むらよし旅日記・其の十六

中部北陸、夏盛り

1997年7月26日〜8月24日

『キャンピング班合宿』北アルプスをこえて

7月26日〜7月30日

ハイランドレディIIの舞台へ

 サイクリング部に入ってはや3年目の夏が来た。一昨年は東北、去年は北海道、そして今年は中部地方で夏合宿が行われる。緯度的には東北・北海道に比べて低いため、暑くなることが予想されるが、中部地方は信州を中心として標高が高いところが多い。わが愛車その名も『ハイランドレディII(高原の淑女、ちなみにI世はオシャカになっている)』にとっては最高の舞台といえる。
 なお今回は都合により“前ラン”は行わず、旅はキャンピング班合宿からのスタートとした。夏の真っ盛りに一日1000mアップの強行日程だ。

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7月26日(土)衝撃(笑撃)の松本ボンボン

 朝早く平砂学生宿舎に集合。昨夜旅支度に追われていたのでほとんど眠れず、またしても寝不足の旅始めとなってしまった。どうせ毎度のことだ・・・。そして毎度のようにJR荒川沖駅で自転車を分解して、袋に詰め電車に乗り込む“輪行”。新宿からは中央本線快速『しらかばこ』号に乗る。これが全車2階建て車両なので、鉄道好きの私は「一人ではしゃいでいた」らしい。なにせ興奮して眠れなかった。
 そうして景色を楽しんでいるうちに上諏訪駅、ここでしばらく接続列車待ち。この駅ではホームに温泉が湧いており、列車待ちの間にひとっ風呂浴びるというのがマニアにはたまらない最高のしちゅえーしょんな訳だが、そんな思い入れがあるのは私だけらしく、仕方なく一人で入浴した。その後また列車に乗り込み、塩尻から先は「中央西線」とも呼ばれる路線、やがて木曽谷の再北部にあたる長野県木祖村のJR薮原駅に到着。
 ここで、佐渡などを前ランしていたK氏登場。これで班合宿のメンバー7人が揃い、自転車を組み立てて走り出す。台風の影響で強い風雨があるので、そこら辺でキャンプ、というのはあきらめ。数キロ先のオートキャンプ場へ金がかかるがしぶしぶ、持ち込みテントよりは安くつく常設テントを借りる。
 夜になると風雨は止み、キャンプファイヤーに来ていた松本市の子供会の連中がいろいろやり始めた。我々は食事をしながら眺めていたが、特に「松本ボンボン」なる踊りには衝撃を受けた。変に愉快な曲に合わせて長々と子供達や親達もぐるぐると踊り狂い、一部の人はトランス状態に移行しているぞ。それを見て我々はゲラゲラ笑っていた。

7月27日(日)乗鞍ヒルクライムレース?

 私の場合、最も疲れないであろう“自分のペース”を守ると、どうしても他人より少し速くなる(キャ班内では)。今日の境峠もそんな感じ。そこそこいい天気、途中ちょっと足を止めていたら、最大のライバルH氏が「峠でいちばん」を獲りに来た。おかげで二人でハイペース、峠手前のスプリントでとりあえず私の勝ち。
 次、峠を下りてまた今度は白樺峠への登り。私が補給食をかじっているスキにH氏は一気に先行して登り始めた。しまった! 売られた勝負は買うぞとばかりに、私も急いで追い付く。が、ツライ。どちらも譲らず本格的なヒルクライムレースになってしまった。一昨年秋の腕相撲、去年夏のエアホッケーに続く大勝負である。やがて私は、彼になんとか大きく離されないでいるのが精いっぱいとなった。くやしいけど体力では差をつけられたなー、もうだめか…。ところが、峠まであと少しという所で脱落したのはH氏の方であった。空腹のためらしい。先に補給した私の作戦勝ちであった。

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上高地乗鞍林道・白樺峠
 限界級に疲れた。峠に着いた途端もう足が動かなくなり、景色を見に行く余裕もなかった。まだ合宿始まったばかりというのに、我ながらバカである。で、肝心の白樺峠からの景色。乗鞍や穂高の山頂のほうは残念ながら雲で隠れてしまっていたが、雪渓も見えるしそこそこいい景色だ。
 峠を下りて乗鞍高原、今日はここまで。遅い昼食を食堂で食べ、白濁の温泉で足の疲れを癒した。全体合宿で合流するはずのファーストラン班にも出くわした。夕食はスーパーが近くになくて焦ったが、キャンプ場管理棟でなんとかカレーの食材を入手。
 夜、寝る頃になって雨がどっと降ってきた。

