2004年12月26〜27日

日付が前後するが、今度Cp10・11を記すに当たって、その前提に必要なより具体的な掘り下げを、Cp8(前々日:24日分)とCp9(前日:25日分)とに追記しておかなくてはならない。

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Cp8(04.12.24)

>これら2つの主題は、一体何ものであるか。
>これらの生起する由来は何処にあるか...

Cp8第1主題
>レ_ドファシ♭シラレソ*〜_ファソラソラ_レ
>(*〜…トリル)

>これは思うにA3をB-A-C-H系進行に融合さ
>せた変奏であろう。

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追記1
これについて。
まずこの主題を、Bと呼ぶ。
この主題(B)の転回形§が、Cp11の第2主題となって登場する。
(同時に§は、転回前=Bと、Cp10-第1主題=E、との融合としても位置づけられると思われる)

ところで 何故、

>A3をB-A-C-H系進行に融合
させたと云えるかに就て、詳述する。

ここではB-A-C-Hの、組み替えが行われている→C-H-B-A

冒頭第1〜5小節
(レ_)ド-(ファ)シ-♭シ-ラ(レ)(ソ)

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>だから、始めのレ_を先に行かせると、あとの旋律は∀4(※つまり∀3の付点解除・休止符付着形)と同時進行させた場合、まったくぴったり来る。実際バッハはそうしている。(183小節等)

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これに就て。
追記1-2

※∀3の付点解除・休止符付着形=∀4
γラ_レ_ミ_ γファ_ソ_ラ_ γ♭シ_ラ_ソγ_ γ[ファミ]ファ_ソ_...

これ、∀4の転回形が、Cp11-第1主題として今後登場する→A4

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Cp8第2主題
>もうひとつの主題は、先日私が「落下の主題」
>と指摘したものであるが、これはあの推進力
>に充ちた未完F-第2主題を、同じく基礎題材
>にしてはいるだろうが、手法としては寧ろ逆手
>にとった形であろう。よって、不断に前進し上昇
>していく気分よりは、ここに第3主題B-A-C-H的系譜
>を融合させることで、逆に下降的・落下的な雰囲気
>を醸す変奏となっている。

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これに就て。
追記2

この主題を、Cと呼ぶ。
この主題(C)の転回形が、Cp11-第3主題として登場する→⊃(徐ろに上昇する系譜)

ところで、ここ(Cp8-第2主題:落下の主題=C)で何故第3主題B-A-C-H的系譜が融合している、と考えるかに就て。

ここでも、B-A-C-Hの組み替えが行われている。H-C-A-B

準備段階――この主題と初登場:第39〜41小節
H-C-A-Bへの3度下での組み替え
(♭シ_⌒♭シ #ソラララ) #ファソソソミファファファ(#ドレ)

ここでは落下主題(第2声部)そのものはまだ準備段階だが、同時に進行する第1声部が、先程述べたBの主題のがわが、上、冒頭第1〜5小節と同旋律にて組み替えC-H-B-Aを行っている。
(レ_)ド-(ファ)シ-♭シ-ラ(レ)(ソ)


本丸――第43〜45小節
H-C-A-Bへの組み替え
(♭ミ_⌒♭ミ #ドレレレ)シドドドラ♭シシシ(ラソ#ファソ)


この他、第180〜183小節などにもこのような組み替えが見られる(第1・2声部)
C-H-B-A..CB..B..A-A
(#ドレ)ドシ ♭シ(ラ)ド[シ(ラ)]シシ(#ソ-ラ-ラ

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Cp9
↓レ↑#レ_- #ドシラソファミレ #ドレミファレミ #ファソ #ファソラ ♭シソラ ♭シ ♭シラ

この第1主題について。

これをDとすると、Dの1度下の反行形が次Cp10の第1主題(=E)後半に登場する。

それと同時に、ここでも重要なのは、
やはりここCp9-第1主題=Dでも、B-A-C-Hの組み替えが行われている。

冒頭第1〜5小節
(#C)-H-A…ABA..BBA
(↓レ↑レ#_-)#ドシラ(ソファミレ #ドレミファレミ #ファソ #ファソ)ラ ♭シ(ソ)ラ ♭シ ♭シラ

