禄剛埼の距離標

自転車キャンプツーリング記

奥能登一周と湯涌温泉

2013年5月3〜5日

経緯

奥能登一周〜湯涌温泉マップ

GW前半は動画作りなどで自宅に篭ってしまった。GW後半こそは旅に出たい。

中部北陸ツーリングマップルの最新2013年版を買い、岐阜・福井県境の峠がいいなと思ってネットで調べてみたら、まだ冬期通行止だった。それなら木曽から長峰峠に登るか、もしくは飯田から秋葉山に上るか、はたまたビワイチか…。

前日の夕方になってようやく決断。積年の課題だった能登を走ることにしよう。しかし半島を丸々一周するほどの日程は確保してないので、奥能登の方を周る。8年前、のと鉄道能登線の廃止直前に珠洲市蛸島〜能登町宇出津という半島の内側を30km歩いた(→旅行記)ので、今度は外能登を走りたい。

日記

5/3(金・憲法記念日) 春・能〜登
糸魚川ジオパーク・トレイン

という訳で風の冷たい朝、松本駅から輪行で大糸線の鈍行に揺られる。旅の始まりはいつも寝不足、うとうとしながら終着の信濃大町駅に着くと、列車はそのまま臨時快速「塩の道まつり号」に変わり継続運行、ラッキー。南小谷駅からは糸魚川ジオパーク・トレイン、「ぬーな」ちゃんのラッピング列車で、これも痛電の一種か。いや気動車だけど。糸魚川からは北陸本線の鈍行で富山経由、津幡駅まで乗り、七尾線の鈍行で能登半島へ向かう。

のと鉄道永井豪ラッピング車

いつものJR西日本らしく遅れがぐだぐだ拡大していき七尾駅。のと鉄道は目当ての列車に乗り継げなかった。「花咲くいろは」の痛電(気動車だけど)で、車内アナウンスの伊藤かな恵空間に包まれたかったのに。一本あとだと永井豪バージョンの痛電に、カワルワヨ。マジンガーZの絵に向かって「乗りたかったのはコレジャナイ!」と言うのは失礼か。途中の「聖地」西岸駅ではアニメ風のセーラー服を着た男が数人徘徊していた。

のと鉄道花咲くいろはラッピング車

さいはての穴水駅に夕方到着。乗り損ねた痛電が留置線に停まっているので、輪行袋とのショットを撮るためにわざわざ跨線橋を担いで渡ったりなどと、お馬鹿な時間と体力を消耗する。痛缶ドロップを買って自転車を組み立て、17時40分過ぎにようやくサイクリングスタート。最初少し登るが、廃線沿いの石川県道1号はずいぶん改良されている快走路で、廃駅を探訪しつつも1時間走れば外能登の輪島に着く。

石川県道1号線 のと鉄道輪島駅跡

自炊用具なしの簡易キャンプなので、スーパーでサンドイッチなどを買い食いしてから無料の袖ヶ浜キャンプ場へ。波の音だけでなく人の声も多いが、安心感はある。星がキレイな夜、このテントが私のHOME SWEET HOME。去年買ったばかりでシュラフともども、早くモトを取らないと。

今日はずいぶんたくさん食べてしまったし、明日は思う存分走り倒すぞ。

5/4(土・みどりの日) 禄剛埼に颯爽と

朝5時過ぎにはもう明るい。砂浜にハングル文字や中国語、その他よく分からない文字が書かれた漂着物がいっぱいあるのが能登らしい。朝食後テントを畳んで6時過ぎに出発。まずは竜ヶ崎灯台のある高台に登ったり、鴨ヶ浦の岩場を散策したり。

袖ヶ浜キャンプ場の朝 輪島鴨ヶ浦 輪島朝市
奥能登・白米千枚田

街中に入ればもう輪島朝市が始まっているので、押し歩きで見て回る。漆器とか野菜とかカニカニカニカニ…買ったのは草餅だけだったが、また来たい。飲泉所のしょっぱいお湯で塩分を補給し、ようやく街を発つ。先は長いぞ。

とりあえず追い風の国道249号東行き。左手はるかに七ッ島を見ながら海岸のアップダウンを急ぐ。海はキレイ。さすが日本海に突き出してるだけはある。ある坂を登り切った所で突如現れるのが白米千枚田(しろよねせんまいだ)。海崖の棚田はまさに奥能登を象徴する風景で、もう手作業の田植えが始まっている。写真に撮られまくるのはもう慣れっこなのかな。

