むらよしツール日記ツール・ド・美ヶ原2005 参戦記 |
2005年 6月25日(土)
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レース受付の日。「坂馬鹿」と呼ばれるヒルクライムレース愛好家が、クルマのルーフキャリアにチャリをくくり付けて、全国から松本浅間温泉に集結している。駐車場でローラーを漕ぎ出す奴もいる。私も最後の調整として近くの稲倉(しなぐら)峠を登ってから、受付会場に向かった。
エントリーしたのはロードレーサーの部・一般男子B(26歳〜30歳)。毎回ランドナーという旅行用自転車を使い、4度目の出場となる。もちろんドロヨケもダイナモも付けてるよ。
会場では有名な今中大介選手がステージを盛り上げていた。それにしても猛烈に暑い。暑いというより熱い。この日松本では6月観測史上最悪の35.9度を記録。みんなやられちゃえばいいのに。
ところがやられたのは自分だった。暑いんだけど寒くて痛い、という風邪のような症状が悪化してゆく。朝までに治るよう祈りつつ、氷嚢をして寝る。
6月26日(日)
ちゃんと早起き出来たよ。若干の症状は残ってるけど、そんなものはなぁ、走ってるうちにどうでもよくなるんだ! 消化器官がまともに働くか分かんないけど、スパゲティ150gとVAAMチャージを腹に詰め込む。
朝7時前。アパートからチャリで10分足らずの会場に着くと、野球場の周りをぐるぐる集団走行してる連中がいる。うわぁぁあいつらヤル気満々だよっ。ともかく飲み物やカメラを詰めたフロントバッグを頂上行きのマイクロバスに預け、男子Bの集合場所にチャリを置く。記録を狙うからには、この時点でなるべく前の方をキープしておきたい。ランドナーが顰蹙なのは分かるけど。
参加者は登録ベースで2070名(+ジュニアの部29名)。去年より減ったみたいだが、それでも大勢だ。男子Bは189名。スタートは100名ずつに区切って行われる。
開会宣言の後、間を置いてまずチャンピオンクラスの号砲が聞こえる。何だか緊張しますね。しかしそれから自分のクラスまでさらに間があったので(今年から51歳以上クラスを先にスタートさせてるし)、すっかり落ち着いてしまった。
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いよいよ男子B。ゼッケン300番台がラインに並び、号砲を貰う。ストップウォッチを押し、トゥストラップを締め付けて、とりあえず流れに乗る。右90度ターンをクリアするとさっそく温泉街の登り坂が始まる。自分のゼッケンは329番。
さぁ先頭集団に追い付くべくスタートダッシュだ! まだ入賞を諦めてないぞ。街を抜けるとツールド美ヶ原最狂の名物「浅間の激坂」。斜度15%は、デフォルトのロードレーサーで登るにはあまりにキツい壁。先にスタートしたクラスの脱落者が早くも屍になっている。ここはキャンプ用品を積んでも登れる設計のランドナーに敵なし。沿道から「ランドナー速ぇ」なんて声がかかると余計調子に乗って、誰も通ろうとしないインコースからごぼう抜きを敢行。先頭集団のすぐ背後に迫った。
かくして普段8分余かかる最初の激坂区間を7分余で通過。…おい、いくら何でも無理し過ぎだ。呼吸と足がレッドゾーンを越えている。ここからは自重を余儀なくする。ライバルたちに抜き返されていくのが悔しいなぁ! でも入賞の夢をさっきまで追い続けたことには、後悔どころか誇りにすら思う?
年下クラスのランドナーを抜き、「ああっ」とこちらに気付いたようなので「頑張れよ!」と声をかける。
350mほど登った標高1000m地帯で、道はしばらく平坦路になる。ちょっとした下り坂もある。右手の美鈴湖には目も呉れず、前を追いながら体力を回復させなければならない。第1チェックポイントでコップによる給水もあるが、終盤のスタミナに備えてボトルのエネルゲンだけを補給。また登り坂に突入してゆく。
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ここからも「どこがどれくらいの斜度で、ギアチェンジはこれくらい」とコースを知り尽くしているつもり。
ところが脇腹がキリキリ痛くなってくる。濃いめに作ったエネルゲンに体が拒絶反応を起こしただけの気もする。いよいよ締め殺されそうになったので、渋池の手前で一旦止まるようなスローダウン。すぐに回復していつものペースに戻す。第2チェックポイントを必死で通過。まだまだ頑張って、悔いのない強気の走りをしたい。それが楽しいんだろ!
