ビッグマンの佐世保バーガー

自転車旅行記

南海フェリー…徳島〜高松,下関〜太宰府〜佐賀〜佐世保

2010年1月2〜4日,1月16〜19日
2010/1/2() しとしと眉山
南海フェリー…徳島〜高松マップ

年末は大阪古市の親戚が経営する和菓子屋で、餅売りの手伝いをするのが恒例になっている。時として「我れ先に」と買い求める大阪の客層を捌き切れなくなることがあり、その際に無理をして脇腹を痛めてしまった。大晦日で仕事は終わり、元旦にはチャリで暗峠をアタックしに行ったが撃沈。悔しいなぁ。

正月の水間寺

1月2日天気の良い朝、サイクリング旅行を開始。国道170号“大阪外環状線”の旧道を南に向かう。河内長野を過ぎ、交通量の少ないアップダウンは徐々に西に針路を向ける。和歌山に抜けるべく、左手には和泉山脈の鍋谷峠など魅力的な峠が連なっているが、時間も体力もないので諦めよう。何か賑わっている所があって、誘導員に指示されるままに駐輪したら水間寺の初詣だった。せっかくだからお参りする。それより、一生に一度は水間鉄道に乗りたいなぁ。

和歌山港の南海フェリー

国道170号旧道を終え、日根野駅前を経由して紀州街道を南下。JRと高速道路が平行しているわりにはマイナーな道で、標高180mの雄ノ山峠を超えれば和歌山平野に入る。紀の川を渡り、和歌山駅や和歌山城を外から見るだけ見て行く。宇都宮市に似た雰囲気の街だが、港町でもある。
南海フェリーにチャリを積み、渡航先の宿を予約するためケータイで四苦八苦しているうちに出航した。船旅独特の旅情がちょっと台無し? まあいいや、やっと休める船内はやや混雑。脱水気味なのでドリンクをたくさん飲む。本州は遠くなり、右手には淡路島。ナゾのパラダイスはあの辺かなー。

徳島港入港

やがてどっきん四国が近づく。もしかしてあれが眉山!? 想像していたよりデカい山で、この疲労体で登るのはキツくないだろうか。ともかく朝ドラ『ウェルかめ』の舞台、少し暖かい徳島に上陸。阿波踊り以外に何があるのか。
小さな丘があるのは徳島駅裏の中央公園。テントがあればここで良かったなぁ。駅は気動車しか発着していないが、表側に回ると都会で人も多い。東横イン徳島駅眉山口にチェックインすると料金が4260円と案外安い。どうやら正月5日まで30%引きとかやってるらしい。ラッキー。

眉山からの眺め

このままゴロゴロ〜の誘惑を断ち、空荷にしてから夕暮れの眉山パークウェイをアタック開始。うへぇ、やっぱキツい。標高277mに登頂する頃には夜景が始まっていた。これが徳島市だ。右には小松島市、左に吉野川。鳴門や淡路までは見えないや。ちゃらちゃらとした観光施設のない山頂が良い。ロープウェイの最終便が出発してゆく。

チャリで山を下りて阿波おどり会館に寄るが、もう閉店時間。あとはホテルでのんびりと。とても阿波踊りをする元気はない。実は徳島県に宿泊するのは生まれて初めてで、つまりそれだけの目的で来た。日本で残す所はあと佐賀県のみ。・・・まず用事なんてないが、数年内に行けるだろうか。
明日松本に帰る予定だったが、正月のUターンラッシュが厄介だし、ホテルが安くつくのでもう一日走ってみよう。

1/3() ナルト・ザ・ワールド

ホテルの朝食を頂き、7時過ぎに出発。まず錦竜水を汲みに行くが、流量が確保できないらしくボタン式だった。北へ走り幅1.5kmもの吉野川を渡る。さすがとくしまマラソンの本場だけあってジョガーの多い街だったなぁ。

