大三島橋

鉄道・ジョギング旅行記

芸備線回り尾道〜しまなみ海道〜今治

2010年10月12日〜14日
10/12(火) 芸備芸備271分

大阪古市の親戚が営む和菓子屋で、二日間ほど臨時の店番をした。作業中に持病の右膝痛を再発してしまったのが気掛かり。ともかく今朝未明、さらに西への鉄道旅行を開始する。本来は自転車を自走か輪行で持ってくる予定だったが、メカトラにより断念。荷物はデイパックのみである。

芸備線へのマップ

青春18きっぷに似た「鉄道の日記念きっぷ」を使用するので、近鉄線で古市駅から柏原駅まで移動して以降は全てJRの普通列車・快速列車のみを使うことになる。朝食代わりに和菓子を食いつつ、大和路線久宝寺駅でおおさか東線に乗り換え、放出駅から学研都市線で京橋駅へ。直通するJR東西線には生まれて初めての乗車だからわくわくする。何の変哲もない地下路線だったが。尼崎駅で「新」の付かない快速に乗り神戸線をのんびり西へ進み、姫路駅では赤穂線直通列車に乗り換える。広島支社(國鐵廣嶋)からは離れているはずだが、なんで真黄色(末期色)の電車が来ているんだろう。相生駅から赤穂線に入り、この路線も初乗車となる。

播州赤穂駅で乗り継ぎの時間があるので、駅を出て少し歩く。城跡は昔キャンプをしたことがあるので行かず、近場の井戸跡あたりを回る程度。駅に戻ってまた列車に乗り、左手に播磨灘が見えたりするのに時々睡魔に負けるのが悔しい。東岡山駅に至れば赤穂線は完乗となり、列車はそのまま山陽線岡山駅〜倉敷駅を経て伯備線に乗り入れる。高梁川の渓谷沿いに新見駅へ終着すれば、昔の旅と合わせて伯備線も完乗達成。そればっか。

芸備線直通の気動車は、伯備線の電車が通過する布原駅に停車するから貴重だ。備中神代駅から芸備線に入り、広島県の東城駅から備後落合駅までは一日3往復しかない日本屈指の超閑散路線となる。運転士が二人の教官に時々計器を隠されたりしながら色々厳しいチェックを受けているのも珍しい光景だ。JR西日本だけに不合格だと日勤教育送りにされるのだろうか、と心配したが別れ際は和やかだった。

備後落合駅

9人の客を乗せた単行(一両編成)列車が備後落合駅に到着すると、別のホームにはこれまた激レアな木次線の車両が来ていて、マニアたちが思い思いにシャッターを切っている。駅前には何もなく、少し歩いて国道まで出た所にやっとジュースの自動販売機が1台あるだけ。駅に戻り、芸備線をさらに西へ乗り継ぐ。乗客数は7人となった。それにしてもJR西日本のローカル線は15km/h制限区間多すぎ眠た。マラソンのサブスリーペースと同じくらいって。

三次駅で快速に乗り継ぎ、夕方になって広島駅に終着すれば芸備線も完乗だ、ヤッタネ。この路線だけで4時間31分もかかった計算になる。広島弁を耳にしながら、ついでに可部線も初めて乗りに行く。もう暗くなってきて景色はあまり見えなかったけど、わりと都会路線な印象である。人生に取り返しのつかない失敗が無数にあるとして、そのうちの一つが可部駅〜三段峡駅の今は廃止になった区間に乗っておかなかったことか。無念の可部駅ピストンで広島駅に戻る。夕食としてお好み焼きを考えていたのだが、列車内で補給食として度々食べていたサーターアンダギーが胃にもたれているのでやめておく。

ここから呉線に乗れば広島県内のJR線は完乗となるが、災害で一部区間が不通だって。代行バスとかかったるいし乗り継ぎの保証もない。またいつかの夢にして山陽線で東へ、三原駅まで移動する。21時となり今日はここまで。