※音楽の性質上、A〜C(ABHC)間で脱着を行うと、必然的に上のようにE〜G間にも同時に脱着の連鎖反応が生じる。

★尚、ここで連鎖的に脱着反応を起こしているE〜G間は、実際未完Fに於てもBACH主題(第193小節〜)との5度差同旋律がすぐに登場している(一小節半遅れ:195小節〜)


第8〜10小節
H-A-A-H-C
(↓ラ↑ラ_ #ソ #ファミレド)シラ (#ソ)ラシドラシド

↓↓(HからBへ)

第14〜15小節
B-A-C-B-C-B-A
(ドファミレミレド)♭シラ(レ)ド ♭シド ♭シラ (#ソ)

このようにA〜C(A→B→H→C)の音域にて頻繁に半音の脱着(B⇔H)をしておくことでBACHへの布石になっていると思われる



2004年12月28日

Cp10

これは所謂4声部二重フーガ、10度の二重対位と言われる所である。
第1主題も第2主題もそれぞれ二重フーガをなし、――第1主題の響きは(10度という事は3度でもあり)殆どホモフォニックに近い――、第2主題のフーガはその1つの声部に第1主題を取り込む。

第1主題(冒頭より出)、のパターンをEと呼ぶことにする。

ところで何故何処からこの旋律が現出してきたのか。。。
おそらくこれもやはり例のA3・∀3を基いにした変形であろうが、より近い存在としては、Cp8に登場した主題∀4(とそこから容易に想像されるA4。A4は未登場であるが翌Cp11にじき現れる)を、同じCp8のB主題(A3・∀3のB-A-C-H変容)と融合させたものであろうと思われる。
同じく、じき現れるCp11、Bの転回系§は、B以上にこのEを彷彿させる…。

このE――ホモフォニックな二重フーガ――をなすうちのうちの一方(第1小節〜)、

γ#ドレ↓ラ γファミ↑ラ レミファソラ ♭シド⌒ド#シラソファ...
(γ…休止符)

このフレーズパターンが、何度と無くポジションを高低し繰り返されながら、10度(3度)の二重フーガを織りなすに至る。

上のこのフレーズが、まず冒頭(第1〜4小節:第2声部)に出現し、

追ってまもなく第3〜7小節第3声部に出現
γ♭ファソ↓レ γ♭シラ↑レ ソラ ♭シドレ ♭ミファ⌒ファ♭ミレド♭シ...

するが、ここまでのフレーズでは、(この中からA-B-H-Cの要素だけを抽出してみると)
(Hよりも)Bが支配的である。
A...A...ABC⌒CBA...
      ....BA...BC...CBA

が追ってまもなくその転回形が出現、(第7〜10小節:第4声部)、また被さるように同-転回形出現(第8〜11小節:第1声部)。

γファミ↑ラ γ#ドレ↓ラ ミレドシラソ#ファ⌒#ファソラシド...

γドシ↑ミ γ#ソラ↓ミ ラソファミレドシ⌒シ #ドレミファ...

こちらではHが支配的になる。
...A...ACHA...AHC
    CH...A.A...CH⌒H...

また第13小節から、変則Eが現れる。
(何故変則かというと、パターン通りなら本来、γ#ファソ↓レ γ♭シラ↑レ、となるところを、バッハが遁走の都合上 γ#ソラミ γ♭シラレ、としているからである)

γ#ソラ↓ミ γ♭シラ↑レ ソラシ #ドレ ♭ミファ⌒ファ ♭ミレド ♭シ..