孫崎から鳴門海峡・鳴門大橋

小鳴門橋を渡り海岸に出ると大鳴門橋が間近に見えてくる。しまなみ海道の景色に似ているが、これはチャリじゃ渡れないんだよな。孫崎灯台下に立ち、雄大な景観をしばし眺める。満潮時間を1時間余過ぎているが、太平洋から瀬戸内海へなだれ込む海水が川のようだ。12年前に淡路島側から眺めた時、いつか海峡の向こうに行ってみたいと思った。やっと来たんだ。
大鳴門橋の車道の下は鉄道も通せる構造になっているが、営業は永劫に実現しそうにない。その部分が鳴門側から450m、“渦の道”として有料歩道になっている。四国新幹線になった気分で歩き、先端の展望室へ。ガラス床の真下45mには渦潮が覗けて、慣れないうちは足がすくむ。他の観光客の様子を見ていると、子供は肝試しにガラス床の上を歩くが、大人はまず避けて通る。安全に、危険を避け続けながら生きてきた結果なんだな。それにしても、どうせなら淡路側まで自転車も通れるようにして欲しいよ。
さらに橋の下の海岸に下りてみたり、お茶園展望台から眺めてみたり。エスカヒルのエスカレーターは有料なので、大した坂じゃないし歩道を歩いて登る。この鳴門山からの景色も良い。下山して売店で鳴門金時ソフトを食べる。熱々の蒸し芋の上に冷たいソフトクリームと芋皮が乗ってて美味しい。ついでにケータイでホテル予約を入れ、気が付けば鳴門公園一帯に2時間以上も滞在していた。ノンスケジュール旅の醍醐味だが、ゆっくりし過ぎる癖はいかがなものか。

ウチノ海と四方見橋

ようやくサイクリングを再開し、アップダウンのある鳴門スカイラインへ。ウチノ海の穏やかさと対照的なのは、遠目には奇怪な、斜度のある四方見橋という陸橋。ありゃ、前輪がスローパンクした。チューブ交換っと。

国道11号に入り西へ。…ひどい、ひどいよ向い風。播磨灘に浮かぶ小豆島の眺めを楽しむ余裕はない。湧き水を見つけたので非常食のカロリーメイトで急場をしのぎ、なっかなっか進まないチャリで何とか香川県入り。引田の街で讃岐うどんを食う。

四国八十八ヶ所の八十七番札所、長尾寺

内陸に入れば少しは風が和らぐだろうか。県道10号で讃岐平野に入り、讃岐街道(長尾街道)のなるべく旧々道を見つけて走る。狭いけどクルマが少なくて良い。茶臼山古墳を見て、八十七番札所の長尾寺にもお参り。いつか遍路旅をするだろうか。それより、一生に一度は琴平電鉄に乗りたいよう。

その琴電長尾線と並行してやーっと高松市街に入り、東横イン高松中新町にチェックイン。昨日より安くて3460円。空荷にしてさっそく街を探索し、うどん棒という店でチャンポンうどんを頂く。旅行中はとかく野菜不足なのでそういうものが食いたかった。14年前のサイクリング部合宿でもアーケード街のどこかでうどんを食べたなー。
フェリーターミナルや高松城の石垣、瓦町をぶらぶらして宿に戻りサービスカレーを食う。部屋のテレビでは大河ドラマ『龍馬伝』の初回が始まった。徳島はウェルかめ、高知は龍馬伝、愛媛は坂の上の雲、そして香川は照之と、NHKはやたら四国フィーバーなのだ。

寒風を受け続けた顔は、しかし日焼けで火照っている。もう脚はパンパンだし、明日こそは電車で帰ろう。真冬でチャリ旅のシーズンじゃなかったけど、楽しい正月だった。

1/4(月) 雪が深めの関ヶ原

やはり追加のツーリングはせず、松本へ転進することにした。ホテルの朝食をとってさっさとJR高松駅から輪行。さよなら、朝の四国。マリンライナーで瀬戸大橋を渡れば本州我が島だ。

あとは山陽・東海道本線の平凡な18きっぷ移動。新快速は便利だな。米原から大垣にかけては北国のような雪景色でビビる。この分だといったい信州はどうなってしまっているのだ。
名古屋で駅きしめんを食べ、中央西線で日が沈む。「まつもとー、まつもとー」。あれ? 全然雪が降ってないじゃん。ともかく無事に帰宅し、久々に自宅ネット環境に復帰。美味しいコーヒーを淹れて、まずは4千通の迷惑メールの削除からだ。

・・・時は過ぎ去り十二日・・・
1/16() 西方見聞録
下関〜太宰府〜佐賀〜佐世保マップ

やたら寒い松本の未明を発つ。脇腹の痛みはだいぶ治ったし、青春18きっぷの余りを使い果たすべくまた輪行して西へ西へ。8時間くらい経ってくると精神的に落ち着かなくなる場面もあるが、尾道あたりから瀬戸内海の日暮れが心を癒す。それにしても山陽本線は異様に長大で、特に岡山発新山口行きはバケモノだ。

