むらよし旅日記・其の三

サイクリング部夏合宿:東北縦断編

1995年7月24日〜8月5日

『キャンピング班合宿』北東北編

7月24日〜29日

 初めての長期ツーリング(といっても2週間弱)を前に、長かった髪を切ったり東北の地理の勉強をしたりと余念のない準備をした。しかし着替えなど荷物が多いし、体がもつか不安だ。「何とかなる、何とかなる…」

7月24日(月)

 まずキャンピング班の班合宿が青森県から始まる。

 班合宿参加者数名で早朝に平砂学生宿舎に集合、JR土浦駅まで走る。ここから輪行袋に自転車を詰め込み、青春18きっぷを使って北に向かう。青春18きっぷは、二千円ちょっとで一日間JR普通列車・快速列車に乗り放題、というまさに貧乏な若者向けのきっぷである。乗り込んだのは土浦619発・臨時快速“相馬野馬追い号”。観光客で混んでいる。
 福島県あたりから方言の世界に突入。鈍行を乗り継ぐ旅はとても快適とは言い難く、気にせず眠っている先輩がうらやましい。席を譲れとばかりにそれとなく足を蹴ってくるババア(私はこれを「ドリブルおばさん」と呼んでいる;まさか東北にもいたとは)のせいでさらにうんざり。そんなことをされて誰が譲るか。
 盛岡駅を過ぎるとようやく車内が空いてきた。客車列車のクロスシートを独占してイイ気分、列車の旅はこうでなきゃあ。クーラーはないが風が涼しくてグッド。青森県に入ってさらに涼しくなる。私自身ここまで北に来るのは初めて。いままで見てきた田舎の風景とはちょっと違うな。

 これはアイデンティティを組み直す旅である。人を見つめ直す旅である。そんな気がする。こういう荒い旅に抵抗があるうちはまだ「オボッチャン」なのかな?

 実に17時間かけてやっと青森県蟹田駅に到着。もーしばらく列車になんか乗りたくない。ともかくここで一泊して、明日からいよいよサイクリングだ。この合宿でも前回のGW合宿と同様、1年生が私ひとりというのは、寂しいものだ。

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7月25日(火)

 梅雨は明けたはずなのに、夜中に雨がパラつく。さらに強風がテントを襲いだし、これに揺り起こされた私は眠れなくなってしまった。仕方なく、暗いうちから寒い外をブラつくことにした。雨は止み風も和らぎ、やがて夜明けを迎えた。ここは陸奥湾を臨むキャンプ場・・・海の向こうには下北半島や夏泊崎があおく浮かんでいる。
 しかし朝食の準備中にまた風雨が強くなってきた。どうやら台風が近くを通ったのが原因らしい。ともかく朝食後に出発。8人を二班に分け、まず津軽半島横断に向かう。1年生(私のこと)には先頭地図読みの義務があり、ゆえに強烈な向かい風をまともに喰らうことになった。まだラン一日目前半だというのにかなり疲れたぞ。
 十三湖畔で昼食。ここに先輩2人が別ルートからやってきて、ようやく班合宿のメンバー10人全員が揃った。大橋からは荒々しい日本海が見え、生まれて初めて見る日本海に、しばし感動。
 原始的な湖沼が散在し、屏風のような地形で細かい坂が連打する“屏風山”。ここを通る道を南下して、意外に早く今日の目的地、平滝沼キャンプ場に着いた。いつの間にか穏やかな天気になっており、七里長浜の砂浜で遊ぶ。
 他に客が来てないせいか、至れり尽せりなキャンプ場。シャワーも借りてサッパリ。ちょっと前に、東京から実走で来たという某大学のサイクリング部が泊まっていったそうだが、かなりきつい行程だったらしく落伍者が出たそうな。恐ろしい…。

7月26日(水)

 当然今日も先頭地図読み、みなを引っ張るペース作りが難しい。どうやら何も考えないほうがいいみたい。今日は暑くなり、鯵ヶ沢町での買い出しのときは必死にアイスクリームを我慢する。気合いの入った先輩は、昼食のために皆で喰うスイカをまるごと一個背負った。
 疲れが残ってたり眠かったりちょっと道を間違えたりしたが、旅はいよいよ楽しくなってきた。爽快な道を越えて“お岩木やま”こと岩木山の南麓でキャンプを張る。暑いせいで食欲がなくなってきた。体力はもつか?

7月27日(木)

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林道入口の沢にて
 妙に早く起きてしまい、ジュースを飲みたいなと思って自販機を探すべくお散歩。なかなか見つからなかったけど、朝の気分はいい。
 今日は相馬田代林道の長慶峠を攻める。ダートの登り、始めは調子良かったが、そのうち体力エネルギーが切れ、足が動かなくなってきた。うおー、腹減ったー……これがハンガーノックってやつか。先輩から飴の援助をしてもらったりして、やっと峠に着いた。ボトルの水もほとんど飲み切っていた。ここで昼食にありつき気力は取り戻す。が、疲れはまだまだ残っている。
 秋田県に入り、しばらく長く切ないダートの下りが続く。これを抜け、田代町で夕食の買い出しをしたが、二つに分かれた班のこの後の集合場所を私が勘違いし、お互いの場所が判らなくなるという大変なことになってしまった。結局目的地のキャンプ場で再会できたが、かなりの時間をロスして真っ暗になってしまった。反省。
 それにしても甘いものを食べたいなあ。

7月28日(金)

 昨日の遅れが響き、予定より1時間遅れの出発。今日は全部舗装路でホッ。しかし鹿角花輪で買い出しをした後、ダラダラとした登り坂が嫌になってきた。結局、本来の目的地より手前のキャンプ場までになった。ここで同サイクリング部内、山楽班の班合宿と合流。久しい面々、やっと他の1年生とコンタクトをとれた。
 今夜は班合宿最後の夜ということで、酒と花火で楽しんだ。思えば長かったような短かったような。明日の八幡平アスピーテは辛そうだがそれを越えてしまえば…。

7月29日(土)

 いよいよ八幡平アスピーテラインを登る時が来た。昼食として作ったコッフェル弁当(釜飯)を持って、山楽班の者どもと同時に、爆竹で景気をつけてスタート。案外足の調子が良く、ぐいぐい登れる。景色はやがて霧に変わり、まさに五里霧中。
 「あとどれ位か」と五万分の一地形図を睨みつつ登っていき、そしてトップで見返峠に到着、さほど苦しくもなかったぞ。休憩所ではすでに観光しているファーストラン班の連中にも会い、いよいよサイクリング部全体が集まりつつある。
 キャンピング班全員が到着するのを待って、弁当を食べてから八幡平頂上へ散策。霧は晴れて、メチャクチャ景色がいい。でも他の一般的な観光客が景色に混ざると…ねえ(もちろん自分らも観光客なんだが)。
 そしてまたメチャクチャ景色がいい岩手県側の下りをサーッと降りてゆく。もう最高! そして八幡平ユースホステル(YH)に着いた。ここでキャンピング班合宿は終わり、サイクリング部全体合宿が始まる。今日からテントは張らなくていいしランも若干楽になりそうだが、手放しで喜べるかは謎。
 あとはユースで飼っている犬と戯れたり、近くの温泉に行ったりした。露天風呂に入るのも生まれて初めてだ。


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