![]() むらよしツール日記ツール・ド・美ヶ原2006 参戦記 |
2006年 6月25日(日)
毎年恒例となった坂馬鹿の祭典「ツールド美ヶ原」。出るからには自己記録更新を狙いたいと、6月に入ってからここのコース以外は登らないという徹底した美ヶ原専属練習を行なった。脚のパワーは去年に劣る感じがするものの、ジョギングで培ったスタミナとの積なら充分な戦力を得たはずだ。
また、参加人数の少ないロードレーサー男子Bクラス(26〜30歳)にエントリーできる最後の歳になった。入賞を狙うにも最後のチャンスになるかなと思っていたけど、それはあまりに遠い夢のようだ。
地元小学生による応援のブックマークには「ぜん力でがんばってがんばってがんばりまくってくださいね!」と書いてあった。果たしてそんなことが出来るのだろうか。いや、しなければなるまい。
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さてレース当日。昨日までやや崩れていた体調は治り、ただし若干の吐き気が後遺している。朝食には支障なくスパゲティ150gをかっ込んでから早目の会場入り。チャリの置き位置で、スターティンググリッド3列目くらいを確保しておく。あんまり前だと恥ずかしいな。
今回は、筑大サイクリング部出身者が私以外にも4人エントリーしている。さっそくT井さんを発見。VAAMを飲んでゴール行きの荷物バスにフロントバッグを預け、レース前の暖気運転として野球場回りをジョギングして帰ってくると、S浦さんとN川さんも発見。もう一人はだいぶ後の代で面識がなく、ここではよく分からなかった。
ジュニアの部まで含めた全体の参加登録者は2228名。最初の激坂が初心者にはトラウマになってしまうのか、増えたり減ったりという印象だ。
7時30分にチャンピオンクラスがスタート。そういえば今年は“越後のインデュライン”ことM山氏の名前が無かったが、大本命なきトップ集団ではどんな闘いが繰り広げられるのだろう。彼が居ないにも関らず、天気は数日前までの雨の予報を覆しレースには程よい曇り空となった。その後2〜5分毎に、約100名ずつのスタートが切られていく。
7時53分、ロードレーサーの部一般男子B第2グループの号砲が鳴る。いよいよ全力を尽くすべき90分が始まった。泣いても笑っても、まさに「今」の頑張りに練習の成果の有無が出る。集団に食い下がれ、ゼッケン435番のランドナー1台。
間もなくの信号を右折し、温泉街の“湯坂”から登りが始まる。しかしそれもわずかで、人家が途絶えるともうツールド美ヶ原最狂の名物“激坂”に差しかかるのだ。去年ここで脚を使い過ぎた反省から、無理に先頭集団を追わずに普段通りのペースで、ランドナーのめちゃ軽ギアを回して行く。それでも激坂終了部(美鈴湖あと3kmの看板)の通過タイムが7分40秒。空気の流れのおかげか、練習ではどんなに頑張ってもまず出ない数字が出た。
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その後もまずまずの力走で、美鈴湖畔の平坦部もなるべく飛ばす。第1チェックポイントが20分10秒。あとちょっとで念願にしていた20分切りが出来たが、ともかく上々だ。
再び登り坂が始まると、去年同様に脇腹痛が発生。激痛には至らなかったが、しばらくコントロールしながらの走りを余儀なくする。ボトルにはVAAMウォーターを入れてきたが、これは脇腹痛とは関係ないだろう。スタート前に心配していた吐き気は問題なくなった。
ジュニアの部のゴールがある第2チェックポイント(上の沢)で38分台。ちょっと落ちてきちゃったかな〜という数字だが、ここをゴールとした練習時のタイムとほぼ同等で、しかもまだまだ脚を残しているのだから、調子は良い。
今年は新兵器として、後ろのドロヨケに「ゆっくり走ろう美ヶ原 [チーム重戰車] 」のステッカーを作って貼った。これで敵を攪乱して、順位を一つでも上げようというとても頭のいい作戦である。ちなみにチーム重戦車とはかつて自転車の筑波4耐に参加した時、ロードレーサーに立ち向かう重量級チャリとしてランドナー乗りのI島と共に組んだチーム名である。いまここに復活!