先にスタートしたクラスを次々と抜いてゆくが、同時スタートの300番台同士での戦いはやや分が悪い。後からスタートしたクラスに抜かれたらもう抜き返せない。そんな位置で私は走る。
やがてこのレース最大の踏ん張りどころ、袴越山の長い急坂が襲ってくる。直線で見通しが良いので「今からアレ登るの…」と精神的にプッツンしそうになるのだ。もう何か叫びながら、弱気を殺してくるくる回すしかない。それでもライバルに追い付かないのがつらいぞ。
そこを抜けると九十九折り。登れども登れども我が走り楽にならず、じっとハンドルを見る。そんな時「ランドナーに抜かれてしもた」という声が聞こえた。ランドナーがどうのこうのという響きに弱い私は、一気にロングスパートへ。ごめん、置いてく。
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第3チェックポイントの通過タイムは…よく覚えてないが、少しでも油断したら3年前の自己記録の更新すらならないであろう、厳しい数字になった。腰痛との闘いも激しさを増す。時々「伸びっ」をして一時的に凌ぐの繰り返し。息も足も気力もいっぱい。
こうして高原のハイスピードバトル区間に突入。開放的な景色空間でのレースに、思わずヒャッホウ。でもね、ちくしょう力一杯踏み込んでるよ! どうしてもここはロードレーサーには敵わない。このさい前の選手を風よけに使ってまで追うのだが。下り坂も踏めるだけ踏んで、とにかく残りの体力を使い切ること!
ラストに待ち構える長い登り坂。339番に抜かれた。何かまた叫び声を上げて、立ち漕ぎをして追うが、持たない。今度は呼吸頻度を倍にし、くるくる回す。みんな限界を超えた戦いの中で、あいつの方がラストスパートが速いという事実。
おまけに390番にまで抜かれた。くそうと、もがいて抜き返す。これまでの人生で最も自殺に近い行動だった、3年前の奇跡のラストスパート再現なるか! いよいよゴール目前。ところがゴール計測器直前の二手に分かれたコースで、自分の取った左進路が遅いチャリで塞がった。やばい抜き返される? しかし右進路の390番は紳士だったのか、それはしてこなかった。有り難う!
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無事計測器の電子音を聞く。己は限界の苦しみを乗り越えて新たなる地平を見たか。ストップウォッチを止めて見て、確かに私はガッツポーズをした。不安はいろいろあったけど、ちゃんと自己記録を2分更新してるじゃないか。それに、完璧ではないけれど充実感たっぷりのいい走りができたという実感に溢れる。
ん〜〜いや正直、もうちょっと上を狙うつもりじゃなかったのかな? でも今日の体調なりには力を出し切る事が出来たのだろう。昨日までの二ヶ月間トレーニングは、3年前のような体力の伸びこそなけれ、無駄ではなかったということだ。
ウイニングラン気分で少し駐車場を回り、呼吸が落ち着いた所で下車。あぁ、当たり前だけど、疲れた。完走のご褒美「冷やしトマト」をヘタまで食いながら、マイクロバスに預けたフロントバックを受け取り、まったりモードに入る。
そこで、筑大サイクリング部出身の先輩S浦さんと会う。去年と同じ位置に座って休んでいた。怪我を押してまで参加を決行したらしい。鉄人だ。去年妙に大勢いた他の筑大関係者は来ていないって。「美ヶ原はキツいよ」と言ったとか言わなかったとか。まぁ都合もなかなか付かないだろうけどね。
体力が余っていれば、あと100mほどアップした美ヶ原山頂まで登山してみたいのだが、とても無理。ゾンビのようにふらふらと歩きながらコースに戻り、写真を取りまくる。これはもはや趣味かも。日射が強烈で、ますます足が進まないんだけど。もうどうなってもいいしね。ガスってアルプスは臨めないが、今年は見事なレンゲツツジの咲きっぷりだ。
おちおちしてる間に集団下山が始まった。まだ競技中の人もいるが。私もゴールに戻って下山開始。そこでまた、何十台ものチャリが連なる高原道路の写真を撮りまくる。お互いに撮り合いもするし、みんなすげー楽しそう! こうやって笑顔の完走を果たした人は、きっと来年も出場だ。
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集団下山はあまりスピードを出せずにブレーキを多用するので、手がとても疲れる。スタート会場に戻って計測センサーを返却し、ともかく帰宅。すぐ水風呂に入る。食欲が全然無いので昼食はカロリーメイトで済ませ、再び会場へ。
閉会式が始まる。焼けるようなアスファルトに尻餅を焼きながら座る。S浦さんは見事MTB女子で入賞し、表彰を受けていた。その後お楽しみの抽選会へ。ナイスハイテンションなレースクィーンが、会場を爆笑の渦に巻き込みながら次々と番号を読み上げてゆく。3年前の奇跡の当選再現なるか! 5等、4等、3等、2等、1等、…ハイ残念。
お疲れさまでした。スーパーで甘い物を買って帰り、Blogに今日の出来事を書き込む。
とりあえずの短期目標を終え、目の前が真っ暗になって絶望してしまうかと思いきや、まだわりと充実した気分だ。
それに仕事とトレーニングを両立しうる体をつくる、という目標にはまだ達していない。ほど良い緊張感を持続させて、毎日をこなして行けたらなぁと思う。そういえば体調管理も課題になってしまったね。
翌日Web発表された公式リザルト
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