むらよし旅日記・其の十二

九州横断道路を走る

1997年3月8日〜19日

『キャンピング班合宿』九州北部編

3月8日〜13日
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九州横断、長崎へのあこがれ

 2年目の春。サイクリング部の合宿先は九州に決まった。いつものようにキャンピング班の班合宿はちゃんと参加する予定だが、全体合宿の方は、限られた日数の中で“九州横断”をしつつ長崎に行くという個人的な目標があったため、途中で別れて個人ランを組むプランを立てた。
 自転車は愛車のランドナー『ハイランドレディ』が事故でオシャカになってしまったので、泣く泣く買い換え『ハイランドレディII世』と名付けた。もちろんブリヂストンのランドナー(TRAVZONE)しかもオリーブ色である。

3月8日(土)2日掛かりの鈍行輪行

 今回も慌ただしく出発の日を迎えた。この旅で、疲れきって何もかも面倒臭くなってしまった私の心を治せるといいな…。JRの鈍行列車に乗り込み、九州に向かってひたすら西へ行くことになる。

3月9日(日)楽しい?列車の長旅

 首尾よく指定券をとってあった夜行快速ムーンライトながら号では、まあそこそこ眠れた。今日も東海道本線そして山陽本線をひたすら西へ、鈍行18きっぷ。
 岡山駅で乗り換えのとき、同行の後輩の一人が「さっきの電車に荷物置き忘れた・・・。」とりあえず本人に駅員への対応を任していたら、余計とんでもない事態になりかけていたので、班長である私が介入してなんとか事無きを得た。あとは本人がこのことで気を落さぬように。そうそう、私がキャンピング班の班長に就任して初めての班合宿なのである。
 車窓の瀬戸内海も過ぎ、夜になって鈍行乗り継ぎにずいぶんヘトヘトになった頃、ようやく北九州市小倉駅に到着。私は鉄道がちょっと好きなので(コ鉄ちゃんという)それなりに楽しく充実した旅だったが、みんなはそうでもないんだろうな。
 自転車を組み立て、駅前のレストランで夕食を採った後、地元ヤンキーが「あそこがいいよ」と教えてくれた足立山公園というところまで走った。おっ、キャンプ場まである。さあとっとと寝よう。

 旅行中にいろんな人のコト考えると、人間ってもんが見えてくるんじゃないかなあ。

3月10日(月)カルストの美しき

 高台の道を走ると、百万都市北九州市の眺め。広い街ださすがに。途中の駅で、班合宿の最後のメンバーも合流。これで6人となった。

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幻想的な平尾台
 林道を登るとそこは平尾台というカルスト地形。峠で自転車を降りて、ちょっとした丘を駆け登ってみた。カルストの白い眺めが最高! 飛び立った鳥のような気分。また自転車に乗り、カレンの中の細道を下ってゆくのもグッドだ。しかし春の冷たい雨が降ってきた。
 昼食は買い出しポイントに恵まれず、カロリーメイトで補給。添田の街で夕食の買い出しはして、さらに南へ。英彦山駅あたりからさらに坂を登るつもりだったが、もう真っ暗の雨。困っていたらガソリンスタンドのオッチャンが、テントを張る場所として雨をしのげる駐車場を案内してくれて、さらに坂の上の温泉施設まで車で送迎してくれた。拾う神あり。
 夕食は手軽にマーボ豆腐を作る。その時、私の調子の悪い携帯コンロがついにガソリン噴射! しかも引火!! 危うく火ダルマになるところだった。以降、私のコンロは使用禁止となってしまった。コッフェル(食器)は近くに水場がないので雨水を利用して洗った。

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3月11日(火)先輩の実家

 天気は好転した。英彦山天狗ラインを登り、修験道の九州総本山である英彦山神社の泰弊殿にも寄る。もう昼を過ぎた。
 ここまでが福岡県。大分県側に下りると、川沿いにサイクリングロードを発見したので、これを北東に走る。実はこの道は耶馬渓鉄道の廃線跡で、駅の跡なんかも残ってるし、移り変わる景色、渓谷美も飽きない。名所『青ノ洞門』も寄るだけ寄って、先を急ぐ。なにしろ今日も距離が長く、また日が暮れてしまいそうだ。ここ数日、疲れは溜まる一方。私がこんだけつらいのだから皆も、とくに後輩はもっとつらいのだろう。
 やっとの思いで、宇佐神宮前にある先輩Yさんの実家にたどり着いた。今夜はここで風呂と食事と寝床をお世話になるのである。班長である私は、疲労ですっかり思考回路がダウンしていて、どう礼儀をしてよいか判らなかった。しかし我々は温かく迎えられ、御家族と一緒に、名物だんご汁などなど豪華で大量の食事をご馳走になった。ビールも入った。
 やがて寝る時間、ここで古いクラシックギターを発掘! これでしばらくギターの禁断症状を抑えられるぞとばかりに、勝手に弾かせてもらった。
 九州人の親切を受けまくりの日々である。でも今日は尋常じゃなく疲れた。

3月12日(水)宇佐神宮、暁の出撃

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暁の宇佐神宮
 同輩H氏が、朝早く起きて宇佐神宮へ向かった。私も何とか起きて、暁の鳥居をくぐる。昼間は参拝客でごったがえすであろう境内を一人で歩くのは、なんとも気持ちがいい。ちなみにここは全国八幡宮の総本山らしい。
 朝食もY家でご馳走になった。私はその家が経営しているお土産屋で、昔の旅人が持ってそうなデカい三度笠を買った。サドルキャリアに取り付けると、まるでエアロパーツ。峠仕様!なんちゃって。
 ずいぶんお世話になったY家、ありがとう。今日も走り始めて、国東半島のいろんな寺や石仏をみて廻り、両子山をぐるっと半周して両子寺に着いた。
 これでもう夕方6時、また疲れた。ここら辺にキャンプ場がある筈なので、寺の人に聞いてみたら、「ここに泊っていけ」と言って、ハイカー向けの案内所らしいログハウスに泊めてもらった。2日間もテント使わないなんて、キャンピング班らしくないかなあ。でもみんな喜んでるしまあいいや。うまいビーフシチューを作って食べ、班合宿最後の夜ということで小コンパ、酒をくらって寝る。

3月13日(木)九州横断開始へ

 両子寺を参拝してのスタート。おみくじは大吉だったが、空は憂鬱な雨。熊野磨崖仏なるデカい石仏、ふーん。昨日買った三度笠は行く先々で、年配の人になぜか誉められてしまった。
 途中、今日帰る先輩2人と別れた。我々は夕刻、別府へ。私のわがままで別府外港に寄らせてもらう。なぜなら“九州横断道路”はここが始点だからだ。
 ここからサイクリング部全体合宿初日の宿、別府ユースホステルまでが意外に長く、きつい登り坂。最強クラスの“ユース坂”で今日もまた疲れて、到着。これで班長としての責任からしばらく解放されるが、それにしても心身ともにつらい班合宿だった。しかし各所でいろいろ親切を受けたのが、大きな救いであったのは言うまでもない。
 さて全体合宿の始まり。参加人数が11人とヤケに少ないのは寂しい。とにかくやど泊となり、洗濯乾燥、温泉、ベッド。気は休まる。ユースには伝説のサイクリング漫画『サイクル野郎』の第1巻があり、なんとも恥ずかしいストーリーに感激。


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