1. 愛犬・愛猫がガンと診断されたら

がんは、体の中にある細胞が無秩序、無制限に成長するためにおこる病気で、体のあらゆる組織から生じるため、いろいろな種類があります。がん、悪性腫瘍、腫瘍形成はみな同じ意味の言葉です。がん細胞が血液やリンパ管に侵入して他の臓器に運ばれることによって、がんが最初に生じた部分から遠く離れた体の別の部分で増殖することがあります。このような性質のがんは一般に悪性と考えられています。しばしば、非常にやっかいな問題を起こすのがこの腫瘍の広がりで、転移と呼ばれています。がんには転移しないタイプもありますが、がんが限られた組織内で成長したり体の一部分だけに侵入するため、その部分に重大なダメージを与えることがあります。転移せずあまり進行しない腫瘍は、一般に良性と考えられています。良性 (あまりたちの悪くない) がんか悪性 (たちの悪い) がんかにかかわらず、腫瘍という言葉はがんの一般的な名称です。がんの研究を専門に行う医学の分野は腫瘍学と呼ばれています。

猫ががんと診断されたら、まず最初に腫瘍がどの程度進行しているかを調べます。この情報は、猫の予後 (つまり、がんにかかった猫に予想される今後の状態) と今後の治療計画を決定するために非常に重要なものです。

がんの程度を調べるためには、いくつか検査を行う必要があります。一般にこの検査には、血液検査 (血球計算、化学的プロフィールなど)、検尿、レントゲン撮影 (エックス線)、組織吸引、生検などがあります。また、がんの種類によっては、超音波、特殊放射線試験 (核細胞スキャン、CT/MRIスキャン、染色対照試験など)、骨髄吸引、リンパ節吸引、内視鏡検査 (特殊な顕微鏡を用いて胃や腸、気管支などを直接調べること)、免疫試験などの試験が行われる場合もあるでしょう。このように、がんの進行程度を確認するために行われる一連の検査は、腫瘍のステージ分けと呼ばれています。ただし、医学は精密な科学ではありませんので、このようなステージ分けの手順を行っても、小さい腫瘍や検査が難しい臓器の腫瘍は見つからない場合があることも認識しておきましょう。

腫瘍のステージ分けが完了すると、治療の選択肢について獣医から詳しい説明があると思いますが、この時に治療の目的についても獣医とよく話し合いましょう。広い範囲に転移してしまった腫瘍は、一般に治癒することはできません。このような場合、ペットには緩和 (つまり、症状をできる限り軽くし、また苦痛を伴う治療を行なわずにできる限り寿命を延ばそうとすること) のための治療が行われます。健康な組織を深く侵しておらず一部分に限定された腫瘍には、一番治癒するチャンスがあります。

猫のがんを治療する方法には、外科手術、化学療法、放射線療法、そして免疫療法という4種類の治療法があります。がんによって、1種類の治療法だけを行う場合と、病気のステージが進行しているなどの理由で複数の治療法を組み合わせて行う場合があります。

がんにかかった猫を治療することが、全てのケースや家族にとって適切な選択であるとは限りません。まず、治療には飼い主の強い意思と協力が必要です。治療のため動物病院に頻繁に通う必要があるかもしれませんし、お金もかなりかかるでしょう。がんによっては、治療の回数が減ることはあっても猫が生きている間じゅう治療をやめられないものもあります。また、がんにかかった猫の治療は実際にはチーム作業であり、獣医が一人でできるものではありません。飼い主もチームの一員なのです。最適な結果を得るには、治療のタイミングが重要です。獣医から指定された時にはきちんと猫を治療につれていき、獣医から指示された薬は自宅で正しく飲ませましょう。また、何か異常や問題を見つけたら、すぐに獣医に連絡しましょう。

いずれにしても、治療の目的は猫の幸せをできるだけ長続きさせ、不快な症状を最小限に抑えることです。時には、治療によって猫が一時的に不快な思いをする場合があるかもしれませんが、最近のがん治療は激しい苦痛を与えたり猫の生活の楽しみを奪うことなくできるようになりました。あなたの猫ががんと診断されたからといって、すぐに何もかもが終わりというわけではありません。飼い主が猫に対する責任を果たし、最新技術を用いた治療を提供するよう獣医が努力すれば、これらが共に作用して、猫の幸せな生活をより長続きさせることができるでしょう。