう耐える。少しずつ順位が上がってゆく。まだ空腹なので給水所でパンを2個つかむ。うめぇ。

どうにかプッツンせずに源汲橋まで登り切った! 30〜35kmラップタイムは25分30秒。ちょっと遅れたが、食い止めた、踏みとどまったとしたい。さあここから、夢の3時間20分切りに向かって最後の下り坂をぶっ放せ!!
…そうは足が動かない。一度は追い詰めた筈の1027番に離される。実力の差だ。それでも彼以外の前走者は、じわりじわりとキャッチアップして片付けていくのだった。

1km毎にあった赤コーンの距離表示は、37kmを過ぎると40km地点を除き「あと◯km」表示に替わる。あと5km…これが長い。半年前の長野マラソンでは永遠のように感じたことを思い出す。何とかスピードアップしたくても、既に麻痺状態のシンスプリントは疲労骨折の危機をはらんでいるし、足全体そのものが痛いし、左足は吊りそうだし、右膝はひねったような痛みが出ている。心臓も限界がキてるし、腕は冷たくしびれかけている。まさに体中のインジケータが赤く点滅している状態。でも「あと◯kmだ」と、ペースが落ちないよう食らいつく。いやむしろ、記憶が飛ばない程度に無心になった方が良い。
仏崎観音の分岐にあるちょっとした登りがキツい。35〜40kmラップタイム24分。

あと2km。もうガキの使いだろ。遠い。競技場が見えてきているのに。でもここで頑張らなかったら後はどこで頑張れと言うのだ。信号の角を曲がり、あと1km。なかなか縮まらなくて抜くのは無理か、と思ってた前走者2人が目前になった。ペースを上げ、運動公園内に入ってまとめてかわす。血糖を失った腕が一気にしびれる。しまった、スパートかけるの早かったか? 抜き返されてなるものか、むしろ差を広げろ。
たくさんの声援と拍手を、前後に走者がいないから自分だけに受ける。これがなかったらペースダウン必至だったろう。トラックに入りあと一周、あと半周の長いこと。でも悔いの無い走りのために、精神を切らせる訳にはいかない。ラスト50m。

ついに、毎度のラスト馬鹿ダッシュは繰り出せなかった。それだけ、ここまでに全力を使い切れたのだろう。ゴールのチップ計測がピーと鳴って手元の時計も止め、
「ヤッタ! 完走だ!」
と両手で軽くガッツポーズする。少しずつペースを緩め、ガールスカウトの子から完走賞のタオルを受け取る。ヘタリ椅子に座ったら、チップを外すサービスをしてくれた。これは嬉しい。「ありがとう。」


完走記録証

とにかく、あれだけ不安だったのに、力を出し切って完走できたよ! 後半ややペースが落ちたけど、前半に抜かれまくって後半にじわりじわりと順位を上げてったのだから、相対的にはペース配分はバッチリだった。特に木崎湖以降は誰にも抜かれなかったし。
ストレッチをしつつヨロヨロ歩く。係のおじさんが心配して声を掛けてくれる。「まぁ、42.195km走るなんて俺から見ればみんな超人だよ。」
完走記録証のプリントアウトを受け取る。3時間21分13秒、一般男子の部39位。声に出たのは「微妙だ…」。昨年つくばのネットタイムを秒まで正確に覚えていなかったから、ここでケータイから自分のWebページにアクセスして確認するありさま。
ダイジョーブ、今回のが13秒速い。つまり堂々の自己記録更新だ! しかもこの難コースで。

好記録を出してくれたシューズ“adizeroLT2”をポンポンとねぎらう。シンスプリントの原因ではないかという容疑もあったが、今日何とか持ちこたえた。そういえば同様に悩ましかった爪の圧迫や豆も無い。「本番だから」と靴紐をちゃんと締めたおかげかな、きっと。今後はちゃんと締めよう…。

ゴール後の湯茶サービス

ゴールのご褒美、湯茶コーナーへ。まずはりんごだりんご、酸味が体にしみる。さらに普段の食生活ではなかなか口にできない漬け物が、たくさん種類あるし。ここぞとばかりにつまみまくる。熱いお茶も頂く。アミノバリュー500mlPETも貰える。
座ったりストレッチしたり写真を撮りながらウロウロ。あのペースランナーが二人で、愛想を振りまきながらゴールインしていた。でも取り巻きのほとんどを千切ってしまった様子なのが笑える。
水道で顔を洗い、出店ブースの方へ。信州そば無料サービスがある。無理なく胃に入るし、こういう時は最高だ。さらに足湯コーナーもある。本当はアイシングしたいところだが、まー温泉もいいものだ。ちょっと設計ミスで湯が少なかったけど。

預けていた荷物を受け取り、体育館でまったりと着替えなどしてから、またトラックへ戻ってみる。りんごがもう無くなっている。記録表を見ると、自分の総合順位は51位だった。あとひとつアップしたいが、こればかりは実力の結果だ。
他に気づいた点は、サブスリー達成者は男性のみ17名。自分より上位の女性は2名、この二人は別格っぽい。

ゲートと爺ヶ岳

さて、帰り時が難しい。というか寂しい。やはり労い合う知人の一人でも欲しいものだ。今夜ブログに書けば何人かは見てくれるだろうけど…。まだ競技は続いているが、とぼとぼとマイクロバスに乗り込む。
信濃大町駅からの大糸線はE127系2両編成。大好きな車両だが、ブラインドがろくに無いので夕陽が眩しい。一時間ほどで松本駅に到着し、コンビニでアイスを買い食いしつつアパートに無事帰宅した。
細かいWeb参戦記はそのうち書くとして、ブログに最低限の結果報告だけして寝る。

今年4月の長野マラソン受付前で、必死にパンフレットを配っている少年がいた。私が大町アルプスマラソンの存在を知ったのはその時だ。いったいどんな大会なのか────いったいこんな大会だった。「来年も出たいか」と言われれば、やっぱコースきついなーと思う。なるほど参加者数が伸び悩んでしまうのは仕方ないかも。運営やボランティアなどは暖かみがありすごく好印象であるけれども。
記録に一喜一憂するよりは、あのアップダウンの攻略に燃えられる人じゃないと。その意味では、来年も出たいよ!?


コース高低とペース配分図
大町アルプスマラソン高低図とペースグラフ


公式リザルト
グロスタイム(公式記録)3時間21分13秒 (最速者2:24:16, 最終完走者5:43:14)
ネットタイム(参考実質記録)計測なし ※ただしグロスとの差は1〜2秒程度
フルマラソン一般男子順位39位 (/完走260名/申込324名中)
 総合順位(女性・壮年含む)51位 (/完走477名/申込593名中)

by AllSports  リンク

大町アルプスマラソン公式ページ
大会概要やコース紹介、宿泊案内など。
RUNNET
各マラソン大会のエントリーや速報など。
AllSports.jp
スポーツ写真サイト。(右のサンプル写真)

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