病院について Part4

お兄ちゃんの深刻な悩み <膀胱炎>

お兄ちゃんと膀胱炎は切っても切れないというより、むしろ断ち切りたいのになかなか切れない関係と言えます。3年前に2回目の膀胱炎を患ってから1年間は療法食を食べ続けていたおかげか膀胱炎が再発しませんでした。しかし、ある日フードの安全性という問題に目を向けるようになってから、ヒルズもアイムスも決して安全ではないと言う事が判明し、それから始まったフードジプシーのせいもあると思うのですが、療法食をやめてから半年ほど経ったある日、マーキングを片付けているとちっちの中にキラキラと光る大量の結晶を見つけました。私は青くなって結晶を溶かす効果が期待されるというビタミンCをいつもより多めにあげたり、ご飯にかけるお湯を多くしたりして様子を見ましたが結局状態は改善されず、2001年7月に3回目の膀胱炎が再発してしまったのでした。

3回目ともなると様子も大分わかってくるので、その時はあわてずいつものO動物病院に行きました。前回同様1日1回の点滴に1週間ほど通い (1日2回通院するのは無理だと断りました)、何週間分かの抗生物質と消炎剤をもらって飲ませていました。そのうち大分容態が落ち着いてきたところで、先生からそれまで飲んでいた抗生物質をやめて今度は予防のための薬に変えてみましょうという話が出ました。それは人間用の抗鬱薬で、細菌性でない、原因がはっきりと特定できない間質性膀胱炎に効果があるとアメリカで報告されているので、投与して様子を見るというのです。

そのO病院は常に激しく混雑していて、仕事が終わった後の夕方に行くと30分、1時間待つのは当たり前でした。時には座る場所も無いほど混雑している待合室で辛抱強く待ち、やっと順番が回ってきても簡単な触診と目分量の補液の点滴だけで検査らしい検査などしたこともありませんでした。毎回そんな状態だったので、あとから考えれば細菌性の膀胱炎かどうかも調べずに抗生物質を中止して、薬を切り替えることに同意してしまったのは明らかに私の判断ミスでしたが、当時は新たに加わった七奈ちゃんの事やおかあちゃんの世話などがあったことから、深く考えずにとにかく良くなるのであれば何でも良いという安易な気持ちで薬を変えてしまったのでした。

それからしばらくの間も定期的に通院していたのですが、ある日待合室で隣に座った中年の女性からとんでもない話を聞きました。その女性もかわいい猫ちゃんを連れて通院していたのですが、どうしたのかとたずねると、腸の神経がおかしくなってしまって自分で排泄できないので、定期的に出してもらいに来ているとのことでした。大変ですね〜などと言いながら話を続けていると、次第にその猫ちゃんの状況が明らかになってきました。聞けば、やはりその子も膀胱炎で別の病院で治療を受けていたのですがいつまでたっても治らないのでそのO病院に転院してきたところ、膀胱炎は良くなったのですが予防のためと言われてお兄ちゃんと同じ抗鬱薬を半年以上も飲んでいたそうです。そのうちうんぴが出なくなってしまったので検査をしたところ腸の神経がうまく機能していないことが判明し、院長婦人の先生がちらっと口をすべらせたところによると、その抗鬱薬の副作用でそういう症状が出たらしいと言うのです。

私は思い切り青ざめてしまいました。なぜならその時点でお兄ちゃんも同じ薬を1ヶ月ほど飲んでいたからです。お兄ちゃんにも同じような副作用が出ないとも限りません。最初に薬を切り替えるときに長期で服用して副作用は無いのかその点だけは確認したのですが、その時の担当医はきっぱりと副作用は無いと言いました。しかし現実はこんなに重い副作用が出ているのです。(表向きは原因不明にされているとのことでしたが。) その女性は病院に対してとても不信感を抱いていましたが、最悪なことに私が住んでいる地域ではその病院が設備、規模ともに最大であり、転院しようにもそのような症例を適切に扱うことのできる病院は他にありませんでした。そこで仕方なく通っているとのことで、本当に気の毒としか言いようがありませんでした。

しかし明日は我が身ということも十分にあり得ます。それまで3年間ほどその病院にはお世話になっていましたが、私も十分に納得してその病院に通っていたわけではありません。他に選択肢が無かったから疑問を感じながらも利用していただけというのが正直なところです。しかしそんな話を聞いてしまってからは更に不信感がつのり、もし次にお兄ちゃんが具合が悪くなった時には、絶対I病院へ行こうと心に決めたのでした。(もちろん行かずに済めばそれが一番なのですが…。)

O病院への通院を自主的に打ち切って2ヶ月ほどは何事も無く過ぎました。しかし11月に入って秋風が吹き始めたころ、またお兄ちゃんの膀胱炎が再発したのです。その日は日曜日でした。もちろん行くつもりはありませんでしたがO病院は休診日でした。そこで、高速道路を運転するのはあまり好きではなかったのですが、そうも言っていられないのでI病院に電話をして診察時間を確認してから行く事にしました。頻尿の症状が出始めたのが夕方で病院に行こうと決めた時間が夕方5時をまわっていたので、あたりは既に薄暗くなっていました。そこで母親が一緒についていってくれることになり、暗〜い気持ちで病院へ向かいました。

