湯の丸林道篭ノ登山付近

自転車キャンプツーリング:その先の群馬へ。リベンジ編

毛無峠と湯の丸林道、そして松本へ

2012年9月15〜16日

日記

9/15() その先の群馬へ。リベンジ編
屋島橋より上信県境の山々

始発より一本遅い列車に乗ったが、それでも寝不足。少し眠ったころに長野駅に到着する。輪行を解いている間に暑くなってきた。日焼け止めを塗り、8時45分スタート。東へ向かって須坂のアップルランド(スーパー)で買い出し、高山村へ登る。そう、自転車を失うなど痛恨の失敗に終わった5月のサイクリング、そのリベンジに来たのだ。北信五岳はスッキリ晴れているが、上信県境の山々は雲がかかる。

湯沢林道

ここから趣向を変え、舗装の県道(万座道路)ではなく福井原ゴルフ場の案内に従ってジャリジャリダートの林道湯沢線に入る。ホイルスピンで何度も足を付き、単調なのに気が抜けない作業のような、ランドナーには厳しい坂だった。でも会ったのはクルマ1台、オートバイ2台、小さい猪1匹くらいで、空気は美味しかったと思う。13時に標高1823mの群馬県境、毛無峠に到着。県道に比べて時間も体力も奪われたが、ちょっと冒険できて良かった。もうフラフラで、脚にはダートを走った後特有の変な筋肉痛が。

毛無峠

峠一帯は強い風で、時折霧雲が通り過ぎてゆくし、あっという間に体はどん冷え。眼下に見える小串硫黄鉱山跡の先の、前の自転車が眠る谷に手を合わせる。「悪いことをした、でも出来れば安らかなれ」。岩陰で風をしのぎつつ昼食をとり、ラジコン飛行機愛好家で賑わう峠を離れる。もちろん今回はこのまま群馬側に下ったりはしない。一旦引き返す形で、僅かな登り基調で体を暖めつつ、県道の上信スカイラインに入る。安全に群馬県入りを果たした。

横手山と山田入林道

向こうに横手山、眼下に林道山田入線を望む見晴らしポイントに寄ると、両親孝行ドライブ中と思われる方に話しかけられる。小串鉱山の話題になり「あそこから大前に降りる道はありますかねー」と聞かれたので「無いです!」と断言を返す。「もしかしてあの方?」…私のweb記事を読んでいたらしく、つまり遭難の顛末も良く知っていた。なんという偶然、嬉しくなっちゃうね。ちなみに彼が聞いたという話だと、大前側からのチャレンジもオフロードバイクで3例あって、いずれも失敗したらしい。

万座温泉街

下り坂になり、間もなく硫黄の香りが漂ってくる。万座温泉に入れるまんざ生涯なかなか無いチャンスだから、豊国館の露天風呂に入浴していこう。見た目はただの白い湯だが、これが意外なほど深くて気持ちいい。最高。このまま泊まっていきたいくらい。

白根山鞍部

万座ハイウェーを南へ下りられれば楽だが、自転車は通行不可。先週あたりヒルクライムレースをやってみたらしいし、少しずつ自転車の立場は良くなっていくのかな。ともかく東へ、白根山の鞍部までもう300mアップ。なかなかの西日風景だが散策する時間はなく、霧の中を豪快に下りて毒ガス地帯を抜け、草津温泉もスルー。昔いっぺん来たし…。

嬬恋村キャベツ畑

嬬恋村は高原キャベツの香り。雄大な畑の風景が広がる。かつて存在した自転車レース『ツールド嬬恋』が懐かしい。万座・鹿沢(かざわ)口駅近くのAコープで夕食を買い食いしつつ、毛無峠からだいぶ迂回した形で大前に到着した。リベンジ達成、今度こそ手元に自転車がある。公園の屋根のある所にこっそりテントを張り、今回は昨日登山用品店で買ったばかりのダウン寝袋があるんだ。早速の活躍、と思ったら案外暑い。

9/16() You know YUNO○?
長野〜毛無峠〜車坂峠〜小諸〜下諏訪〜松本マップ

夜中はやっぱり冷えたので、寝袋があって良かった。朝6時半に嬬恋村大笹をずらかる。今日こそは、5月のツーリングで山を抜けられず電車で帰ることになってしまった「幻の二日目」を実現する。

