亀井くん Part2

いざ捕獲

3週間後、私はまた車を飛ばして甲府のまぐろさんの店へ出向きました。まぐろさんは笑いながら 「このあいだ捕獲器持って行っていれば、こんなに遠いところをまた取りに来なくても良かったのにねぇ」 と言われました。まぐろさんは捕獲器を郵送するともおっしゃってくださったのですが、私にとって甲府は理由あって通いなれた場所でもあり、1時間半ほどの運転もさほど苦にはなりません。

この日、お店にはまぐろさんの活動の同士でもあるらしいお友達がいらしていました。前回見た2匹の白猫はまだ里親がみつからずに、奥の部屋でそのお友達が猫たちを遊ばせていました。しかし話がいよいよ猫の捕獲の事になると、まぐろさんが捕獲のエキスパートだからとそのお友達を呼んで下さって、いろいろな経験談を聞かせてくれました。その方はもうそれまでに何十匹も野良猫を捕獲して手術したそうで、餌は何が良いとか、捕獲器はどういう場所に置くとか、猫が捕獲器に入ったら布をかぶせて落ち着かせるなどなど、たくさんの事を教えていただきました。帰り際、フードや捕獲器で荷物がたくさんに増えてしまった私を手伝って車まで荷物を運んでくださったのですが、その時に 「捕獲する前は猫がかわいそうだと思ったけど、一度捕獲してみると意外に簡単だし、結構楽しくなってまたやろうって気持ちになるのよ」 と話されました。「捕獲が楽しいだなんて…」 と、その時は半信半疑でしたが、やがてこの話が事実であることに私も気づくこととなるわけです。

翌朝、さっそく捕獲器をしかけました。一番のターゲットはもちろんいつも家の周囲をうろついている亀井君です。餌場の近くに捕獲器を置くと、すぐに亀井君が寄ってきました。母親も興味津々で家から出て来て、様子を見守っています。しばらくして、亀井君が捕獲器に入りかけました。私も母親も胸をワクワクさせながら扉の閉まるのを待ちましたが、身の危険を感じたのか亀井君は直前で後退してしまい、一回目は失敗に終わりました。

そうこうしているうちに、どこからかおかあちゃんが現れ、相変わらず捕獲器の周囲をウロウロしている亀井君に危険を知らせて鳴き始めました。一番警戒心の強いおかあちゃんに他の猫が捕獲される現場を見られたくはなかったのですが、しかたがありません。そのまましばらく様子を見ると、亀井君は餌の匂いにつられたのか、あっさりと捕獲器に入り無情にも扉は閉まりました。一瞬亀井君はパニックを起こして一生懸命捕獲器から出ようとしましたが、既に後の祭りです。私は用意していた古いシーツを捕獲器全体にかぶせ、事前に猫を捕獲できたら手術してもらうようお願いしておいた近所のS動物病院に電話をかけました。

その日は日曜日で午後が休診ということもあり、最初は獣医の先生も受け入れを渋っていましたが、捕獲器に入れたまま月曜日まで置いても構わないという条件で、無理やり了解を取り付けました。(今考えると24時間近くも捕獲器の中で放置されていたわけで、ちょっと亀井君には気の毒なことをしてしまいました。) そこで亀井君を捕獲器に入れたまま車に積み込み、車で5分のS動物病院へ運びました。その日病院は少々混んでいましたが、受け入れだけだったので先生は他の患者さんを待たせておいて先に亀井君を受け取ってくれました。こうして、何だかあわただしく亀井君は行ってしまったのでした。

この病院は、オスの去勢手術は原則1泊入院なので、翌日の月曜日の夕方亀井君を引き取りに行きました。(実際には、日曜日は預かってもらっただけで、月曜日の朝手術をしたということなので日帰りだったことになります。) 事前に手術費用は聞いてあったので、財布からその金額のお金を出して準備していると、突然先生が 「実はこの猫はとても強暴で、沈静をかけても全く効かなくて捕獲器から出すに出せないので、とても苦労して何とかガス麻酔をかけたんです。しかし、通常このガス麻酔は使わないので、追加料金で2000円払ってください。」 と言うのです。ぬぁにぃ〜、そんな話聞いてないぞ〜と思いましたが、助手もいない病院で先生が一人この強暴な亀井君と格闘していたのかと思うと何だか先生が気の毒になってしまい、野良猫の手術を快く引き受けてもらったことだしと思い、そのままお金を払いました。