病院につくと待合室に他の患者さんはおらず、すぐに診察室に入れてもらえました。診察室は広々としていて診察台が3台あり、そのうちの1台だけが途中から上がガラスになっている壁とドアで仕切られた個室のようになっていました。最初は一番奥の仕切りが無い場所に通されたのですが、私はちょっぴり心配になりました。というのは、以前のO病院で診察してもらっていた時はお兄ちゃんが暴れたり威嚇したり、時には診察台の上から逃げたりしたのでいつも3人がかりくらいで押さえてもらいながら治療をしていたのです。それが、だだっぴろい診察室に通され (O病院の診察室はそれぞれ個室になっていました)、隣にも診察台があり、そこにはワンワンと興奮している犬がいました。お兄ちゃんが落ち着いて診察を受けたり治療をしてもらえるとは到底思いませんでした。

そこで事情を説明して隣の個室になっている診察室に移してもらいました。まず看護士さんが体温と体重を計り、気になる症状などをカルテに記入していると、担当する先生がやってきました。診察室に現れたのは30代前半と思しき中堅どころの男性の先生で、この先生も長い白衣を着ていました。(何となく次期院長かな…なんて思ったりして。) とりあえずあいさつをして話を始めたのですが、この先生は今まで会った動物病院の先生の中で一番ソフトでほんわかした雰囲気が漂うというか、一歩間違えるとちょっとボーっとした印象も与えかねない先生でした(^_^;)。しかし、お兄ちゃんの様子や今までの病気の経過などを細かく聞いて、お兄ちゃんに優しく声をかけながらあちこち触診したりして獣医師としてはきちんとしていて信頼できる人だと直感しました。それに一番びっくりしたのは、お兄ちゃんがいつもとは全く違っておとなしく落ち着いていたことでした。看護士さんや私が押さえていなくても、普通に診察ができるのです。暴れたり逃げたりするから個室に移して欲しいと頼んだのに、ぜんぜん大丈夫ですねとか言われて私の方がびっくりしたというか、診察してもらう相手や環境でこんなにも精神的な落ち着き度 (裏を返せばストレス度) が違うものかと実感しました。

そしていざ診察という時になって、先生がおもむろに取り出したのがなんと「計算機」でした。先生はまず症状や既往症から考えられる現在の状態と、確定診断を下すための検査の種類、おそらく行うであろう治療、そしてそれらに伴う費用を一つずつ説明しながら合計していきました。そして最終的に概算で○○円という金額になりますが、どうしますか?と聞くのです。私はまたまたびっくりしてしまいました。最初の頃に通っていた病院は検査などほとんどしませんでしたし、治療や薬の値段もあって無いようなものでした。もちろん明細書なども一切ありませんでしたし。そんな状態だったので、直前まで通っていたO病院は明細書も出るし、それぞれの治療の値段も決まっているようだったので、一応値段について疑問に感じたことはありませんでした。しかし、何のためにどのような検査をするかという説明はあっても、その値段がいくらなのか、またやっても良いのか (飼い主の予算として支払い可能か) ということなどは一切配慮されていませんでした。むしろ、一度に大量の薬を出したり (必ず最低2週間分) 本当は必要なはずの検査はせずに必要性が疑問視されるような検査を何度も行ったりして、かなりいい加減な印象をもったのも事実です。

例えば、O病院では膀胱炎の治療なのに尿検査をせず、超音波での膀胱の確認もしませんでした。(検査や治療の機材はかなりのものが揃っていますので、できないことはありません。) かと思えば、膀胱炎が3回目だからという理由だけで1年ほど前に検査して陰性であることがわかっているのに2回目のエイズと白血病の検査をしたのです。うちのお兄ちゃんは完全室内飼育ですし、前回の検査以降他の猫と喧嘩をしたり噛まれたりということもありませんでしたから検査はしなくて良いと言ったのに、前回の検査の時はまだ正しい結果がでない時期だったのかもしれないし (例えばエイズは感染してから1ヶ月くらいたたないと正しい結果が出ません) 私の気付かないところで感染しているかもしれないと、聞き方によってはヘリクツとも取れる理由を言い張って検査したのです。当然ながら結果は陰性でしたが、検査代に3500円もかかりました。

私は必要であると納得がいくものであれば、いくら値段が高かろうとも支払う意志はあります。それでお兄ちゃんが元気になるなら、お金など惜しくはありません。そしてこの先生の説明はまったく理にかなっていて不要なことなど何も無く完全に納得のいくものだったので私は全部の検査と治療を気持ちよくお願いすることができました。(先生は「ちょっと高額になってしまって申し訳ないですが」とまでおっしゃってくれました。幸い、O病院での高額な請求書を見慣れていた私にとっては、特別びっくりするような金額ではありませんでしたが…。)

病院について Part5 に続く