動物お助け活動について Part 3

Nさん宅の場合 2

翌週お店へ様子を見に行ってみると、また変化が起こっていました。本来子猫と一緒にいて子育てをしているはずのトラちゃんが店に入り浸って昼寝をしてばかりでほとんど外出しないというのです。その数日前にトラちゃんがとても落ち着かない様子で店を出たり入ったりして、ニャーニャーと鳴いたりもしていたのでもしかしたら子猫に何かあったのではないかと、Nさんはとても心配な様子でした。お隣の軒下をのぞきに行っても、子猫の声がしないと言うのです。一瞬、子猫が何かに襲われたか伝染病などにかかって全滅してしまったのかと思いましたが、しかしそれはとても不自然なことのように感じられました。しかも、Nさんがトラちゃんのお腹をさすってあげると、お乳のところに母乳の残りがこびりついていたりすると言うのです。私はそれまで一度もこのような状況に遭遇したことがなかったので一体何が起こったのかまるで見当もつきませんでしたが、とりあえずまた様子を見ることにしました。

そしてもし子猫たちが死んでしまったとしたら、出産から1ヶ月が過ぎるのでそろそろ避妊手術ができるのではないかという事になり、大人しい子ではあるけれどクロちゃんの時に大暴れされた経験があるので一応捕獲器を貸して欲しいと言われました。そこで、甲府のマグロさんに連絡を取って事情をお話し、捕獲器を借りることにしました。翌週末、この日は夜中に七奈ちゃんの騒ぎがあってほとんど眠っていない状態でしたが、車を飛ばして甲府へ行きマグロさんに捕獲器を借りにいきました。ご自分で動物保護活動グループを主宰しており私の師匠 (と勝手に思っている) マグロさんに事情を説明すると、子猫は死んでしまったか、あるいは母猫が育児放棄をしたのかもしれないと言われました。私はてっきり子猫が死んでしまったものと思っていましたが、初めて猫の世界にも育児放棄があることを知り、ちょっとびっくりしました。甲府から戻ってNさんのお店に捕獲器を届け、使い方を説明して帰宅しました。翌週のうちにはトラちゃんも無事避妊手術を済ませ、当初はトラちゃん、クロちゃんとも店の外で面倒を見るという話でしたが、トラちゃんはもともとあまり外には出ない子で、その上避妊手術が終わってしまったクロちゃんもパトロールに出かける必要が無くなってほとんど店から出て行かない状態になったので、結局Nさんのご自宅で室内飼いのにゃんとして引き取ってもらえることになりました。

2週間後、不要になった捕獲器とお貸ししていたケージを引き取りにNさんのお店にうかがうと、事態が急展開していました。なんと、子猫が全部保護されていたのです!どうやらトラちゃんはマグロさんが言っていたとおり、育児放棄をしてしまったようでした。前年の秋に生まれたトラちゃんは生後6ヶ月ほどで妊娠したことになり、その上人間からごはんをもらう生活だったので、性成熟はしたのかもしれませんが精神的にはまだ大人になりきっていなかったのでしょう。しかし、自分の意志とは無関係に子猫は産まれてしまい、面倒を見なければならないとは思いつつどうしてよいかわからないし人間の近くにいた方が安心なので普段はNさんのお店にいて、とりあえず時間になるとお乳だけあげに行っていたようなのです。

トラちゃんは避妊のため捕獲され、手術したあとはそのままNさんのお宅に連れていかれたので、子猫たちは1週間以上も母猫がいないまま過ごしていたことになりますが、幸い襲われたり病気にかかったりすることなく5匹全部が無事保護され、とにかく良かったと思いました。(後で聞いた話では、お腹を空かせた1匹の子猫が隣家から這い出してきたところを偶然目撃したNさんがこの子猫をすばやく捕獲し、その子猫が興奮してミャーミャー鳴く声につられて他の猫たちも次々と出てきたところを、店員さん総出で捕獲したとのことでした。)

しかし、私がお店に行った時には、5匹いた子猫は3匹になっていました。里親が現れたので2匹はすでに渡してしまったと言うのです。子猫たちは捕獲された後、道向かいの美容院できれいにシャンプーをしてもらったのだそうですが、その時に来ていたお客さんがどうしても1匹欲しいといってその日の夕方には新しく購入したキャリーを持参して連れて行き、もう1匹はお店のななめ向かいの家の人がもらってくれると言ったので届けてきたと言うのです。もちろん、私は一番最初に子猫の里親を探すつもりであると聞いたとき、生後2ヶ月になるまで子猫を里親に渡すのは待つことや、里親になってもらう人にはいろいろな確認を取ること (完全室内飼育や不妊手術をする、最後まで面倒を見る覚悟がある、などなど) 自作の資料を3部ほど印刷して持参し、里親に子猫を渡す時期が来たら一緒にその資料も渡してくれるようにと頼んでおきました。しかし、トラちゃんが子猫をつれて引っ越してしまい、その後てっきり全滅あるいは行方不明になってしまったと思い込んでいたNさんは私が最初に話したことなどすっかり忘れてしまい、とにかく手元にある子猫を全部里親に出さなければと、その気持ちばかりがつのってしまったようでした。