カプセルフロアー

もう食堂とか閉まっている時間だし、ジャスコの半額おにぎりを晩飯とする。駅寝で宿代を浮かす計画もあったが、無理をせずセンターホテル三原に予約を入れておいた。カプセルフロアーという寝台室があり、風呂と朝食付きで2,780円ならネカフェよりは良いだろう。しかしケータイ等を充電するための電源が各寝台には無く、延長コードで遠くから引っ張ってこなくてはならないなど、勝手の不明さに戸惑っているうちに就寝は24時を過ぎてしまった。

ひねもすほとんど座っていたくせに何故かクタクタで、体が揺れてる感じがする。こんなんで明日大丈夫だろうか。でも帰ってからの虚しさとかは忘れて、せいぜい苦しもうじゃないか。旅だもの。

10/13(水) しまなみの肩 しまなみの脚 しまなみのふくらはぎ

6時にフロントを覗いたらもう朝食の提供が始まっていて助かった。炊き込みご飯やハムサラダを食ってからチェックアウト。iPod nanoの歩数計を計測開始にして、まず三原駅まで歩く。時間があるので三原城跡も散策。三本の矢で知られる小早川隆景の居城だったが、今は本丸を山陽本線・山陽新幹線が貫いており、天守台へは駅の自由通路から入る。ここ数日自宅を離れているため新聞連載の「三人の二代目」を読んでないが、どこまで話は進んだかな。

尾道ポンポン岩

230円の切符を買って東へ、糸崎駅で乗り継ぎ尾道駅に到着。やって来ました朝ドラ「てっぱん」のロケ地。軽く準備運動をしてから7時半にジョギングを開始する。まずは千光寺公園への階段を駆け上がるが、さっそく歩きが入る。もう上はTシャツ一枚でいいや。頂上の展望台からは尾道水道を一望。裏手には北側市街地を見渡せる岩場もある。海側に遊歩道を少し降りると鼓岩がある。岩をポンポン叩く為の石が繋がれており、通称ポンポン岩とも云われる。「てっぱん」の主人公はこんな所をママチャリで余裕で行き来するのだから、将来有望なヒルクライマーに違いない。ここ数日テレビを観てないが、どこまで話は進んだかな。大林映画のロケポイントとしても有名で、天気良好眺めは完璧。映画で観た如く頻繁に渡船が行き来するのが見下ろせる。まさに今がラッシュアワーだ。俺は何をやっているのだ。

福本渡船の通学風景

千光寺にお参りし、ここから下りる千光寺坂も味わい深い。踏切を渡って商店街を横切り海沿いに出る。土堂突堤も有名なロケ地。福本渡船に乗るに至り、興奮は最高潮?危ねぇな。たくさんの学生がチャリで乗り降りしているさまは、まさに尾道ジュブナイル。すぐに向島(むかいしま)に到着し運賃60円を支払う。ここからはいよいよしまなみ海道を走りっぱなしになるから、水分・エネルギー補給や日焼け止めなど身支度を十分整える。「死後の為にせいぜい地獄の楽しみ方を予習しとこうぜ」と余裕をこいていられるのも今のうち。自転車を持ってこれないならジョギングでいいやって軽い気持ちで計画を立てたけど、どうなることやら。

因島大橋料金函

始めは国道317号を進むが途中で左に折れて幸谷峠を越え、島南岸の立花集落を経由する。少し西へ走りスロープを登れば最初の橋、因島大橋(いんのしまおおはし)だ。通路は高速道路の下だが、明るい海が嬉しい。原付・自転車・歩行者がそれなりに往来している。自転車の場合は橋毎の料金函に硬貨もしくはサイクリングチケットを投げることになるが、ジョガーは多分歩行者扱いだから無料でいいだろう。あ、記念スタンプもあるんだ。集めてみよう。

しまなみ海道は四年前にも自転車で今治→尾道と走ったので、なるべくその時とは別の道を走る。因島の場合は前回南回りだったので今回は北回りにする。こちらの方が短距離で良い。登り坂ではレンタサイクルを追い抜けるくらいまだまだ元気だが、島西岸で最初のコンビニ休憩に入る。暑くなってきたので950mlポカリボトルがありがたい。

