入院生活

 手術が終わり、しばらく父はは個室にはいった。痛みや麻酔によるかゆみがあるので、 夜中にさわいでほかの患者にメイワクかからなくてよい。
それにしても、「癌」と言えば「告知」の問題があるのだと思っていたが、 父の場合はあっさり告知してしまったな。まあ、治る見込みも割合大きく、 末期の患者に比べたらましな方という事もあるのだろう。
私の大学の同期の父親も2人癌である。そろそろ子どもが大学に入る位だから、その親もそういう歳に 差し掛かりつつあるのだろうと思うと、未だに職のない我が身が情けなくなる。

それはそれとして
父は下半身に管(くだ)をとおしている。排尿のためと、微量だが出血した血を溜めるためである。 それから点滴を打っていたが、大部屋にうつってから食事が取れるようになったので2、3週間でこれは外すことができた。 また、先日管のうち血の方のやつが外す事ができた。未だに入院中だが、排尿用の管が外せたら 退院らしい。

まだ、癌が体内に残っているかどうかは聞かされていない。
もし残っていなければ、病院とおさらばなのだが・・・
(一つ懸念。私だけが今回の癌に関して直前まで蚊帳の外だった。体内の癌についても同様なの ではないかと、疑心暗鬼に陥っている今日このごろである・・・・。)
話は変わるが
父が妙な漢方薬にはまっている。
危ないから止めろと言っても決して決して聞き入れようとしない。 以前はこんなことは絶対なかった。この病院に来て癌と診断される前、父はあちこちの 病院や医者に見てもらったが、どこに行っても「異常なし」と言われていた。 妙な薬にはまる様になったのは、それからである。癌の診断は難しいと言う事は良く解るので、 医者を責める気はさらさらない。ただ、癌が直接「死」につながらないからと言って、 自分が癌である事を知ることは「死」を示唆されたようなもの、精神的によほどこたえたのだと思う。 ただでさえ息子が24にもなって就職しない事に頭を痛めていた時だけに・・・・
また、体力が自慢だった父もよる年波に勝てず、最近はめっきり衰えを感じていたところでもある。 いくつかの要因が重なって、妙な迷信にはまっている様なものであろう。

原因の一端が自分にもあると思うと、気が重い。
そういえば親をこんな目で見るようになったのはいつからであろう。
幼い時、父は絶対的に安定した存在だと確信していたのに。

何にしてもやめさせなければ、治るものも治らんだろう。
無理矢理取り上げるのは逆効果だと思う。
何か良い方法はないか・・・


癌目次へ

表紙に戻る