化膿止めの薬を2日分もらったので、家に帰って物置に設置したケージに亀井君を移しました。亀井君は私の前では比較的おとなしくそんなに強暴だとは思えませんでしたが、そこは野良猫、やはりいざとなれば強いのでしょう。その日は何も与えず、翌朝から薬を混ぜたごはんを与え、薬が終わった木曜日の朝に亀井君は無罪放免となりました。突然捕獲されたり手術されたりと、こんなひどい目に遭って二度と亀井君が戻ってくることは無いだろうな〜と思うと少々寂しくもありましたが、何せいればギャーギャーうるさい亀井君です。これでお兄ちゃんのマーキングもおさまるだろうと、明るい気持ちで亀井君を送り出しました。

しか〜し!!!亀井君はその日の夕方には帰ってきて、いつもの餌場で待っていました。私のあの感傷にひたった別れは何だったのでしょう???それから以前にも増して亀井君は我が家の周辺で過ごす時間が長くなってしまい、車庫の一番奥にあった段ボールの上で座っている姿を良く見かけたので、試しに段ボールの空き箱に古い座布団を入れて置いたところ、そこがそのままねぐらになってしまいました。寒くなってきたのでドーム形のベッドも買ってみたのですが嫌がられてしまい、力づくで押し込んでもすぐに出てきてしまいました。一度外へ出したものをお兄ちゃんたちが使うわけにはいかないので、結局ベッドは未使用のまま物置に直行です(号泣)。今は亀井君は箱ベッドの中に古いひざ掛けを入れ、上にダンボールの屋根をかけてその中で寝ていますが、特に寒い日は勝手口へ来て入れろ、入れろとドアをたたきながら鳴くので、少々かわいそうでもあります。誰かこんな亀井くんに暖かいお家を提供してくれないかしら…そんな気もする今日この頃です。

なぜ亀井君?

亀井君の本名は 「亀井うるさい」 もとい 「亀井 大吉」 君と言います。ここでピーンときた方もいるでしょう。そう、亀井君の名前はかの有名代議士、自民党の元政調会長、亀井静香大先生からいただいたんです。とにかく、亀井君と亀井大先生は共通点がいっぱい!まず顔がでかい、態度がでかい、首が短い、それからギャーギャーうるさい、自分勝手、強引、喧嘩っ早い…ざっとあげてもこんな感じです。ねっ、そっくりでしょ(*^_^*)。我ながらナイスなネーミングだと思っています。(亀井大先生ごめんなさい (_ _))

ではなぜ大吉君か、これは亀井君に我が家の福の神になってほしいからなのです。亀井君が現れたおかげで我が家の2000年はてんやわんやでしたが、振り返ってみれば今までこれほど深く猫にかかわった一年はありませんでした。おかげでほんの少しだけど野良猫の保護活動のまねごとみたいなこともできたし、おかあちゃんとも暮らせるようになったし、何より猫を通じていろいろな方と知り合うことができました。このHPを立ち上げるきっかけにもなったし、やっぱり亀井君は我が家にとって福の神なのかも!?(ここまで2001年1月記)


(T_T) 亀ちゃ〜ん、どこにいるの〜?

亀ちゃんが我が家の居候になって1年半が過ぎた2001年10月11日、突然亀ちゃんが行方不明になりました。それまで数時間外出することはあっても、帰って来ないということは一度もありませんでした。行方不明になる前日の晩も車庫に設けた亀っ子ハウスで眠っていたのを見ています。しかし、この日以来亀ちゃんは二度と私の前に姿を現してはくれませんでした。とにかく泣きました。悲しくて、悲しくて、1ヶ月間毎日泣き続け、亀ちゃんの帰りを待ちました。でも亀ちゃんは帰ってきてくれませんでした。もちろん、1年たってひょっこり帰ってくる子がいるという話も聞きましたが、亀ちゃんがいなくなってから1年以上が過ぎ、どうやらもう帰ってきてはくれないようです。こんな別れは、悲しすぎます。 (2003.2.1記)

Last Update: 2003.2.3