生口橋

スロープの短絡路を見つけて生口橋(いくちばし)を渡り生口島に入る。四年前とは逆の南回り。この場合サイクリング推奨ルートからも外れるが、距離は短くなる。左手には船でしか行けない岩城島が大きく見え、いつか行ってみたいなと憧れつつ、ミカン畑の道を行く。ペースはだいぶ落ちてきた。当初10km/hで予定時刻を計算していたのだがとても追い付かない。そう、覚悟はしていたけど荷物が重すぎるのが大問題である。店番をするための服装一式に加え、お泊りグッズや時刻表などが満載。地図に至ってはレールウェイマップルとツーリングマップルの両方を積んでいる。後日計測で7kgもあって、脚より先に肩がイカレるんじゃないかってほど食い込む。デイパックが腰に当たる部分も擦れて痛くなるし、ますますペースは落ちる。

多々羅大橋(タイマー撮影)

早瀬バス停付近からスロープの短絡路を登り、やーっと愛媛県への県境となる多々羅大橋を渡る。去年までは世界一の斜張橋だったという、バカでかい塔の下では鳴き龍現象を体験できる。午前中に越える予定だったのに、もう14時を過ぎてしまった。大三島に入り、前回スルーした大山祇(おおやまづみ)神社に今度こそは参拝しようといったんは北へ針路を取るが、コンビニで昼食を摂っているうちに冷静になり諦めた。チクショー、自転車があればなぁ。ペースの下落は如何ともし難いし、ここからは前回ルートとかぶってしまうが真っ直ぐ今治へ向かおう。明るいうちに最後の来島海峡を越えたいんだ。距離表示を見て現在出せているスピードを計算すると7km/hほど。残りの距離を考えると…やばいな。

伯方の塩ソフトクリーム

大三島橋は鉄筋アーチ橋。しまなみ海道の島を渡る橋としては地味な存在だが、アプローチに坂があるのは同じこと。高低差30m程度でも疲れた脚には効いてくるようになった。あれ、記念スタンプはどこにあったんだろう。今日は各橋毎に交通調査員がいるんだけど、その後ろだったのかな。コンプリートを逃してしまい残念だが、棺桶に入れてもらうほど重要なものじゃないからいいや。正直戻る気力がない。伯方島に下りるスロープでは福本渡船に同乗していた水色ANCHORの自転車とすれ違う。今治を引き返してきたのだろう。一日で往復するってのも上級者向けメニューのはずで、お互い馬鹿なことをやってらーと思ったに違いない。道の駅では定番の「伯方の塩ソフトクリーム」を食べる。250円と観光地としては安価で、ボリュームもたっぷり。ただし疲労体にはあまりしょっぱさを感じない。ああ、もう陽がだいぶ傾いてきた。

伯方・大島大橋の途中には見近島(みちかじま)がある。ちょっと道草を食ってから大島に入る。宮窪瀬戸の急流は相変わらず凄い。小さなフェリーターミナルでジュースを買いアミノバイタルプロ粉末を流し込むが、ジョギングは一旦力を抜くと歩きが続いてしまうようになった。肩や脚が痛いだけでなく、心臓もおっ付かなくなってきた。着用している富士登山競走の完走者限定Tシャツが泣くぞ。いつしか真っ暗になってしまった島の峠道。あまり歩いてしまうと先々困るので時々は走ってみるが、どれだけ持続するかは精神力次第。峠を越えてまたコンビニ休憩が入る。ペースが落ちれば落ちるほど、到着時刻は反比例して永遠に訪れなくなる。人はこうして無限の意味を知る。

下田水港越しに来島海峡大橋群夜景

もうひとつ峠を越えると、橋脚灯が点滅する来島海峡大橋群が一気に姿を現した。ついに最後の橋まで来たという感動と、まだあの巨大かつ長大な建造物を越えなければならない恐れで感極まる。下りた所の下田水(しただみ)港から今治まではフェリー便もあるが、ここまで来たからには何としてでも自分の足で渡りたい。クライマックスの難関へ、高低差50m以上になるスロープを登る。真っ暗で困るが、橋の高さまで来れば車道の明かりに照らされる。途中の小さな島を境に三つの吊り橋が連なり、最初の第一大橋はやや短いものの続く第二大橋・第三大橋は本当に長い。漆黒の海に身を投げれば楽になれただろうに。

