むらよし旅日記・其の十二:九州横断道路を走る

『個人ラン』憧れの長崎へ

3月16日〜19日
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3月16日(土)せなで断ち切る道しるべ

 全体合宿はこの先、高千穂・日向に向けて東南に折れる。しかし私は、このまま西に向かって九州横断、長崎に行くという夢があるため、今日で皆とはお別れ。別れ際、小さくなってゆく仲間を見送るのは感無量だった。そこから背を向けて、自らの道を走りだす。しばらくは下り坂、追い風に乗って。一人になると寂しいけれど、道の駅とかに自由に寄れるのはいいなと思う。
 やがて熊本市内に入る。『九州横断道路』にこだわるとするなら、さらに三角(みすみ)という所まで走らねばなるまい。でもここからでも島原に渡るフェリーは開設されてるし、まあ、ここでゆっくりポタリングでもしよう。熊本城登ったり、熊本駅らへんをブラブラしたり。土産物屋では、熊本の名ナイフ『肥後守(ひごのかみ)』を入手。今後のキャンプに使えそう。
 いよいよフェリーで、長崎県の島原に渡る。だんだん島原半島が近くなってきて、無数のビニールハウスが太陽光でキラキラ光っているのが美しい。新天地に向かっている気分だ。
 島原城下町を少し観光して、今日は島原ユースホステル。一人でユースに泊ると、他の旅人たちと仲良く話し合えるのがいい。ここは九州なのに、なぜか北海道の話題で盛り上がっていた。

3月17日(日)男性は長崎に憧れない?

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雲仙地獄めぐり
 ユースで知り合ったトホダー(徒歩旅行者)に見送られ、九州横断道路の続き、国道57号を雲仙岳へ登る。荒野の水無川では大規模な工事をしていて、かの大火砕流の凄さがうかがえる。そのうち、はるか南のほうに天草諸島が見下ろせるようになってきた。いつか行ってみたいなと眺めつつ、峠を着いた。霧氷が見えるという有料道路は残念ながらチャリ通行不可だったので、そのまま雲仙温泉へ。雲仙地獄を見たあと温泉にサッとつかり、山を下りる。結局、普賢岳・平成新山は雲かぶってて見えなかったのがちょっと残念。
 諌早を経由して、いよいよ長崎市内へ! 港へ! 駅へ!
 これにて自転車での九州横断成立を宣言する。
 …あとはポタリング。観光は以前したことがあるので、今回はチャリンコならではの楽しみ方をしよう。むりやり眼鏡橋をチャリで渡ったり、オランダ坂の激坂を制覇したりと、我ながらバカである。それにしてもこの街、やっぱり自転車が極端にすくないね。カステラと亀甲ピックをお土産に買う。
 夕食は有名な『江山楼』で長崎ちゃんぽん。一口めは「なんだこりゃ」な味だが、食べるほどに感動のある旨さ。これは忘れられないだろう。
 すっかり暗くなって、稲佐山ロープウェーに乗る。なんか街中もそうだったけど、ここも女性客ばっかりで、半年前に知床で感じたことと逆だ。男性は長崎に憧れないのかな。やがてロープウェーが山頂に着き、ここからの展望はロマンティックな長崎・浦上の夜景! 旅のフィナーレにはなかなかふさわしい。しかしいつの間にか周りはカップルが多くなってきて、私は空しさつのるばかり。私がこの旅で得たもの、そういったことを想う余裕はあまりなし。

 でも、より心が良く広くなったのだろう。大切じゃないか。

3月18日(月)帰りは18きっぷ2枚

 早朝に長崎ユースホステルを抜け出し、アサイチの特急かもめ2号に乗り込む。車窓からは念願の平成新山がうっすら見えていた。そして博多からは18きっぷ2枚の旅となる。茨城県の土浦まで、自分の鈍行乗り継ぎ最長記録になりそうだ。疲れている体にこれがまた疲れる。もう、しばらくサイクリングも18きっぷ旅行もしたくない!

3月19日(火)過ぎ去った時

 夜行快速『ムーンライトながら』では、東京駅に着いたことに気付かないほど熟睡した。そして土浦駅で輪行を解き、無事つくばに帰宅。久々にお気に入りのNHK朝の連ドラ『ふたりっ子』を見たら、ドラマの中ではもう十数年も時が経過していたのでびっくり。とにかくこんなふうにして日常が帰ってきた。

 こうして初めての九州サイクリングは終った。ただでさえ人数不足だった全体合宿を、途中で「裏切る」かたちになってしまったのは残念だった。しかしその後の個人ランもとても素晴しい旅になったので、決して後悔はしていない。
 また、この春は全旅程にかけて体力的にハードなサイクリングだったことが、むしろこの旅の記憶を明瞭にしている。しかも「いい」思い出として。


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