やしま夏まつりの花火

第27回 矢島カップ

Mt.鳥海バイシクルクラシック2013 参戦記

2013.7.27[]-28[]

経緯

10年くらい前のツールド美ヶ原。当時の矢島町々長が来賓挨拶で「鳥海にもこれくらい参加者が集まってくれると嬉しいんですが…」と言っていたことを思い出す。そんな鳥海バイシクルクラシックだが、近年人気を急上昇させて定員が埋まるようになった。乗鞍に準ずる歴史を持ち今年で27回目。ブログ仲間のkinottyさんイチオシの大会でもあり、あこがれの大会として意識するようになった。蔵王・美ヶ原・鳥海・乗鞍のうち3つ以上を組んでJCA全日本ヒルクライムシリーズ戦としてエントリーすると乗鞍の参加抽選を回避できる特典もあり、いよいよ今年初参加。

ムーンライトえちご@新宿駅

ただし会場は秋田県由利本荘市矢島町という、松本からはとても遠い所。いったいどうやって辿り着いたらいいのか思案した結果、遠回りだが新宿に出て、夜行快速で新潟に向かう奇策をとることにした。金曜日にいつもの仕事を終えて帰宅せず、職場近くのJR篠ノ井線平田駅で輪行。基本青春18きっぷだが一部特急も使って中央東線を乗り継ぎ、新宿発のムーンライトえちごに間に合わせた。片道810kmの長い鉄道旅行は、まだ始まったばっかりだ。

日記

7月27日()1stステージ 矢島の戦い

山手線・東北線・高崎線・上越線・信越線で北へ向かう485系電車の夜行快速。静かなクロハ(モーター無し)車両を選んで指定席を取ってあったし、ネックピローも良い具合で、新潟近くまで熟睡できた。ただし乗り換えはやたら離れた仮ホーム、しかも階段から一番遠い場所で、肩がキツい。羽越線に乗り換えてもウトウトする。何も出来ないから何もしなくていい鈍行旅行、開放感がヤバい。輪行袋で同一行程の人は…いないみたい。

おばこ列車@矢島駅

雨が降ったり止んだりするなか山形県を経て秋田県に入り、由利本荘市の羽後本荘駅で下車。ここで由利高原鉄道 鳥海山ろく線に乗り換える。秋田市方面から来たと思われる輪行袋が数名。車両はさすが秋田の美人アテンダント付きで、すごい経営努力してる。古墳のような駅を繋ぎ、車窓に鳥海山を遠望しつつ昼前に終点の矢島駅に到着。やって来ました旧矢島町、Mt.鳥海バイシクルクラシックの会場である。さっそく自転車を組み立て、駅裏手にあるふれあい公園にテントを設営する。小雨がぱらついてきた。受付へ行くと、参加賞として米1kg。嬉しいけど、輪行組には結構な荷物になるな。

この大会は二日間の日程で、今日は1stステージの個人タイムトライアルが行われる。そう、小規模ながらステージレースの体裁を整えているのが鳥海の特色なのだ。チャンピオンクラスの二日間合計タイム覇者は矢島カップを、女子Aの覇者は矢島クイーンカップを授与される。他の一般クラスは合計タイムによる順位付けはなく雰囲気を味わうだけだが、1stか2ndどちらかだと参加料が6000円、両方だと8000円。そりゃあ両方出たほうがお得だから、わざわざ夜行を使ってまで駆けつけたのだ。平地のTTなんて初めてだけど、どんな感じなんだろう。

八森城趾より大会会場

スーパーで昼飯を買い食いし、まだ時間はたっぷりある。しかし雨が雷を伴って本格化し、しばらくテントに篭もる。もう早い組は出走が始まっている。面倒で着替えるのを渋っているうち、雨は小康状態になった。ようやくレーパンレーシャツに着替え、ウォーミングアップがてら街を回る。高台の八森城趾からメイン会場を一望し、いざ子吉川を渡ってスタート地点の長泥(ながどろ)へ。軽量化のためボトルを積んでないが、そのわりに背中ポケットにはケータイ、デジカメ…。