ここではワンフレーズの中での支配がB→H,H→Bへと交代させられている。
...BA...AH...CB
(Eに当てはまらない、同時進行の他声部でも同様にH→B→H→Bとめまぐるしい交代がある。)

次に23〜29小節には、3つの声部に渡り∀3(乃至変則∀3)が出現するが、ここでもB⇔Hの盛んな交代がなされる。(※併行する他声部でも同様)
A...ABA...(※...A...HA.AHC...AB..A.A)
 AHA...
  AHC...            AHC



2004年12月29日

Cp10のつづき

その後、第37〜38小節でA1’のような音型が現れ(第1声部)、その後、Cp11以降に続くカノン群をすでに予感させる様な旋律が続き(39〜42)、

それから再びE主題の登場、B支配がはじまる(第44〜47小節:第3声部)

γ#ファソ ↓レ γ♭シラ ↑レ ソラ♭シドレ♭ミファ⌒ファ♭ミレド♭シ...
...BA...ABC......CB
(他声部も同様、B支配)

次の変則E到来では、逆にH支配(第52〜55小節:第2声部)

γ#*レファ ↓ド γラソ ↑ド ファソラシドレミ⌒ミレドシラ...
*…変則でなければレはミになるところ
...CA.C..AHC.....CHA
(他声部も同様、H支配)

その後Cp9第1主題=Dの、E(後半)的変形を思わせるような旋律が各声部で相次いで遁走し、のちにEが再来する時、(第75小節:第4声部)
最初に出てきたE(第1主題)-その1の3度下のポジションで展開される=E-その2。
ここではもう第2主題=∀3との併走が同時に行われる。(E-その2と∀3との、10度二重対位)

この後の、E(第1主題)は、必ずその1とその2、両者によるホモフォニックな形をとって、3回登場(85,103,115小節〜、うち85,103は変則)するが、第2主題との10度(3度・6度)の二重対位という組み合わせで行われる。(E-その1&E-その2と、∀3との、10度二重対位)
そして∀3の二股は、
ラ_レ_ミファ_ソラ_ ♭シ_ラ_ソファ⌒ファミファソ..
ド_ファ_ソラ_♭シド_ レ_ド_♭シラ⌒ラソラ♭シ..

10度二重対位の完璧な形は75〜と115〜小節のものである
(前・後者ともにE-その2と2つの∀3の対位。)

このうちまず、75〜小節のEは、B支配。

γラ ♭シファ γレドファ ♭シドレミファソラ⌒ラソファミレ...
AB...C...BC.....A⌒A...

この際同時に併走する第2主題としての∀3の2旋律も、
ド_ファ_ソラ_♭シド_ レ_ド_♭シラ⌒ラソラ♭シド
C...ABC.CBA.ABC

ラ_レ_ミファ_ソラ_ シ_ラ_ソファ⌒ファミファソラ
A.....ABA....A
という具合に同じくB支配である。

次の85小節〜も、一部変則的なので補ってEと∀3の二重フーガとして考え、同じくB支配。
103小節〜も同様、115小節〜も同様。
ということで、75小節以降完璧な10度二重対位が現れてからはB支配が最後まで続く。



2004年12月30日

Cp11
3つの主題(∀4の転回形=A4・Bの転回形=§・Cの転回形=⊃)による4声部三重フーガ。

まずCp11-第1主題、A4に関しては、前に∀3の転回形としてA3が登場していたことと、前もってのA4の登場によって、推察が容易であり、すでに聞きなれたかの感がある。A3の付点を除去し、始めに休止符を添えたパターンである。

ところで、
先日Cp10での主題Eに際して、

>E
>何故何処からこの旋律が現出してきたのか
>例のA3・∀3を基いにした変形であろうが、
>より近い存在としては、Cp8-主題∀4(と
>そこから容易に想像されるA4+A4
>(A4は翌Cp11にじき現れる)を、同じCp8-B
>主題(A3・∀3のB-A-C-H変容)と融合させた
>ものであろう...