曽々木海岸せっぷんとんねる

さらに進むと塩田もある。今はほぼ観光用と思われる。曽々木海岸には車道トンネルより海側に「せっぷんとんねる」という遊歩道があって、なーにが恋人の聖地だよと構えつつ素掘りの暗いトンネルを押し歩くと、中のピンクライトが出口側でハートマークに見えるようになる仕掛け。さらに進むと急な岩場で担ぎが入りまくり。能登地震の影響でだいぶ崩れており、足元不安定。ここまでずいぶん頑張っちゃったけどどうしよう。

椿の展望台に至る坂道

「あと少し進めば楽になるかも?」は小串鉱山の時の遭難フラグ。ここはチキンになって、勇気ある撤退をしよう。あー、脚と肩をだいぶ消費した。こうしていつもの私らしく遅れがくだぐだ拡大していき、さらに大谷川の見事な鯉のぼりまつりを見物してるうちに、海岸沿いの県道28号に入ってロードの集団に追い越される。まぁ平地じゃ絶対に敵わない。けれど能登半島は決して平坦な道のりではないのだ。登り坂になるとつい馬鹿になって次々抜き返してしまう。汗だくになりながら登りついた展望所。聞けば福井石川富山3県によるDU BON TEMPS(デュポンタン)というチームとのこと。いいなあ。

禄剛埼灯台

能登半島最北端はスルー。こうして遅れの回復運転をしつつもまたロードチームに抜かれ、最突端の禄剛埼(ろっこうざき)に颯爽と到達。道の駅に自転車を置いてさっそく遊歩道を高台へ上がると、青い海に白亜の灯台。うん、日本海側にはよくある観光地? 道の駅に戻り、おからドーナツやおからコロッケ、豆乳ソフトクリームを食って昼メシとする。

先ほどのチームはさっさと発ったようで、もう追い付きようがないしマイペースで行こう。自転車でも海岸沿いに岬を目指してみるが、石ころの浜まで。あ、もうここから富山湾越しに北アルプスが遠望できるんだ。私はあの山の向こうから来たんだ。パワースポットとかいう金剛崎はスルー。須須神社(すずじんじゃ)はお参りしていく。こういう場所は、何か「旅をしている」という気分になれるんだ。

最東端を過ぎて内能登に回ると、鉢ヶ崎にはちょっと懐かしい「すずの湯」がある。さらにのと鉄道能登線さいはての駅だった蛸島の駅舎。記念品の自販機はまだ動くのかどうなのか、でも新千円札は使えない。ホームはすっかり草木が茂っている。

放置気動車NT102

もう少し進んでびっくり。えっ、何で? 廃線上のあまり人が来ないような中途半端な所にぽつんと一両、気動車が置き去りにされている。線路上の茂みを歩いて近づいてみる。イベントの跡と思われる撮影台も草木が絡まる。黄色と黒の旧塗装がだいぶ錆びて、痛電とは別の意味であまりにも痛々しい。8年前に私を乗せた車両かも知れない。これは廃線マニアならずとも、うわーっとこみ上げるものがある光景だろう。前後の線路はずたずたに寸断されているし、もう動かしようがない。ここで延々、朽ち果ててゆくのだろうか。さよなら…。

見附島(軍艦島)

しばらくは8年前に夜通し歩いた道を辿るサイクリング。あの時は怖くてしょうがなかったが、昼だとこんな光景なんだ。北アルプスを背景にした軍艦島こと見附島は観光客がいっぱい。なーにが恋人の聖地だよと構えつつ恋路海岸に行くと、恋路駅では廃線跡を利用したトロッコ鉄道「のトロ」が運行されている。都会から遠すぎて集客は大変だろうが、頑張って欲しい。

九十九湾小木駅跡

松波から国道を離れ、遠回りの県道35号で海岸沿いを行く。外能登側と同様に海はキレイだが、逆向きに進んでいるので今度は向い風が苦しい。五色ヶ浜は緑色。九十九湾はイカ釣り漁船がいっぱいじゃなイカ。所々の廃駅が、また旅情を盛り上げる。小木の街で少々迷ったのでパンを補給し、宇出津駅跡に到着。うーん、何もない。ホームはちょっと面影あって懐かしいけど。ここから国道に復帰。

