むらよし旅日記・其の二十:近畿・中国地方マイペースラン

『6th Stage』マイペースラン山陰編〜フィナーレ〜

3月30日〜4月5日

3月30日(月)(続き)国鉄カラー

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渋い快速気動車
 山陰方面に向かって列車旅行。下関からの山陰本線は、車窓を眺めているだけでたまらない旅情だ。肌色のボディにオレンジの帯がなつかしい気動車は、しかしゆっくりと長門・石見地方を抜けていく。やがて夜になり、日本海は黒々と映る。島根県は出雲市駅に着く頃には午後9時を越えていた。長い、おそるべし山陰本線。
 例によって駅の看板地図で“中央公園”を見つけ、テント泊。

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3月31日(火)頑張れ一畑電鉄

 ややあやしい天気。まずは出雲大社へ向かう。すでに廃線になっているJR大社駅跡は、ステビー(駅寝)に使えそうだ。で、出雲大社。神無月(陰暦10月)に日本全国の神がここに集まるから、出雲地方ではその月を神有月というらしい。そんな“超”格高い神社だが、思ったより派手さがなく、参拝客も少なかった。その落ち着いた雰囲気もまたよし。縁結びの神様ということで、でも誰と縁結んだらええんじゃ?
 西に向けて走りだすと、今度は島根ワイナリーが。ラッキー、試飲コーナーでワインをガブガブ。お土産の試食も、腹減っていたから丁度良かった。¥0円也。
 酔っ払い気味でさらに西へ。右手には宍道湖、左手には時々一畑電鉄のミニ電車が走る。しかし廃線の危機らしい。がんばれ一畑電鉄。
 松江駅では待合室で30分ほど昼寝をして、午後は中海(湖)へ。湖の中には大根島があって、干拓事業のための堰堤で渡れる。島の丘が一面の畑になっているのが、まるで北海道みたい。向かい風が強いのがつらいが。
 水門橋を渡ると、もう鳥取県。大山(だいせん)は雲で見えない。米子市の海岸にある皆生(かいけ)温泉に行くが、あやしい特殊な浴場ばかり。そんな街を抜けたあたりに“普通の”公衆浴場はあった。旅の疲れを取るにはどっちが良かったかな?
 米子の中海側に戻り、湊山公園でキャンプ。強風で炊事にも苦労した。明日の天気は悪いらしい……。

4月1日(水)人間スイッチバック

 ついに帰らぬまま4月を迎えてしまった。しかし強烈な逆風に加え、冷たい雨まで降りだしたので米子駅に避難する。こんな天気では走れない。この際、もう列車で帰ってしまうかぁ。かなり葛藤。迷って迷って、もう一日ねばってみることにした。自転車を駅に置いといて、今日は18きっぷで列車旅行だ。
 で、山陰本線から超マイナー路線の木次(きすき)線に乗り込む。だんだん客が少なくなり、峠越え区間は7人。うち鉄道マニアらしき人が3人。あ?自分入れて4人? 車内放送を録音しているツワモノまでいる。列車がスイッチバックする2ヵ所では、運転手のその作業を追って、マニア達もスイッチバックするのが笑える。
 あとは芸備線、伯備線を経由して夕方には米子に戻り、昨日と同じ湊山公園の、ステージの軒下でキャンプ。少々目立つが…。

4月2日(木)勘違いハワイ

 相変わらずの逆風と雨、しかし雨は弱いので、強気にスタート。山陰路は走り甲斐があるのだ。結局、大山をまみえることなかったのは残念。
 頑張って走り、昼には羽合(はわい)町に着いた。ここの温泉街、なんでもかんでもハワイっぽくてあやしい。それにしては寒く、客足も少ないが。話のタネとして、ここの公衆浴場『ハワイゆ〜たうん』にも入ってみる。亜熱帯植物、カラフルなペイント、リゾートホテルのプールのような湯舟。でもやっぱり寒い。
 さらに西、今日は鳥取市まで走った。鳥取城跡前の久松(きゅうしょう)公園でキャンプ。雨は止んでいる。こうやって公園泊を続けるのはいいが、そろそろ桜の花見客とブッキングするようになってきた。もうそんな季節だ。

