はじめに

　この中編は、もう数年前に書いたものです。３部作となっていますが、実際は短編集のその１「蜘蛛の仕立て屋」というお話を、モノローグとしてまじえた４部作、「天からの贈り物、地上からの贈り物」として作られていました。
　また、お読みいただければおわかりになると思いますが、これらのモチーフは総て蜘蛛の糸で結ばれており、当然長編童話「天使パド物語」の前身といえるものです。　
　（書かれたのは、天使パド脱稿の後ですが）

　このようないきさつから、短編童話１「蜘蛛の仕立て屋」（旧「天からの贈り物、地上からの贈り物；前章」）をまじえた４部物語の、短い解説とさせて戴きますと、以下のようなモチーフもしくは構成となっております。

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Ⅰ）生き物たち（小鳥、草花、虫）がみずからの生の悦びを形にし、天に返すため、それぞれの贈り物を考え出す。クモは、それらの贈り物の注文を受け、透き通った糸で仕立ててやる。（天使のための翼、冠、日射しの投網、光の帯などの編み物。）最後にみなで集まり、それらを天に送り届ける。

　　　　　――「天からの贈り物、地上からの贈り物；
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　前章ー蜘蛛の仕立て屋」

Ⅱ）生きた直感と楽的センスを失った音楽家が、小鳥たちの天にささげる自発性にみちたさえずりの音楽に出会うことで、生を回復し、喜びにみちた音楽性と創造性を取り戻す。

　　　　　――「天からの贈り物、地上からの贈り物；
　　　　　　　　　　　　　　　　　その１)　或る音楽家と不思議な出来事」

Ⅲ）風景の色に息づく、また形に宿る天のメッセージを、カンバスに表現しようとするが出来ずにいる画家が、日射しというものの神秘への表現力を、一匹のクモとの出逢いと、その糸による暗示によって獲得する。

　　　　　――「天からの贈り物、地上からの贈り物；
　　　　　　　　　　　　　　　　　その２)　或る絵かきと不思議な出来事」

Ⅳ）何かに怯えうちひしがれた少年が、永遠の迷宮に彷徨えるかのごとく延々と到達不能な丘を巡って旅をするうち、ひとりの不具な踊り子の少女と出逢い、自己内外一致の生を得る。恩寵の丘とみえたものは日常的平穏の喜悦にみちた丘となりたやすく登頂される。

　　　　　――「天からの贈り物、地上からの贈り物；
　　　　　　　　　　　　　　　　　その３)　或る浮浪少年の物語」

　これらのモチーフは、何れもそれぞれの天使――光・音・在‐不在の天使など――と地上との結びつき、また神の創造の意にかなう出来事を表すとの仮定的視座から、蜘蛛の糸ないし蜘蛛の巣というほぼ透明な媒介を通してひとつにまとめられる。　

中編童話扉表紙