富士山須走口新五合目

2012 CYCLING FESTIVAL in Oyama

第9回 富士山国際ヒルクライム(ふじあざみライン)参戦記

2012.6.17[]

経緯

長野マラソンは悪走だったものの以降自転車トレーニングは好調で、今年の美ヶ原や乗鞍は数年ぶりに自己ベストを伺えるかも?と皮算用していた矢先、群馬県をツーリング中に遭難しかけ、自転車を失い左膝には怪我を負った(→2012/5/26-27 毛無峠と小串鉱山遭難記参照)。

3週間後に富士山国際ヒルクライムが迫っていた。楽しみにしていた大会だし、エントリー料が勿体無いから何とか参加したい。すぐに新車購入へ。…自転車の用途は主に毎朝毎夕の通勤だから、雨でも容赦なく走れるドロヨケが必須。ツーリングが一番の趣味だからドロップハンドル必須。レースにも使うからあまり重いのは困る。すると選択肢はクロモリフレームのランドナーかスポルティーフに限られ、キャンプ志向があるので結局またランドナーとなる。3代続けて買ったブリヂストンのトラベゾーンは残念ながら製造終了となっており、限られた予算で入手できるのは丸石のエンペラー(10万5千円)だけだった。実態は学生向けの量産品であっても、その名称にはベートーベンのピアノ協奏曲が似合いそうな優雅さがあるではないか。

納車は間に合った。深刻だった膝痛も、一定スピードでクランクを回すだけなら何とかなるレベルまで回復。トレーニングはろくに出来なかったが体重は減少傾向で、レースはどうなるかな。ちなみにこのエンペラー、ライトやフロントキャリアが付いてないにも関わらず、重量はトラベゾーンより重くて13.1kgもある。多分ホイールが頑丈で太いせいだろう。外せる部品は外した上でビデオ撮影機材を足して、レース時重量は13.5kgとなる。

前日の夜に松本市をクルマで発ち、高速は使わず下道で甲府〜新御坂トンネルを経由し富士山麓に向かう。3時間半で道の駅富士吉田に到着し、ここで車中泊とする。寝心地は良くないけど。

富士山国際ヒルクライム(ふじあざみライン)マップ;全長11.4km標高差1138m

日記

6月17日()大会当日
スタート前、富士山の雪渓

新しいランドナーを購入したは良いが、まだツーリングの味を覚えさせる前にいきなり国内二凶ヒルクライムレースに連れ回すなんて、ひどい話だ。お盆休みにはたっぷりのんびりキャンピングをさせてやりたい。

小雨模様の籠坂峠を越えて静岡県入りし、やってきました静岡県小山町の須走。まだ早朝で、第1駐車場は空いている。砂地なのは難だが、クルマを停めてボッーっとしているうちに他のクルマも増えて埋まってきた。持参した弁当を食べて、ぼちぼち会場へ。当日受付があるのは助かる。参加賞はロゴ入りの皿。何に使おう。

土砂降りの予報もあったが、雨はほぼ止んで薄日も差すくらい。富士山の雪渓が垣間見え、おおっ!て思う。蒸し暑くなりそうなのでアームウォーマー・レッグウォーマーは要らないだろう。下山用の荷物を自衛隊車両に預け、ウォーミングアップを開始する。平均斜度10%という特異なプロフィールを持つこのコース、不安もいっぱいだ。主にスタートラインより下の区間を数往復しているうちに整列は最後尾になってしまったが、そんなに人数はいないからいいや。いつものように自作マウントにデジカメを取り付ける作業を行う。ここで異変発生。これまで過酷な使用を繰り返していたせいで、三脚用ネジ穴がバカになり固定できない。大慌てになりつつ、ちょっと緩めて妥協する。隣の人が旅行用自転車について話しかけてくれたお陰で落ち着きを取り戻し、男子Cクラス(35〜39歳)はAクラスと共に8時45分、スタートを切る。

序盤は富士山に真っ直ぐ向かう緩い松並木を、体力温存を心掛けて進む。道の左側に0.2km毎の標識があり、これを目安にするとフィニッシュ1時間切りなんて余裕じゃんと思う。しかし登るにつれてギアを1段また1段と軽いものにチェンジしていく。徐々に斜度が増している証拠である。そろそろキツさに耐え切れなくなるころ富士あざみと鳥の壁画がある「バードコーナー」が現れ、道が直登からつづら折りに変化するので一旦楽になる。空はまた雨模様。登ってる間はそれでもいいよ。

毒キノコ標識

第1チェックポイントの馬返を通過。わずかな下りのあと一気にキツくなり、とうとうギアが28x26Tのインナーローに入っちゃった。路面も舗装とはいえ悪くなるし。さらに現れたのが恐怖の「毒キノコ」標識。どうしてこの自転車、もっと軽いギアが無いんだよう。片足踏むごとに加減速を繰り返すという非効率を余儀なくする。18%前後の激坂が続き、温存していたつもりの脚力をガリガリ削られる。これは…、持たないのではないか。一応規約では「周りに注意すれば」蛇行も許可されているが、なるべく真っ直ぐ進みたい。ここらへんは意地。グレーチングで転ぶ選手を時々見掛けるし、もう足を付かずに走り切れれば御の字ではないだろうか。1km進むのに要する時間が増大し、目標の1時間切りに暗雲が漂う。代わりに雨は止んだようだ。

