七奈ちゃん Part1

七奈ちゃん 名 前 なな
生年月日 2001年5月初旬?
現在1歳
性 別 元女の子
好きな物 ぽんぽん
好きな人 にこちゃん
特 技 ジャンプ後のしりもち


うそだっっ!!

2001年6月22日の真夜中 (正確には23日の午前2時頃)、あたりはすっかり寝静まり、月明かりもない暗い夜の闇を切り裂いて、子猫の叫び声が響きました。深い眠りに入っていた私は、その声が脳に届いてはいるのですが体が反応せず、無意識のうちにも 「あれは何かの間違い、絶対猫の声じゃない」 とその声の主の存在をひたすら否定しながらまた一生懸命眠ろうとしていました。しかし、私の耳に聞こえるほどの大きな声がお兄ちゃんに聞こえないはずはありません。そのうちお兄ちゃんが興奮したフッフッという声を発しながら家の中を上に下に走りまわり始めました。さすがの私もお兄ちゃんのドタバタと走る音に目が覚め、仕方なくその声の主を確認すべく眠い目をこすりながら懐中電灯を片手に外へ出ました。

声を頼りに暗い庭へ出てみましたが、子猫の姿は見えません。庭をウロウロしていると亀ちゃんがどこからか現れて、いつものようにミャーミャーと鳴き始めました。そこで亀ちゃんに 「どこかで子猫の声がするんだけど、どこにいるの?」 と聞いてみました。すると亀ちゃんは声のする方向に向かって歩いて行きます。その後をついて行くと、向かいの家の石垣に植えられた植込みの一角に近づいて行きました。どうやらそこに子猫がいるようでした。しかし、そぐその先は向かいの家です。むやみに懐中電灯で照らすわけにもいきません。しかも悪いことに、どうやら私が近づくと声の主が移動してしまうため、私が動けば動くほど目指す相手は遠くに行ってしまいます。

結局正体を確認できないまま、私は真夜中の庭で一人懐中電灯片手に子猫を探しながら、激しいショックに立ち尽くしていました。「どうしてまたこんなことに…」 その思いばかりがつのります。それまで我が家の周辺のいわゆる無所属猫は、亀ちゃん、をやじ君、そしておかあちゃんしかいませんでした。しかも男の子には去勢手術をしてありますし、おかあちゃんは避妊手術をしていないとは言え裏の小屋のケージに入っていて他の猫と交尾をすることはできません。をやじ君とおかあちゃんの子供であるあーちゃんもどこかで生きてはいるようですが、我が家の周辺に現れることは滅多にありません。つまり、我が家の周辺で子猫が生まれる可能性は全く無いはずなのです。それなのに…。

低血圧と激しいショックでクラクラする頭を抱えながら、仕方なくまた子猫の姿を探しました。そして10分ほど経った頃でしょうか、突如坂の下からバイクの轟音が響いてきました。早起きな新聞配達のおじさんが2時半というまだ真っ暗な中をバイクに乗ってやってきたのでした。ちょうど子猫が植え込みから道へ出てきたところだったので、私は子猫がバイクにはねられやしないかと心配で思わず 「早く逃げなさい!」 と叫んでいました。子猫はバイクの行く先を坂の上へ向かって一目散に走っていき、亀ちゃんと私もあわてて道端にかろうじてバイクをよけたのでした。バイクはそのまま走り去りましたが、懐中電灯片手に真夜中に住宅街をうろつく私はどこから見ても相当怪しい人物です。万が一おじさんが警察にでも連絡しやしないかと心配になって、私はあわてて家へ駆け込みました。

玄関に入ってしばらくすると、バイクは坂を下りて行ってしまったため、また庭へ出てきて子猫の姿を探しました。そのまま向かいの家の敷地にいればまだ良かったのに、バイクにおいかけられたため、子猫は我が家の庭に入ってきていました。しかも悪いことに我が家にも植木が何本もあり、下草などが生い茂っているため子猫の姿はまったく見えなくなってしまったのです。仕方なく子猫を探すのはあきらめ、翌朝にはどこかへ移動していなくなっていることを祈りつつ、後は亀ちゃんにまかせてベッドに戻りました。しかし、子猫は悲鳴に近い叫び声で一晩中鳴き続け、結局私は一睡もできないまま夜が明けてしまったのでした。

あなたはだ〜れ?

