亀井くん Part1

亀ちゃん 名 前 亀井 大吉
(かめい だいきち)
生年月日 不明
性 別 元男の子
好きな物 なでなで
好きな人 にこちゃん
特 技 おいしいのお返事


亀井君突然現る

小次郎に出会った1998年の夏以降、我が家の周辺にいる野良と思われる猫は、おかあちゃんとおかあちゃんが1999年の春先に産んだあーちゃん、そしてあーちゃんの父親と思われるをやじ君だけでした。あーちゃんは1999年7月頃にズダボロになって助けを求めて来たときに一時的に保護しましたが、脱走してしまってからはむしろ我が家を避けているといった感じで滅多に見かけることはありません。そんなわけで、我が家の餌場はもっぱらおかあちゃんと上のお宅のミケリン (チビ) ちゃん、そしてたまに来るをやじ君で平穏が保たれていました。

それまで、おかあちゃんの発情期に何度か見慣れない猫が餌場に現れることはあっても、みんな時期が過ぎれば自然といなくなりました。しかし2000年の3月ころ、突然現れた亀井君だけは違いました。猫の交尾においてはメスに選択権があり、メスが受け入れないオスはメス猫に近寄ることすらできません。しかも、おかあちゃんには既にをやじ君というボーイフレンドがいました。亀井君の出る幕はありません。亀井君は我が家の餌場にくるおかあちゃんを待ちうけては何回もおかあちゃんにアタックしますが、その度に唸られたり、逃げられたりと、まるで相手にされていませんでした。

これだけ嫌われれば、そのうちあきらめてまた元いた場所に戻るだろうと楽観していた私の予想は見事に裏切られました。おかあちゃんの発情期が終わっても亀井君はどこにもいかないのです。出かけていることもあるのですが、私が帰ってくると必ずどこからか現れ餌を催促するようになりました。本来おかあちゃんのために設けた餌場ですが、あまりの人懐こさ (実は強引なだけなのかも…) に負けて、別の入れ物で餌を与えるようになってしまいました。しかし、これが大きな間違いでした。

亀井君は完全に我が家をテリトリーとして活動するようになり、ごはんを食べに来る他の猫たちを追い払うようになってしまいました。車庫に止めた自動車のボンネットの上や車庫の脇にある木から家の屋根に登って屋根の上でギャーギャーと鳴いたりします。しかもテリトリーを示すために、敷地のあちこち (特に玄関先と車庫) にマーキングをしまくりました。当然、うるさい鳴き声やマーキングの強烈な臭いは家の中にいるお兄ちゃんたちにも影響を与えます。(特に、庭や裏の畑へ抱っこしてお散歩に行っていたお兄ちゃんには、戸外もテリトリーであるわけです。)

大問題発生!!

いい加減亀井君の存在が疎ましくなってきたころ、今度は家の中の玄関まわりに異臭がし始めました。家の外は亀井君のマーキングで仕方が無いとしても、なぜ家の中が???しかし原因もわからないまま2週間ほどして、ある日初めて玄関の土間のタイルが濡れて隅に水溜りができていることに気づきました。玄関の土間はそのままにしておくと小次郎が全身をこすりつけて埃だらけ、砂だらけになってしまうので、それを防止するため一面に人工芝のマットが敷いてあります。それで気づくのが遅れたのです。その水溜りの液体をティッシュに浸して臭いをかいで見ると、まさしく猫のおしっこの匂いがしました。誰かが外のマーキングの臭いに反応して、家の中でマーキングをしていたのです。

私は自分が蒔いた種とはいえ、とんでもない問題を生じさせてしまったことを後悔しました。しかし、後悔しても始まりません。とりあえず現場をおさえないことには誰がマーキングをしているのかわかりませんし、対処の方法も見つかりません。それから、家人がいる時は常に2匹の猫の行動を監視するようになりました。そして監視を始めて2日目の朝、何とお兄ちゃんが玄関で悪びれた様子も無くおしっこをしている現場を目撃しました。「こんなにお利口で非の打ち所のないお兄ちゃんがどうして…」 私は絶句してしまいました。実は、私は密かにおマヌケな小次郎がこんなことをしているのだろうと勝手に考えていたのです。今まで一度たりとも問題となるような行動をしたことの無かったお兄ちゃんがそそうをするなどとは、予想だにしていなかったのです。

その日は帰宅してからあわてて玄関を水洗いをして消毒も兼ねて希釈したハイターを玄関一面にまきました。これは当初成功かと思いましたが、タイルが乾燥するとハイターのくさい匂いもなくなってしまい効果が長続きしませんでした。次はタイルを水洗いした後に猫を近寄らせないという柑橘系の香りのするシリカゲルでできた忌避剤をまきました。しかしこれは全く効き目がなく、蒔いたはしからそそうをするといった感じでした。策の尽きた私は仕方なく、玄関の土間一面に透明なビニールシートをかけました。これならば万が一そそうをされても水洗いせずに拭くだけですみます。この状態は1ヶ月以上も続きました。