しかし実際のところは、同時スタートの400番台の人に時々抜かれてしまう。抜き返しても抜き返されてしまう。2分前にスタートした300番台の脱落組とグループを形成している場合じゃないのになぁ。
でもこの調子で最後まで気を抜かなければ、記録更新いける。そう考えた時点で守りに入っていた。「踏み込んでるよ」「呼吸限界まで頑張ってるよ」「前の選手を追ってるよ」「腰痛に耐えてるよ」と言い訳がましい思考が頭を支配するようになる。どこかで点火すべきロングスパートエンジンに、ついぞ火が入らない。
いや一応コース特性を知り尽くしているのだし、斜度の変化するポイントを利用して一気に前に出るのだ。しかしすぐに心肺がリミッターを越えて、また後退してしまう。まだ、だめ、だめだ。力を残しておこう…。
袴越手前の壁にはめげなかったつもりだが、第3チェックポイント(風穴)通過が1時間12分。あれ! 全然遅くなっちゃったよ。もはや記録更新は無理な状況になり、ガクッときてしまう。
武石峠を通過しながら前を見ると、スタート会場では見付からなかった「もう一人の筑大サイクリング部OB」G藤(浩)が走っていた。面識はなくともゼッケン番号を覚えておいたのだ。よっしゃ追い付いた、何か声をかけるべきか? その文言を考えたが、ここはずっと続いた登り坂の最後の粘りどころ。頭に血が回らなくなり、ダンシング(立ち漕ぎ)に苦しんでしまう。しかもどういうわけか、一度は横に並びかけたのにまた突き放されてしまう。(後に彼のBlogを見たところ、私のランドナーに気付いてびっくりして逃げたようだ。)
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さぁ爽快なハイスピードバトル区間だ。一気に開ける景色に口笛を…あれ、不発った。しかも早いとこギアをアウタートップに入れて踏み込みたいのに、なかなかそこまで加速できない。水を得た魚のようにぶっ飛ばすロードレーサーにまるで付いて行けなくなった。そういえば登り坂のトレーニングばかりしていたので、平坦部の走り方を忘れてしまったようだ。無常に目標タイムも過ぎてから、最後の登り坂にかかる。
呼吸の頻度を倍にしてスパート開始!…あれ、心臓がついてこない。悟った。今日力を出し切れなかったのは心臓の調子が悪いせいだと。
こうして、辛うじて1時間27分を切るぐらいのタイムでゴールを抜けるのだった。自己記録どころか4年前の初出場時よりも遅いじゃん…。奥に進みつつ、心臓が救急車沙汰を意識するほど逝ってしまいそうになって、ちょっとしゃがみ込む。すぐに落ち着いてまた歩く。
ここでS浦さんを発見。まだ少し息が荒い状態で互いの戦況報告をしていると、テレビクルーがやってきた。S浦さん本人は「他に強い人が出てないから」と言っていたが、MTB女子の部で2位入賞。草津大会では優勝したらしいし、高いレベルで活動を継続している人は輝くものだと思った。
私の方はというと、ランドナーを懐かしがる人に自転車の写真を撮られること数回…。まぁともかくゴールのご褒美、冷やしトマトを食う。これの旨さは他じゃなかなか味わえないね。(例年よりトマトが小振りな気がしたが、代わりに完走者全員に行き渡る数を確保してあったようだ。)
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やや肌寒い中、足は使い切ってないから美ヶ原頂上まで歩けるよぐらいの余裕はあったが、今年はあまりぴょんぴょんと写真を撮り回ることもなく、ESCA関係のG蕃さんも加えてまったりと過ごす。部品に詳しい人で、「チェーン替えればもっといいタイム出るよ」と教えてくれた。ママチャリ用のタイヤを履いていることも見抜かれたし。やがてN川さんとT井さんもゴール。コースのきつさに負けず、元気である。
まったりし過ぎて集団下山が最終組になってしまった。曇り空ながら北アルプスがくっきり間近に見える例年以上の見晴らしだが、そこをぞろぞろ走る自転車の列、という図の写真を撮るにはちょっと遅かったかも。また、やはり武石峰のレンゲツツジは開花が間に合わなかった。
路面には、風で飛ばされた地元小学生謹製ブックマークがいくつか落ちている。よっぽど拾おうかと思ったが、それは自分の仕事じゃない。しかもここにあるということは、お守りとしての役割は全うしたということだ。
私は毎度のように第3チェックポイントの女鳥羽川源流で飲み水を汲んで行くのだが、ここには大勢のスタッフの他に敗残兵の屍がいくつか転がっているので、ちょっと鬱な雰囲気だ。来年は是非リベンジ完走して欲しい!
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下山にもけっこう時間がかかるものだが、無事計測チップも返却して一旦帰宅。…ろくな食い物がねぇ。お好み焼きをこしらえて胃に流し込み、シャワーを浴びてから再び会場へ。ちょうどS浦さんが表彰式を受けているところだった。
続く抽選会がお楽しみ。役目を終えたゼッケンを手に、自分の番号が読み上げられるのを待つ。ここでも当選したのはS浦さんだった。その景品の中から、赤いハンドルバーテープを分けてもらった。丁度自分のがボロボロになりかけてたところだから、奇特な赤でも貰えるものは貰う。
これにて祭りは終了。関東組の3人は「残念ながら」松本を観光して行く余裕もなく、帰宅の途についた。私もとぼとぼとアパートに戻る。
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翌日Web発表された公式リザルト
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Webリザルトを見て気が付いたのだが、同時スタートのゼッケン400番台の人の中で、途中で競い合ったと思われる私から3分早いまでの人が10人いるのに対して、3分遅いまでの人は2人しかいない。「ゆっくり走ろう美ヶ原」なんてステッカーを見せられては、みな余計奮起しちゃったかな。
去年より2分45秒もタイムを落とした敗因となった「心臓の不調」は生活の乱れによるものだろう。思ったような走りは出来なかった今回の参戦であるが、しかし大勢と競い合いながら何より好きな坂登りをするのはすごく楽しい。来年は大所帯の一般男子Cクラスに進級することになり、上位入賞の可能性はますます薄くなるが、どのみちそれは無理なんだから今まで通り楽しみたいと思う。
私を千切りはしたがリザルトでは負けたG藤氏のリベンジを受けられるくらいの体力は、来年まで維持しておきたい。とりあえず次の目標は乗鞍ヒルクライムになるのだけれど、あれはツールド美ヶ原よりお祭り色の濃い大会なので、ネタで出ようかと迷っている。
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