一夜明け、ほとんど眠れなかった私は6時半になったので庭へ出てみました。相変わらず庭のどこかから鳴き声はしますが、姿は見えません。そのうちまたどこからか亀ちゃんがやって来ました。そこでまた亀ちゃんに 「子猫はどこにいるの?」 と聞いてみました。すると亀ちゃんは1mほどある庭の土手にぴょんと飛び上がると、土手に植えられているある木の根元に行ってミャーミャーと鳴きました。そこでその木をよ〜く見てみると、確かに子猫の鳴き声はそこから聞こえてきます。また亀ちゃんが何度か鳴くと、今度は木の葉が茂った部分がゴソゴソと揺れたかと思うと、スルスルと子猫が下りてきました。どうやら木に登って身を隠していたようでした。

明るい朝日の中で初めて見た子猫の姿は思ったよりも小さく、まだ生後2ヶ月足らずだと思われました。そしてしきりに亀ちゃんにまとわりついています。亀ちゃんも特に怒るでもなく、かといって毛づくろいをしてやるでもなく、つかず離れずといった感じで子猫を見守っています。そんな猫の姿を見ながら、これからどうしたものかと考えていると、上の段の家に住むおばさんが朝のゴミ出しを終え坂を登ってやってきました。おばさんは私の姿を見るとすぐに立ち止まって、「昨日の声、聞こえた?」 と話しかけてきました。そして私達はそこでしばらく立ち話をしました。

話の内容を要約すると、そのおばさんご自身もとても動物好きな方なので、前日の晩は子猫の声が気になって眠れなかったそうです。しかし、自分が起きだしてきて子猫の姿を見つけたとしても、自分にはどうすることもできないので、そのまま出てこなかったということでした。(おばさんは年齢が70歳近くでしかも一人暮らしなので、おそらく動物は好きでも最後まで責任持って飼えるという自信が無いのでしょう。) 子猫がどこからやってきたか心当たりがあるかと私が尋ねると、顔の広いおばさんなのでやはり事実を知っていました。我が家から直線距離で100mほど離れた場所に小さな神社のようなものがあるのですが、そこに何日か前に子猫が3匹箱に入って捨てられており、かわいそうに思った近所の方が餌だけは与えていたのだそうです。そしてここからは推測なのですが、おそらく歩けるようになった子猫が移動を始めた所、お散歩中の亀ちゃんと出くわし、そのままついてきてしまったのではないかという結論に至りました。確かに、亀ちゃんと子猫の親しい様子を見ていれば、亀ちゃんが連れてきたという表現はぴったり当てはまります。

そして最後におばさんは 「でも安心したわ。○○ちゃん (私の名前) のところにいるならもう心配ないものね。良かった、良かった。」 と勝手な言葉を言い残して去って行きました。私は思わず 「ぜんぜん良くな〜い!!」 と心の中で叫んでいました。

その日は、野良猫の捕獲、避妊の協力をしていたNさんのために朝一番で甲府のまぐろさんの所まで捕獲器を借りに行くことになっていたので、あまり子猫に関わっている時間はありませんでした。仕方なく、また後は亀ちゃんにまかせて、食事ものどを通らなかったので朝食もとらずに車を運転して甲府へと急ぎました。やはりほとんど眠っていない状態での運転は集中力に欠け、頭もボーッとしたままでしたが何とか甲府へたどり着きました。そしてまぐろさんから捕獲器をお借りし、突然子猫がやってきたことをひとしきり愚痴ってから、またとんぼ返りで戻ってきました。その足で今度は借りてきた捕獲器と、子猫を保護した場合に使うためのケージを持ってNさんのところへ行き一通り使い方など説明して帰宅すると、もう時間は夕方の5時になっていました。さすがに1日ほとんど何も食べなかったので空腹を覚え、とりあえず残っていた菓子パンをかじってやっと落ち着きました。

そのころには子猫の鳴き声もしなくなり、姿も見えなくなっていたので、どこかへ行ってしまったかも…と半分期待しながらも、でも亀ちゃんがいるからやっぱり無理かな〜などと考えながら、その日はもう子猫のことは放っておくことにしました。

七奈ちゃん2 に続く

Last Update: 2003.2.1