矢波駅?跡のスローガン

波並、矢波、七見。似たような地名が続く。鵜川からは強気の海岸沿いは止めて、内陸の国道をひた走る。曽山峠を越え、また湾に出て「ボラ待ちやぐら」くらいは見物していく。いくつかトンネルを抜け、予定の17時を20分ほど過ぎてやっと穴水駅に帰ってきた。まぁこれくらいなら誤差の範囲、もう少し頑張ろう。さよなら奥能登。ここからは南へ向かう。

桜の名所である能登鹿島駅はまだ別の花が咲いている。次が花咲くいろはの聖地、西岸駅。待合室からして痛々しい。劇中の駅名である「湯乃鷺(ゆのさぎ)」駅名標があるので記念撮影し、先を急ぐ。もう自分と自転車の影がどんどん長くなっていく。

能登島よりツインブリッジのと

能登島に渡るツインブリッジのとは農免道路だが立派な吊り橋。ここから目指す和倉温泉や能登島大橋が見える。まさにいま夕日が沈む。この島もひなびた漁村のアップダウンが続き、長い能登島大橋で本州に戻る。

和倉温泉に19時到着。これで一応予定通りだけど、ずいぶん疲れた。まずは風呂。総湯は新しく建て替わっており、相変わらず混雑気味。サッと入る程度にしておく。小さなスーパーで夕食にパンなどを買い食いし、しょっぱい飲泉で塩分補給。宿泊は高級ホテル…の谷間にある、足湯のある公園でゲリラキャンプにする。今夜も星がキレイだ。

5/5(日・こどもの日) Temptation(湯涌)
日の出と能登島大橋

起きると近くにもう一張テントがあるのが面白い。朝露に濡れたフライシートを畳んでいると、能登島大橋に赤い太陽が昇る。コンビニで朝食を摂り、6時前にさあ和倉温泉を出発。今日も良い天気、脚は生きているか。

県道2号を南西に急行、ただし今日もしっかり向い風。ずっと登ってる気がするけど道は平坦、どこが分水嶺だったか分からないうちに羽咋の街。風の強そうな海岸の自転車道は避け国道249号、159号、359号などを南下するが、こちらも上下にうねるうえ信号が多いので体力を奪われる。

湯涌温泉の入口看板

金沢に突入し、過去に走った道と接続。これで能登半島も私の中の日本スケールに組み込まれた。走行の目的は達したが、どうやら時間と体力はまだある。市街地はスルーして南東に進路変更。県道10号「塩硝街道」を登っていく。やって来ました聖地の湯乃鷺温泉、昨日寄った湯乃鷺駅からはこんなにも遠いのだ。喜翆坂まじキッツイ。あの廃プール実在したんだ…おっとっと、正確には金沢の奥座敷たる湯涌温泉で、白鷺の湯に入浴して着替え一新。氷室まんじゅう等を食ってラストランに備える。

刀利ダム湖と白山山系

砕石場あたりの坂がキツくてどうなるかと思ったが、もうひと頑張りして名無しの峠を越え、富山県に入る。刀利ダム湖越しに望む白山山系はヨーロッパアルプスの風景を少し丸くした感じで、穴場的な佳景だった。

城端線あみたん娘ラッピング車

あとは下り坂をしゃかりきに漕ぎ、城端線の福光駅に到着。13:23発、大糸線経由で帰るなら最終となる列車にぎりぎり間に合わせた。これもまた、あみたん娘(むすめ)なる痛電(気動車だけど)。高岡駅で北陸本線に乗り換え、富山駅で今回の旅で初めての外食は立ち食いそば。大糸線の島内駅まで輪行し、無事松本に帰宅した。

急ぎ脚だったけれど存分に走れて観光要所や巡礼聖地も押さえた、大満足のサイクリングだった。ホント旅に出て良かった。また、あの朽ち果てゆく鉄道跡に象徴されるように、都会から離れた地方の現実を目の当たりにした。ともかく一日目26km、二日目178km、三日目113km。よく心臓が持ってくれたと思う。予備日の明日はフライシートなどいろいろ干して、ゆっくり過ごしましょ。そして数日後、劇場版花咲くいろは「HOME SWEET HOME」を観ることになる。


リンク

facebook/Team DU BON TEMPS: 2013年5月4日 ハイパーのと300&200開催(前半300編)
途中で会ったチームデュポンタンの当日の様子。私の写真も掲載して頂いてる。
blog: ハイパー能登300・200 - Hiro’s Diary (あしあと)
こちらはhiroさんによるブログ版。

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