>同じく、じき現れるCp11、Bの転回系§は
>B以上にこのEを彷彿させる。

と記したが、

∀3やA3、乃至∀3+A3がこれまでの殆どの主題・変形主題の基いとなっていたのと同様、∀4・A4、また、∀4+A4が、Cp10やCp11、ひいては未完F(第1主題や第3主題B-A-C-H)に直接間接、役割を果たしているか或る種の融合を与えているであろう事は間違いない。
B(§)の確立に∀3+A3が、ここからB-A-C-H変容への基いを与えているのと同じように、Cp10-Eの確立には、∀4+A4が、∀4+A4からB-A-C-H変容へと至る基いを与えている。
殊にEをなす音律の中でも、冒頭のものの3度下(=6度上)の再現、
γラ♭シ↓ファ γレド↑ファ ♭シドレミファソラ⌒ラソファミレ..
のほうは、そのポジションのままCp11-§の成立に結びつく。
これはたんに、§がB(Cp8-B)の転回形であるばかりでなく、§がBとEとの融合点でもあることを示しているといえる。と同時に§が、EをさらにB-A-C-H変容(乃至は半音階変容)させたものでもあることが理解できる。

またCp11-第2主題に関しては、

Cp8に於るBでは
レ_ド ↑ファシ ♭シラ ↑レソ...
..C..HBA... 
という仕方でB-A-C-Hの組み替えがなされていた。(∀3+A3をB-A-C-H変容させていた)

Cp11に於る§では、
ラ_♭シ↓ファド #ドレ↓ラミ...
..AB...C..A.

ということになり、Hはない。
(がこのB→§への転回は、Hが転回軸になっていることになる。)

またもし、これの上下向を無くし、
ラ_♭シ シド #ドレ #レミ... とすると
ABHC....となり、何れにしてもA〜Cのポジションをめぐってのフレーズ作りであることがわかる。

また第3主題――所謂、落下の主題(C)の転回形:徐行的上昇の主題――であるが、これは非常に未完FのB-A-C-H(第3主題)へ向けて示唆的である。

この主題(⊃)の開始は第89小節からであるが、
♭ミ⌒(♭ミ)レファファファ #ミソソソ #ファ...
その直後、90小節には
♭シ⌒(♭シ)ラドドドシレレレ #ド...
B⌒(B)-A-C{CC}-H...

が登場する。(→未完F-第3主題への布石)

このパターンは、以前Cp9の冒頭に於て
第1〜5小節
(#C)-H-A…ABA..BBA
(↓レ↑レ#_-)#ドシラ(ソファミレ #ドレミファレミ #ファソ #ファソ)ラ ♭シ(ソ)ラ ♭シ ♭シラ

というように音楽的性質上、A〜C(ABHC)間で脱着を行うと、必然的に上のようにE〜G間にも同時に脱着の連鎖反応が生じたり、
実際ここで連鎖的に脱着反応を起こしているE〜G間は、こあの未完Fに於てもBACH主題(第193小節〜)との5度差同旋律がすぐに登場している(一小節半遅れ:195小節〜)
と指摘したのとまったく同様であり、BACHへの予告である。



2005年01月07日

フーガの技法、再開。

これから触れる群は所謂カノングループと、鏡状フーガグループであるが、これらに関し、自分自身のフーガの技法分析の中で触れるべきかどうか、《全く》逡巡する面が無かったとは云い切れない。

というのは、これらの2グループが、――たんなる知的パロディであるとか、トヴェイが仄めかしたとされるように「カノンの芸術」とでも言うべき別のシリーズの為の予備的スケッチであった、といった意見などもあり、未だ確定的な結論が下せていない、とされる音楽解釈史的現状の中、あえて(私自身の判断としては)、――これらが「フーガの技法」の構成要素であることは100%明らかであると考うにしても、同時にまたこれらが、一種「挿入」章的・機知-遊戯的ニュアンスを帯びた部分であることも、おそらく確かであろうことから、ここまで既述してきたコントラプンクトゥスらとの比較に於て、これらの群の存在がこれまでと全き「同質性」を有つ、と肯首できない側面がある、ということも、やはり出来るからである。

