![]() むらよしツール日記ツール・ド・美ヶ原2007 参戦記 |
2007年 6月24日(日)
やれるだけの練習はやったのか。自分のメインレースたるツールド美ヶ原なのに、4月の長野マラソン直前に感じた異常なテンションは再現せず。それ以降のトレーニングによる獲得標高差が16,150mと目標の2エベレストに至らず、本番数日前には軽く風邪も引いてしまう。
それでも前日には懸賞でオーブンレンジが当選し、その幸運を糧にようやくテンションが上がってくる。いざ、更新不可能と思っていた一昨年の自己ベスト(1:24'10")と勝負だ!
昨夜のカレーの残りをガツガツ食ってコーヒー飲んで新聞読んでゼッケン656番を着用。チャリで少し走れば6時50分、すでにわんさかと自転車が群れをなしている浅間温泉の会場に到着。早速ESCA OBのG蕃さんに会い、意気込みを2、3話す。
チャリを置いてそこそこのスタートポジションを確保した後、下山用の荷物を頂上行きのマイクロバスに預ける。自己ベストを一秒でも更新したいから、例年チャリに積んだままにしている財布やケータイも預けてしまえ。ウォーミングアップは皆が自転車でぐるぐる回っている野球場外周路を、自分はジョギングで。疲れたので一周でやめる。体調は、まぁ100%・・・と言っていいかな。カゼ気は抜けてだるくはないし、むしろ自転車整備で軽く痛めている腰の方が心配。
筑大先輩のT井さん・S浦さんが今年は不在で残念だが、後輩のG藤君とは面会。昨年勝ち切れなかったこいつを迎え撃つというのもモチベーションの一つに入っている。
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天候は曇りで、レースには絶好のコンディション。チャンピオンクラスから始まり、約100名ずつスタートが切られていく。わずかの1時間30分弱に全力を出し尽くせるのか、もうドキドキしてきた。今のうちにガンガン心拍上がれ! 10分前にVAAMゼリーを飲み込む。ぞろぞろと男子Cクラス最早発の600番台がスタートラインに近づいて行くと、前から3列目を確保。ランドナーのくせに生意気だぞ? 気後れしそうだ。しかしバイクの性能の違いが戦力の決定的な差ではないことを教えてやる。ぼくが、一番早くランドナーで走るんだ! 昨年まで参戦した男子Bクラスと比べて男子Cは大所帯かつレベルが高いので、入賞とかは余計遥かな夢だけど…。
これから最高のツールド美ヶ原で成果を出すんだという自覚を呼び起こしたところで、いよいよ7時56分に号砲が鳴る。しまった、ストップウォッチの操作を間違えて計測開始できなかった。仕方がないので現在時刻とスタート時刻を引き算しながらのペース確認となるのだが…。
序盤こそ場違いながら10番手以内につけたものの、ずりずり落ち着きながらの激坂突入となる。いつもここで朝練をしているからいきなりのフルパワーには慣れている。もう前スタート組の屍が転がっている中、28x28Tのめちゃ軽ギアを惜しみなく回して赤鳥居のシケインをインべたで抜け、その後のヘアピンからシフトアップ。通過7分半だったか。やがてブログ仲間(?)Tノブさんに追い付いた。初顔合わせながらドロヨケ付きパスハンは分かり易い。「最後まで諦めずに走って下さい!」と伝えて先に行く。
美鈴湖の平坦路に出ると太鼓の演奏が出迎える。リズムに合わせて私も左手こぶしを振り上げノリノリ。第1チェックポイントは時計を見忘れたが、初めて20分を切れていたのではないだろうか。
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ここからの区間で毎年悩まされる脇腹痛は発症せず、第2チェックポイントで絶好調を意味する36分30秒と確認。自己ベストを狙うには上々の通過タイムだが、ここからの頑張りがイメージ通りいけるかが問題。やはり腰に痛みが来はじめている。
ゼッケン661、688、668、601、641番あたりと抜きつ抜かれつ、ややばらけつつも互いを意識するグループを構成している。うち一人が私のチーム重戦車のステッカーを見て「重戦車どうっすか?」と聞いてくる。とっさに気の利いた言葉は思い浮かばず「重いよぉ・・・呼吸がっ。」と答えると先に行っちゃいやがった。
後日このへんの闘いを書いているブログを発見したので引用(事後ですが承諾頂きました)。
●急勾配→緩斜面を繰り返しながら登っていると,前半飛ばしすぎてタレてきた選手がどんどん降ってきて,やがて周囲の同クラスの面子は固定され,ナルシマ 1名,イタリアっぽいジャージのディープリム1名,ランドナー(!) 1名.