くたびれて23時、本州さいはての下関駅に到着。以前あった木造駅舎は焼失している。チャリを組み立てて東横インに宿泊。まぁビジホは楽だわ。

1/17() もえる男の赤い日本地図
関門海峡の日の出

お腹が痛くなるくらいたっぷり朝食を頂いて出発。朝にしては温かいのはさすが下関。まもなく関門海峡に日の出を見る。好天の一日になりそうだ。
壇之浦で関門トンネルの人道をくぐり、九州へ渡れる。地下までの階段が封鎖されててエレベーターに乗らざるをえないのがちょっと残念。まぁ「自転車で走った道」は繋がってることにしよう。注意書きを見落としたままトンネル内を漕いでいたら「自転車は降りてください!」との放送を食らい味を悪くしてしまった。カメラで監視してやがるんだ。とにかく頭上は海、そして福岡県に入る。

写真を撮りまくる度に遅れる時間を気にしながら、門司港レトロや小倉城を経由し内陸の筑豊方面へ向かう。直方市からは遠賀川(おんががわ)河川敷サイクリングロード。土手上じゃないので展望はやや狭いけど、やはり専用道は快適。間もなく飯塚市街に入ると、麻生のポスターが多い。あんまり高い煙突とか見えないし、炭坑の町という雰囲気は感じられず。コンビニで昼食。先はまだ長い。

米ノ山峠手前

県道65号を米山峠に登り始めた所で路面凍結による通行止の表示が。ええっ、こんなに暖かいのに? 予定がどう狂うのか不安になりながら、駄目モトで突き進む。やがてクルマも次々続いてきたので、通行止は解除されたのだろう。しかし標高360mと大した峠じゃないのに登るにつれて雪景色だし、確かに一部路面がツルツルだ。俺、九州に来たんだよな?

太宰府天満宮

峠を越えて南の筑紫野側は大丈夫。坂を降りて西日本鉄道の太宰府駅前に到着。高校時の友人の話によれば修学旅行で来ている筈なのだが、全く記憶にない。寺社にも鉄道にも興味なく、ただ付いていくだけの旅なんてそんなものだった。今の私なら西鉄に乗れるってだけでも興奮するだろうに。
にしても太宰府天満宮、何だこの人の多さは。しかも若いエキスで充満している。…よく考えたらここは学問の神様、そして受験シーズン真っ只中じゃないか。そりゃ日本で一番混雑しているかも。記憶力が欠陥している私のことはどうでもよいですが、せめて旅の安全をお守り下さい。参道では梅ヶ枝餅を買い食いする。梅の味がするわけじゃなかった。

国道3号を南下し佐賀県に入る。鳥栖からは国道34号で西へ。ブリヂストンサイクルの工場がある。もしかしたら今乗っているチャリのふるさとなのかも?
自転車で一心に旅をしていると、不思議と全てが赦される気分になる。自分が本当になりたかったものって風来坊だったんだと今さら思う。そのための努力をしてこなかったので中途半端だけど。ガンガン脚を回せ。

吉野ヶ里遺跡

16時半に吉野ヶ里遺跡。閉園まで30分しかないが、私の知る限り佐賀県で唯一の観光資源なのだから素通りはできまい。半ばジョギングで古代の街を駆けずり回る。ところでここって修学旅行で来たっけ?

平野の地平に日が沈み、脚に力が入らなくなりながらも本日推定135km、佐賀駅に到着。仮にも県庁所在地なのに駅前にはホテルと西友スーパーしかなくて、まるで長野県の岡谷だ。ともかく東横インにチェックインし、これで全都道府県宿泊を達成。『経県値マップ』をついに赤く塗り潰した。でも日本はまだまだ奥深い。むらよしの冒険はいま始まったばっかりだ。

1/18(月) バーガーの一つ覚え
佐賀上空の気球

朝食をバカ食いし、遅めの8時スタート。通勤通学の日常が行き交う街を佐賀城跡へ。こっちの方が駅前よりちょっと都会なんだな。非日常の私は西への旅を続ける。昨日の半分の距離でいいし、のんびりだらだらと。あ、気球が飛んでいる。あっちの方へ行こう。でも近くまで来たらもう着陸してしぼんじゃった。秋のバルーンフェスタではいっぱい飛ぶのだろう。

JR長崎本線は佐世保線を分け、それに沿って走ると武雄温泉。朱塗りの蓬莱門をくぐって元湯に入る。ぬる湯とあつ湯交互に浸かるのが気持ち良い。温泉を出た後のダルさはハンパないが、街のごはんやで塩気の多い焼きちゃんぽんを食べて再出撃。