4月3日(金)山陰海岸国立公園

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鳥取砂丘
 朝、公園を通りがかった人から「寒かったでしょう?」とよく言われる。少しでも話しかけてくる人がいると、もっと話したいと思う自分。もはや独り暮し老人状態だ。日本語忘れそう。
 鳥取城跡に登ってみたら、山々が雪をかぶっているなど、眺め抜群。今日こそいい天気になりそうだ。
 鳥取といえば鳥取砂丘。なるほど、広い。自転車で踏み込んだらやっぱり走れない。歩いて一つ丘を登ってみる。けっこう大変だけど、面白いと思った。
 山陰海岸は兵庫県に入るとリアス式になる。交通量少ない道、青い海と空、波打つ岸壁。点在する小さな漁村では戯れる子供たち。最高の旅情だ。いいねぇ、楽しいね。そして、かつて列車が落ちたことで有名な余部鉄橋をくぐり、鎧という集落へ寄り道してみた。この道は!この坂は!まさにかの連ドラ『ふたりっ子』の舞台だった所だ。小さな駅には『ふたりっ子』の看板まであって、嬉しくなってしまう。私は『ふたりっ子』以来、朝の連ドラに目覚めてしまったのだ。駅の自由ノートにも少しここの感想を書いておいた。
 で、城崎温泉に行き着いた。鴻の湯という外湯には露天風呂もあるし、いい湯だった。街にはゲタの音が響く。ここらへんでお土産も買っておく。旅の終りは近い。
 設営地を求めて豊岡市まで足を伸ばし、中央公園でキャンプ。これで旅程31日の大台も突破した。

4月4日(土)フィナーレ・四月の花はさくら色

 何とテントに霜が降りてる!そして深い霧。今日が一番寒い? そのうち晴れたのでゆっくりテントを乾かしてから出撃。ラン最終日、安全運転で内陸に向かう。こんな日こそ、ブルーハーツの“ナビゲーター”を歌いながら走る。「ああこの旅は気楽な帰り道〜」…。
 出石(いずし)町は但馬の小京都、すこし散策。そして後ランに入ってようやく峠らしい峠、登尾峠へ。400mアップ。久々なので、何か感動してしまった。

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桜の木の下でラストキャンプ
 午後1時に、最終目的地である福知山市に到着。一昨年にここを走っているので、すなわち走った道が山陰道から北海道まで繋がったことになるのだ。ざまあみろ岡山で帰った私、米子で帰った私!
 …まあ、ちゃんと全旅程を終えてから「成し遂げた」ことにしよう。まだあと1泊しなくちゃいけないし。折しも、街は『お城まつり』、踊りの行列が商店街を練り歩いていたり、福知山城もけっこうな人出だ。
 キャンプはまた公園で。旅のフィナーレを飾るように、見事に桜が満開。ラストキャンプということで酒も買ってきた。今夜は花見酒。

4月5日(日)放心の東帰行

 暗いうちに起きて、テント撤収。JR福知山駅で輪行し、始発に乗り込んだ。鈍行を乗り継ぎ、山陰本線に比べて格段に旅情に欠ける東海道本線を経由、茨城県土浦駅で降りて自転車を組み立て、なつかしの筑波山を眺めながら、夕方につくばの栗原荘に帰り着いた。無事生きて帰ってきたぞ!

 こうして33日間にわたる春の自転車ツーリングから帰ってきた。特に後ランでは19泊連続無料キャンプ、外食も1回のみと、自分が激貧旅行に耐えられる身であることを証明した(もうやだ〜)。
 栗原荘のメンバーでお土産を食べながらダベりつつ、やっぱりここが自分の帰るべき家なんだと思った。あまりに私の帰りが遅いので、サイクリング部のみんなが心配してくれていたらしい。そんな話の一つ一つが嬉しかった。心配かけてごめん。
 夜、久々に布団で横になった。天井が高い!! 落ち着いて眠るには、慣れが必要だなこりゃ。

 そして、サイクリストの一つの目標とも言える全都道府県制覇まで、あと4県と迫った。愛媛・宮崎・鹿児島・沖縄だ。もちろん道も繋げたい。まだまだ、サイクリングを辞める訳にはいかないのだ…!

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