8. 緩和放射線療法

緩和治療は、がんによる症状を軽減させることによって、長期的ながんのコントロールが不可能な患者にできるだけ高いクオリティ オブ ライフを提供することを目的とした治療法です。緩和放射線療法は他の方法(外科的切除など)では治療できない、一部分に限られた腫瘍から生じる出血、痛み、あるいは機能低下などの症状をコントロールするために行われます。骨にできて骨の中まで侵入している腫瘍から来る痛みの軽減には、放射線療法は特に有用です。患者の約3分の2がかなりの症状の軽減を示し、その効果は数週間から数カ月間続く場合もあります。最初の治療の数日後に症状が軽減される場合もありますし、効果が見られるまでに数週間かかることもあります。

緩和放射線治療では数週間に大量の放射線を照射します。典型的なプロトコールでは1日目、7日目、そして21日目に3回の治療を行います(つまり、1週間に2回治療し、2週間休養し、必要があれば3回目の治療を行います)。 たいていの場合、緩和放射線療法のコースは一回限りで繰り返されることはありません。治療中は動物が完全に静止している必要があるため、各治療ごとに軽い麻酔が必要です。放射線の照射による不快感や痛みはありません。

動物は外来患者として扱われ、各治療には約2〜3時間かかりますが、これには麻酔の準備、治療の照射、そして回復にかかる時間を含みます。放射線を腫瘍に集中して照射するために、腫瘍がある部分の毛を刈り、ペンで治療部分に目印をつけます。足の一部も麻酔中に使用する静脈カテーテルのために刈ります。動物は家に帰った後も数時間はふらふらしたり元気が無いかもしれませんが、その場合は静かに休ませ、完全に回復するまで、食物や水は与えないようにしましょう。

副作用はごくわずかで、放射線の照射を受けた部分に限られます。副作用は最初の治療の3〜4週間後に始まり、数週間続くでしょう。放射された部分は赤からピンクになり、脱毛し、皮膚に中程度のフケやかさぶたが出るかもしれません。副作用の治療には、部分的な薬物療法を行い、動物が治療を受けた部分をなめたり、こすったり、かいたりするのを防止しなければなりません。やがてこの部分の皮膚は暗黒色から黒色になって、わずかに毛が再生するでしょう。長期的な副作用(治りにくい傷など)は生じるまで数ヶ月から数年もかかり、緩和ケアを行っているたいていの動物はがんのために余命が1年以下の場合が多いため、あまり問題にならないと思われます。