むらよしツール日記


ツール・ド・美ヶ原2004 参戦記

 

全長21.6km標高差1,270m
コース図(大会パンフより)

2004年6月27日(日)

 あまり眠れなかった。仕事のシフトが不規則で生活が乱れていたせいもあるし、緊張してもいたのだろう。ともかく寝過ごすことはなく、スパゲティとVAAMをかっこんでレース会場へ向かった。

 ツールド美ヶ原への参加はこれが3回目になる。一昨年は十分なトレーニングが出来たし、レース中も相当気合いが入っていたおかげで、ランドナーらしからぬ好成績を収めることができた。嬉々として参戦記まで書いたほどだ。しかし去年はろくに練習もせずにぶっつけ本番で、惨敗…。とても参戦記なんて書く気分にはなれなかった。今年はどうだろう。

 片道12kmの自転車通勤を始めて1年余。それがどうしてか毎朝遅刻ギリギリなもんだから、めちゃくちゃ急ぐ。必然的にパワーは増してきているはずだ。しかし所詮は30分程度の話で、持久力の自信はなくしている。6月に入りトレーニングを始めるつもりでいたが、仕事との両立はきつく、指折り数える回数で終わってしまった。あとは精神力でカバーできる、ものでもないよなぁ。

 


 

スタート

 自宅アパートから5分ちょっと走ったところにある浅間温泉・レーススタート会場は、すでに坂バカたちでごった返していた。取り急ぎ、頂上への運搬バスに荷物を預ける。今回は私と同じ筑波大サイクリング部出身者が何人か来ているらしい。どこかなと探してみて、さっそく後輩K林氏を見つけた。他の連中6名も芋づる式に見つかった。応援ではなく、全員が選手として参加とのこと。MTB女子の入賞常連S浦さんを除けば多分美ヶ原は初参戦で、いったい最初の激坂はどう映るのだろう。

 今年はハンドル部分にケータイのホルダーをくくり付け、時計代わりにするとともに写真もいろいろ撮ってみようと思った。ミュージックプレーヤ機能も付いてるので、例えば冬のソナタを流して周りの人のやる気を削ぐ、という作戦も考えたが、自分まで切なくなってしまいそうなので実行しないことにした。

 開会式の後、いよいよスタートである。チャンピオンクラス、女子クラス、男子Aクラスと続く。私は毎度の【ロードレーサーの部・一般男子Bクラス(年令26〜30歳)】に通勤用ランドナーで参戦。むろんドロヨケ・ダイナモ等は外していない。タイヤも太いしフレームも重いから、レーサーに比べて不利と思われるが、体重はそれなりに減量に成功しているから大丈夫であろう。

 


 

美鈴湖

 緊張でドキドキの中、自分のクラスもスタート。同じクラスの中でも、渋滞対策のためスタート順が分かれるが、その中で最初のグループ。温泉街を抜けると、さあ高名な最初の激坂である。先にスタートしていたクラスの一部がもうへばって押して歩いている。ランドナーは重い荷物を積んでも坂を登れるように設計されているので、ここはやはりごぼう抜きドコロ。ちょっといい気になって、呼吸が厳しくなってしまったが。

 意外に長い激坂部を終え、呼吸回復とスピードアップの折り合いどころを探りながら進む。先にスタートしていたK林氏を捉え、写真を撮らせてもらう。レース中に写メとは世も末だ(送ってないが)。
 美鈴湖畔は平坦または下り坂もある休足ポイント。また写真を撮る。そんな場合じゃないだろ。ここを過ぎるとまたひたすらな登り坂に入る。
 自分の周りのゼッケンを見ると、意外に同時スタートの連中が多い。つまり、ちゃんと集団の中で競い合ってるということだ。これは結構イケてるんじゃないか!?絶対更新不可と思われた一昨年の自己記録への意欲が湧く。とても苦しいけど、それは皆も同じこと。こいつらと抜きつ抜かれつしながら食らいついていけば…。

 


 

 レースは中間地点を越え、上り車線と下り車線が少し離れてる部分がある。そこを過ぎると、また坂が急になるのだ。しかもそれがどこまでもどこまでも続いてるような感じである。…ここで、精神力の糸がぷつっと切れた。??、足にまったく力が入らない。自分と平行移動していたはずの周りの物体が、なんで前方にスクロールしてゆく。くそう、食らいつくぞ。だめだ、ちょっとでも無理しようとすると気持ち悪い、吐き気がしてくる。いったい自分はどうしてしまったのかと、熱い冷や汗が出てくる。たしか毎年、ここらでペースダウンを余儀なくしている。が、今年のそれは尋常ではないようだった。

 「ランドナーがんばれ!」と声を掛けられた。意識朦朧としていたので、その人が先にスタートしていたS浦さんであると気付くのに数分かかった。すこし力は入れてみたものの、漸減するペースは如何ともしがたかった。あっさりS浦さんに抜き返されると、永遠に追いつくことはなかった。

 もう自転車を降りたい…。いつしかそう考えるようになっていた。これは寝不足がどうとか、食事がどうとか、ボトルのエネルゲンが不味いとか、前半飛ばしすぎたとか、腰痛がどうとか、そういう問題ではない。まさに己のトレーニング不足が招いている事態であった。好記録どころではなくなった。次々と順位を落とし、後からスタートしたH谷さんやN川さんらがもう追い付いてくるんじゃないかとか、惨敗だったはずの去年の私すら追い越して行くんじゃないかと、背後ばかり気になりだしていた。