四阿山の植林

吾妻川を遡るように国道144号を西へ走ると、やがて霧が晴れてきて、右に四阿山(あずまやさん)の植林が美しい。左折して県道94号を登り始める。そろそろ日焼け止めを塗りつつ、新鹿沢温泉を抜ける。たまだれの滝という小さな滝を観て、旧鹿沢温泉。まだ朝なので入浴はまたの機会に。レンゲツツジ地帯も過ぎ、スキー場に牛の放牧が見えてくる。ここまでさほどキツい箇所はなく、長野県境の地蔵峠1732mに着いた。ソフトクリームの広告が気になるけど、値段が明記されてないのでやめておこう。

車坂峠より佐久平

ここから素直に下りず、湯の丸林道を東へ進む。舗装の登坂がまだまだ続き、標高2061mが最高地点。池の平湿原越しに八ヶ岳と、見え隠れする富士山が美しい。湿原散策路にすごく寄って行きたいけど、今回は先を急ぐ。ここから道はダートの緩い下り坂になり、左に篭ノ登山の黄色い崖を見上げつつ、高峰高原の車坂峠1973mに突き当たる。ハイカーのマイカーが駐車場に収まり切らず、路肩に溢れまくっている。佐久平の俯瞰は、もうただただ素晴らしいの一言。四つの平は肥沃の地♪

みはらし庭から浅間連山

さよなら群馬県。チェリーパークラインで長野県側に下山する。自転車ヒルクライムの名所だけあって、この急坂を登ってくる人もちらほら。いつか自分も登ってみたいな。街まで下りて、ツルヤ(スーパー)本社に隣接する小諸東店へ。ツルヤマニアの聖地? 旗艦店とも言うべき大きさを期待してたら、普通だった。ここで早目の昼食を済ませ、駅方面に向かう。みはらし庭から浅間連山を見上げると、湯の丸林道を走ってきたからこその親しみが湧く。左から湯ノ丸山、篭ノ登山(かごのとやま)、高峰山、黒斑山(くろふやま)、浅間山、などと主な構成山の名前も覚えた。

布引観音

小諸は『男はつらいよ』等の聖地でもあるが、懐古園の再巡礼はまたの機会にして、西浦ダムの細い通路を渡り千曲川左岸へ。布引観音をお参りする。本堂は布引渓谷の上。これがちょっとした登山となり、残存体力に不安を覚える。石像がたくさんあり、その顔に子供たちがこわいーこわいー言ってる。昼間っから肝試しの様相か。

中山道芦田宿松並木

旧北御牧村から立科町へ南下し芦田宿へ。国道142号と並行する松並木にも中山道の面影がある。標高900mの笠取峠を越えて長久保宿、和田宿の街並みをクリア。心臓の負担にきゅうきゅうとしつつ国道の旧道を選択し、標高1510mの和田峠でビーナスラインと交差する。旧和田トンネルを抜け豪快に下りると、左手には御柱祭で有名な木落し坂。下諏訪宿に入れば、過去のツーリングと合わせて中山道の県内区間はコンプリートしたことになる。

旅の目的としては終了。ここで輪行するのもアリだと思ったが、明日も祝日で丸一日休めるし、もうちょっと無理をしよう。西友で夕食を買い食いし、夕闇迫るなか塩尻峠1012mを越える。こうして北信地方から始まった旅は、群馬県吾妻地方を経て東信・南信・中信とぐるり回り、ナイトランに突入した18時40分に松本の自宅到着。二日間で獲得標高差は計5000m。掛かった時間からしてもベリーハードな旅程だったと思う。何にせよ無事これ名馬。

5月の遭難で失った自転車はお金で買い戻した。失った心は、今回のリベンジで取り戻した。私はこの自転車と生きていく。もう何も怖くない。


後日譚

わずか11日後の9月27日、交通事故に遭い、鎖骨骨折で入院手術と長期休業を余儀なくする。自転車は全損。相手方の全額補償になったとは言え、こうも短期間にランドナーを2台も失うとは、夢にも思わなかった。今年はとびっきりの不運が多く、いわゆる厄年みたいである。どうか残りの月日を無事にやり過ごし、来年はトラブルメーカーから脱したい。


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