私は子猫が生きていてくれた事のうれしさ半分と、すでに里子に出されてしまった子猫の心配半分で複雑な気持ちでしたが、もちろんNさんに悪気はなく、猫たちのために一生懸命がんばってくれたのですから、きっと子猫たちも幸せになれると信じて、そのことについては何も言いませんでした。その後、5匹の子猫は全部里親が決まり、最初にななめ向かいの家にもらわれていった子は、里親さんが数日後にやはり飼う自身が無いからといって出戻ってきたそうですが (なぜかこの子の名前もラッキーセブンのななちゃんでした(^^ゞ)、最後になってやっと里親が決まりみんなそれぞれにもらわれていったそうです。(みんな幸せに暮らしているといいなぁ。)

それから1年後の2002年4月、また春がきて憂鬱な子猫の季節がやってきました。幸い、我が家の周辺には不妊手術をしていない外猫はいなかったので、七奈ちゃんの避妊手術をいつするかという事と、お兄ちゃんと小次郎のマーキングがおさまらない事以外には、特に問題のない春を過ごしていました。そんな時、またNさんからSOSの電話が入りました。あわててお店に出向くと、また去年と同じ事が起こっていたのです!

クロちゃんとトラちゃんがNさんの家に引き取られ子猫も里親に出された後、お店の周辺は静かになりましたが、その年の春に例の三毛猫 (クロちゃんたちの母猫) も子猫を生んでおり、5匹ほどいた子猫のうち1匹だけが生き残ったとのことでした。そして、この猫も店に入ってくるようになったので、ブサイクだったため田吾作という名前をつけてご飯をあげていたところ、春になってだんだんとお腹が大きく気なってきたようだと言うのです。Nさんは田吾作がてっきりオスだと思っていたらしいのですが、実はメスだったんですね。

一通り話を聞いてから今度はどうするつもりですかと聞くと、もう里親探しは大変なので手術をしてもらうつもりだと言いました。そこで産まれてしまわないように、とにかく病院に予約を入れるようお話し、田吾作ちゃんを手術後入れておくケージを貸してあげました。その後、田吾作ちゃんの手術はギリギリセーフで行われたため子猫が増えることはありませんでしたが、その時例の三毛猫がまた子猫を産んでおり、隣家の庭で田吾作ちゃんと母猫がかいがいしくこの子猫の面倒を見ている姿がありました。私はその姿を前にして、Nさんに 「もしこの子にご飯をあげるのであれば、妊娠する前に避妊手術をして下さい」 とお願いしておきました。(ちなみに、三毛の母猫はとても警戒心が強く絶対に捕まえられないとのことで、避妊手術はできませんでした。本当はこの子を避妊するのが一番先だとも思うのですが、しかたがありません。)

そして半年以上が過ぎた2003年の1月に別の用事があって久しぶりにNさんのお店を訪れると、その後田吾作ちゃんは交通事故にあって死んでしまい、今は田吾作ちゃんが面倒を見ていた猫を店で世話をしているとのことでした。その子は体が弱い子だったらしく、具合が悪かったりお腹に虫がいたり皮膚病があったりしたので何度か病院に連れて行き、男の子だったので去勢の予約もしようとしたらしいのですが、S動物病院の先生に 「この子は停留睾丸で片方がお腹の中にあるから去勢手術しても意味が無い」 と言われたそうです。停留睾丸は放っておけばガンになる危険性もありますから、お腹の中から探して取り出してもらうべきだと思うのですが、何せS動物病院の先生は一人でやっていますから面倒な手術はできません。しかも男の子なので妊娠する危険はないし、Nさんはそのままで良いと思っているみたいです。私は気弱な人間なので、人にアドバイスすることはあっても絶対にこうしなければならないとは言えません。もちろん、面倒を見ているのはNさんなのですから、手術についてはNさんが決定すべきことですし、私もS先生がそう言うなら仕方が無いかとも思いますので、しばらくは様子をみようと思っています。

Part 4 に続く

Last updated: 2003.2.5