霧ケ峰の自然と四季の情報

霧ケ峰高原は長野県のほぼ中央,東経183度10分,北緯36度5分に位置し,標高1500mから1900mに沿って広がる,東西10Km南北15Kmにわたる一帯の総称である。富士火山帯に属する八ヶ岳火山群の一つであって,日本では珍しいアスピーデ式火山の溶岩台地で,主峰車山の南面と北東面に跡を残している火口から,流動性の高い溶岩が静かに流出して,なだらかな高原台地ができたものとされている

気象的には表日本型気候と裏日本型気候の両方の影響を受けて,シベリアやカラフトによく似た大陸的気候である。夏の気温は最高23度前後,冬の最低気温は‐24度前後で最低気温が0度を上まわるのは年間130日ぐらいで又霧の発生も多く,登山やドライブには注意が必要である。6-7-8月は雷が多く,浅間山方面からの夕立は特に強く,落雷により生命を失う例もあるので注意しなければならない。

植物植物 霧ケ峰の春は5・6月,夏は7・8月,秋は9・10月と里より短い。この短期間にそれぞれの季節の花が咲き競う様子は,ほんとに見事なものである。霧ヶ峰の植物景観を三つに分けることができる。広大な草原,草原に包まれた珍しい湿原と樹叢がある。湿原と樹叢,草原の一部は国の天然記念物に,また草原に接する森林を含む大部分が国定公園に,さらに広域が県の開発調整地区に指定されて,自然保護の対象地域となっている。

湿原には次の三つがある。湿原には次の三つがある。(国の天然記念物)

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     八島湿原           踊場湿原    

イ 八島ヶ原湿原イ 八島ヶ原湿原 学術的に最も価値高く,貴重な所であるこの湿原は高層湿原といって,水苔を主とする二百数十種の植物が,枯れても腐植土とならずに推積し泥炭化し、植物は上へ上へと成長して全体が水面よりも高くもり上がったものである。この湿原の一番高いところでは水面より7mも高く泥炭層の厚みは8.5mもある。泥炭層野成長は1年1mmといわれるので,この湿原の成長には8,500年から10,000年を要したと推定される。(標高約1600m)植物の種類は草原と違い,低温,微栄養,酸性等の条件に強い水苔類,稲科,かやつりぐさ科,その他つるこけもも,にっこうきすげ,みつばおうれん,もうせんごけなど矮性のものが多く,きりがみねあきのきりんそう,きりがみねあさひらん,きりがみねきすげ,きりがみねひおうぎあやめなど,ここでの発見種も多い。約260種             

ロ 踊場湿原 植物の種類は八島ヶ原湿原に準ずる。約240種。泥炭層は2.5mと厚みは少なく,低層湿原も見られるのが特徴である。標高凡そ1.500mで八島ケ原湿原よりやや低い。 

 ハ 車山湿原 湿原中もっとも高所(標高1.700m)にあり泥炭層の厚みは1.5mと少ないが,低層湿原を経ないでただちに高層湿原として発達したところに特徴があるといわれる。約210種 樹叢 山の側面や凹地に見られるが,必ず岩石累々とした場所にあり,分布的にも生態的にも特異で原生状態が保たれている。特に   車山樹叢は種類豊富で周辺草原も含め,410種が数えられている。

 広大な草原として現在に至っているのは,採草地として刈られたり,焼かれたりしたことにもよるが,現在は全山1.000種にも及ぶ高山植物が大群落を形成し春,夏,秋とそれぞれの花を咲かせその情景はさながら一大原生花園であり、その美観は表現のしようもない。ただし、最近開発が進み来訪者が増すにつれて車の侵入,踏みつけみよる破壊が甚だしく,外来植物の侵入も30余種に及び高原らしい景観が一部そこなわれてきているので保護には万全を期したい。

       信州諏訪ヨリ抜粋(諏訪市観光課編集)

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