7月28日(月)雨が悪い

 朝から大雨。止まないので仕方なく、炊事場の屋根の下でメシをつくり食べる。他のキャンパーに迷惑がかかるが、他に手段がなかった。ランを開始する頃には小雨に。昨日の激走の影響でアキレス健が痛い。

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上高地・大正池にて
 やがて国道から上高地へ向かう分岐。ここからはマイカー規制されているが、自転車なら通行することができる。まさに自転車の特権だ。で、荒れた激坂で漏水も多い悪名高き『釜トンネル』を苦労して抜け、大正池へ。昼食の買い出しポイントが今日も無く、また食堂に頼る。大正池からの景色は、雲で山の上の方が見えないが、それでも大自然を感じるには十分な景色。流れている川も透明できれいだ。
 上高地バスターミナルの土産屋で、夕食の食材として炊き込み御飯になりそうなものを買っておき、奥のキャンプ場へ。雨続きのため、テントは持ち込みのにするか常設のにするかバカ高いケビンにするかで意見が割れた。まとめるのが大変だったが、これも班長としての仕事。持ち込みと常設の併用で決。それにしても今日は意見が割れがちで心が曇った。雨が悪い。
 近くには他大学のサイクリング部が、我々と同じように合宿に来ていた。しかし異様に戒律が厳しい様子で、沈んだ面持ちで反省会とかやってた。我々は和気あいあいの夕食で、心が晴れた。あとは空!

7月29日(火)北アルプスをこえて

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安房峠(絵)
 朝方降っていた小雨は止んだ。上高地の河童橋に寄ってから、今日は安房(あぼう)峠。北アルプスを越える峠で、地中にはバイパストンネルが建設中だ。つづらっている登りだがそうキツくはなく、しかし休み休み登って「峠でいちばん」は一年生Iに譲った。峠には茶屋もあるが、今日は残念ながらお休み。
 岐阜県に入り、坂を下りるとそこは憧れの奥飛騨温泉地帯。個人的には入浴したかったが、そんな思い入れがあるのは私だけらしく諦めた。ともかく今回の班合宿が始まって以来、ようやく昼の買い出しができ(食パン・レタス等)、河原でテントを乾かしつつ食べていたら突然の雨。あわててテントをたたむ。まいった。
 もうひとつ、山吹峠を越えて今日の目的地のキャンプ場へ。ここにはキャンプの避難用に廃屋がある。雨ザーザーだったので今夜はここに泊ることにした。備え付けのホーキで鼠のフンを始末すれば広い畳だ。
 旅はこの先まだまだ長い。とりあえず非日常が日常になってきた。ところで去年の夏同様今年もウクレレを積載しているのだが、いつ弾く機会があるのだろう。

7月30日(水)スイカの一気食い

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飛騨から越中への道
 ここは岐阜県神岡町のはずれ「山之村」。名前もそうだが地形的にもとんでもないド田舎である。そこから長く登り、飛越トンネルを越えると富山県に入る。有峰林道から有峰湖を望み、大きなダムからは長い長い下り坂。強い雨霧の中、一車線のトンネルも多く、ちくしょー、つらい。ようやく人里に下り、立山町内の吉峰温泉に入浴。うだー。
 あとは海に向かい、常願寺川の土手道を走る。やや下り勾配なので楽。そのうち雨も止み、富山湾に面した防砂林の中のキャンプ場に到着。
 夕食はすき焼き、デザートにはスイカを。私はスイカの「志村食い」をやって、少し腹の調子がおかしくなった。さらに海辺で花火なんかもする。ここぞとばかりにウクレレも持ち出す。そして班合宿最後の夜として小コンパ。班長の音頭として「アップや雨などハードな合宿だったけどよくみんなここまで来てくれた」なんて言ってみたりする。それにしても毎日雨に降られるとはね。涼しくて暑さに苦しむことがなかったのはよかったのかも知れないけど。


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