だが、例えば優れた文学の大作にも挿入章があり、また幾らかは演戯的部分という面も存在する、存在して一向に構わぬどころか、寧ろその作品全体とその存在感に、或る種のふくらみをさえ与えるように、徹頭徹尾「構造的」音楽、といえる物の中に、そのようなニュアンスの部分が含まれることに対しても、またそうした部分に自分自身、逐一触れていく事に関しても、躊躇することはあるまいというありきたりの結論から、これらのせっかくの美しく、汲み尽くしがたい部分にも、触れさせていただくことにした。

ただここにはまた、これまでの部分とは違い、曲順や、確定稿・未確定稿の是非論などの問題も同時に介在してくることから、これらの部分に触れることが、正直厄介な側面も無きにしもあらずである。

が私としては、カノングループ・鏡状フーガグループに於ては、楽譜の確定・未確定稿の問題に関してまではともかく、曲順に関しては、構造的-多元的思考の音楽として当然の由来から、バッハ自身でさえ決めかねていた形跡のあるこの問題に関し(こうした或意味での同時性・多角性・多発性もまた、弁証法的思考と発展法則の表証なのである)、かならずしもはっきりとひとつだけに順序立てて配置される必要性もないだろうと思えるし、その時々の演奏の趣向や作品に対するスタンス・解釈上の相対的視角(=アプローチ)の問題etc...から、ある程度自在な配置可能性、解釈の余地を保っておいて結構なのではないかとの感を抱いている。
この感覚はこの作品に触れて間もない頃、まだ自分なりに深入りする以前から抱いていた、漠然とした印象からも変わることはない。

幸い、これを書くにあたり、私の最も日常よく耳にしている2つのディスク――ミュンヒンガー指揮SCO演奏(LondonSP-1965録音版)とヴァルヒャのオルガン演奏(Archiv-1956録音版)では、ともにグレーザーの解釈・曲順指定に依っていることもあり、この曲順*に従って、これから触れていくことになると思う。

*曲順を、一応敢えて結論づけしなければならぬとしたら、グレーザーの考えがおそらく最も妥当なのであろう。
私としては、例えば中高声部⇔低音声部へと行われる、作品間の自然な橋渡しといった側面や、Cp11で現れた主題(§)がカノングループのA8の背後に通底して聞こえてならない点などから、他にも可能性がありそうな気もする。
(ただ主題の関連性が、必ずしも直ちに曲順に(「=として」)、反映されないことも考えられるであろう事は当然であって、「フーガの技法」とはまさに、そういう複雑で多面的事情を抱えた音楽であることが、つねに考慮されなければならない)

これは触れられれば後に触れる。

何れにせよ、これらカノンと鏡状フーガグループの存在が、フーガの技法の立派な構成要素であることは間違いないだろう。
それは、何か別の作品かシリーズの為の草稿であるにしてはあまりにも共通した、否、全く以て通底している主題の展開(Aや∀のスタイル)と、そこから派生変奏されて来たこれまでのB(§)やC(⊃)のスタイルとの連関性からしても確かなことである。

ただ、これらカノンとフーガグループを「ここ」に挿入する場合、このグループの終わりからいよいよ未完Fへと収斂する際にもう一つ何か、前哨となる練られたステップが必要だったような気がする、というのも、――それはつまり、これらの前、殊にCp11で、未完Fへと移行するために形成された主題たち、せっかくの迫真的な流れであったあの「§」や「⊃」が、ひしひしと物語っていた壮絶なものを、これらの群挿入章の後、再び決定的に活かす為の、そしてこれまでの蓄積をより未完Fへと直接的に繋げる為の、何らかの要素であると思われる――もうひとつ正直な感覚である。

がだからといってその保留の感覚が、これらのグループの音楽たちを、「フーガの技法」に属する確定的要素として存在出来なくさせる要因となることなどありえない。

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