1stステージ発射台

緊張の発射台。スロープがある本格的な作りで、左右交互に15秒毎にスタートが切られていく。「何人抜き出来るかな?」などと妄想していたが、どういうわけか自分の前後(30秒前後)には諏訪あたりの強豪チーム「568」のジャージが。勝てる気がしない。斜め前の人には追い付ける、と思っているけれど…。

15時35分45秒発射! いざ往復8kmのTTが始まる、が、トゥクリップがすんなり嵌らない。どうせ係員の支えがあるのだから、セットしてからスタートすれば良かった。出遅れたが、あとはとにかく行け行け、のっけの登り坂から呼吸MAX。これをどこまで維持できるかだ。コースは緩やかな下り、そして登り。案外全くの平坦という場所はない。そんな中、前走者の姿はどんどん小さくなっていく。2人後の568ジャージにも抜かれる。ルール上、ドラフティングは禁止。どのみち付いていけない。

1stステージ復路に鳥海山

木在(きさら)の折り返し点も、事前のシフトチェンジを怠って失敗。少しテールをスライドさせたが、カッコ悪いわ。もう脚がいっぱいいっぱいになりつつ、復路の登り坂に入る。路面は概ねドライ、つーかまさかの晴れで、鳥海山までよく見える。オレ晴れ男。「ランドナー頑張れ!」の声援も嬉しい。だがゴールはまだかぁ? なだらかな登りでとうとう息が続かなくなり、3人後の選手にも追い抜かれる。くじけりゃ誰かが先に行く。後から来たのに追い越され、泣くのが嫌ならさあもがけ。もうラストだ、力を出し切れ! 息いっぱい、これ以上吸えない。やがて下りの先にゴールライン。

手元の時計14分09秒でフィニッシュ…凡走だ、これではTTの文字が泣くぞ。こういう形式の練習をほとんどしてなかったし、ナメてた。悔しいけど、でも走後感は気持ち良い。これくらいなら翌日に響かないのだろう。ドリンクサービスで一服する。ちなみに今年から、スタート計測開始を定められた時刻ではなくゴールと同一ライン通過時とするネットタイムが公式とのことで、それを記した速報カードによれば13分54秒となった。いずれにせよ、半分より下だ。いっそザーザー降りが続いてた方が、泥ヨケ付き自転車の強みを活かせたかも知れない?

テントとやしま夏まつり

会場隣接の寿康苑で200円の風呂に入り、サッパリする。テントの周りが大勢の地元住民で賑やかになってきた。さあ、やしま夏まつりが始まる。1000円で抽選券付き食券を買い、出店のイカ焼き・豚焼きそば・らっきょう漬け・コロッケ・ハムカツを食べ歩く。ケータイでブログを入力して、マロン陵というドサ回り芸人によるものまねショーを少し観て、花火を観て、抽選会。荷物がギリギリなので何か当たったら困るが、貰えるものは貰いたい…結局当たらず。

祭りが終わり、少しずつ静かになっていく。星が見えて、そこそこ涼しい。明日は巻き返しを図ろう。

7月28日()2ndステージ 鳥海快調かい?
Mt.鳥海バイシクルクラシックコース図 矢島町ふれあい公園の朝

夜中に少々の雨がテントを叩いていた。朝は曇りで、予報は雨だがまだ鳥海山が見えている。朝食は昨日申し込んでおいた弁当。鮭やメンチが入っているけど野菜は寂しい。スーパーでトマトを買っておいて良かった。7時過ぎにゴール行きの荷物を預け、ウォーミングアップとして本コースを走る。えーみんなそんなに登るの? ついてくけど。おかげでバッチリ。時折日が差しつつ、山は確実に雲に覆われていく。

