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冬の朝
山岳の雪の光……
遠く煙った太陽に まどろんでみえる
カシラダカみたいね
屋根のちかくで声がしている
日毎に風景が 遠のいていく――――
パレストリーナのモテット
ここ数日の朝の目覚めは 夢の途切れる
さいごの瞬間まで こんな音楽が
鳴り響いている……
その余韻に充たされながら 眼を覚ますのだ
――この透明感で 一日のはじまりを
今日も 迎えていくだろう……
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神様、毎日仕合わせで仕方ありません
(そう妹は思っているのに…)
兄は昨日 いねむりをしながら云うのです
おまえ 早くいいひとをみつけよと
なぜ? そうすれば(いつでも)死ねるから?
うん
書物に取り巻かれたこの部屋、おなじ空間
おなじ空気を吸っているのに
妹は充ち足りて 兄は不幸なのだ
兄はいつ死ぬのであろう……
まい日 一寸だけ思う
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