 しかし記録はどうあれ、最低限の目標は完走である。惰性で何とか前に進みながら、持久力回復という奇跡を待つことにした。追い付き追い抜き差をつけたはずの女子クラスや男子Aクラスの面々にもどんどん抜き返される自分が情けない。これじゃあ今年も参戦記は書けないなぁ、「こんな筈じゃなかっただろ」。写真を撮る気力もすっかりなくなっていた。

 武石峠も過ぎ、レースは高原で上り下りを繰り返す最終セクションへ。体力回復の奇跡はついに訪れなかったが、まるで他人のもののようになっている足をとにかく回し続ける。あ、ちくしょうまた抜かれた。今度こそ食らいついてみせる。だめだ、やっぱり追い付かない。最後の登りもそんな調子で、精一杯のラストスパートを意識してみたが、やはり足は言うことを聞かないのであった。

 


 

ゴール地点

 とにかく完走はしたんだ、っていう満足感はあった。足がつりそうになった。ヨレヨレとしながら冷やしトマトへ突進。ゴールのご褒美で配られている。世の中にこんなうまいものはない。一気に生気を取り戻す。ちなみにタイムは1時間36分台。去年より7分早いが、一昨年より10分も遅い。結局、およそ予想通りのタイムなのであった。

 預けていた荷物からデジカメを取り出し、板チョコをかじりながらすぐに撮影行動を開始。手ぶれ補正付き光学12倍ズームにものを言わせ撮りまくる。元サイクリング部の仲間や、まったく関係のない人々のレース模様、晴れ間も覗く景色や気になったものなど、100回以上はレリーズした。が、後で見ると露出や構図がまだまだ未熟なのだが。

高原

 一通り撮影にも飽きて、ゴール地点に戻りあとはうだうだする。例年不足している冷やしトマトが、今年は数を豊富に用意しすぎたのかあるいは配る場所が変わって分かりづらかったのかで、いっぱい余って困っていそうだったので、反則だけどもう一個もらっといた。やがて、筑Iさん加Tさん八Mさんら筑大OB・OGの8名全員が無事完走を果たし、集まることができた。多分みんな、この難コースでは思うようなレースは出来なかったんじゃないかと思う。しかし一休みすれば、みんな満足感で笑顔に溢れていた。ここは青と緑の別天地、美ヶ原高原。

 


 

下山風景

 そろそろウチらも下山しようってことになった。レース中に下り坂があった分、下山時に若干の上り坂があるのがややブルー入るところだが、でも景色は良いし、その中を進む自転車集団の様は見ていて爽快である。自分は例によって写真を撮りながら進む。一人で参戦していた去年までと比べて、被写体が何人もいてくれるのが嬉しい。だいぶ降りきった所にある有名な廃墟「人肉館」まで撮ったのは余計だったか。

 全員下山も無事で、近くの蕎麦屋へ入る。レース参加者で混雑していたせいか食事は上質なものは得られなかったが、楽しく食べられれば良い。ビールも入る。食後、表彰式のため会場へ急ぎ、雨が降ってきてしまったが、MTB女子の部5位入賞のS浦さんの受賞を見届ける。どうしたら入賞なんてできるのだろう。

 みなは当然、今日中に東京方面へ帰らなければならない。表彰式後の抽選会を楽しむより、早く帰って寝たいだろう。その前に浅間温泉に入って行くとのこと。私も翌日東京へ帰省予定だったが、どうせなら今日加Tさんの車に便乗してしまおうと、急ぎアパートへ戻って行水と支度をした。こうして今日のレースは終わり、皆それぞれの帰途につくのであった。

冷やしトマトレンゲツツジレース
青空緑の中夢の跡

 


 

 今後の目標としては、仕事とトレーニングを両立しうる体をつくること。またそのために、乱れた生活習慣をまともに戻すことであろう。男子Bクラスで出場できるのはあと2回。それまでに上位を窺えるようになれたらどんなに素敵なことか。しかし油断をしていれば今日のようにヘタレなレースをしてしまうだろう。

 ちなみに順位的には、気にしていた「同クラス参戦者の半分より上」はぎりぎり達成したが、完走者の数から言えば半分より下になってしまって残念。いやそんなことよりも、もうちょっと思い通りに動く体になりたいものである。

 


翌日Web発表された公式リザルト
時間
(全長21.6km 標高差1,270m)
1時間36分55秒
前年 1:43:36
前々年 1:26:32
(最速者1:04:30, 最終完走者3:36:55)
ロードレーサーの部
一般男子B(26〜30歳) 順位
96位
前年 133位
前々年 40位
(/完走189名/登録214名中)
総合順位
(61歳以上,女子,MTB,リカンベント含)
775位
前年 886位
前々年 288位
(/完走1,986名/登録2,316名中)

 



 リンク

JCA(日本サイクリング協会)
ツール・ド・美ヶ原やマウンテンサイクリングin乗鞍などの主催団体。
MSPO(エムスポ)
主にトライアスロン情報のページだが、自転車ヒルクライムのリザルトも充実。

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