有田の陶器屋街

さらに国道35号を西に進んで有田へ。巨人のキャッチャーじゃない。陶器屋がずーっと軒を連ねていて、一軒寄ってくだけでも美術館のように時間が潰れる。柄の良い有田焼は高いなぁ。手が出ないのでジャンクの湯呑みだけ買っておく。

もう少し進んで長崎県入り。これで「自転車で走った道」は海路なしでも北海道沖縄を除く45都府県が繋がった。まぁどうでもいいか。都会でクルマが多い佐世保市街。右手にはジャパネットたかたの本社ビルが聳える。フゥワッフゥワッ!
チェックインにはまだ早いしお腹がすいてきたので、先に佐世保バーガーを食べよう。パンフ片手にビッグマンという店へ。ベーコンたっぷり、ワイルドな満足感。

東横イン(そればっか…)に荷物を置いてから、海上自衛隊史料館セイルタワーへ急行。日本海軍の興亡や海上自衛隊の活動をたくさんの模型や貴重な史料で紹介していて、これはもえる。半日かけてみっちり勉強したいところだ。しかし悲しいかな閉館までまた30分しかない。急いで目に焼き付け退出する。

石岳展望台より南九十九島

さらにアメリカ海軍基地やSSK巨大造船所の脇を抜け、標高191mの石岳展望台へヒルクライム。ここから西側、南九十九島の眺めは映画『ラスト・サムライ』でも紹介されたらしい日本を代表する風景のひとつで、カメラマンが何人も待ち構えている。ちょうど夕日が沈む時刻、言葉にならない美しさ。対照的に東側には軍艦や市街地が望める。

夜の港にも寄ってから駅前に戻り、今度は歩いてアーケード街へ。お腹がすいてきたし、馬鹿の一つ覚えでまた佐世保バーガーを食おう。山本という店。強めにトーストした大きめのバンズに見た目でパティが負けてるが、じつは分厚くて、和牛をうたうだけあって旨い。こんだけ食えば大満足。

松浦鉄道佐世保駅

ハンドル名“mr_travzone”的にはMR松浦鉄道に乗りたくて、佐世保中央駅から乗車し佐世保駅に戻る。たった一駅区間だけの、ミニミニ大興奮の乗車体験。気動車だけど乗り心地は良かった。
甘いもので締めたくて31アイスのクレープを買い食いし、チャリは輪行袋に詰めておく。明日はJRで帰るだけ。

1/19(火) 山陽にほえる

朝食サービス時刻より前にチェックアウトする。やたら垢抜けた印象のある佐世保の街を離れ、青春18きっぷラスト一回分の旅。しかしそれだけでは松本に辿り着けないから、博多から広島まではひかりの速さでワープする。これが最安のプラン、と思ったがもう一度よく時刻表を精査すると、佐世保には隠れ始発というものがあって…あと1370円安い乗り継ぎがあった。頭が馬鹿だとこういう時に損をするなぁ。差額であと2個は佐世保バーガーを食えたろうに。

新幹線広島駅のくじらカツカレー

広島の新幹線駅構内で一日10食限定のくじらカツカレーを発見、食べてみる。脂の乗った固めの練りものって感じか。
あとは鈍行や快速を乗り継いで行く。やはり8時間くらい経つと一旦精神的に来るなぁ…。17時間揺られ続けながら、立ってるか座ってるかの二択はきつい。乗り飽きた路線なら尚更だ。車内にジョギングマシーンかサイクリングマシーンでも設置されてれば楽になるんだが。流れる景色もより楽しくなるだろうし。そういうフィットネストレイン、誰か作って。

列車は24時前に松本到着。冬の魔法のクーポンはこれでおしまい。寒い中チャリを組み立てて帰宅し、無事終了。これからどうする何をする。


付録

動画→zoome:大鳴門橋旅行記
孫崎や渦の道で撮った動画を適当に。
動画→zoome:JR瀬戸大橋線坂出→児島 西側展望5倍速
列車の側面展望を早回し。
動画→zoome:松浦鉄道佐世保中央駅ホーム
小さな駅の着発シーン。
ブログフォトアルバム→2010/01徳島-高松と下関-佐世保ラン
41枚。当旅行記ページ掲載写真とだいぶ被る。
再リンク→mrayoshiの経県値マップ
1995年から2010年にかけて、全都道府県を赤く塗りつぶした。

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