決断の時

それからの数週間はお兄ちゃんのそそうとの戦いでした。監視している時は怪しいと思えばすぐにトイレへ連れて行けるので良いのですが、留守になって帰宅してくると、どこからか異臭を感じることがあります。鼻をクンクン、フンフンさせながら臭いの元をたどっていくと、だいたいは玄関でしたが、ある時は両親の洋服ハンガーの中からだったり、キッチンの一部だったり、居間の隅だったり、いろいろな所にそそうをしてくれました。その度に除菌・脱臭効果のあるスプレー剤を缶の半分も使うほど蒔きましたが、そそうが収まる気配はありませんでした。

悩んだ末に、私はお隣山梨県の甲府にあるペットショップをたずねてみることにしました。ここは、犬猫のナチュラルフードやサプリメントを扱っており、ネットでその存在は大分前から知っていたのですが相談してみようと思ったのはその時が始めてでした。そのころになると、お兄ちゃんもストレスからかすっかり形相が変わってしまい、かわいいお顔はどこへやら、いつもイライラしている様子でわけも無く飛びかかって来たりするようになっていました。おまけにそれまではねだられれば外に散歩に行っていたのに、亀井君が来たおかげでいくらねだっても散歩に連れていってもらえなくなってしまったのです (万が一のことがあると心配ですから)。そんなわけで、お兄ちゃんの精神状態がリラックスできるようなサプリメントがあれば良いな〜くらいの感覚で、ネットで調べた地図を片手に甲府まで一人で車を走らせました。

お店は2車線の大きな通り沿いにあり、Book-Offの古本屋を目印にして行けば良いと聞いていたのですぐにわかりました。入ってみるとこじんまりとしたお店の中にはたくさんのフードやサプリメントが並び、奥の部屋では白い子猫が2匹遊んでいました (後で聞きましたが、この猫たちは千葉の130匹の猫を飼っていて破綻した家から来た里親探しのために預かられている子でした)。

お店を経営しているまぐろさんは小柄でかわいらしい女性でしたが、お話してみるととても活発でご自分の考えをはっきりと述べられ、強い意思を持ったまっすぐな視線が印象的でした。まず、お兄ちゃんの今までの病歴や現在の健康状態などについて質問されたあと、お店を訪ねた目的を聞かれました。そこで私はお兄ちゃんがマーキングをして困っていることと、ストレスがたまっていてイライラしているようなので、精神的に落ち着くようなサプリメントがあれば使用してみたいとお話しました。すると、まぐろさんはマーキングの原因について何か心当たりがあるかとたずねるので、餌を与えているとは言わずにただ 「家の周辺に野良猫がいる」 と答えました。しかし、動物愛護団体の代表でもあるまぐろさんに隠し事が通用するはずはありません。 「誰かえさをあげてますね?」 とすぐに見破られてしまいました。

私が最初、野良猫に餌を与えていることを隠したのには、理由がありました。それは、野良猫に避妊、去勢手術をせずに可哀想だからと餌だけ与えることが一番無責任でしてはならない行為であることを自分自信で認識していながら、そんな状態を続けているうちにマーキングの問題が生じてしまったことがまぐろさんに知れれば、自分の行為を責められるのではないかと思ったからです。それに不幸な動物たちを1匹でも少なくしようという活動を行っているまぐろさんにそんな話をしたら、必ず野良猫の不妊手術をするように薦められるだろうということもわかっていました。

しかし、嘘をついたところで問題は解決しません。私は素直に餌を与えていることを告白しました。まぐろさんは特に私の行為を責めるような発言はされませんでしたが、予想通り 「外をうろつく野良猫達に避妊・去勢手術をしなければマーキングはおさまらないでしょう」 という答えが返ってきました。もちろんそれは自分でも十分承知していたことですし、いつかはしなければならないと思っていました。しかし、いざ実行するとなると何だか猫が可哀想になってしまって、なかなか決心がつかなかったのです。

まぐろさんは、捕獲器を貸し出すから持って帰って是非手術をするようにと薦めてくれました。奥の部屋の仕切りネットをくぐりぬけて外へ出たがる、とても元気の良い白猫ちゃんを見本に捕獲器の使い方も教えてくれました。しかし、その日は結局決心がつかずに、数種類のサプリメントと缶詰フードをいくつか購入しただけで帰路につきました。

そうして断ってはみたものの、家に帰れば外では亀井くんとをやじ君が相変わらず激しい縄張り争いを続けており、家の中ではお兄ちゃんがあちこちにマーキングをしています。結局、亀井君たちの去勢手術以外にお兄ちゃんのマーキングがおさまる方法は無いという結論に至り、あらためてまぐろさんに捕獲器を貸し出していただくようメールを送りました。

亀井くん2へ続く

Last Update: 2003.2.1