第2チェックポイントの狩休(かりやす)を通過。ボトルの塩水が余っているので結局給水は受けなかった。キツ過ぎる坂は一段落し、緩い道も現れるが既にヘロヘロ。まだまだ激坂も繰り返し訪れるし。ここで私と同様にビデオを撮っている外国人を発見。さすが富士山「国際」ヒルクライムである。その連れの方と時々声を掛け合いながら抜きつ抜かれつする展開になる。「呼吸ダイジョーブ?」なんて聞かれるくらいだから、自分けっこう体力ギリギリまで追い込めているのかな。

しかし1時間切りが無理っぽくなって戦意喪失気味。カメラもとうとうネジが緩んで、走りながらではなかなか再固定できないし集中力を削がれる。せっかくの緩斜面もあまりスピードを上げられず、終盤はちょっと情けない走りになった。まぁ周囲の人々もヘロヘロだし、その雰囲気に飲まれたとも。

須走口新五合目

天候は晴れてきて、最後のカーブで雪渓の富士山頂が目前に見えた時は「うおぉぉぉ!」と声を上げてしまった。それに呼応したかのように例の外国人がラストスパートを掛ける。最後の22%坂を私も必死で後追い、須走口新五合目フィニッシュ。「コングラチュレーションズ」と言って握手する。タイムは手元の時計で1:04'10"…。まぁ良く完走できたと言うべきか。

小富士より

脚がつりそうだし、懸念していた膝が少々痛む。それでも一休みしてから気を付けて山道を小走りすること10分、小富士という寄生火山に立ち寄る。道中他の選手数人とすれ違ったが、ここにはもう誰も残っていなかった。「富士山頂が指呼の間」という景色も束の間、霧が湧いてきた。また山中で彷徨するなんてゴメンだよと、急ぎ五合目まで戻る。

この大会は、実業団レースの「第9回JBCF富士山ヒルクライム」も併催している。良くわからないけどE1,E2,E3,F,P1と分かれていて、トップクラスのP1だけ時間を置いて最後に登ってくる。つまり、最もハイレベルなゴールシーンを観戦できるという訳だ。間もなく先頭の選手がやってくる。その背後からもう一人の選手が迫り、逆転はならなかったけど大盛り上がりだった。

それから実業団、一般の順に下山を開始する。晴れて蒸し暑いとは言え、路面はまだウェット。あるグレーチングを過ぎた所で真後ろからドンガラガッシャーン!と音がした。驚いて振り返っても、すでに路肩のヤブに飲まれた後だった。恐ろしい…。常識的なペースで下っていく人に付いて行く形で、無事会場まで戻る。小山わいわい会によるサービスのなめこ汁を頂き、ホッと一息。P1の表彰式だけちょっと見て、帰途につく。

夜食・朝食・昼食を自分で作ってきた弁当で済ますくらい極端な金欠にあえいでいるが、帰りは危険な疲労体。下道にはこだわらず、安全のために一宮御坂で御坂で中央道に乗ってみたり。でもこの元年式アルト、85km/hオーバーでピーピー警告音がうるさいんだよなぁ。自宅アパートの駐車場にクルマを入れて、ようやく「無事」の二文字。夕食は今月唯一の外食として万両の牛乳ラーメンを頂き、遠征の労いとする。

結果

公式リザルト(実業団を除く)
時間
(全長11.4km 標高差1,138m)
1時間04分10秒923
平均10.65km/h
(最速者0:45:24, 最終完走者1:58:51)
ROAD男子Cクラス 順位
(35〜39歳)
26位 (/完走68名/申込74名中)
総合順位
(レディース,MTB等含)
174位 (/完走397名/申込461名中)
※併催の第9回JBCF富士山ヒルクライム(実業団)は完走402名/申込443名
その中で自分より速かった選手が316名いるので、
全て含めると順位490位/完走799名/申込904名中となる

全てを失ったかのように思えた群馬彷徨からわずか3週間で、「坂バカなら一度は制覇すべし!!!」と云われる難レースを完走するまでに復活を果たせた。そのキャッチフレーズ通り、ヒルクライム好きなら経験しておくべき充実したレースだったと思う。しかし体調が良かったぶん、怪我による練習ブランクは勿体無かった。再挑戦する機会があれば、もう少しワイドレシオなスプロケ(ギア)を用意して、1時間切りを実現するためのトレーニングも積んでおきたい。松本市には桜清水坂と勝手に呼んでいる、対ふじあざみラインに格好の激坂ルートがあるし。

さてチャリ載動画だが、やはり終盤に固定が不安定だったものの、一応最後まで撮りきれていた。例によって5倍速編をゆっくり風の音声解説を入れてニコニコ動画に投稿。BGMの展開は映画パルプ・フィクションを意識した。等倍速編もユーチューブに投稿。ネジ山がバカになったからと言ってカメラを買い換えるほどじゃないし、次以降はマウント方法を再考しないとな。

ニコニコ動画:【ふじあざみライン】第9回富士山国際ヒルクライム2012(5倍速)
YouTube:第9回富士山国際ヒルクライム(等倍速)2012

リンク

ALL SPORTS写真のサンプル
2012富士山国際ヒルクライム
JBCFによる公式サイト。案内や結果など。
オールスポーツコミュニティ
スポーツ写真サイト。(右のサンプル写真)

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