クレー<綱渡り師>による小曲

ストリングス・バージョン

機智と寓意にとんだ1920年代のクレーの絵が、リトグラフ等
の単純化された線描写による作品が多い と申しましたが、
「綱渡り師」は「さえずり機械」の翌1923年に描かれたもので
やはりそうした作品群のひとつです。平衡感覚にみち緻密に
計算されつくした構図性は、不安定な‘綱渡り’のモチーフと
は本来じつにかけ離れた造形性にとんだ作品で、その逆説
こそがなんともユーモラスなのですね。じっさい綱渡り師は、
けして均衡を崩す事のない様仕組まれた仕掛けの上に立ち
曲芸師さながらに棒を操ってはバランスを取り進むかのポー
ズをとっている、という図です。そこにこそ、クレーのこの時期
の主要なテーマであった構図性の緻密さ・巧みさが、パラドク
サルに物語られてくる、というわけなのでしょうか^^ 。。。。。
が、この弦楽Verにあたっては、同オルゴールVerとは異なり
計算されつくしたクレーの構図に従う事よりも、むしろ同旋律
を弦楽合奏特有の不安定で暗示的なゆらぎを帯びた雰囲気
で仕上げる という目的のために、あえて編曲しなおしました
したがって元となるクレーの絵のもつ均衡性よりは、サーカ
ス本来の浮遊感;無重量性の暗示を強調した形になっていま
す。あえて言えばシャガールやドガらの描くような曲芸の絵の
雰囲気に近いかも知れません。その旨ご了承下さいませ。。





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