2ndステージは距離26km、標高差1100mのマスド(集団)スタートレース。行列に並び、kinottyさんに会って話しているうち、交通安全パレードなるものが始まる。え、全員参加なのか。町内を右に左にゆっくり練り走っているうちに方向感覚がなくなるが、町民の激励を受けて「ここから出発するんだ」という気持ちを高めつつ、栩木田(とちのきだ)のスタート地点へ向かう。パチンコ屋の駐車場が待機場で、補給食を摂ってレースに備える。ボトルの塩水がもう2/3くらいにまで減っている。ちょっと暑い。

ヒルクライムのスタート時刻としてはやや遅い8時32分、ロード男子Cクラスの号砲が鳴る。ネットタイムの計測はなく、グロスが公式タイムとなるようだ。序盤の平地を大集団がゆくさまは、大規模ロードレースのプロトンのような、壮観な光景。登りが始まるとみな思い思いのペースになるが、自分は痛ジャージの人を目標にガンガン攻める。序盤からハイパワーなのは美ヶ原で慣れてるはず…。しかしやっと追い付いて自転車載カメラに収めたところで、力が出なくなってしまった。暑いし重いし、以降しばらく赤ゼッケンの同クラスでは抜かれっぱなしになる。腰痛対策でサドルを下げたのも踏めない原因か。こりゃ失敗レース? 2ndステージはヒルクライムシリーズ戦のポイント対象レースだから、頑張らないといけないのだけど。

上原集落あじさい街道

上原(うわばら)集落への狭い道に入り、抜くのも抜かれるのも窮屈になる。基本キープレフトがなってない人が多い気がする。苦しいけど、痛ジャージを見るとつい後を付けてしまう。だって面白いじゃん。得意なはずの急坂に弱く、緩い方で持ち直す展開が続く。沿道はアジサイがキレイだ。3年前に試走したとき左手に見えていた鳥海山は、やっぱり雲の中。十字路を右折すると広くて長い下り坂に入る。ここは恥ずかしながらドラフティングで力を溜め直す。ごっつぁん。ぽつぽつ降り出す雨を気にしつつ、花立(はなだて)が第1チェックポイント。調子が出ない時は気分転換で給水を受け取ることにしている。コップたっぷりの水だった。

駒の王子

ビギナークラスは花立までで、ここからがフルクラスの本番。コロコロ変わる斜度に対応しながら進んでいると、大粒の雨キター。しかし半月前の乗鞍で霰に降られたのに比べれば、何てことはない。メットにバイザーは付けてある。暑くて参ってた身体が一気に冷却されるし、泥ヨケ付きランドナーなので精神的優位にも立つ。まるで水を得た魚のよう。ヒルクライムの走り方を思い出して、やっとライバル達と戦えるようになった。俄然レースが楽しくなる。二つ目の下り坂はブナの原生林を突き進む感じ。慎重にクリアして、あとは登るのみ。試走時には長丁場という印象があったコースが短く感じ、もう駒の王子、もう第2チェックポイント、もうあと5km。善神(ぜんじん)の給水所は受け取らず、あとはボトル水で行く。雨は緩んできた。

終盤は時折キツい坂もありつつ、少しずつ同クラスを抜き返せている。タイム目標は1:20'切り…は難しいかなぁと考えていたが、案外行けるのか。あと1km、あと500m、あと200m。ラストスパート! ってここから先が見えないし長いよ。呼吸が持たないか? でも「あと一人抜くんだ!」の気持ちで痛覚をオフにし、ギリギリ差し返して祓川(はらいがわ)にフィニッシュ。タイムは1時間19分36秒、お、切れたよー。

ゴールの祓川

いやー楽しかった。前半ボロボロだったけど、後半持ち直して全て良しの気持ち良いレースだった。ただ全体的な評価としては、好走と言うより凡走かも知れない。計測チップを外し、大量に設置されているバイクスタンドにサドルを引っ掛ける。近くにはランドナーがもう一台停まっている。「バイシクルクラシック」という大会名だけど、クラシックなバイシクルは少ないかも知れない。サービスコーナーは濡らしタオルやスポーツドリンクがありがたく、スイカも旨い。小雨が続いているけど心配していたほど寒くはない。預けていた荷物を受け取り、ポンプを自転車に取り付けているところで、貸して欲しいという人あり。少しはお役に立てたかな。