●ランドナーが早い!! 太いタイヤにキャリアも完備.荷物さえ載っていれば「今日はどちらまで?」と聞きたくなるような重そうな自転車なのに,引き離せません.軽量バイクに乗っているローディーとしては,意地でも負けられない.───
〜sports silvia on BLOGさんより
上下線分離箇所を過ぎると、個人的には最大の難所だと思う「ストップ坂」が立ちはだかる。ここは無理してでも一つ重めのギアで踏む。踏め。踏めども。踏み切った! 袴越あたりでグループの後方にはなってしまったが、呼吸を休めてしまうことも無くよく走れている。腰痛だけがもったいない。さて、後方スタートのG蕃さんがそろそろ追い付いてくる筈だが気配がない。900番台よりも1000番台の先頭が先に抜いてったよ。あるいはこの辺で抜かせると思ったG藤君も見当たらない。
第2から第3チェックポイントまでの長い区間をクリアし、通過タイムは1時間8分。お、軽く1分は自己ベストを更新できるんじゃないか、と少し油断したのも束の間。後方で何か叫びながら追い付いてくる人あり。あれには抜かれたくないと足に力を込め「これが最後の頑張り所」と思い出の丘までこらえるように攻める。
しかしそこからが予定外の向い風ということもあり、今ひとつスピードに乗り切れない。ライバルの600番台は前後にいないし、前スタート組はゆっくり走っているし、後ろスタートの700番台に無理して付いていってもすぐ離される。それでも武石峰の大下りでは鳥になって羽ばたいたような錯覚を覚え、最高のステージに最高のハイテンション、「ヒョオッ!」と声が出る。しかし他車との安全の為に若干のブレーキを使用。自信を持って焼山の登りはクリアせよ。んでまた下り坂。ランドナーはやっぱり遅くなっちゃうよな。
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最後の坂を登りはじめた所で、ぴったりと横につけてくる選手がひとり。ナンバーを見ずとも、これが中盤で形成されたグループの最下位争いになっていることが分かる。すこし彼が前になって、やはり同じ600番台であることを確認。しばらく並走して意地のぶつけ合いだが、あぁ足が言うことを聞かないよ。でも無理に追い付いて来た向こうの方がつらいに決まっている。差されてたまるか、リードを奪い返して精神的に折れさせろ。そして私が「死ね坂」と名付けた最後の右カーブ。死ね死ね死ね死ね死んじまえ〜。呼吸の頻度を倍にして、パワフルではないが決死のラストスパート。他クラスの人だろうが一人でも多く抜かし、1秒でも速くゴールへ…。
後日この闘いを書いているブログを発見したので引用(事後ですが承諾頂きました)。
この下り区間で、ほぼ最初からずっと抜きつ、抜かれつの競り合いをしていたランドナーの人を発見。さすがにランドナーだと、下りでもスピードが出ないようで、何もしていないのに追いつけた。
ランドナーの人と横に並ぶ形で、最後の上り区間に突入。ラスト500mで勝負と決めていたので、上りの前半は抑える。
ランドナーの人が前に出る。
差が5m〜10m。この差をキープしつつ、最後のカーブを曲がる。
ゴールが見えた。ペースを上げる。差をどんどん縮める。───
〜chari blog by TakeyuKINGさんより
だがしかし、左右どちらのゴールレーンを選択するのかも戦術のうちなのだよ。より空いている右レーンに入り、猛追を間一髪かわしてゴール! ぴぴぴ…。
朦朧とした意識の中、腕時計を見てタイムを計算する。あれ、1時間24分ジャストくらい? やっぱりハイスピードバトル区間で失速しちゃってたかなぁ、わずかベスト10秒の更新か。それでもそれが最大の勝敗ラインと決めていたから、軽くガッツポーズをして、安堵の気分に包まれて下車する。
たくさんの難所やその景色を思い出すと、やっぱりツールド美ヶ原はツールド美ヶ原。一年で一番楽しみにしているだけはある。楽しかったぁ! 楽しみ過ぎて終盤失速したのならまぁいいや。時間をかければかけるほど楽しいのがツールド美ヶ原である。