来島海峡大橋糸山スロープ

こうしてついに四国上陸を果たした。スロープ途中にある糸山の宿泊施設に泊まるのが一番楽だが予算オーバー。もうひと頑張り進もう。地元ジョガーが「こんばんわー、どっから?」「尾道から(キリッ)」「一日で〜?」「はい」「がんばってー」。旅先での交流はこれくらいだった。銭湯が何時まで営業しているか分からないので、駅にゴールするより先に千鶴温泉という銭湯に入る。24時くらいまでやっているようだがまぁいい。体中の汗、というより塩を流す。もう動きたくないってほど疲れ、一時間近くの足止めとなった。もうちょっと頑張れ俺の体。

着替えも済ませたし、あとはほぼ歩き。駅前通りはラストランとして走るが、心臓に掛かる負担が半端ない。ほぼ22時半ぴったりに今治駅前にゴールした。尾道駅前から75.4km、ここまでをジョギングの記録としよう。

今治城夜景

ここからなるべく安い宿を求めて、コンビニおにぎりをかじりつつ今治城前を経由し、メディアボムというインターネットカフェまで3km歩く。この街は何もかもが遠いな。ネカフェなんて生まれて初めて利用するが、5時間パックで料金1,200円は魅力だ。身分証明書の提示が要らないのを意外に思いつつ、フラット席を選ぶ。まさに横になるための部屋。水分の抜けきった体にジュース・コーヒー飲み放題がただただ有り難い。PCの電源なんか入れず漫画も読まず、簡易毛布でくたばる。万歩計はまさかの十万超え、117,891歩という数字を叩き出していた。

しまなみ海道ジョグマップ
10/14(木) おはようスタンプ
今治港未明

慣れない環境に加え足の痛みであまり眠れなかった。もういいや、4時半にはネカフェをチェックアウトする。疲労で全く動けなくなるんじゃないかという不安はあったが、体が軽くて案外歩ける。まだ真っ暗だけど今治城は本丸まで散策できる。今治港にも寄り道。港湾関係者向けなのか、こんな早くからでも開いてる喫茶店がある。アーケードを通って今治駅に到着。やっと足だけでの旅程が終わった。ベンチでコンビニおにぎりや唐揚げを食い、6時6分発の始発普通電車に乗る。帰路も「鉄道の日記念きっぷ」なので特急は使えない。

予讃線から石鎚山

予讃線の車窓には、朝焼けに石鎚山が浮かんでくる。自転車だったらあの山の麓まで走り、今日登山する予定だった。残念ではあるが、ジョギングでしまなみ海道を渡るというのも辛かったぶん強烈な印象で、死ぬまで思い出に残るだろう。ジョギングを旅の手段に使うなんてマラソン趣味六年目にして初めてだったし。睡眠不足なので列車の揺れが心地良くスッと眠るようになったが、乗り換え間際に不思議と目が覚めるから大丈夫だ。

三日後にハーフマラソンの大会が控えているから、抵抗力が落ちている体に負担をかけないよう、鉄道趣味的な遠回りはやめてまっすぐ帰ろう。時折駅スタンプを集めつつも瀬戸大橋線、山陽・東海道線、中央西線、篠ノ井線と乗り継ぐ。長距離乗車が多くて良く眠れた。まつもとー、まつもとー。あと2km歩いて帰宅すれば、コーヒーだーMacだーネットだー新聞だービデオだー…。

外泊・買い食いが続くと食品添加物で舌がピリピリ麻痺してくる。自炊生活に戻れば治るはずだ。向こう二日間はせっかく改善した体脂肪率をリバウンドさせぬよう注意しつつ、体力回復にも努めよう。
(結局負担を掛け過ぎた心臓は回復せず・・・ハーフマラソン参戦記に続く。)


付録

ブログフォトアルバム→2010/10しまなみ海道旅ジョギング
24枚。当旅行記ページに紹介し切れなかった写真を掲載。
補足動画(zoome)→JR芸備線回り尾道〜しまなみ海道旅ジョギング
「備後落合駅の木次線発車」「尾道千光寺山展望台及び鼓岩(ポンポン岩)」「多々羅大橋の多々羅鳴き龍」「宮窪瀬戸の流れ」の各シーンを動画で紹介。

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