鱒おにぎりと豚汁

コースが狭いため、下山は最終走者のフィニッシュを待つ。11時過ぎまでまったりして、十分に着込んで集団下山開始。全く防寒していない人や、指切りグローブのままの人も見掛けるけど、大丈夫なんだろうか。途中休憩があるなんて話を聞いていたが、時折スローペースになりつつも、結局ノンストップで会場まで下りた。里はやはり暖かい。受付にナンバープレートを返すと鱒おにぎり2つと肉がしっかり入った豚汁が貰える。温まる〜。

テントに戻って着替え、大急ぎで撤収。帰りはこの濡れたテントと米1kgでさらに重い旅になる。もう閉会式が始まっているが、先に矢島駅で輪行作業を済ませ、切符も買っておく。小走りで会場の日新館ホールに戻り、潜り込む。まだ表彰式が続いているなか、ツイッターにタイムなどを報告。やがてお目当ての抽選会が始まるが、もう時間が無い。末等あたりで呼ばれず、これ以上の賞はどうせ持ち帰れないだろうと、列車の発車6分前に離脱する。あとは提出したアンケートでの抽選に期待しつつ、駅に戻って宇宙戦艦ヤマトラッピングの列車に乗り込む。アテンダントはいない。輪行者は他に数名。やはり羽後本荘駅からみな秋田市方面に向かうようだけど。ここから18きっぷの旅。ようやく梅雨明けになるのか、空が晴れてきた。さよなら鳥海山。

越後寒川駅と夕日

あー、車窓の日本海に夕日が沈む。さすがに脚がパンパンに疲れているし、やたら喉が渇く。銀河鉄道の夜を読んでいるうち新潟駅に到着。駅ビルでチャーシュー麺を食い、外へ少し歩いてみどり湯という銭湯でようやくレースの汗をゆっくり流す。新潟駅からはまた夜行快速ムーンライトえちご。新宿経由で、松本到着は明日の午前10時。そのため有給休暇を取ってある。今夏の18きっぷはもう4/5を消費だ。

結果

公式リザルト
記録 1st: 0時間13分54秒00
2nd: 1時間19分36秒60
(最速者0:10'35"77, 最終完走者0:21'54"85)
(最速者1:01'29"04, 最終完走者2:41'10"02)
ロード男子C 順位
(30〜39歳)
1st: 61位
2nd: 79位
(/完走90名/申込116名中)
(/完走224名/申込295名中)
総合順位
(女子,MTB等含)
1st: 248位
2nd: 268位
(/完走475名/申込590名中)ビギナー含む
(/完走1034名/申込1294名中)フルクラスのみ
※小学生の部を含めると、申込1427名

町との一体感がある大会は二日間トータルですっごい楽しめたし、毎年でも参加したいレベル。オマケに後日、アンケート提出による抽選が当たり、花立牧場工房ミルジーのジャージーヨーグルトが送られてきた。超ラッキー。…しかし基本鈍行で往復1620kmの遠征は、いくら趣味とは言えヘビーすぎかも。次にそれだけのことをする余裕が生まれるのは何年後だろう。

例によって自転車載映像を制作。雨はレースを面白くしたけど、やはり映像的には晴れている方が良い。また参加したいなぁ。

ニコニコ動画:「鳥海」遠征&1stステージ2013(5倍速)
ニコニコ動画:「鳥海」2stステージ2013(5倍速)
YouTube:Mt.鳥海バイシクルクラシック2013・1stステージ(等倍速)
YouTube:Mt.鳥海バイシクルクラシック2013・2stステージ(等倍速)

リンク

ALL SPORTS写真のサンプル
矢島カップ Mt.鳥海バイシクルクラシック
JCAによる公式サイト
矢島カップ トップページ
由利本荘市による公式サイト
オールスポーツコミュニティ
スポーツ写真サイト。(右のサンプル写真)

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