直後にG蕃さんもゴールして、1時間17分と私よりはるかに速いタイムでも入賞を狙っていた彼としては「序盤の激坂を思うように克服出来なかった〜」と_| ̄|○の字になって悔やんでいた。上級者になればなるほどベストを尽くすのが難しいのもツールド美ヶ原である。それでも陽気にカントリーマァムをごちそうしてくれた。うめぇ。
G藤君にも再開。第1CPあたりで私に抜かされていたらしい。出来れば気付いて声を掛けたかった。
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あれ、小雨? タンパク補給に牛乳を飲んで体も冷えてきているし、あわててゴールのご褒美“冷やしトマト”を貰いに行く。激ウマであることに変わりはなく、これがあるから体調が持ち直せる。
どんどん雨。これではあまり写真を撮って回る気にはなれないなぁ。それでもうろうろしつつTノブさんに再開。やっと話せる。
マイクロバスに預けた荷物に入れておいたYシャツ、ウインドブレーカではもう寒いので、もう下山しよう。それも写真を撮りながらだが。雨でも見晴らしは良く、高原を車列がゆく様は壮観! みんなのウイニングランだ。しかしこの天候下まだ軽装でゴールを目指している選手にとっては相当シビアと思われる。
スリップが怖いというより雨が冷たいので、撮影ポイントを過ぎてもゆっくりゆっくり下山。ブレーキシューを消耗してしまうのは仕方ないか。前走者が跳ね上げる水しぶきが悩ましい。つくづく自転車という物はドロヨケが付いているのが正しい姿であるな。あ、上下線分離箇所で落車事故発生。何やら蘇生を受けていたが大丈夫だろうか。
自分らは無事に下界に下り、抽選券の半券を抽選ボックスに放り込んで一旦帰宅。朝の残りのカレーを食ってシャワーを浴びる。生き返る〜〜。だが降りしきる雨の中でも会場に戻らねば。
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テントにリザルトが張り出されていて人が群がっている。私も割り入ってタイム1:24あたりに自分を探す。あれ、無い。チップによる計測が失敗したのかなぁ。だとしたらめちゃくちゃ悔しいよ。群れから離れて、がっくり膝を付こうかと思ったが、しぶとくもうちょっと速いタイムの所を見に行く。!?、あった。
【中村良大 1:22:01】
ええっそりゃ間違えじゃないの? いや、ゴール時の意識朦朧とした脳内計算が間違っていたのだろう。失速などしていなかったのだ。想定内の最高、いや妄想レベルの出来過ぎたタイムにしばし唖然とする。トレーニング不足感はあったが、それ以外に長めの自転車通勤をしていたのがプラスになっていたのかも。堂々の自己ベスト大幅更新である。今日は最高の走りが出来たんだ!
会場は表彰式、そして抽選会。さすがに強運は続かず外れたが、記録だけお持ち帰り〜で大満足の一日だった。来年のハードルを高くしてしまったけど。
さて夕食は昼の残りのカレーだ。
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翌日Web発表された公式リザルト
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しばらく何でこんな好記録が出たのか、納得いかなかった。しかしそれは去年JogNoteに書き込んだ同レースの敗因にヒントがあった。「足の調子は良かったが、心臓がついてこなかった」と。今年はまるで心臓に負担を感じず走り切れた。春までのマラソン経験が、この強力な心臓を造り上げていたのだろう。
課題も無い訳はじゃないが、それは練習次第。とりあえず体と泥だらけの自転車にお疲れ様、だ。
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